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忘年会は経費になる?

2026-11-03

福利厚生費と交際費の分かれ目、二次会・お歳暮・商品券の「うっかり給与課税」を防ぐ年末の経費ガイド

「社員みんなで忘年会をしたいけれど、これって会社の経費になるの?」「二次会の分は?」「取引先へのお歳暮は?」

12月が近づくと、こうした質問を毎年たくさんいただきます。年末は、忘年会、お歳暮、社員への寸志や商品券など、普段より「人に関わるお金」が一気に増える時期です。そして実は、税務調査で指摘されやすいのも、まさにこの種類の支出です。

この記事では、忘年会の費用が「福利厚生費」になるのか「交際費」になるのか、その分かれ目を、はじめての方でも一読で分かるように解説します。さらに、社員に配った商品券が「給与」として課税される落とし穴や、年末年始の出勤にかかる割増賃金など、労務の注意点もあわせて紹介します。

【この記事の結論】 ① 社員全員を対象にした、常識的な金額の忘年会(一次会)は「福利厚生費」になります。役員だけの会や、一部の人だけの二次会は「交際費」になります。 ② 「1人1万円以下の飲食費は交際費にならない」ルールは、社内だけの飲み会には使えません。取引先などが参加する飲食が対象です。 ③ 社員に配る商品券や現金は、原則として「給与」です。源泉所得税がかかり、消費税の計算でも差し引けません。

まず押さえたい「福利厚生費」と「交際費」の違い

結論から言うと、2つを分けるのは「誰のために、誰が対象で、いくら使ったか」です。

福利厚生費とは、社員全員が平等に利用できる、働きやすさや健康のための費用のことです。交際費とは、取引先など事業に関係のある人への接待や贈り物、または一部の社員や役員だけを対象にした飲食などの費用のことです。

家庭のやりくりで例えると、福利厚生費は「家族全員で行く年に一度の外食」、交際費は「お父さんが仕事の付き合いで行く飲み会」のようなものです。同じ外食でも、目的と参加者によって家計簿の項目が変わる、というイメージです。

項目福利厚生費交際費
対象者社員全員(全員が参加できる)取引先、または役員・一部の社員だけ
金額社会通念上(常識的に)相当な金額金額にかかわらず
具体例全員参加の忘年会(一次会)、全員への常識的な記念品取引先との忘年会、お歳暮、役員だけの会食、任意の二次会
法人税での扱い全額が経費(損金)中小法人は年800万円まで経費(または接待飲食費の50%)
税務調査での見られ方参加者名簿・案内文で「全員対象」を確認相手先・目的の記録を確認

交際費の扱いのくわしい内容は、国税庁のタックスアンサー「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」でも確認できます。

税理士の実務視点 資本金1億円以下などの中小法人は、交際費を年800万円まで経費にできるため、「福利厚生費でも交際費でも税金は同じ」と考える方がいます。法人税だけを見ればその通りの場面も多いのですが、本当の問題は区分ではなく、私的な支出が混ざって「役員賞与」や「給与」と判断されることです。こちらは税金が大きく増えます。

忘年会の費用はどう判断する?ケース別の分かれ目

結論として、忘年会は「社内だけか」「全員対象か」「一次会か」の3つの質問で判定できます。

質問1 参加者は社内の人だけですか? いいえ(取引先などが参加)→「交際費」。ただし1人あたり1万円以下で、必要な記録を残せば交際費から除けます。/はい → 質問2へ

▼

質問2 社員全員が参加できる会ですか? いいえ(役員だけ、特定の部署の一部の人だけ)→「交際費」。/はい → 質問3へ

▼

質問3 常識的な金額の一次会ですか? はい →「福利厚生費」。/いいえ(高級店での高額な会、任意参加の二次会)→「交際費」
[画像指示:「社内だけ?」「全員対象?」「常識的な一次会?」の3つの質問で、福利厚生費と交際費に枝分かれするフローチャートの図解イラスト / キャプション:3つの質問に答えるだけで、忘年会費用の区分が判断できます]

二次会は原則「交際費」

一次会は全員参加でも、二次会は「行きたい人だけ」になるのが普通です。参加者が一部に限られるため、二次会の費用は原則として交際費になります。会社が二次会を負担する場合は、一次会とは別の項目で記録しておきましょう。

「1人1万円以下」ルールの落とし穴

1万円基準とは、取引先などとの飲食費のうち、1人あたり1万円以下(2024年4月1日以降の支出分)のものを交際費から除くことができるルールのことです。このルールを使うには、飲食の日付、参加した取引先の名前と関係、人数、金額、お店の名前と所在地を記録しておく必要があります。

ここで多い誤解が、「社内の忘年会も1人1万円以下なら交際費にならない」というものです。役員や社員だけで行う飲食(社内飲食費)は、1人1万円以下でもこのルールの対象外です。たとえば役員3人だけで1人8,000円の食事をした場合は、交際費になります。

個人事業主の場合

個人事業主には、法人のような交際費の上限はありません。ただし、事業に関係のある支出であることが前提です。家族や友人との忘年会は、たとえ事業の話題が出たとしても、原則として経費にはなりません。

お歳暮・商品券・寸志――年末の贈り物の扱い

結論として、取引先への贈り物は「交際費」、社員への現金や商品券は原則「給与」です。

贈る相手と内容税務上の区分消費税の扱い
取引先へのお歳暮(品物)交際費課税仕入れ(差し引ける)
取引先へのお歳暮(商品券・ギフトカード)交際費非課税(差し引けない)
社員全員への常識的な品物(記念品など)福利厚生費になり得る課税仕入れ(差し引ける)
社員への商品券・ギフトカード給与(源泉所得税の対象)非課税(差し引けない)
社員への現金の寸志・餅代給与(賞与)対象外(差し引けない)
【要注意】「商品券なら給与にならない」は誤解です 商品券やギフトカードは、現金と同じように自由に使えるため、社員に配ると「給与」として扱われます。金額が少なくても、源泉所得税の対象です。 また、商品券の購入は消費税が「非課税」のため、消費税の計算で差し引くことはできません。福利厚生費として計上し、消費税も差し引いていた場合は、所得税と消費税の両方で修正が必要になります。 社会保険でも、労働の対価として支給するものは賞与などの報酬として扱われる場合があります。支給の前に取扱いを確認しましょう。

年末年始は労務の注意点も見落とさない

結論として、忘年会への参加を事実上強制していないか、年末年始の出勤に正しく割増賃金を払っているかを確認しておくことが大切です。

忘年会の「参加強制」は労働時間になることがある

忘年会は原則として自由参加の行事であり、労働時間にはあたりません。しかし、参加しないと評価が下がる、幹事を業務として命じている、といった事実上の強制がある場合は、労働時間として賃金の支払いが必要になることがあります。また、会の途中や帰り道のけがが労災保険の対象になるかどうかも、業務としての性格があるかどうかで判断されます。

年末年始の出勤と割増賃金

割増賃金とは、法律で決められた時間を超えて働いた場合や休日に働いた場合に、通常の賃金に上乗せして支払う賃金のことです。法律上必ず与えなければならない休日(法定休日、週1日)に働いた場合は35%以上、深夜(午後10時〜午前5時)は25%以上の上乗せが必要です。会社の年末年始休暇が法定休日かどうかで割増の率が変わるため、就業規則でどの日を法定休日としているかを確認しておきましょう。

税理士の実務視点 年末の経費の問題は、税務調査では「交際費の区分」より「誰のための支出か」が問われます。社長の家族との食事を会社の経費にしていれば役員賞与、社員への商品券を福利厚生費にしていれば給与――どちらも源泉所得税の徴収漏れとして指摘され、不納付加算税がかかります。 税金と労務の両方の目線で、年末の支出を一度点検しておくことをおすすめします。

シミュレーション:年末の経費処理を誤った場合の追加負担

結論から言うと、社員20人の会社で年末の経費処理を誤ると、1年で約18万円、3年分で50万円を超える追加負担になる可能性があります。

前提条件

  • 資本金1,000万円、社員20人の会社(3月決算、交際費は年800万円の枠内)
  • 全員参加の忘年会(一次会):20万円 → 福利厚生費
  • 任意参加の二次会(社長と社員8人):9万円 → 福利厚生費として計上
  • 社長と家族の年末の会食:年30万円 → 会議費として計上
  • 社員20人への商品券:1人1万円、合計20万円 → 福利厚生費として計上し、消費税も差し引いていた
  • 法人税等の実効税率は約30%、社長個人の税率(所得税・復興特別所得税)は20.42%、社員の源泉所得税は平均5.105%と仮定した概算(延滞税は含めない)
指摘される内容正しい扱い1年あたりの追加負担
一次会 20万円福利厚生費のまま0円
二次会 9万円交際費(800万円枠内のため法人税は増えない)0円
社長家族との会食 30万円役員賞与(経費にならない)法人税等 約9.0万円+源泉所得税 約6.1万円
社員への商品券 20万円給与源泉所得税 約1.0万円+消費税 約1.8万円
合計(加算税・延滞税は別途)約18.0万円
【シミュレーションから分かること】 二次会の区分ミスは、中小法人なら税額への影響はほとんどありません。一方で、社長の私的な支出や社員への商品券は、法人税・源泉所得税・消費税の3方向に負担が広がります。 税務調査は通常3年分を確認するため、このケースでは約54万円に、過少申告加算税・不納付加算税・延滞税が上乗せされることになります。

よくある質問(FAQ)

Q. 忘年会を欠席した社員に、代わりに現金を渡してもよいですか?

A. 欠席者に現金を渡すと、その現金は給与として課税されます。さらに、参加・不参加にかかわらず金銭が受け取れる状態になると、忘年会そのものが福利厚生費として認められにくくなるおそれがあります。欠席者への金銭の支給は避けるのが無難です。

Q. 忘年会の費用に、1人いくらまでという決まりはありますか?

A. 法律で決まった金額はありません。「社会通念上相当な金額」かどうかで判断されます。一般的な居酒屋やホテルの宴会で行う、常識的な一次会であれば問題になることはほとんどありません。

Q. パートやアルバイトを呼ばない忘年会でも福利厚生費になりますか?

A. 雇用形態で参加者を限ると「全員対象」とは言いにくくなります。パート・アルバイトも参加できる形にしておく方が、福利厚生費として安心です。

Q. 取引先との忘年会で、1人1万円を少し超えてしまいました。

A. 1万円基準は1人あたりの金額で判断し、超えた場合は全額が交際費になります(超えた部分だけではありません)。ただし中小法人は年800万円までは経費になるため、記録をきちんと残していれば大きな問題にはなりません。

Q. 忘年会の領収書には、何を書いておけばよいですか?

A. 日付・お店の名前・金額に加え、参加者(全員参加であれば「全社員◯名」)、会の目的を記録しておきましょう。取引先が参加した場合は、相手先の会社名・氏名・関係も必要です。案内文や参加者名簿を一緒に保存しておくと、調査で説明しやすくなります。

まとめ:年末の経費は「誰のための支出か」で決まる

【3行まとめ】 1.全員参加・常識的な金額の一次会は福利厚生費。役員だけの会や二次会は交際費です。 2.1人1万円以下ルールは社外の人との飲食だけ。社内の飲み会には使えません。 3.社員への商品券・現金は給与。私的な支出の混入は役員賞与となり、負担が大きく広がります。

年末の支出は、金額そのものより「区分」と「記録」が問われる分野です。そして、商品券や年末年始の出勤のように、税金と労務の両方にまたがる論点も少なくありません。

当事務所には、国税の調査実務を内側から知る国税OBの税理士と、社会保険労務士が在籍しています。調査官が交際費や福利厚生費のどこを見るのかを踏まえた経費区分の点検、就業規則や割増賃金の見直しまで、巡回監査を通じて日ごろから一体で支援しています。くわしくは当事務所ホームページをご覧ください。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「この忘年会の費用、どう処理すればよい?」「社員へのお歳暮や寸志の扱いが不安」——年末の支出前のご相談が、いちばん効果的です。初回のご相談はオンラインでも承っています。 ▶ ご相談・お問い合わせは当事務所ホームページから

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冬のボーナス、手取りと会社の負担はいくら?

