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会社員が損しない申告ルールと住民税の落とし穴、副業を認める会社の労務ポイント
「副業の収入が少しあるけれど、確定申告はしなくていいんですよね?」「20万円以下なら何もしなくて大丈夫と聞いたけど本当?」——年末が近づくと、こうした質問を本当に多くいただきます。
副業を認める会社が増え、会社員がネットでの物販やライター、週末のアルバイトなどで収入を得ることは珍しくなくなりました。ところが「20万円ルール」を誤解したまま申告をしていない方が非常に多く、後から住民税の通知や税務署からの連絡で慌てるケースが後を絶ちません。
この記事では、副業の確定申告が必要になる条件を、はじめての方でも一読で判断できるように整理します。さらに、申告するとむしろ税金が戻ってくるケースや、副業を認める側の経営者が押さえるべき労務のルールまで、実際の数字を使って解説します。来年2〜3月の申告に向けて、今から準備を始めましょう。
| 【この記事の結論】 ① 「20万円以下なら申告不要」は所得税だけの話です。住民税には20万円ルールがないため、市区町村への住民税の申告は必要です。 ② 20万円は「収入」ではなく「所得(収入−経費)」で判断します。しかも、医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下の副業も含めて申告しなければなりません。 ③ 報酬から税金を天引きされている人は、申告すると税金が戻る可能性があります。「申告しない方が得」とは限りません。 |
副業の「20万円ルール」とは?正しい意味を押さえる
結論から言うと、20万円ルールは「会社で年末調整を受けている会社員が、給料以外のもうけが年20万円以下なら、所得税の確定申告をしなくてよい」という特例です。すべての税金や手続きが免除されるわけではありません。
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得と税金を自分で計算し、翌年2月16日から3月15日までに税務署へ申告して納める手続きのことです。
所得とは、収入(売上)から、それを得るためにかかった経費を差し引いた「もうけ」のことです。
たとえば、リンゴを仕入れて週末に販売する副業で、売上が50万円、リンゴの仕入れや出店料が35万円かかったなら、所得は15万円です。20万円ルールで比べるのは、この15万円の方です。
20万円ルールが使える人・使えない人
| あなたの状況 | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
| 会社員(年末調整あり)で、副業の所得が20万円以下 | 不要 | 必要 |
| 会社員(年末調整あり)で、副業の所得が20万円超 | 必要 | 確定申告をすれば不要 |
| 医療費控除やふるさと納税(6自治体以上など)で確定申告をする | 必要(副業分も含めて申告) | 確定申告をすれば不要 |
| 2か所から給料をもらい、年末調整されない給料の収入と他の所得の合計が20万円超 | 必要 | 確定申告をすれば不要 |
| 給料の年収が2,000万円を超える | 必要 | 確定申告をすれば不要 |
| 会社員ではない(個人事業主・無職など) | 所得があれば原則必要(20万円ルールなし) | 確定申告をすれば不要 |
※2か所目の給料(アルバイトなど)は「所得」ではなく「収入金額」で判定します。
| 【要注意】住民税には20万円ルールがない 所得税の確定申告が不要な場合でも、副業の所得が1円でもあれば、住民税は申告しなければなりません。住民税の申告は、お住まいの市区町村の窓口で行います(多くの自治体で3月15日が期限です)。「20万円以下だから何もしなくていい」は、住民税については誤りです。 |
副業の所得の種類と、知っておくべき仕組み
結論として、副業の所得は「給与所得」「雑所得」「事業所得」のどれかに分かれ、どれに当たるかで節税の選択肢が大きく変わります。
| 所得の種類 | 代表的な副業 | 経費 | 赤字を給料と相殺 | 青色申告特別控除 |
| 給与所得 | 週末のアルバイト、パート | 給与所得控除で自動的に差し引き | — | なし |
| 雑所得 | 単発のライター、ネットでの不用品以外の販売、アフィリエイト | 差し引ける | できない | なし |
| 事業所得 | 継続的・本格的に行う事業(帳簿を付けて保存) | 差し引ける | できる | 最大65万円 |
事業所得とは、社会通念上「事業」と呼べる規模と継続性をもって行う仕事から生じる所得のことです。
国税庁の考え方では、副業の収入が年300万円以下で、帳簿や書類をきちんと保存していない場合は、原則として雑所得として扱われます。反対に、帳簿を付けて書類を保存し、継続的に営んでいれば、事業所得として認められる余地があります。事業所得なら、青色申告の届出をすることで最大65万円の特別控除を受けられます。
| [画像指示:副業の収入から経費を引いて所得を出し、20万円の線を超えるかどうかで申告の要否が分かれる様子を示した天秤の図解イラスト / キャプション:判定に使うのは収入ではなく「収入−経費」の所得です] |
申告が必要かどうかの判断ステップ