2026-11-02

賞与の社会保険料と源泉所得税の計算を経営者向けにやさしく解説

「冬のボーナスを60万円出したい。でも、会社の負担は実際いくらになるの?」「社員の手取りはいくら残るの?」

12月の賞与(ボーナス)を前に、こうした疑問を持つ経営者の方はとても多いです。毎月の給与計算は慣れていても、賞与は年に1〜2回しかないため、計算のルールや届出の期限があいまいになりがちです。しかも賞与には、毎月の給与とは別の計算方法が使われます。

この記事では、賞与にかかる社会保険料と所得税(源泉所得税)の仕組みを、はじめての方でも一読で分かるように解説します。後半では「賞与60万円」のケースで、社員の手取りと会社の本当の負担額を具体的な数字で計算します。

【この記事の結論】 ① 賞与60万円を出すと、会社の実際の負担は約70万円になります。社会保険料の会社負担分(約1割強)が上乗せされるからです。 ② 賞与の社会保険料は「標準賞与額×保険料率」、所得税は「前月の給与」をもとにした専用の表で計算します。毎月の給与とは計算方法がまったく違います。 ③ 支給日から5日以内に「賞与支払届」の提出が必要です。提出漏れは、後から保険料をまとめて請求される原因になります。

賞与(ボーナス)にかかるお金の全体像

結論から言うと、賞与からは「社会保険料」と「所得税」の2種類が差し引かれ、会社にも社会保険料の負担が発生します。住民税は賞与からは差し引きません。

賞与とは、毎月の給与とは別に、年3回以下の回数で支給されるお金のことです。「ボーナス」「期末手当」「寸志」など名前は何であっても、労働の対価として支給されれば賞与として扱われます。

お小遣いで例えるなら、毎月の給与は「毎月のお小遣い」、賞与は「お年玉」のようなものです。お年玉にも、家計のルール(税金や保険料)がきちんと適用される、と考えると分かりやすいでしょう。

差し引かれるもの計算のもと負担する人
健康保険料(40歳以上は介護保険料、2026年4月分からは子ども・子育て支援金を含む)標準賞与額×保険料率会社と本人で半分ずつ
厚生年金保険料標準賞与額×18.3%会社と本人で半分ずつ
雇用保険料賞与の支給額×雇用保険料率会社と本人(会社の方が多い)
子ども・子育て拠出金標準賞与額×拠出金率会社のみ
労災保険料賞与の支給額×業種ごとの料率会社のみ
所得税(源泉所得税)(賞与−社会保険料)×算出率本人(会社が天引きして納付)
住民税賞与からは差し引かない―
[画像指示:賞与60万円の封筒から、社会保険料・所得税が差し引かれて手取りになり、会社側は社会保険料を上乗せして支払う様子を左右に並べた図解イラスト / キャプション:賞与は「本人の手取り」と「会社の総負担」の両方で考えることが大切です]

賞与の社会保険料の仕組み

結論として、賞与の社会保険料は「標準賞与額」に保険料率を掛けて計算し、健康保険と厚生年金にはそれぞれ上限があります。

標準賞与額とは

標準賞与額とは、実際の賞与の支給額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。たとえば賞与が603,500円なら、標準賞与額は603,000円になります。この金額に保険料率を掛けて保険料を計算します。

健康保険と厚生年金には上限がある

保険の種類標準賞与額の上限数え方
健康保険(介護保険を含む)年度の累計で573万円毎年4月1日〜翌年3月31日の合計
厚生年金保険1か月あたり150万円同じ月に2回以上支給したときは合計で判定
雇用保険・労災保険上限なし実際の支給額で計算

上限は高い金額なので、一般の社員の賞与で上限に届くことはほとんどありません。役員や幹部の賞与を検討するときに意識するポイントです。

「年4回以上」の支給は賞与ではなく「報酬」になる

社会保険では、年4回以上支給される手当は賞与ではなく、毎月の給与と同じ「報酬」として扱われます。この場合、年間の支給額を12で割った金額が毎月の保険料の計算(標準報酬月額)に含まれます。「ボーナスを細かく分けて出せば保険料が変わる」と考える方もいますが、回数によって扱いそのものが変わる点に注意が必要です。

税理士の実務視点 賞与の保険料は「毎月の給与からの保険料」とは別に計算されますが、会社が納めるときは、支給した月の分を毎月の保険料と合わせて翌月末までに納めます。12月に支給した賞与の保険料は、1月末の口座振替で引き落とされます。年末年始の資金繰り表には、この分を忘れずに入れておきましょう。

賞与の源泉所得税の仕組み

結論として、賞与の所得税は「前月の給与」と「扶養している家族の数」で決まる率(算出率)を、社会保険料を差し引いた後の賞与に掛けて計算します。

源泉所得税とは、会社が社員の給与や賞与を支払うときに所得税をあらかじめ差し引き、本人の代わりに税務署へ納める仕組みのことです。

計算の3ステップ

STEP1 前月の給与から社会保険料を差し引く 賞与を支給する月の前月に支払った給与から、社会保険料を差し引いた金額を出します。

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STEP2 「算出率の表」で率を探す 国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で、STEP1の金額と扶養親族の数が交わる欄の率を確認します。

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STEP3 賞与(社会保険料控除後)×算出率 賞与から社会保険料を差し引いた金額に、STEP2の率を掛けた金額が源泉所得税です。

くわしい計算方法は、国税庁のタックスアンサー「No.2523 賞与に対する源泉徴収」でも確認できます。

特別な計算になる2つのケース

  • 前月に給与の支払いがない場合(入社直後など)
  • 賞与の金額(社会保険料控除後)が、前月の給与(社会保険料控除後)の10倍を超える場合

この2つのケースでは「算出率の表」は使わず、毎月の給与に使う「月額表」を使った特別な方法で計算します。決算賞与で役員や社員に多めの賞与を出すときは、10倍を超えていないか確認しましょう。なお、令和8年分からは基礎控除などの改正に合わせて源泉徴収税額表が改正されています。必ず最新年分の表を使ってください。

賞与支給の実務の流れと注意点

結論として、賞与は「支給額の決定→計算→支給→届出・納付」の順に進み、特に「賞与支払届」と「納付期限」を守ることが重要です。

STEP1 支給額と支給日を決める 就業規則や賃金規程の支給基準(支給対象期間、在籍要件など)に沿って決めます。

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STEP2 社会保険料を計算する 標準賞与額(1,000円未満切捨て)に保険料率を掛けます。

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STEP3 源泉所得税を計算する 前月の給与と扶養親族の数から算出率を確認して計算します。

▼

STEP4 支給・明細書の交付 総支給額、差し引いた保険料・税額、手取り額を明細書で示します。

▼

STEP5 届出と納付 支給日から5日以内に「賞与支払届」を提出。源泉所得税は原則翌月10日まで(納期の特例を受けている会社は1月20日まで)、保険料は翌月末に納付。
[画像指示:12月の賞与支給日から、5日以内の賞与支払届、1月10日(または1月20日)の源泉所得税納付、1月末の保険料引き落としまでをカレンダー上に示した図解イラスト / キャプション:支給後の「届出」と「納付」までが賞与の実務です]

実務上の罠① 賞与支払届の出し忘れ

賞与支払届とは、賞与を支給したことと標準賞与額を、年金事務所や健康保険組合に知らせる書類のことです。提出期限は支給日から5日以内です。提出を忘れると、保険料が正しく計算されず、後で年金事務所の調査などで指摘されて、まとめて請求されることになります。また、届け出た標準賞与額は社員の将来の年金額にも反映されるため、出し忘れは社員にとっても不利益です。様式や提出方法は日本年金機構のホームページで確認できます。

実務上の罠② 退職する社員の賞与

月の途中で退職する社員には、注意が必要です。社会保険の資格は「退職日の翌日」に失われ、資格を失った月に支給した賞与には社会保険料がかかりません。たとえば12月10日に賞与を支給し、12月20日に退職した場合は、12月21日に資格を失うので、12月の賞与に保険料はかかりません。一方、12月31日に退職した場合は資格を失うのが1月1日なので、12月の賞与に保険料がかかります。

実務上の罠③ 「支給日在籍要件」は就業規則に書いておく

「賞与の支給日に在籍していない人には支給しない」というルールは、就業規則や賃金規程に定めておけば、一般的に有効とされています。逆に、規程があいまいなまま退職者への支給・不支給を決めると、トラブルの原因になります。賞与の支給基準は、税金や保険料の計算より前に整えておくべき「労務の土台」です。

【要注意】育児休業中の社員の賞与 育児休業中の社員の賞与保険料は、その賞与を支給した月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除されます(2022年10月以降)。 短期間の育児休業では賞与の保険料が免除されないため、「育休中だから保険料はかからない」と思い込まないよう注意しましょう。
税理士の実務視点 賞与は「出す金額」より「会社の総負担」で考えるのが経営の鉄則です。支給額の約16%前後が社会保険料などの会社負担として上乗せされるため、賞与原資を決めるときは「支給総額×1.16前後」で資金を確保しておくと安心です。 また、決算前に出す賞与は、法人税の計算で経費(損金)にするための要件もあります。税金と労務の両方から、支給の時期と方法を設計しましょう。

シミュレーション:冬の賞与60万円の手取りと会社の負担

結論から言うと、賞与60万円の場合、社員の手取りは約48.6万円、会社の総負担は約69.8万円です。

前提条件

  • 社員:45歳(介護保険の対象)、扶養している家族なし
  • 毎月の給与:28万円(標準報酬月額28万円)
  • 冬の賞与:60万円(12月支給)
  • 保険料率(本人負担):健康保険・介護保険・子ども子育て支援金で合計約5.9%、厚生年金9.15%、雇用保険0.5%と仮定
  • 会社負担:上記の健康保険・厚生年金と同率、雇用保険0.85%、子ども・子育て拠出金0.36%と仮定(労災保険は除く)
  • 保険料率は都道府県や年度によって異なります。ここでは分かりやすさを優先した概算です

社員の手取り

項目計算の考え方金額
賞与の支給額―600,000円
健康保険・介護保険等600,000円×約5.9%▲35,400円
厚生年金保険600,000円×9.15%▲54,900円
雇用保険600,000円×0.5%▲3,000円
社会保険料控除後の賞与600,000円−93,300円506,700円
源泉所得税506,700円×算出率(前月給与の社会保険料控除後は約23.6万円・扶養なしの欄。ここでは4.084%で概算)▲約20,700円
手取り額 約486,000円

会社の総負担

項目計算の考え方金額
賞与の支給額―600,000円
健康保険・介護保険等(会社負担)600,000円×約5.9%35,400円
厚生年金保険(会社負担)600,000円×9.15%54,900円
雇用保険(会社負担)600,000円×0.85%5,100円
子ども・子育て拠出金600,000円×0.36%2,160円
会社の総負担(労災保険料は別途)約697,600円
【シミュレーションから分かること】 賞与60万円のうち、社員の手元に残るのは約48.6万円(約81%)です。一方、会社は約69.8万円(支給額の約1.16倍)を負担しています。 「社員が受け取る金額」と「会社が支払う金額」の間には、約21万円の差があります。この差を社員に説明できると、賞与の価値が正しく伝わり、社員の納得感も高まります。

よくある質問(FAQ)

Q. 賞与から住民税は差し引かれますか?

A. 差し引かれません。住民税は前年の所得をもとに年額が決まり、毎月の給与から12回に分けて差し引く仕組みのため、賞与からは差し引きません。

Q. 寸志や金一封も賞与になりますか?

A. なります。名前に関係なく、労働の対価として年3回以下支給されるものは賞与として扱われ、社会保険料と源泉所得税の対象になります。少額でも賞与支払届の提出が必要です。

Q. 賞与を支給しなかった場合も、届出は必要ですか?

A. 年金事務所から賞与支払予定月に合わせて届出用紙が送られている場合、支給しなかったときは「賞与不支給報告書」の提出が必要です。賞与の支払予定月を変更したい場合も手続きがあります。

Q. 賞与の源泉所得税は、年末調整で精算されますか?

A. 精算されます。年末調整では、1年間の給与と賞与をすべて合計して年税額を計算し直します。賞与で差し引いた税額が多すぎたり少なすぎたりしても、年末調整で調整されます。

Q. 会社が赤字でも、賞与の社会保険料はかかりますか?

A. かかります。社会保険料は会社の利益に関係なく、支給した賞与の額に応じて発生します。資金繰りが厳しい年は、支給額と保険料の両方を見込んで原資を決めることが大切です。

まとめ:賞与は「総負担」と「届出」までがセット

【3行まとめ】 1.賞与60万円の会社負担は約70万円。社会保険料の会社負担分を含めて原資を確保しましょう。 2.社会保険料は標準賞与額×保険料率、所得税は前月給与をもとにした算出率で計算します。 3.支給日から5日以内の賞与支払届、翌月の納付期限、そして支給基準を定めた就業規則までがセットです。

賞与は、社員の頑張りに報いる大切な機会です。だからこそ、計算ミスや届出漏れで、社員の信頼や会社の資金を損なうことは避けたいところです。

当事務所には税理士と社会保険労務士が在籍しており、賞与の源泉所得税と社会保険料の計算はもちろん、賞与規程・就業規則の整備、決算賞与の損金算入要件の確認まで、税金と労務の両面から一体で支援しています。巡回監査で日ごろの数字を把握しているからこそ、資金繰りに合わせた賞与原資のご提案も可能です。くわしくは当事務所ホームページをご覧ください。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年の賞与の会社負担を正確に知りたい」「賞与の支給基準を就業規則に整えたい」——そんな段階でのご相談こそ、最も効果が出るタイミングです。初回のご相談はオンラインでも承っています。 ▶ ご相談・お問い合わせは当事務所ホームページから

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冬のボーナスの手取りはいくら?

2026-10-28

2026年から賞与にもかかる「子ども・子育て支援金」と社会保険料・源泉税の計算、経営者が損をしない支給ルール

「今年の冬のボーナス、いくら出せば社員は喜んでくれるだろう」

「40万円出したのに、社員から『思ったより少なかった』と言われた……」

毎年この季節になると、経営者の方からこうしたご相談が増えます。最低賃金の大幅な引上げや人手不足が続くなか、ボーナスは社員の定着を左右する大切なメッセージです。ところが、会社が出した金額と、社員の口座に振り込まれる金額には、思った以上の差があります。しかも2026年度からは、健康保険料と一緒に「子ども・子育て支援金」が賞与からも差し引かれるようになり、今年の冬は計算が一段と分かりにくくなっています。

この記事では、ボーナスから「何が・いくら」引かれるのかを、はじめての方でも一読で分かるように解説します。そのうえで、経営者が見落としやすい手続きの罠、社長自身の賞与の注意点、さらにボーナスを増やすと法人税が安くなる「賃上げ促進税制」の使い方まで、具体的な数字でシミュレーションします。

【この記事の結論】 ① 額面40万円のボーナスの手取りは約32万円(約8割)。一方、会社は社会保険料の会社負担分を含めて約46.5万円を負担しています。社員に「会社が実際に負担している金額」を伝えるだけで、ボーナスの価値は大きく変わります。 ② 2026年度から、賞与にも「子ども・子育て支援金」がかかります。金額は小さいものの、給与計算ソフトの設定や賞与支払届の確認が必要です。 ③ ボーナスは「賃上げ促進税制」の対象です。一方、社長など役員の賞与は、事前に税務署へ届け出ていないと会社の経費になりません。支給する前の設計が、手取りと税金の両方を左右します。

冬のボーナス(賞与)とは?まず押さえたい基本

結論から言うと、ボーナスは「毎月の給料とは別に、臨時や特定の時期に支払われるお給料」であり、税金と社会保険料のルールが毎月の給料とは少し違います。

賞与(ボーナス)とは、毎月決まって支払われる給料とは別に、夏や冬など特定の時期や、業績に応じて臨時に支払われる給与のことです。

家庭のやりくりにたとえると、毎月のお給料が「毎月のお小遣い」、ボーナスは「お年玉」のようなものです。ただし、お年玉と違って、ボーナスからも税金と社会保険料がしっかり差し引かれます。

社会保険では「年3回以下」が賞与

健康保険や厚生年金の世界では、名前が「賞与」「寸志」「決算手当」など何であっても、年3回以下の支給であれば賞与として扱われます。反対に、同じ性質の手当が年4回以上支払われる場合は、賞与ではなく毎月の給料(報酬)の一部として扱われます。

ボーナスに「支払う義務」はあるのか

法律上、会社にボーナスを支払う義務はありません。ただし、就業規則や賃金規程に「賞与は基本給の2か月分を支給する」のように金額や支給を約束する書き方をしていると、それは支払うべき約束になります。

税理士の実務視点 業績が厳しい年に備えて、賃金規程には「会社の業績および本人の勤務成績を考慮して支給する。業績の状況により支給しない、または支給時期を変更することがある」と書いておくのが実務上の鉄則です。また「支給日に在籍している者に支給する」という支給日在籍要件も、規程に明記しておくことで退職予定者とのトラブルを防げます。税金の計算だけでなく、規程の書き方まで一体で整えることが、経営者を守ります。

ボーナスから引かれるお金の仕組み

結論として、ボーナスから差し引かれるのは「社会保険料」と「源泉所得税」の2種類です。住民税は毎月の給料から差し引く仕組みのため、ボーナスからは原則として引かれません。

社会保険料は「標準賞与額」に料率をかけて計算

標準賞与額とは、ボーナスの支給額から1,000円未満を切り捨てた、社会保険料の計算のもとになる金額のことです。

この標準賞与額に、それぞれの保険料率をかけて保険料を計算します。会社と社員が原則として半分ずつ負担するのが基本です。

項目計算のもと上限負担
健康保険料標準賞与額年度の累計573万円会社と社員で半分ずつ
介護保険料(40〜64歳)標準賞与額健康保険と同じ会社と社員で半分ずつ
子ども・子育て支援金(2026年度〜)標準賞与額健康保険と同じ会社と社員で半分ずつ
厚生年金保険料標準賞与額1回の支給につき150万円会社と社員で半分ずつ
雇用保険料支給額そのものなし会社の負担が多め
子ども・子育て拠出金標準賞与額厚生年金と同じ会社のみ

2026年度から加わった「子ども・子育て支援金」

子ども・子育て支援金とは、児童手当の拡充など国の少子化対策の財源にあてるため、2026年度から医療保険料に上乗せして、すべての世代から集める新しいお金のことです。

会社員の場合は、健康保険料と一緒に給料と賞与から差し引かれます。国が示している2026年度の料率は労使合計で0.23%程度で、会社と社員が半分ずつ負担します。ボーナス40万円なら、社員の負担は約460円です。

金額そのものは大きくありませんが、今年の冬のボーナスは、制度開始後はじめての冬の賞与です。給与計算ソフトが最新の料率に更新されているか、健康保険料と別に表示されるかを、支給前に必ず確認してください。制度の詳しい内容はこども家庭庁のホームページで公表されています。

源泉所得税は「前月の給料」で税率が決まる

ボーナスにかかる所得税は、ボーナスの金額ではなく、「前の月の給料(社会保険料を引いた後)」と「扶養している家族の人数」で税率が決まります。この税率の一覧表を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」といいます。

計算の流れは次のとおりです。詳しくは国税庁「タックスアンサー No.2523 賞与に対する源泉徴収」でも確認できます。

STEP1 支給額(額面)を決める 例:冬のボーナス40万円
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STEP2 社会保険料を計算する 1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に、健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金・雇用保険の料率をかけます。
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STEP3 社会保険料を差し引く 支給額 − 社会保険料 = 税金の計算のもとになる金額
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STEP4 算出率を表から探す 「前月の給料(社会保険料を引いた後)」と「扶養親族の人数」を、算出率の表に当てはめます。
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STEP5 源泉所得税を計算して差し引く STEP3の金額 × 算出率 = 源泉所得税。残りが社員の手取りになります。
【要注意】算出率の表が使えないケース 前の月に給料の支払いがない場合や、ボーナスの金額(社会保険料を引いた後)が前月の給料の10倍を超える場合は、算出率の表ではなく「月額表」を使った特別な計算になります。入社直後の社員や、大きな決算賞与を出すときは注意が必要です。
[画像指示:ボーナス40万円から社会保険料・源泉所得税が順に差し引かれ、手取り約32万円になる流れを、お財布と矢印で示した図解イラスト / キャプション:手取りは額面の約8割。会社はさらに会社負担の社会保険料を上乗せして負担しています]
税理士の実務視点 「ボーナスの税金が高すぎる」と言われることがありますが、ボーナスの源泉所得税はあくまで仮払いです。12月の年末調整で1年分の税金を正しく計算し直すため、払いすぎていれば戻ってきます。12月に支給するボーナスは、その年の年末調整に必ず含めて計算してください。

経営者が見落としやすい実務上の注意点・罠

結論として、ボーナスの失敗の多くは「計算」ではなく「手続き」と「支給の設計」で起こります。特に次の5つは、毎年のように相談を受けるポイントです。

罠① 賞与支払届の提出漏れ

ボーナスを支給したら、支給日から5日以内に「賞与支払届」を年金事務所(または健康保険組合)に提出します。提出を忘れると、社会保険料が正しく計算されず、社員の将来の年金額にも反映されません。また、支給予定月として登録している月にボーナスを支給しなかった場合は「賞与不支給報告書」の提出が必要です。手続きの様式は日本年金機構のホームページで確認できます。

罠② 退職予定者・育児休業中の社員の保険料

社会保険料は「月単位」で考えるため、退職日によって結果が変わります。たとえば12月10日にボーナスを支給し、12月31日に退職した社員は、資格を失う日が1月1日となるため、12月分としてボーナスにも保険料がかかります。一方、12月30日に退職した社員は12月の資格がなくなるため、そのボーナスには社会保険料がかかりません(雇用保険料と源泉所得税はかかります)。

また、育児休業中の社員のボーナスは、その月の末日を含んで連続1か月を超える育児休業を取得している場合に限り、社会保険料が免除されます。短期間の育児休業では免除にならない点に注意してください。

罠③ 社長・役員のボーナスは届出がないと経費にならない

事前確定届出給与とは、役員に支給する賞与の金額と支給日を、あらかじめ税務署に届け出ておくことで、会社の経費(損金)として認められる仕組みのことです。

社長や取締役の賞与は、社員のボーナスとはルールがまったく違います。届出をしないで支給した役員賞与や、届け出た金額・日付どおりに支給しなかった役員賞与は、原則として全額が会社の経費になりません。それでいて、受け取った社長個人には所得税と社会保険料がかかります。「会社の利益が出たから、社長にも冬のボーナスを」と思いつきで支給するのは、最も避けたい失敗です。詳しくは国税庁「タックスアンサー No.5211 役員に対する給与」をご覧ください。

項目社員のボーナス役員(社長など)のボーナス
会社の経費になるかなる事前確定届出給与として届け出た場合のみなる
事前の届出不要必要(株主総会等の決議から1か月以内など期限あり)
金額の変更自由届出どおりでないと原則として経費にならない
社会保険料・源泉所得税かかるかかる
賃上げ促進税制の対象対象対象外

罠④ 商品券や現物支給も「給与」になる

現金の代わりに商品券やギフトカードを配る場合も、税金のうえでは給与として扱われ、源泉所得税がかかります。「現金ではないから非課税」という誤解は、税務調査で指摘されやすいポイントです。社会保険でも、通貨以外で支給したものは原則として報酬・賞与に含まれます。

罠⑤ 「月給を下げてボーナスを増やす」社会保険料対策の落とし穴

厚生年金の保険料は1回の賞与につき150万円が上限のため、「月給を下げて、その分を高額な賞与で払えば保険料が安くなる」という話を耳にすることがあります。しかし、税理士と社労士の実務視点から見た結論として、安易な導入はおすすめできません。

  • 将来の年金が減る:保険料が減る分、社員自身の将来の厚生年金も少なくなります。
  • もしものときの給付が減る:病気やけがで休んだときの傷病手当金や出産手当金は、月給をもとにした標準報酬月額で計算されるため、月給を下げるとこれらの給付も減ります。
  • 年4回以上の支給は月給扱い:分割して支給回数を増やすと、賞与ではなく毎月の報酬として扱われます。
  • 不利益変更のリスク:社員の同意なく月給を下げることは、労働条件の不利益変更として労務トラブルの原因になります。

メリット:ボーナスを増やすと法人税が安くなる「賃上げ促進税制」

結論として、社員へのボーナスを前の年より増やすと、その増えた金額の一定割合を法人税から直接差し引ける可能性があります。冬のボーナスの金額を決める前に、必ず確認したい制度です。

賃上げ促進税制とは、社員に支払う給料やボーナスの総額を前の年より一定割合以上増やした会社が、増えた金額の一定割合を法人税(個人事業主は所得税)から差し引ける制度のことです。

ポイントは、ここでいう「給料」には毎月の給料だけでなくボーナスも含まれることです。ただし、役員や役員の親族などに支払う給与は対象外です。中小企業向けの主な内容は次のとおりです。

要件(中小企業者等)税額控除率
社員の給与等の総額が前年度より1.5%以上増加増加額の15%
社員の給与等の総額が前年度より2.5%以上増加増加額の30%(15%を上乗せ)
教育訓練費が前年度より5%以上増加(給与等総額の0.05%以上)10%を上乗せ
くるみん・えるぼし(二段階目以上)の認定5%を上乗せ
控除の上限法人税額の20%(控除しきれない分は5年間繰越し可能)

この制度は青色申告をしている会社が対象で、2027年3月31日までに開始する事業年度に適用されます。制度の詳細は中小企業庁のホームページで案内されています。なお、決算月にまとめて支給する「決算賞与」を経費にするには、支給額の通知や支払時期などに別の要件があります。

シミュレーション:冬のボーナス40万円の手取りと、会社の本当の負担

結論から言うと、額面40万円のボーナスの手取りは約32.4万円、会社の負担は約46.5万円です。さらにボーナスの総額を増やした場合、賃上げ促進税制と法人税の軽減を合わせると、会社の実質負担は支給額の約半分になります。

前提条件

  • 社員Aさん:45歳、月給30万円、扶養している家族1人、協会けんぽに加入
  • 冬のボーナス:40万円(12月支給)
  • 社員負担の料率(仮定):健康保険5.0%、介護保険0.8%、子ども・子育て支援金0.115%、厚生年金9.15%、雇用保険0.5%
  • 源泉所得税の算出率:前月の社会保険料控除後の給料約25.3万円・扶養1人として4.084%と仮定
  • 数値は分かりやすさを優先した概算です。実際の料率は都道府県・加入する健康保険・年度によって異なります

ケース① 社員の手取りはいくら?

項目計算金額
ボーナス(額面)—400,000円
健康保険料400,000円 × 5.0%▲20,000円
介護保険料400,000円 × 0.8%▲3,200円
子ども・子育て支援金400,000円 × 0.115%▲460円
厚生年金保険料400,000円 × 9.15%▲36,600円
雇用保険料400,000円 × 0.5%▲2,000円
社会保険料を引いた後—337,740円
源泉所得税337,740円 × 4.084%▲13,793円
手取り額 323,947円(額面の約81%)

ケース② 会社が本当に負担している金額

項目会社負担(仮定の料率)金額
ボーナス(額面)—400,000円
健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金5.915%23,660円
厚生年金保険料9.15%36,600円
雇用保険料(会社負担)0.85%3,400円
子ども・子育て拠出金0.36%1,440円
会社の総負担 465,100円(額面の約1.16倍)

つまり、会社が46.5万円を負担しても、社員の手取りは32.4万円です。その差は約14万円にもなります。※労災保険料は業種によって異なるため含めていません。

ケース③ ボーナスの総額を増やすと、法人税はいくら安くなる?