| STEP1 本業の会社で年末調整を受けているか? いいえ→副業の所得があれば原則として確定申告が必要/はい→STEP2へ |
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| STEP2 医療費控除や住宅ローン控除(1年目)などで確定申告をするか? はい→副業の所得も含めて確定申告が必要/いいえ→STEP3へ |
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| STEP3 副業の所得(収入−経費)は年20万円を超えるか? はい→確定申告が必要/いいえ→STEP4へ |
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| STEP4 報酬から所得税を天引きされているか? はい→確定申告をすると税金が戻る可能性あり(申告がおすすめ)/いいえ→所得税の確定申告は不要。ただし住民税の申告は必要 |
副業の申告で失敗しやすい実務上の罠
結論として、副業の申告でのトラブルは「経費の範囲」「天引きされた税金」「申告しなかったときのペナルティ」の3つに集中します。
罠① 経費にできるのは「副業のために使った分」だけ
パソコンやスマートフォン、自宅の電気代などは、副業と私生活の両方で使っている場合、副業で使った割合だけを経費にできます。根拠のない割合で多めに経費にすると、税務調査で否認されます。領収書と、どのように割合を決めたかのメモを残しておきましょう。
罠② 天引きされた所得税を取り戻していない
原稿料やデザイン料、講演料などは、支払う側が報酬から10.21%の所得税を天引き(源泉徴収)していることがあります。経費を差し引いた実際のもうけに対する税金がこれより少なければ、確定申告で差額が戻ってきます。20万円以下で申告不要の人でも、自分から申告すれば還付を受けられます。
罠③ 申告しないと「無申告加算税」がかかる
無申告加算税とは、申告が必要なのに期限までに申告しなかった場合に、本来の税金に上乗せして課されるペナルティの税金のことです。
| 申告のタイミング | 無申告加算税の税率(原則) | 本来の税金が20万円の場合 |
| 期限内に申告 | かからない | 0円 |
| 期限後だが、税務署の調査の連絡が来る前に自分から申告 | 5% | 1万円 |
| 調査の連絡が来た後、調査で指摘される前に申告 | 10%(50万円超の部分15%、300万円超の部分25%) | 2万円 |
| 調査で指摘された後に申告 | 15%(50万円超300万円までの部分20%、300万円超の部分30%) | 3万円 |
| 意図的に隠していた場合(重加算税) | 40% | 8万円 |
※いずれの場合も、別途、納付が遅れた日数に応じた延滞税がかかります。
インターネットの販売サイトやスキルを売買するサービスでの収入は、運営会社から税務署へ情報が集まる仕組みが整いつつあります。「少額だから見つからない」という考えは、税理士の実務視点から見て通用しないと考えてください。
住民税の納め方と「会社への通知」
副業の所得にかかる住民税は、何もしなければ本業の給料から天引きされる住民税に合算されます。確定申告書の第二表で、給料以外の所得(雑所得や事業所得)にかかる住民税を「自分で納付」を選ぶと、自宅に届く納付書で別に納めることができます。ただし、副業がアルバイトなどの給与の場合は、原則としてこの選択ができません。
| 税理士の実務視点 住民税の納め方を工夫して「会社に知られないようにする」ことを目的にするのはおすすめしません。副業の申請や届出のルールがある会社では、無断の副業そのものが就業規則違反として問題になるからです。まずは勤務先のルールを確認し、正々堂々と申告・納税することが、長い目で見て最も安全な方法です。 |
経営者向け:社員の副業を認めるときの労務ポイント
結論として、社員の副業を認める会社は「労働時間の通算」「社会保険」「就業規則」の3点を整えておく必要があります。税金は社員本人の問題ですが、労務は会社の責任になるからです。
ポイント① 雇用される副業は労働時間を通算する
社員がほかの会社でアルバイトなど「雇われる形」の副業をする場合、労働基準法では本業と副業の労働時間を通算します。1日8時間・週40時間を超えた部分は、原則として後から雇用契約を結んだ会社が割増賃金(25%以上)を支払う必要があります。業務委託やネット販売など、雇われない形の副業は通算の対象外です。
| 例 | 本業(先に契約) | 副業(後から契約) | 割増賃金を払うのは |
| 平日に1日8時間働き、夜に副業のアルバイトを3時間 | 8時間(法定内) | 3時間(すべて法定外) | 副業先 |
| 本業が1日6時間、副業が3時間 | 6時間 | 3時間のうち1時間が法定外 | 副業先(1時間分) |
ポイント② 社会保険・労災保険
2つの会社の両方で社会保険の加入条件を満たす場合は、社員本人が「二以上事業所勤務届」を提出し、両社の給料を合計して保険料を計算したうえで、各社が按分して負担します。また、労災保険では、複数の会社で働く人がけがをした場合、両社の賃金を合算して給付額が計算されます。
ポイント③ 就業規則で「届出制」にする