社員への給与等の総額が前年度3,000万円の会社が、ほかの給与は前年度と同額のまま、冬のボーナスの総額だけを増やした場合で比べます(法人税等の実効税率は約30%、法人税額は控除の上限を十分に上回ると仮定)。

項目A:45万円増(+1.5%)B:75万円増(+2.5%)
ボーナスの増加額45.0万円75.0万円
会社負担の社会保険料(約16.3%)7.3万円12.2万円
会社の支出の増加52.3万円87.2万円
経費が増えることによる法人税等の軽減(30%)▲15.7万円▲26.2万円
賃上げ促進税制の税額控除▲6.75万円(15%)▲22.5万円(30%)
会社の実質負担約29.9万円約38.5万円
【シミュレーションから分かること】 Bのケースでは、社員へのボーナスを75万円増やしても、会社の実質負担は約38.5万円にとどまります。AからBへ増額幅を30万円広げても、実質負担の差は約8.6万円です。 「どうせ出すなら、要件を満たす金額まで上乗せする」という判断が、社員の満足と会社の税負担の両方にとって合理的なケースは少なくありません。ただし、要件は1年間の給与等の総額で判定するため、冬のボーナスを決める前に、春からの昇給や夏の賞与を含めた年間の見込みを試算しておくことが不可欠です。

よくある質問(FAQ)

Q. ボーナスは必ず支給しなければいけませんか?

A. 法律上の支払義務はありません。ただし、就業規則や賃金規程で支給額や支給を約束している場合は、支払う義務が生じます。業績に応じて支給しないことがある旨を規程に明記しておくことが大切です。

Q. ボーナスの税金が、月給に比べて高く感じるのはなぜですか?

A. ボーナスの源泉所得税は、前月の給料と扶養人数で決まる算出率で仮に計算しているためです。12月の年末調整で1年分の税金を計算し直すため、払いすぎた分は精算されます。

Q. 子ども・子育て支援金は、ボーナスからいくら引かれますか?

A. 2026年度の料率は労使合計で0.23%程度とされ、社員はその半分を負担します。ボーナス40万円なら社員負担は約460円です。実際の料率は加入している健康保険によって異なるため、保険者の通知を確認してください。

Q. パートやアルバイトに寸志を出す場合も、社会保険料はかかりますか?

A. 社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している人であれば、寸志も賞与として保険料がかかり、賞与支払届の提出も必要です。加入していない人には健康保険・厚生年金の保険料はかかりませんが、雇用保険に加入していれば雇用保険料がかかり、源泉所得税は加入の有無にかかわらず計算が必要です。

Q. 社長の自分にも冬のボーナスを出せますか?

A. 出すことはできますが、事前に税務署へ「事前確定届出給与」として金額と支給日を届け出ていないと、原則として会社の経費になりません。届け出た金額と日付どおりに支給する必要もあるため、決算対策として使う場合は期首の段階から計画しておくことが重要です。

まとめ:ボーナスは「出す前の設計」で価値が決まる

【3行まとめ】 1.額面40万円のボーナスの手取りは約32万円、会社の負担は約46.5万円。2026年度からは子ども・子育て支援金も賞与から引かれます。 2.賞与支払届の提出、退職日・育児休業の扱い、社長の賞与の事前届出など、失敗の多くは「手続き」で起こります。 3.ボーナスは賃上げ促進税制の対象。支給額を決める前に、年間の給与総額を試算すると実質負担を大きく下げられます。

ボーナスは、社員への感謝と期待を伝える大切な手段です。だからこそ、社会保険料や税金の仕組みを理解し、社員に「会社はこれだけの金額を負担している」と伝えられるかどうかで、同じ金額でも受け止め方が大きく変わります。

当事務所では、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携しているため、賞与の税金・社会保険料の計算だけでなく、賃金規程の見直し、賃上げ促進税制の試算、役員賞与の事前確定届出給与の設計まで、税務と労務の両面から一体でご支援できます。国税OBの税理士も在籍しており、税務調査で指摘されやすいポイントを踏まえたアドバイスが可能です。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「冬のボーナスをいくらにすれば税額控除が使えるか知りたい」「社長の賞与を経費にしたい」——金額を決める前のご相談こそ、最も効果が出るタイミングです。ご相談は当事務所ホームページからも承っています。オンラインでのご相談にも対応しています。

〒399-0745

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税理士法人 大沼田経営会計事務所

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冬のボーナスの手取りはいくら?

2026-10-26

賞与にかかる社会保険料と税金の計算方法、会社の本当の負担額を経営者向けにやさしく解説

「ボーナスを50万円出すつもりだけど、社員の手取りはいくらになるのだろう」「会社として実際にはいくら用意すればいいのか」——冬のボーナスを前に、こうした疑問を持つ経営者の方は少なくありません。

社員の側から「額面のわりに手取りが少ない」と言われて、うまく説明できなかった経験がある方もいるのではないでしょうか。ボーナス(賞与)には、毎月の給料と同じように社会保険料と所得税がかかります。さらに2026年4月からは「子ども・子育て支援金」の負担も始まり、計算の中身が一つ増えました。

この記事では、賞与にかかるお金の仕組みを、はじめての方でも一読で分かるように整理します。社員の手取り額と会社の負担額を実際の数字で計算し、さらに社長自身の賞与(役員賞与)で失敗しないためのルールまで解説します。

【この記事の結論】 ① 賞与50万円の手取りは、目安で約39〜40万円です。社会保険料(約15〜16%)と所得税が差し引かれます。住民税は賞与からは引かれません。 ② 会社の負担は「支給額+約16〜17%」です。50万円の賞与なら、社会保険料の会社負担分などを含めて約58万円を準備する必要があります。 ③ 社長の賞与は「事前に届け出た金額どおり」でなければ経費になりません。社員の賞与とはルールがまったく違うため、支給前の確認が欠かせません。

賞与(ボーナス)とは?税金と社会保険での扱いの基本

結論から言うと、賞与は「毎月の給料とは別枠で計算されるお給料」です。別枠だからこそ、計算の方法も独自のルールになっています。

賞与とは、毎月の決まった給料とは別に、会社の業績や本人の働きぶりに応じて臨時に支払うお給料のことです。

名前が「ボーナス」「期末手当」「寸志」「決算賞与」のどれであっても、社会保険では年3回以下の支給であれば賞与として扱われます。家庭にたとえると、毎月のお小遣いとは別に、夏休みや年末に渡す「特別なお小遣い」のようなものです。特別なお小遣いにも、毎月のお小遣いと同じように「家に入れるお金(=社会保険料や税金)」がかかる、とイメージしてください。

賞与から差し引かれるもの・差し引かれないもの

項目賞与から引かれるか計算のもとになる金額
健康保険料引かれる標準賞与額(賞与の1,000円未満を切り捨てた額)
介護保険料(40〜64歳)引かれる標準賞与額
子ども・子育て支援金(2026年4月分〜)引かれる標準賞与額
厚生年金保険料引かれる標準賞与額(1回150万円が上限)
雇用保険料引かれる賞与の支給額
所得税(源泉徴収)引かれる社会保険料を差し引いた後の賞与額
住民税引かれない毎月の給料から1年分を12回に分けて天引き

※健康保険の標準賞与額は、4月1日〜翌年3月31日の年度合計で573万円が上限です。

標準賞与額とは、実際に支払った賞与から1,000円未満を切り捨てた金額で、社会保険料を計算するときの「ものさし」になる金額のことです。

2026年4月から始まった「子ども・子育て支援金」

子ども・子育て支援金とは、児童手当の拡充などの少子化対策の財源として、健康保険料と一緒に集められる新しい負担金のことです。

2026年4月分の保険料から徴収が始まり、毎月の給料だけでなく賞与にもかかります。健康保険料と同様に会社と社員で半分ずつ負担します。金額は大きくありませんが、今年の冬のボーナスは「この支援金が加わって初めての冬の賞与」になります。給与計算ソフトの設定が更新されているか、念のため確認しておきましょう。

賞与の手取りが決まるまでの流れ

結論として、手取り額は「①社会保険料を引く→②残りに税率を掛けて所得税を引く」という2段階で決まります。順番が大切です。

STEP1 賞与の支給額を決める 就業規則や賃金規程の定めに沿って、支給額と支給日を決めます。

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STEP2 標準賞与額を計算する 支給額の1,000円未満を切り捨てます。厚生年金は1回150万円、健康保険は年度合計573万円が上限です。

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STEP3 社会保険料・雇用保険料を差し引く 健康保険・介護保険・子ども子育て支援金・厚生年金は標準賞与額に保険料率を掛け、会社と社員で折半します。

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STEP4 所得税を差し引く 社会保険料を引いた後の金額に、「前月の給料」と「扶養家族の人数」で決まる税率(賞与の算出率)を掛けます。

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STEP5 支給と届出 支給日から5日以内に「賞与支払届」を年金事務所などへ提出し、源泉所得税は翌月10日までに納めます。
[画像指示:賞与50万円が「社会保険料」「所得税」「手取り」に分かれていく様子を、積み木のように色分けして示した図解イラスト / キャプション:賞与からは社会保険料が先に引かれ、残りに所得税がかかります]

所得税は「前月の給料」で税率が決まる

賞与の所得税は、賞与の金額そのものではなく、前月の給料(社会保険料を引いた後)と扶養家族の人数で税率が決まるのが特徴です。前月の給料が高い人ほど、賞与にかかる税率も高くなります。

ただし、前月に給料の支払いがない場合や、賞与の額が前月の給料の10倍を超える場合は、別の計算方法(月額表を使う方法)になります。決算賞与を急に大きく出すときなどは注意が必要です。

税理士の実務視点 賞与で引かれる所得税は、あくまで「仮の前払い」です。1年間の本当の税額は年末調整で精算されるため、賞与で多めに引かれても、少なめに引かれても、最終的な年間の所得税額は変わりません。社員から「ボーナスの税金が高すぎる」と質問されたときは、この点を説明すると納得してもらいやすくなります。

賞与支給で経営者が押さえるべき実務上の注意点と罠

結論として、賞与のトラブルは「回数」「タイミング」「規程」の3点で起こります。いずれも支給前に確認すれば防げるものです。

罠① 年4回以上支払うと「賞与」ではなく「給料」扱いになる

社会保険では、賞与が年4回以上支払われると、その賞与は毎月の給料(報酬)の一部として扱われます。その結果、毎月の保険料のもとになる「標準報酬月額」が上がり、保険料の計算が変わります。「寸志」や「臨時手当」を何度も出している会社は、回数を数え直してみてください。

罠② 退職月や育児休業中の賞与は扱いが変わる

社会保険の資格がなくなった月(退職日の翌日が属する月)に支払う賞与には、社会保険料はかかりません。一方、月末に退職した人は翌月1日に資格がなくなるため、退職月に支払う賞与には保険料がかかります。また、育児休業中の社員の賞与は、その月の末日を含めて連続1か月を超える育児休業を取っている場合に限り、保険料が免除されます。

罠③ 就業規則・賃金規程との食い違い

「支給日に在籍している社員にだけ支給する」といったルール(支給日在籍要件)は、就業規則などに書いておかなければ、退職者から支払いを求められたときに争いになることがあります。業績が悪い年に支給を見送る可能性があるなら、「業績により支給しないことがある」と規程に明記しておくことも重要です。

【要注意】賞与支払届の出し忘れ 賞与を支払ったら、支給日から5日以内に「賞与支払届」を提出する必要があります。出し忘れると保険料が正しく計算されず、後からまとめて請求されるだけでなく、社員の将来の年金額にも賞与分が反映されません。給与計算を外部に任せている場合も、提出したかどうかを必ず確認しましょう。

社長(役員)の賞与は社員とルールがまったく違う

結論として、社長などの役員に支払う賞与は、税務署に事前に届け出た金額を、届け出た日に支払った場合に限り、会社の経費(損金)になります。

事前確定届出給与とは、役員に支払う賞与の金額と支給日をあらかじめ税務署に届け出ておき、そのとおりに支払うことで会社の経費として認められる仕組みのことです。

社員の賞与は業績を見てから金額を決めても経費になりますが、役員の賞与は「業績が良かったから上乗せしよう」とすると経費になりません。これは、役員が自分で自分の給料を決められる立場にあるため、利益の調整に使われないようにするための決まりです。

比較項目社員の賞与役員の賞与(事前確定届出給与)
会社の経費になるか原則なる届出どおりに支払った場合だけなる
金額を決める時期支給の直前でもよい事前に決めて税務署へ届出
届出の期限不要原則、株主総会などで決めた日から1か月以内(会計期間開始から4か月以内)
金額を変えたら問題なし原則として支給額の全額が経費にならない
社会保険料かかるかかる(社員と同じ計算)
税理士の実務視点 届け出た金額より「少なく」払った場合でも、原則として全額が経費にならない点は意外と知られていません。業績が読みにくい会社は、無理に高い金額を届け出ず、資金繰りに余裕を持たせた金額にしておくのが実務上の鉄則です。また、届出書を出したかどうか、提出控えを社内で保管しているかも確認しておきましょう。

シミュレーション:賞与の手取り額と会社の負担額

結論から言うと、賞与50万円を支給すると、社員の手取りは約39.6万円、会社が実際に準備するお金は約58.3万円になります。具体的に計算してみましょう。

ケース① 社員1人に冬の賞与50万円を支給する場合

前提条件

  • 社員は45歳(介護保険料の対象)、扶養家族なし、協会けんぽに加入
  • 前月の給料(社会保険料を引いた後)は約31万円
  • 保険料率は目安として、健康保険10.0%、介護保険1.6%、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%(いずれも労使合計)、雇用保険は本人0.5%・会社0.85%、労災保険0.3%と仮定
  • 所得税の算出率は6.126%と仮定(実際の率は前月の給料と扶養人数で変わります)
項目社員の負担会社の負担
健康保険料25,000円25,000円
介護保険料4,000円4,000円
子ども・子育て支援金575円575円
厚生年金保険料45,750円45,750円
雇用保険料2,500円4,250円
子ども・子育て拠出金(会社のみ)—1,800円
労災保険料(会社のみ)—1,500円
所得税((50万円−77,825円)×6.126%)25,862円—
合計103,687円82,875円
【ケース①の結果】 社員の手取り:500,000円−103,687円=約39.6万円(支給額の約79%) 会社の総負担:500,000円+82,875円=約58.3万円(支給額の約117%) 賞与の予算を立てるときは、「支給総額×1.17」を目安にすると、資金繰りの見込み違いを防げます。

ケース② 社長の年収1,200万円を「月給」と「賞与」でどう分けるか

次に、社長の年間報酬1,200万円の受け取り方を変えた場合の社会保険料(会社負担+本人負担の合計)を比べます。介護保険の対象年齢で、保険料率はケース①と同じ前提です。

項目A:月100万円×12か月B:月40万円×12か月+事前確定届出給与720万円(年1回)
健康保険・介護・支援金約139.1万円(標準報酬月額98万円)月給分 約58.2万円+賞与分 約67.8万円(年度上限573万円で計算)
厚生年金約142.7万円(上限の65万円で計算)月給分 約90.0万円+賞与分 約27.5万円(1回上限150万円で計算)
社会保険料の合計(労使合計)約281.9万円約243.5万円
差額—年約38万円少ない

※子ども・子育て拠出金は除いています。年収の合計は同じため、年間の所得税・住民税はほぼ変わりません。

【シミュレーションから分かること】 賞与には上限があるため、受け取り方によって社会保険料が変わります。ただし、Bの方法にはデメリットもあります。 ① 将来の年金が減る:厚生年金のもとになる金額が小さくなるため、老後の年金額も少なくなります。 ② 病気のときの保障が減る:傷病手当金は毎月の標準報酬月額で計算されるため、休業時の給付が少なくなります。 ③ 届出どおりに払えないと全額が経費にならない:業績が悪化した年に支給額を減らすと、法人税の負担が一気に増えます。 ④ 月給の変更は時期が決まっている:役員の月給は原則として事業年度開始から3か月以内にしか変更できません。 保険料が安くなる面だけを見て決めるのではなく、年金・保障・資金繰りまで含めて判断することが、税理士と社会保険労務士の実務視点から見た結論です。

よくある質問(FAQ)

Q. 賞与から住民税は引かれますか?

A. 引かれません。住民税は前年の所得をもとに1年分の税額が決まり、毎月の給料から12回に分けて天引きされます。賞与の金額が多くても、その年の賞与から住民税が引かれることはありません(翌年の住民税額に反映されます)。

Q. ボーナスの所得税が高すぎる気がします。払いすぎではないですか?

A. 賞与の所得税は「前月の給料」で税率が決まる仮の前払いです。1年間の正しい税額は年末調整で精算されるため、払いすぎていれば年末調整で戻ってきます。

Q. 「寸志」程度の少額でも社会保険の届出は必要ですか?

A. 必要です。名前や金額に関係なく、賞与として支払ったものは賞与支払届の対象になり、社会保険料もかかります。支給日から5日以内に提出してください。

Q. パート社員に賞与を出す場合も同じ計算ですか?

A. 社会保険に加入しているパート社員であれば同じ計算です。社会保険に加入していない場合は、雇用保険料(加入者のみ)と所得税だけが差し引かれます。

Q. 社長に決算賞与を出して利益を減らすことはできますか?

A. できません。役員の賞与は、事前に税務署へ届け出た金額を届け出た日に支払った場合だけ経費になります。決算直前に業績を見て決めた役員賞与は経費にならず、社長個人には所得税がかかるため、二重の負担になります。

まとめ:賞与は「支給前の30分の確認」で損を防げる

【3行まとめ】 1.賞与50万円の手取りは約39〜40万円、会社の負担は約58万円。予算は「支給総額×1.17」が目安です。 2.年4回以上の支給、退職月・育休中の賞与、賞与支払届の期限(5日以内)に注意。2026年4月からは子ども・子育て支援金も加わりました。 3.社長の賞与は事前確定届出給与のルールどおりでなければ経費にならず、受け取り方次第で社会保険料も将来の年金も変わります。

賞与の計算は、税金と社会保険という2つの制度にまたがっています。特に社長の報酬設計は、法人税・所得税・社会保険料・将来の年金のすべてに影響するため、どれか1つの視点だけで決めると思わぬ損につながります。

当事務所では、税理士と社会保険労務士が同じ事務所内で連携し、賞与の支給計画から賞与支払届、役員報酬の設計までを一体でサポートしています。国税OBの税理士も在籍しているため、事前確定届出給与のように税務調査で確認されやすい論点も、調査官の視点を踏まえて点検できます。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年の冬の賞与、いくら出せば資金繰りは大丈夫か」「社長の報酬の受け取り方を見直したい」——そんなご相談を、毎月の巡回訪問やオンライン面談でお受けしています。来期の役員報酬を決める前のご相談が、最も効果の大きいタイミングです。

〒399-0745

長野県塩尻市大門桔梗町6-17

税理士法人 大沼田経営会計事務所

代表社員 大沼田正樹

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忘年会・社員旅行・お歳暮はどこまで経費にできる?

2026-10-24

福利厚生費と交際費の線引きを税理士が具体例でスッキリ解説|税務調査で否認されない記録のコツ

「今年の忘年会、会社のお金で払っても大丈夫?」「二次会の分も経費にしていいの?」「社員旅行は全額経費になると聞いたけれど本当?」

年末が近づくと、忘年会や社員旅行、取引先へのお歳暮など、会社としてお金を使う場面が一気に増えます。せっかく社員をねぎらうために使ったお金が、あとから税務調査で「これは経費になりません」「社員への給与です」と指摘されてしまっては、元も子もありません。

この記事では、年末に増える支出を「福利厚生費」「交際費」「給与」のどれとして扱うべきかを、身近な例を使って一読で分かるように解説します。さらに、忘年会への参加が「仕事」になるのかという労務の視点や、社員旅行で思わぬ課税が生じるケースのシミュレーションまで紹介します。

【この記事の結論】 ① 社員全員が対象の忘年会は「福利厚生費」として経費にできます。ただし、一部の人だけの二次会や、社長と役員だけの飲み会は「交際費」になります。 ② 取引先との飲食やお歳暮は「交際費」です。中小企業は年800万円まで経費にでき、1人1万円以下の飲食は記録を残せば交際費から外せます。 ③ 最大の落とし穴は「社員への給与扱い」です。社員旅行の要件を満たさない場合や、商品券を配った場合は、社員の給与として源泉所得税がかかります。

まず押さえたい3つの区分:福利厚生費・交際費・給与

結論から言うと、年末の支出は「誰のために」「誰が対象で」「何のために」使ったかで、福利厚生費・交際費・給与の3つに分かれます。

福利厚生費とは、社員全員が平等に利用できるように、会社が社員の働きやすさや健康、親睦のために支出する費用のことです。

交際費とは、取引先など事業に関係のある人に対して、接待や贈り物、お祝いなどのために支出する費用のことです。一部の社員や役員だけを対象にした飲食も、交際費に含まれます。

給与(現物給与)とは、お金そのものではなくても、会社から社員個人に経済的な利益が与えられた場合に、給与として扱われるもののことです。

クラスの打ち上げにたとえると、クラス全員を誘って先生が出すジュース代は「福利厚生費」、他のクラスの先生をもてなすお茶代は「交際費」、仲の良い数人にだけ配るお小遣いは「給与」のようなイメージです。

区分主な例会社の経費(損金)になるか社員への課税
福利厚生費全員参加の忘年会、要件を満たす社員旅行なるなし
交際費取引先の接待、お歳暮、役員だけの飲み会、一部の社員だけの二次会中小企業は年800万円までなる(または接待飲食費の50%)なし
給与社員に配る商品券、要件を満たさない社員旅行、特定の人だけへの贈り物なる(役員の場合は原則ならない)あり(源泉所得税)
[画像指示:支出を「誰のため・誰が対象・何のため」の3つの質問で福利厚生費・交際費・給与に振り分けるフローチャート風イラスト / キャプション:同じ飲食代でも、対象者と目的で勘定科目が変わります]

忘年会の費用はどこまで経費になる?

結論として、社員全員を対象とし、常識的な金額で行う一次会は福利厚生費になります。一方で、参加者が限られる二次会や、高級すぎる会場での開催は交際費や給与と判断されやすくなります。

福利厚生費になるための3つの条件

  1. 全員が対象であること:全社員(または全部署の社員)に参加の機会があること。結果的に欠席者がいても問題ありません。
  2. 常識的な金額であること:法律で決まった金額はありませんが、一般的な忘年会の水準を大きく超えないこと。実務上は1人あたり数千円〜1万円程度が一つの目安です。
  3. 会社の行事として行うこと:会社の行事として案内し、会社が費用を負担すること。

二次会・役員だけの会・家族の参加はどうなる?

ケース扱い理由
全社員を対象にした一次会福利厚生費全員に参加の機会があるため
希望者だけで行く二次会交際費参加者が限られるため
社長と役員だけの忘年会交際費役員だけを対象にしているため
取引先を招いた忘年会交際費取引先をもてなす目的が含まれるため
社長が家族だけで行った食事経費にならない(役員賞与と判断されるおそれ)事業との関係がないため
1人あたり数万円の高級店での開催交際費または給与と判断されやすい常識的な金額を超えるため

■ 個人事業主の場合

個人事業主には、法人のような交際費の上限はありません。事業に必要な支出であれば必要経費になります。ただし、従業員がいない個人事業主が一人で行う「忘年会」や、家族だけの食事は、事業との関係が説明できないため必要経費にはなりません。

税理士の実務視点 税務調査で確認されるのは、金額よりも「誰が参加したか」です。忘年会の案内文(全社員宛のメールや掲示)と参加者名簿、領収書をセットで保管しておけば、福利厚生費であることを明確に説明できます。逆に、領収書しか残っていないと、役員だけの飲み会ではないかと疑われる原因になります。

社員旅行は「4泊5日」と「参加率50%」が分かれ目

結論として、社員旅行は旅行期間が4泊5日以内(海外旅行は現地での滞在日数)で、参加者が全社員の50%以上であれば、原則として社員への給与にはならず、福利厚生費として経費にできます。

このほか、会社が負担する金額が常識的な範囲であることも必要です。国税庁は、会社負担が1人あたり10万円程度の旅行を、給与として課税しなくてよい例として示しています。

社員旅行の判定ステップ

STEP1 旅行期間は4泊5日以内か 海外旅行の場合は、機内泊を除いた現地での滞在日数で判定します。超える場合は給与として課税されます。
▼
STEP2 参加者は全社員の50%以上か 工場や支店ごとに行う場合は、その職場の人数の50%以上で判定します。満たさない場合は、参加者への給与として課税されます。
▼
STEP3 会社の負担額は常識的な範囲か 1人あたり10万円程度が目安とされています。豪華すぎる旅行は給与と判断されることがあります。
▼
STEP4 不参加者に現金を渡していないか 自分の都合で参加しなかった人に現金を支給すると、参加者を含めた全員に、その現金と同じ額の給与があったものとされます。
【要注意】役員だけの旅行や、取引先との旅行は福利厚生費になりません 役員だけが参加する旅行は、社員全員を対象としていないため福利厚生費にはなりません。役員への給与(役員賞与)と判断されると、会社の経費にならず、役員個人にも所得税がかかります。また、取引先を招待する旅行は交際費です。

お歳暮・取引先の接待・社員への商品券の扱い

結論として、取引先へのお歳暮や接待は交際費、社員に配る商品券は給与です。特に商品券は「現金と同じもの」として扱われるため、少額でも課税されます。

取引先へのお歳暮と接待飲食

取引先へのお歳暮やお中元、接待の飲食代は交際費です。中小企業(資本金1億円以下の法人など)は、年800万円までの交際費を全額経費にできるか、接待飲食費の50%を経費にできるか、有利な方を選べます。多くの中小企業では、800万円の範囲に収まるため、交際費だから税金が増えるということはほとんどありません。

また、取引先との飲食で1人あたり1万円以下(2024年4月以降の支出分)のものは、交際費から外して「会議費」などとして扱えます。そのためには、飲食の日付、参加者の氏名と関係、人数、金額、店名を記録しておく必要があります。

社員への年末の贈り物

渡すもの扱いポイント
全社員に同じ品物(お菓子・タオルなど)福利厚生費少額で、全員に同じものを渡すこと
商品券・ギフトカード・現金給与(源泉所得税の対象)金額にかかわらず現金と同じ扱い
特定の社員だけに高価な品物給与一部の人だけへの経済的利益になるため

消費税の扱いにも注意

福利厚生費や交際費として支払った飲食代やお歳暮の品物代は、消費税の計算で差し引ける(仕入税額控除)のが原則です。そのためには、お店や業者からインボイス(適格請求書)を受け取って保存しておく必要があります。一方、商品券やギフトカードの購入は消費税がかからない取引なので、差し引くことはできません。

見落としがちな労務の視点:忘年会は「仕事」になる?

結論として、参加が実質的に強制されている忘年会は、労働時間と判断されることがあります。税金の区分だけでなく、労務の面からも運営方法を見直しておくことが大切です。

労働時間とは、会社の指揮命令のもとで働いている時間のことです。忘年会でも、上司から参加を命じられている、欠席すると評価が下がる、幹事として準備や進行を任されているといった場合は、その時間が労働時間とみなされ、賃金の支払いが必要になる可能性があります。

  • 参加は任意であることを明確にする:案内文に「自由参加」と明記し、欠席による不利益がないようにします。
  • 幹事の負担に配慮する:業務時間内に準備をさせる、幹事の負担が大きい場合は業務として扱うなどの配慮が必要です。
  • 行き帰りの事故:業務として参加を命じた会であれば、行き帰りの事故が労災と認められる可能性があります。任意参加の会では、原則として労災の対象になりません。
  • お酒の強要やハラスメント:飲酒の強要や不適切な言動があった場合、会社が責任を問われることがあります。
税理士の実務視点 「全員参加だから福利厚生費になる」という税金の考え方と、「強制参加なら労働時間になる」という労務の考え方は、一見ぶつかるように見えます。実務上の正解は、「全員に参加の機会を設け、参加は自由とする」という運営です。こうしておけば、税金の面では福利厚生費の要件を満たし、労務の面でも労働時間の問題を避けられます。

シミュレーション:年末イベントの経費処理と、社員旅行で失敗した場合の負担

結論から言うと、正しく区分すれば年末の支出はほぼ全額が経費になります。一方で、社員旅行で不参加者に現金を渡してしまうと、参加者全員にまで課税が広がり、会社には源泉所得税の徴収漏れという負担が生じます。

前提条件

  • 社員20人、資本金1,000万円の製造業(3月決算)。年間の交際費は800万円以内
  • 忘年会:全社員対象、1人8,000円 × 20人
  • 二次会:役員2人と希望者の社員3人、合計6万円
  • 取引先へのお歳暮:30社 × 5,000円
  • 社員旅行:1泊2日、会社負担1人6万円。参加者16人(80%)、自己都合の不参加者4人に「代わりに」3万円ずつ支給
  • 数値は分かりやすさを優先した概算です

年末イベントの区分と経費処理

支出金額区分経費になるか
忘年会(一次会)16万円福利厚生費なる
二次会6万円交際費なる(800万円の範囲内)
お歳暮15万円交際費なる(800万円の範囲内)
社員旅行(16人分)96万円福利厚生費(要件を満たす場合)なる
不参加者4人への現金12万円給与なる(ただし源泉徴収が必要)
合計145万円 すべて経費になる

不参加者への現金支給で生じる問題

自己都合で不参加だった4人に3万円ずつ渡したことで、参加者16人を含む全員20人に、3万円ずつの給与があったとされます。

項目計算の考え方金額
給与とされる額3万円 × 20人60万円
本来天引きすべきだった源泉所得税賞与の算出率を平均約6%と仮定約3.6万円
不納付加算税源泉所得税の10%(調査で指摘された場合)約0.4万円
会社の追加負担(参加者から回収できない場合) 約4万円+延滞税

金額だけを見ると大きくないように見えますが、問題は給与計算と年末調整のやり直し、社員一人ひとりへの説明という手間です。社員旅行の金額が大きい会社や、毎年同じ運用を続けている会社では、税務調査で数年分まとめて指摘されることになります。

【シミュレーションから分かること】 忘年会・社員旅行・お歳暮は、区分さえ正しければ、ほとんどの中小企業で全額を経費にできます。 一方で、「不参加者がかわいそうだから」という善意の現金支給が、全員への課税という思わぬ結果を招きます。不参加者には現金を渡さない、どうしても配慮したい場合は、業務の都合で参加できなかった人に限るなど、ルールを事前に決めておくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q. 忘年会の費用は1人いくらまでなら福利厚生費になりますか?