副業を一律に禁止することは、裁判例上も認められにくくなっています。一方で、本業に支障が出る場合、会社の秘密が漏れる場合、競合する事業の場合、会社の信用を傷つける場合などは、制限することができます。就業規則で「事前の届出制」とし、副業の内容と労働時間を把握できる仕組みにしておくことが実務上の結論です。
| 社会保険労務士の実務視点 副業を認める会社が増えた今、「届出があったのに労働時間を把握していなかった」ことによる長時間労働や健康障害のリスクが問題になっています。届出書には副業先の名称・業務内容・所定労働時間を書いてもらい、年に1回は内容を更新してもらう運用がおすすめです。 |
シミュレーション:副業の所得と確定申告の損得
結論から言うと、報酬から税金を天引きされている人は、20万円以下でも申告した方が税金が戻ることがあります。同じ会社員の2つのケースで比べてみましょう。
前提条件
- 本業の給料は年収600万円で、会社の年末調整を受けている
- 副業はライター。原稿料の年収入は50万円で、支払元が10.21%(51,050円)を天引き
- 本業と合わせた所得税の税率は10%(復興特別所得税を含めて10.21%)、住民税は10%で計算
- 数値は分かりやすさを優先した概算です
| 項目 | ケースA:経費15万円 | ケースB:経費32万円 |
| 副業の収入 | 500,000円 | 500,000円 |
| 経費 | 150,000円 | 320,000円 |
| 副業の所得 | 350,000円(20万円超) | 180,000円(20万円以下) |
| 所得税の確定申告 | 必要 | 不要(ただし申告は可能) |
| 副業分の所得税(所得×10.21%) | 35,735円 | 18,378円 |
| 天引き済みの所得税 | 51,050円 | 51,050円 |
| 確定申告による還付額 | 15,315円が戻る | 申告すれば32,672円が戻る |
| 副業分の住民税(翌年) | 35,000円(確定申告で自動的に反映) | 18,000円(住民税の申告が必要) |
| 【シミュレーションから分かること】 ケースBは20万円ルールで所得税の確定申告が「不要」ですが、申告しなければ天引きされた税金のうち約3.3万円を取り戻せません。しかも住民税の申告はどちらにしても必要です。 つまり、天引きされた報酬がある人にとっては、確定申告をすることが「義務」ではなく「得をする手続き」になります。経費の領収書を1年分まとめておくことが、そのまま手取りを増やすことにつながります。 |
よくある質問(FAQ)
Q. 副業の収入が20万円以下なら、何もしなくていいですか?
A. 所得税の確定申告は不要な場合がありますが、住民税の申告は必要です。また、20万円は収入ではなく「収入−経費」の所得で判断します。医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下の副業も含めて申告してください。
Q. フリマアプリで不用品を売った収入も申告が必要ですか?
A. 自宅の家具や衣類など、生活で使っていた物を売った収入は、原則として税金がかかりません(1個または1組30万円を超える貴金属・美術品などを除く)。ただし、売るために仕入れた物を販売している場合は副業の所得になります。
Q. 副業が赤字なら、本業の給料と相殺して税金を減らせますか?
A. 事業所得であれば相殺できますが、雑所得の赤字は給料と相殺できません。帳簿を付けずに小規模に行う副業は雑所得になるのが原則のため、赤字による節税は期待できないと考えてください。
Q. 確定申告をすると、副業が会社に知られますか?
A. 給料以外の副業(雑所得・事業所得)であれば、住民税を「自分で納付」にすることで、副業分の住民税が会社の給与天引きに含まれないようにできます。ただし、勤務先のルールに沿って副業を届け出ておくことが最も大切です。
Q. 会社として、社員の副業を禁止することはできますか?
A. 一律に禁止することは認められにくいのが実情です。本業への支障、秘密の漏えい、競合、会社の信用低下のおそれがある場合に限って制限できます。就業規則で届出制にし、内容と労働時間を把握できるようにしておきましょう。
まとめ:副業の申告は「年内の準備」で手取りが変わる
| 【3行まとめ】 1.20万円ルールは所得税だけの特例。判定は「収入−経費」の所得で行い、住民税の申告はいずれにしても必要です。 2.報酬から税金を天引きされている人は、20万円以下でも確定申告で税金が戻る可能性があります。領収書は年内から整理しましょう。 3.副業を認める会社は、労働時間の通算・社会保険・就業規則の届出制をセットで整えることが欠かせません。 |
副業の申告は、本人にとっては「税金」の問題、会社にとっては「労務管理」の問題です。両方の視点がそろって初めて、社員も会社も安心して副業を続けられる環境が整います。
当事務所では、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携し、副業を始める方の確定申告から、副業を認める会社の就業規則の整備・労働時間管理まで、税金と労務の両面から一体でサポートしています。国税OBの税理士が在籍しているため、経費の範囲や所得の区分など、税務署から質問されやすいポイントも安心してお任せいただけます。
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