A. 法律で決まった金額の上限はありません。全社員を対象とし、一般的な忘年会の水準を大きく超えない金額であれば福利厚生費になります。実務上は1人あたり数千円〜1万円程度が一つの目安です。

Q. 欠席した社員がいても、福利厚生費になりますか?

A. はい。全社員に参加の機会があれば、結果的に欠席者がいても福利厚生費になります。案内を全社員に出したことが分かる記録を残しておきましょう。

Q. 社員旅行は何泊までなら給与として課税されませんか?

A. 旅行期間が4泊5日以内(海外旅行は現地での滞在日数)で、参加者が全社員の50%以上であることが目安です。会社の負担額が常識的な範囲であることも必要です。

Q. 取引先との飲食はすべて交際費ですか?

A. 原則は交際費ですが、1人あたり1万円以下(2024年4月以降の支出分)の飲食費は、日付・参加者の氏名と関係・人数・金額・店名を記録すれば、交際費から外すことができます。

Q. 社員に商品券を配るのは問題ありますか?

A. 配ること自体は問題ありませんが、商品券は現金と同じ扱いになるため、金額にかかわらず給与として源泉所得税の対象になります。福利厚生費にしたい場合は、全員に同じ品物を渡す方法を検討しましょう。

まとめ:年末の支出は「対象者」と「記録」で決まる

【3行まとめ】 1.全社員対象の忘年会は福利厚生費。二次会・役員だけの会・取引先との会は交際費です。 2.社員旅行は「4泊5日以内・参加率50%以上・常識的な金額」が条件。不参加者への現金支給は全員課税の原因に。 3.商品券は給与扱い。強制参加の忘年会は労働時間になり得るため、「全員に機会、参加は自由」で運営を。

年末の行事は、社員の一年の頑張りをねぎらい、会社の一体感を高める大切な機会です。だからこそ、あとから税金や労務の問題で水を差されることがないよう、事前のルールづくりと記録の整備が欠かせません。

当事務所には、国税の調査実務を知る国税OBの税理士が在籍しており、税務調査で確認されやすい交際費・福利厚生費の区分や記録の残し方を、調査官の視点から点検しています。また、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携しているため、社内行事の運営ルールや就業規則の整備まで、税金と労務の両面から一体でサポートできます。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年の忘年会や社員旅行の処理がこれで大丈夫か確認したい」「交際費の記録の残し方を社内で統一したい」——年末を迎える前の今が、ご相談に最適なタイミングです。オンラインでのご相談も承っています。

個人事業主の年末節税、12月31日までに間に合う5つの対策

2026-10-23

― 税金と国保を同時に減らすコツと、やってはいけない落とし穴【2026年版】

「今年は思ったより利益が出た。来年3月の確定申告で、いくら税金を払うことになるんだろう……」

10月も下旬になると、こんな不安を感じ始める個人事業主の方は多いのではないでしょうか。そして毎年のように聞くのが、「12月に慌ててパソコンを買ったけれど、思ったほど税金が減らなかった」「節税のつもりで入った共済が、実は税金の先送りだった」という声です。

個人事業主の税金は、1月1日から12月31日までの1年間で計算が締め切られます。つまり、年が明けてからできることはほとんどありません。逆にいえば、今から12月31日までの約2か月が、今年の税金を減らせる最後のチャンスです。

この記事では、年内に間に合う5つの節税対策を、「本当に税金が減るもの」と「税金を先に送るだけのもの」に分けて解説します。さらに、多くの解説記事が触れていない国民健康保険料(国保)への影響まで含めて、実際の数字でシミュレーションします。

【この記事の結論】 ① 年末節税の主役は「小規模企業共済」と「経営セーフティ共済」。どちらも年内に支払えば今年の分として差し引けますが、加入手続きに時間がかかるため、11月中の申込みが目安です。 ② 「所得控除」と「必要経費」では効き方が違います。必要経費になる対策は、所得税・住民税に加えて個人事業税と国民健康保険料まで軽くなります。 ③ 「税金を減らすための買い物」は逆効果。100万円使って減る税金は30万円前後。本当に必要なものを、年内に使い始めることが鉄則です。

年末節税とは?まず押さえたい「税金が決まる仕組み」

結論から言うと、年末節税とは「12月31日までに、法律で認められた方法で、税金のもとになる『もうけ』を正しく小さくすること」です。

節税とは、税法で認められたルールの範囲内で、納める税金を少なくする工夫のことです。ルールを破って税金を減らす「脱税」とはまったく別物です。

個人事業主の税金の計算は、お小遣い帳にたとえると分かりやすくなります。1年間にもらったお金(売上)から、仕事のために使ったお金(経費)を引いた残りが「もうけ(所得)」です。そこから、家族構成や保険料などに応じた「差し引ける金額(所得控除)」を引いた残りに、税率をかけて税金が決まります。

① 売上(1年間の収入) 1月1日〜12月31日に、お客さまに商品を渡したり、仕事を終えたりした分の金額です。
▼
② 売上 -必要経費 = 事業所得(もうけ) 必要経費とは、仕事のために使ったお金のことです。ここを増やすと、所得税・住民税・個人事業税・国保のすべてに効きます。
▼
③ 事業所得 -所得控除 = 課税所得 所得控除とは、生活の事情や将来への備えに配慮して、もうけから差し引ける金額のことです。所得税と住民税に効きます。
▼
④ 課税所得 × 税率 = 税金 所得税は5%〜45%の7段階。もうけが増えるほど税率が上がるため、利益が多い年ほど節税の効果は大きくなります。
[画像指示:売上から必要経費・所得控除を順に差し引いて税金が決まる流れを、階段状のブロックで示した図解イラスト / キャプション:「必要経費」と「所得控除」のどこを減らすかで、効く税金の種類が変わります]

「必要経費」と「所得控除」はどこが違うのか

結論として、同じ金額でも必要経費として差し引けるもののほうが、効く範囲が広いのが特徴です。理由は、個人事業税と国民健康保険料は「所得控除を引く前のもうけ」をもとに計算されるからです。

軽くなるもの必要経費になる対策(経営セーフティ共済・少額減価償却資産など)所得控除になる対策(小規模企業共済・iDeCoなど)
所得税軽くなる軽くなる
住民税軽くなる軽くなる
個人事業税軽くなる軽くならない
国民健康保険料軽くなる(上限額に達していない場合)軽くならない
お金の行き先経費として支出(共済は将来戻る)自分の将来のための積立て
税理士の実務視点 個人事業主の方の多くは国民健康保険に加入しています。国保の保険料は「もうけ(総所得金額)から43万円を引いた額」をもとに計算されるため、所得控除をいくら増やしても保険料は1円も下がりません。税金と社会保険をセットで考えると、同じお金を払うなら、どの順番で対策をとるかが手取りを大きく左右します。

12月31日までに間に合う5つの節税対策

結論として、年内に実行できる効果の大きい対策は次の5つです。まずは全体像を表で確認しましょう。

対策税金上の扱い年内の期限の目安効果の性質
① 小規模企業共済所得控除(全額)11月中に申込み本当に減る節税
② 経営セーフティ共済必要経費11月中に申込み税金の先送り
③ 少額減価償却資産の特例必要経費(一括)12月31日までに使い始める税金の前倒し(先送り)
④ 青色申告特別控除65万円もうけから控除年内に帳簿・電子申告の準備本当に減る節税
⑤ 未払費用・前払費用の計上必要経費12月31日時点で整理正しい計上(取りこぼし防止)

対策① 小規模企業共済:経営者の「退職金」をつくりながら節税

結論として、小規模企業共済は「節税」と「老後の備え」を同時に実現できる、個人事業主にとって最も優先度の高い制度です。

小規模企業共済とは、個人事業主や小さな会社の役員が、事業をやめたときや引退したときに備えて、毎月お金を積み立てる国の制度のことです。会社員には退職金がありますが、個人事業主にはありません。その「自分で用意する退職金」の役割を果たします。

  • 掛金は月1,000円〜7万円(500円単位)で、自由に選べます
  • 払った掛金は全額が所得控除になります(月7万円なら年84万円)
  • 1年以内の分をまとめて前払い(前納)した場合も、払った年の控除にできます
  • 事業をやめて一括で受け取るときは「退職所得」として扱われ、税金がかなり軽くなります
【実務上の罠】加入しただけでは今年の控除にならない 控除の対象になるのは、12月31日までに実際に口座から引き落とされた掛金だけです。申込みから初回の引落しまでは1〜2か月ほどかかることがあるため、年内に間に合わせるには11月中の申込みが目安です。 また、加入から20年未満で任意に解約すると、受け取る額が払った額を下回ることがあります(12か月未満の解約では受け取れません)。無理のない掛金で長く続けることが前提です。

対策② 経営セーフティ共済:取引先の倒産に備えつつ経費にする

結論として、経営セーフティ共済は今年の税金を大きく減らせる一方、「税金の先送り」であることを理解したうえで使う制度です。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)とは、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなったときに、無担保・無保証人でお金を借りられるよう、毎月掛金を積み立てる国の制度のことです。

  • 掛金は月5,000円〜20万円(5,000円単位)、積立ての上限は総額800万円です
  • 個人事業主の場合、払った掛金は必要経費になります(1年以内の前納分も、払った年の経費にできます)
  • 加入できるのは、1年以上継続して事業を行っている個人事業主です
  • 40か月以上掛けてから解約すれば、払った掛金の全額が戻ります
【実務上の罠】解約したときに税金がかかる 解約して戻ってきたお金(解約手当金)は、その年の事業の収入として税金がかかります。つまり、掛金を払った年に減った税金を、解約した年に払うことになります。利益が少ない年や、事業をやめる年に解約するなど、出口のタイミングまで計画しておくことが重要です。 また、2024年10月以降は、一度解約してから2年以内に再加入した場合、その期間の掛金は経費にできなくなりました。「解約してすぐ入り直す」という方法は使えません。12か月未満の解約では、掛金は戻ってきません。

対策③ 少額減価償却資産の特例:年内に「使い始める」ことが条件

結論として、仕事で本当に必要な機材があるなら、年内に購入して、12月31日までに使い始めれば、その年に一括して経費にできます。

減価償却とは、パソコンや車など長く使うものの購入代金を、一度に経費にせず、使える年数に分けて少しずつ経費にしていく仕組みのことです。たとえば25万円のパソコンは、通常4年に分けて経費にします。しかも12月に買った場合、1年目に経費にできるのは1か月分の約5,000円だけです。

少額減価償却資産の特例とは、青色申告をしている中小規模の事業者が、一定額未満の資産を買ったとき、その年に全額を経費にできる特例のことです。対象は1つあたり30万円未満(令和8年度税制改正により、令和8年4月以後に取得したものは40万円未満)で、1年間の合計300万円までです。

購入した金額(1つあたり)経費にする方法白色申告でも使えるか
10万円未満買った年に全額経費(消耗品)使える
20万円未満3年間で均等に経費(一括償却資産)使える
特例の上限額未満(上記参照)買った年に全額経費(年300万円まで)使えない(青色申告のみ)
特例の上限額以上使える年数に分けて経費(通常の減価償却)使える
【実務上の罠】「12月中に買った」だけでは足りない 経費にできるのは、12月31日までに実際に事業で使い始めたものだけです。12月28日に注文して、届いたのが1月5日なら、今年の経費にはなりません。また、総額が大きく減るわけではなく、将来の経費を今年に前倒ししているだけという点も押さえておきましょう。

対策④ 青色申告特別控除65万円:電子申告の準備を年内に

結論として、青色申告をしているなら、最大の65万円控除を確実に受けられる体制を、年内に整えておくことが基本中の基本です。

青色申告特別控除とは、日々の取引を決められた方法(複式簿記)で記帳し、期限内に申告する個人事業主に、もうけから最大65万円を差し引くことを認める制度のことです。

控除額主な条件
65万円複式簿記で記帳し、期限内に申告。さらに電子申告(e-Tax)で提出するか、帳簿を一定の要件で電子保存している
55万円複式簿記で記帳し、期限内に紙の申告書で提出
10万円簡易な帳簿での記帳、または期限後の申告

65万円と55万円の差は10万円です。税率と国保の負担を合わせると、電子申告にするだけで年数万円の差になることも珍しくありません。年明けに慌てないよう、マイナンバーカードの準備や会計ソフトの設定は年内に済ませておきましょう。

対策⑤ 未払費用・前払費用:取りこぼしをなくす「正しい計上」

結論として、12月分の経費は12月中に支払っていなくても、今年の経費にできます。これは節税というより、本来の経費を取りこぼさないための大切な作業です。

未払費用とは、すでにサービスを受けたのに、支払いがまだ済んでいない費用のことです。たとえば12月分の電気代や通信費が1月に引き落とされる場合、12月の経費として計上できます。

前払費用とは、まだ受けていないサービスの代金を先に払ったもののことです。原則は翌年の経費ですが、事務所の家賃のように毎月同じサービスを受ける契約で、支払日から1年以内の分を前払いし、毎年同じ方法を続けるなど一定の条件を満たせば、払った年の経費にできます(短期前払費用の特例)。

税理士の実務視点 年末の「買いだめ」には注意が必要です。毎年ほぼ同じ量を買って普段どおり使う文房具などは買った年の経費で問題ありませんが、来年分を大量にまとめ買いした場合は「在庫」とみなされ、今年の経費にならないことがあります。 なお、iDeCo(個人型確定拠出年金)も有力な所得控除ですが、12月分の掛金は翌年1月に引き落とされるため翌年の控除になります。新しく加入する場合は手続きに1〜2か月かかるため、今年の対策ではなく「来年の対策」として年内に申込むのが現実的です。

年末節税でやってはいけない3つの落とし穴

結論として、年末節税で失敗する人の多くは「税金を減らすこと」が目的になり、手元のお金を減らしてしまっています。

落とし穴① 不要な買い物で「節税したつもり」になる

もうけが600万円前後の方の場合、所得税と住民税を合わせた税率はおおむね30%です。100万円の経費を使って減る税金は約30万円。残りの70万円は、手元から消えたお金です。リンゴ農家が「税金が高いから」と使わない農機具を買えば、その年の税金は減っても、お店のお金は確実に減ります。

落とし穴② 私的な支出を経費に入れる

家族旅行や自宅の家電などを経費にするのは認められません。自宅兼事務所の家賃や車のように仕事とプライベートの両方で使うものは、使った割合(家事按分)で経費にするのが原則です。割合には、床面積や走行距離など、説明できる根拠を残しておきましょう。

落とし穴③ 「先送り」の出口を考えずに加入する

経営セーフティ共済は、解約した年にまとめて税金がかかります。少額減価償却資産の特例も、翌年以降の経費を前倒ししているだけです。本当に減る節税(小規模企業共済・青色申告特別控除)と、先送りの節税を区別して組み合わせるのが、税理士の実務視点から見た正解です。

今から12月31日までの行動スケジュール

10月下旬〜11月上旬 今年のもうけを予測する 1〜9月の実績から年間のもうけを見込み、税金と国保がいくらになりそうかを試算します。
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11月中 共済の申込み 小規模企業共済・経営セーフティ共済は、初回の引落しが年内に間に合うよう早めに申込みます。前納するかもここで決めます。
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12月上旬 必要な設備の購入と使用開始 本当に必要な機材だけを購入し、年内に設置・使用を始めます。納期の確認も忘れずに。
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12月31日 帳簿の締め 未払費用・前払費用を整理し、在庫や売上の計上漏れがないか確認します。iDeCoなど来年の対策の申込みもこの時期に。
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翌年3月15日まで 確定申告 期限内に電子申告し、青色申告特別控除65万円を受けます。
[画像指示:10月下旬から翌年3月までの年末節税スケジュールを、カレンダー形式で示した図解イラスト / キャプション:共済は「申込み」ではなく「引落し」が年内に必要。逆算して動くのがコツです]

シミュレーション:もうけ900万円の個人事業主が年末に2つの共済を活用した場合

結論から言うと、小規模企業共済と経営セーフティ共済を合わせて年144万円積み立てると、所得税と住民税だけで約45万円、個人事業税を含めると約48万円の負担が軽くなります。具体的な数字で見てみましょう。

前提条件

  • デザイン業を営む青色申告の個人事業主(独身・扶養家族なし)
  • 青色申告特別控除65万円を差し引いた後の事業所得:900万円
  • 社会保険料控除(国民健康保険・国民年金):100万円と仮定
  • 対策:経営セーフティ共済 月5万円(年60万円)、小規模企業共済 月7万円(年84万円)を年内に支払い
  • 基礎控除は令和7年分以後の58万円(合計所得655万円超の場合)で計算。住民税の均等割・調整控除などは省略した概算です

対策前と対策後の比較

項目対策なし対策あり差額
事業所得(もうけ)900万円840万円(セーフティ共済60万円を経費に)-60万円
所得控除の合計158万円(社会保険料100万円+基礎控除58万円)242万円(上記+小規模企業共済84万円)+84万円
課税所得742万円598万円-144万円
所得税(復興特別所得税を含む)約109.3万円(税率23%)約78.5万円(税率20%)約-30.8万円
住民税(所得割10%)約75.7万円約61.3万円約-14.4万円
所得税+住民税の合計約185.0万円約139.8万円約-45.2万円
個人事業税(税率5%)−セーフティ共済分が軽減約-3.0万円

課税所得が742万円から598万円に下がったことで、所得税の税率が23%から20%の段階へ下がった点にも注目してください。税率が切り替わる境目の近くにいる方ほど、節税の効果は大きくなります。

さらに設備投資をした場合(参考)

同じ方が、仕事用のパソコン(25万円)を12月20日に購入し、その日から使い始めたとします。

項目通常の減価償却少額減価償却資産の特例
今年の経費約5,000円(4年分の1か月分)25万円(全額)
今年の税金への効果(所得税・住民税・個人事業税)ほぼなし約8.7万円の軽減
翌年以降の経費残り約24.5万円を4年かけて計上なし
【シミュレーションから分かること】 年144万円の積立てで、税金は約48万円軽くなりました。払ったお金の約3分の1が、税金の軽減として戻ってくる計算です。しかも共済の掛金は消えるお金ではなく、将来の自分のための積立てです。 一方で、経営セーフティ共済の60万円は解約時に収入として課税されます。小規模企業共済(本当に減る節税)を土台にし、セーフティ共済(先送り)は出口の時期まで決めて使う。この組み立て方が、手元にお金を残す最大のポイントです。 なお、経費になるセーフティ共済や設備投資は、国民健康保険料が上限額に達していない方であれば、保険料の軽減にもつながります。

よくある質問(FAQ)

Q. 12月に経費をたくさん使えば、税金はゼロにできますか?

A. 理論上はもうけを減らせますが、おすすめしません。使ったお金の約7割は手元から消えてしまうからです。年末節税の基本は、共済などの「積立て型」の対策を優先し、設備投資は本当に必要なものに限ることです。

Q. 小規模企業共済とiDeCo、どちらを優先すべきですか?

A. 税理士の実務視点では、まず小規模企業共済をおすすめします。どちらも掛金は全額所得控除ですが、小規模企業共済は事業資金の貸付制度が使えるうえ、年内に申込めば今年の控除に間に合いやすいからです。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、余裕資金の範囲で来年から併用する形が現実的です。

Q. 経営セーフティ共済は、結局「節税」にならないのですか?

A. 税金の総額が大きく減るわけではなく、「もうけが多い年に経費を前倒しし、解約した年に収入を計上する」先送りの効果が中心です。ただし、利益が少ない年や事業をやめる年に解約すれば、税率の差の分だけ実際の負担を減らせます。取引先の倒産に備える本来の機能もあるため、出口まで計画して使えば有効な制度です。

Q. 青色申告特別控除65万円を受けるには、何をすればよいですか?

A. 複式簿記で記帳し、確定申告の期限(原則3月15日)までに、電子申告(e-Tax)で提出するのが最も手軽な方法です。マイナンバーカードと、電子申告に対応した会計ソフトを用意しておきましょう。期限を1日でも過ぎると控除は10万円に下がるため注意してください。

Q. もうけがいくらくらいになったら、法人化を考えるべきですか?

A. 一つの目安は、もうけが800万円前後を超えてきたときです。ただし、法人化すると社長1人の会社でも健康保険・厚生年金への加入が必要になり、社会保険料の負担が変わります。税金だけでなく社会保険料、将来の年金額まで含めて比較することが欠かせません。

まとめ:年末節税は「11月中の行動」で決まる

【3行まとめ】 1.個人事業主の税金は12月31日で締め切り。共済は「引落し」が年内に必要なので、11月中に申込みましょう。 2.必要経費になる対策は、所得税・住民税に加えて個人事業税と国保にも効きます。所得控除との違いを理解して組み合わせることが大切です。 3.本当に減る節税(小規模企業共済・青色申告65万円)を土台に、先送りの節税は出口まで計画する。不要な買い物は逆効果です。

年末節税で本当に差がつくのは、12月の駆け込みではなく、今のうちに今年のもうけを予測し、税金と社会保険料を合わせて「いくら残るか」を計算しておくことです。そして国保や将来の法人化のように、税金と社会保険の両方にまたがる判断は、どちらか一方の視点だけでは最適な答えにたどり着けません。

当事務所には、国税の実務を内側から知る国税OBの税理士が在籍し、税務署から見ても説明のつく、確かな節税策をご提案しています。さらに、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携しているため、税金・国民健康保険・法人化後の社会保険まで一体でシミュレーションし、手元に残るお金を最大化する計画づくりをお手伝いします。巡回監査で日ごろから数字を一緒に見ているからこそ、年末を待たずに先手を打つことができます。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年のもうけでいくら税金がかかるか知りたい」「共済に入るべきか迷っている」「そろそろ法人化を考えたい」——そんな今の時期のご相談こそ、最も大きな効果が出るタイミングです。初回のご相談はオンラインでも承っています。

〒399-0745

長野県塩尻市大門桔梗町6-17

税理士法人 大沼田経営会計事務所

代表社員 大沼田正樹

TEL:0263-52-0972

FAX:0263-52-5977

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冬のボーナス、社員の手取りと会社の負担はいくら?

2026-10-22

賞与にかかる社会保険料・税金の計算と、社長の賞与で損しないための注意点

「冬のボーナスを50万円出したいけれど、会社の負担は結局いくらになるのだろう」「社員からは『思ったより手取りが少ない』と言われてしまった」——毎年この時期、経営者の方からこうしたご相談を数多くいただきます。

ボーナス(賞与)は、社員のやる気を引き出す大切なお金です。ところが、賞与からは社会保険料や所得税が差し引かれ、会社にも社会保険料の負担がかかります。さらに、社長や役員に出す賞与は、事前に税務署へ届け出ていないと会社の経費にならないという、知らないと損をするルールもあります。

この記事では、賞与から何がいくら引かれるのか、会社が負担するお金と必要な手続き、そして社長の賞与で損をしないための注意点を、はじめての方でも一読で分かるように解説します。後半では、賞与50万円を支給した場合の「社員の手取り」と「会社の総負担」を、実際の数字でシミュレーションします。

【この記事の結論】 ① 賞与50万円の手取りは約40万円、会社の総負担は約58万円が目安です。支給額のおよそ2割が社員から引かれ、会社にも約16%の上乗せ負担がかかります。 ② 賞与を支払ったら、5日以内に「賞与支払届」の提出が必要です。税金だけでなく社会保険の手続きもセットで行います。 ③ 社長・役員の賞与は「事前確定届出給与」の届出がないと、会社の経費になりません。届出のない冬の役員賞与は、支給する前に必ず見直しましょう。

賞与(ボーナス)とは?毎月の給与との違い

結論から言うと、賞与は「毎月の給与とは別に、臨時に支払われるお金」で、社会保険では年に何回支払うかによって扱いが変わります。

賞与とは、毎月決まって支払われる給与とは別に、会社の業績や本人の成果などに応じて臨時に支払われるお金のことです。夏と冬のボーナス、決算期に支払う決算賞与、寸志などがこれにあたります。

家庭のやりくりに例えると、毎月の給与は「毎月のお小遣い」、賞与は「お正月のお年玉」のようなものです。お年玉は毎月もらえるわけではない特別なお金なので、計算の仕方も毎月のお小遣いとは少し違う、と考えるとイメージしやすくなります。

「賞与」と「給与」は支払回数で区別される

社会保険(健康保険・厚生年金)では、名前が「賞与」でも、支払回数によって扱いが変わります。

項目賞与として扱われる給与(報酬)として扱われる
支払回数年3回以下年4回以上
社会保険料の計算支払うたびに、その賞与額をもとに計算毎月の給与に上乗せして「標準報酬月額」を計算
届出支払のたびに「賞与支払届」毎年7月の「算定基礎届」などで反映
所得税の計算「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使う毎月の給与に含めて「月額表」で計算
税理士の実務視点 「年4回以上」は、就業規則や賃金規程にどう定めているか、実際に何回支払ったかで判断されます。四半期ごとの業績手当などを支払っている会社は、賞与ではなく毎月の給与として扱う必要がないか、一度点検してください。社会保険の計算方法が変わるため、税金と労務の両面から確認すべきポイントです。

賞与から差し引かれるお金の仕組み

結論として、賞与から差し引かれるのは「社会保険料」「雇用保険料」「所得税」の3つです。住民税は差し引かれません。

社会保険料(健康保険・厚生年金・子ども・子育て支援金)

標準賞与額とは、賞与の支給額から1,000円未満を切り捨てた金額のことで、賞与にかかる社会保険料の計算のもとになります。この標準賞与額に保険料率をかけて保険料を計算し、会社と社員で半分ずつ負担します。

  • 健康保険:標準賞与額の上限は年度(4月〜翌年3月)の累計で573万円
  • 介護保険:40歳以上65歳未満の人は、健康保険とあわせて負担
  • 厚生年金:標準賞与額の上限は1回あたり150万円
  • 子ども・子育て支援金:2026年4月分から健康保険料とあわせて徴収が始まった新しい負担で、賞与にもかかります

今年から加わった「子ども・子育て支援金」は、健康保険料と一緒に差し引かれるため気づきにくいのですが、この冬のボーナスでも給与明細に影響が出ます。社員から質問を受けたときに説明できるようにしておきましょう。

雇用保険料

雇用保険料は、上限なしで賞与の支給額そのものに保険料率をかけて計算します。会社と社員の負担割合は同じではなく、会社の方が多く負担します。なお、役員は原則として雇用保険に加入しないため、役員賞与には雇用保険料はかかりません。

源泉所得税

源泉徴収とは、会社が社員に代わって、支払うお金からあらかじめ所得税を差し引き、税務署に納める仕組みのことです。賞与の所得税は、次の手順で計算します。

STEP1 前月の給与を確認する 賞与を支払う月の「前月」の給与から、社会保険料などを差し引いた金額を確認します。
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STEP2 税率を表から探す 「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で、STEP1の金額と扶養親族の人数が交わる税率を探します。
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STEP3 賞与から社会保険料を差し引く 賞与の支給額から、その賞与にかかる社会保険料・雇用保険料を差し引きます。
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STEP4 税率をかける STEP3の金額にSTEP2の税率をかけた金額が、差し引く所得税です。

前月に給与の支払がない場合や、賞与の金額が前月の給与(社会保険料控除後)の10倍を超える場合は、別の計算方法(月額表を使う方法)になります。

住民税は賞与から差し引かれない

会社が毎月の給与から住民税を差し引いている場合(特別徴収)、住民税は年税額を12等分して毎月の給与から差し引くため、賞与からは差し引きません。賞与の分の住民税は、翌年度の住民税額に反映されます。

差し引かれるもの計算のもと上限負担する人
健康保険料(介護保険料を含む)標準賞与額年度累計573万円会社と社員で折半
子ども・子育て支援金標準賞与額健康保険と同じ会社と社員で折半
厚生年金保険料標準賞与額1回150万円会社と社員で折半
雇用保険料賞与の支給額なし会社の方が多く負担
源泉所得税賞与−社会保険料等なし社員(会社が預かって納付)
住民税——賞与からは差し引かない
[画像指示:賞与50万円の内訳を、社会保険料・雇用保険料・所得税・手取りに色分けした帯グラフの図解イラスト / キャプション:賞与から差し引かれるのは社会保険料と所得税。住民税は差し引かれません]

賞与を支払うときに会社がやるべき手続き

結論として、賞与の支払は「金額を決める→天引きして支払う→5日以内に届出→翌月に納付」の流れで進みます。中でも見落としやすいのが、年金事務所への「賞与支払届」です。

賞与支払届とは、賞与を支払った会社が、誰にいくら支払ったかを日本年金機構(年金事務所)に届け出る書類のことです。この届出をもとに賞与の社会保険料が決まります。

STEP1 支給額と支給日を決める 就業規則・賃金規程の定めに沿って、支給対象者と金額を決めます。役員の賞与は、事前の届出の有無を必ず確認します。
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STEP2 支給日に天引きして支払う 社会保険料・雇用保険料・源泉所得税を差し引き、賞与明細を渡します。
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STEP3 5日以内に賞与支払届を提出 支給日から5日以内に、年金事務所(健康保険組合加入の場合は組合にも)へ提出します。電子申請も可能です。
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STEP4 源泉所得税を納付 原則として支給した月の翌月10日までに納付します。「納期の特例」を受けている会社は、7月〜12月分をまとめて翌年1月20日までに納付します。
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STEP5 社会保険料を納付 賞与分の保険料は、毎月の保険料とあわせて、翌月末に口座振替などで納付します。
[画像指示:賞与の支給日から賞与支払届の提出(5日以内)、源泉所得税の納付、社会保険料の納付までをカレンダー上に示した図解イラスト / キャプション:賞与は「支払って終わり」ではありません。税金と社会保険の手続きがセットです]

賞与の実務上の注意点と4つの罠

結論として、賞与で失敗しやすいのは「社長・役員の賞与」「社会保険料を減らす工夫の落とし穴」「退職予定者・パートへの支給」「就業規則の定め」の4つです。

罠① 社長・役員の賞与は「事前の届出」がないと経費にならない

事前確定届出給与とは、役員に支払う賞与の支給時期と金額をあらかじめ税務署に届け出ておき、そのとおりに支払うことで、会社の経費(損金)として認められる仕組みのことです。

社員の賞与は原則としてそのまま会社の経費になりますが、役員の賞与は違います。役員は自分で自分の報酬を決められる立場にあるため、利益が出た年だけ賞与を出して会社の税金を減らす、といったことを防ぐために、厳しいルールが設けられています。

  • 届出の期限:株主総会などで決議した日から1か月を経過する日と、その年度の職務執行を始めた日から4か月を経過する日のいずれか早い日(会計期間開始から4か月を経過する日がこれより早い場合はその日)
  • 支払い方:届け出た日に、届け出た金額を、1円も違えずに支払う
  • 金額が違った場合:原則として、支払った賞与の全額が会社の経費になりません
【要注意】届出のない冬の役員賞与は「二重の税金」に 3月決算で6月に株主総会を開く会社の場合、今年度の届出期限はすでに夏に過ぎています。届出をしないまま冬に役員賞与を支払うと、会社では経費にならず法人税がかかり、社長個人にも所得税・住民税がかかるという、同じお金に二重に税金がかかる状態になります。 さらに、役員賞与にも社会保険料はかかります。届出をしていない場合は、今期は賞与として支払わず、来期の役員報酬の見直しや、来期に向けた事前確定届出給与の届出で対応するのが実務上の鉄則です。

罠② 「賞与を減らして月給に回す」社会保険料対策は逆効果になることも

「賞与の回数や配分を工夫すれば社会保険料が安くなる」という話を耳にすることがあります。しかし、現在の制度では、毎月の給与にも賞与にもほぼ同じ保険料率がかかるため、配分を変えただけで大きく保険料が下がることは基本的にありません。

むしろ、賞与を年4回以上に分けると毎月の給与として扱われて標準報酬月額が上がったり、根拠のない名目変更を年金事務所の調査で指摘されたりするリスクがあります。社会保険料は将来の年金額にも反映されるため、「保険料を下げること」だけを目的にした配分変更はおすすめしません。

罠③ 退職予定者・扶養内パートへの賞与

賞与の支給対象を「支給日に在籍している人」とする定め(支給日在籍要件)がある会社は多いですが、就業規則や賃金規程に書かれていなければ、退職予定者から支払を求められたときにトラブルになりやすくなります。

また、配偶者の扶養に入っているパートの方の場合、扶養に入れるかどうかの判定(年収130万円未満など)には賞与も含めた年間の収入見込みで判断します。冬の賞与で年収が基準を超えると、扶養から外れて本人の手取りが大きく減ることがあります。支給前に本人の年収見込みを確認しておくと親切です。

罠④ 「払う約束」をしているかどうか

就業規則に「賞与は毎年12月に基本給の2か月分を支給する」と金額まで明記していると、業績が悪い年でも支払義務が生じます。一方、「会社の業績などを考慮して支給する。業績によっては支給しないことがある」という定めであれば、会社の判断で金額を決めることができます。

税理士の実務視点 賞与は「税金」「社会保険」「労働法」の3つが同時に関わるお金です。税金の面では役員賞与の届出、社会保険の面では賞与支払届と扶養の判定、労働法の面では就業規則・賃金規程の定め方がポイントになります。 また、賞与を含めた給与の総額が前年より一定以上増えた中小企業は、「賃上げ促進税制」で法人税が軽くなる可能性があります。賞与の金額を決める前に、税額控除を受けられるかどうかも一緒に試算しておくと、同じ人件費でも会社に残るお金が変わります。

シミュレーション:賞与50万円の手取りと会社の総負担

結論から言うと、賞与50万円を支給すると、社員の手取りは約40万円、会社の総負担は約58万円です。支給額と手取りの差、そして会社の上乗せ負担を数字で確認しましょう。

前提条件

  • 協会けんぽ加入の会社に勤める35歳の社員(介護保険の対象外、扶養親族なし)
  • 毎月の給与(前月の給与)は30万円、冬の賞与は50万円
  • 保険料率は分かりやすさのため、健康保険10.0%、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%(いずれも労使合計)、雇用保険は社員0.55%・会社0.9%と仮定
  • 会社負担には、子ども・子育て拠出金0.36%、労災保険0.3%(業種により異なる)も含める
  • 数値はすべて概算の目安です(実際は都道府県・業種・年度の保険料率で変わります)

社員の手取り

項目計算の考え方金額
賞与の支給額—500,000円
健康保険料500,000円 × 10.0% ÷ 2▲25,000円
子ども・子育て支援金500,000円 × 0.23% ÷ 2▲575円
厚生年金保険料500,000円 × 18.3% ÷ 2▲45,750円
雇用保険料500,000円 × 0.55%▲2,750円
源泉所得税(500,000円−74,075円)× 6.126%▲26,092円
手取り額支給額の約80%約399,800円

源泉所得税の税率6.126%は、前月の給与30万円から社会保険料等(約4.4万円)を差し引いた約25.6万円・扶養親族なしの場合に「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で当てはまる税率です。

会社の総負担

項目計算の考え方金額
賞与の支給額—500,000円
健康保険料(会社負担分)500,000円 × 10.0% ÷ 225,000円
子ども・子育て支援金(会社負担分)500,000円 × 0.23% ÷ 2575円
厚生年金保険料(会社負担分)500,000円 × 18.3% ÷ 245,750円
雇用保険料(会社負担分)500,000円 × 0.9%4,500円
子ども・子育て拠出金500,000円 × 0.36%1,800円
労災保険料500,000円 × 0.3%(仮定)1,500円
会社の総負担支給額の約116%約579,100円
【シミュレーションから分かること】 賞与50万円の場合、社員の手取りは約40万円、会社の総負担は約58万円。会社が出すお金と社員が受け取るお金には、約18万円の差があります。 社員10人に同じ額を支給すれば、会社の負担は約579万円。賞与の予算は「支給総額」ではなく「支給総額×約1.16倍」で組んでおくと、資金繰りで慌てずに済みます。

社長の賞与100万円:届出の有無で税金はこう変わる

同じ会社で、社長に冬の賞与100万円を支払う場合を比べます(法人税等の実効税率は概算で約30%と仮定)。

項目事前確定届出給与の届出あり届出なし
会社の経費(損金)になるかなるならない
会社の法人税等への影響約30万円 軽くなる軽くならない
社長個人の所得税・住民税かかるかかる
社会保険料(会社・社長)かかるかかる
届出の有無による差—会社の税負担が約30万円重い

届出がないだけで、同じ100万円の賞与でも会社の税金が約30万円増えます。役員賞与を考えている場合は、決算月ではなく年度が始まった直後に計画を立てることが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q. パートやアルバイトに支払う賞与にも社会保険料はかかりますか?

A. 社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している人であれば、パート・アルバイトでも賞与に社会保険料がかかります。加入していない人の場合、社会保険料はかかりませんが、雇用保険に加入していれば雇用保険料、また源泉所得税は差し引く必要があります。

Q. 賞与を支給しなかった場合も、何か届出が必要ですか?

A. 必要になる場合があります。年金事務所に登録されている「賞与支払予定月」に賞与を支給しなかったときは、「賞与不支給報告書」を提出します。今年は賞与を見送る会社も、届出を忘れないようにしましょう。

Q. 商品券や寸志も賞与になりますか?

A. なります。商品券は現金と同じように使えるため、金額にかかわらず賞与として所得税と社会保険料の対象になります。少額の寸志も同様です。忘年会の景品などとは区別して処理してください。

Q. 赤字の年でも、賞与は必ず支払わなければいけませんか?

A. 就業規則や賃金規程の定め方によります。「業績によっては支給しないことがある」と定めていれば、会社の判断で支給を見送ることができます。一方、支給時期と金額を明記している場合や、社員に金額を約束している場合は、支払義務が生じます。

Q. 賞与から住民税が引かれていないのは間違いではありませんか?

A. 間違いではありません。給与から住民税を差し引く場合(特別徴収)、住民税は年税額を12回に分けて毎月の給与から差し引くため、賞与からは差し引きません。賞与の分は、翌年度の住民税額に反映されます。

まとめ:賞与は「支払う前の準備」で差がつく

【3行まとめ】 1.賞与50万円の手取りは約40万円、会社の総負担は約58万円。予算は支給総額の約1.16倍で考えましょう。 2.賞与を支払ったら5日以内に賞与支払届。支給しない場合も賞与不支給報告書が必要になることがあります。 3.役員賞与は事前確定届出給与の届出がないと経費になりません。届出のない冬の役員賞与は支給前に見直しを。

賞与は、社員への感謝を形にする大切なお金です。だからこそ、税金・社会保険・就業規則のどれか一つでも見落とすと、会社にも社員にも思わぬ負担が生まれます。特に役員賞与の届出や賃上げ促進税制の活用は、支払う前に手を打つことで初めて効果が出る対策です。

当事務所には、国税の実務を内側から知る国税OBの税理士が在籍しており、役員賞与の届出や税務調査で確認されやすいポイントを踏まえた助言を行っています。さらに、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携しているため、賞与の税金計算から賞与支払届、就業規則・賃金規程の見直しまで、税金と社会保険の両面からまとめて支援できます。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年の冬の賞与、会社の負担がいくらになるか知りたい」「役員にも賞与を出したいが、届出をしていない」——そんな支給前のご相談こそ、最も大きな効果が出るタイミングです。初回のご相談はオンラインでも承っています。

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冬のボーナスの手取りはいくら?

2026-10-21

賞与の社会保険料と源泉所得税の計算方法を経営者向けに図解|今年から加わった「子ども・子育て支援金」と支給前に確認すべき5つの落とし穴

「冬のボーナス、いくら出せば社員の手元にいくら残るんだろう」「明細を見た社員から『思ったより少ない』と言われてしまった」

11月が近づくと、こんなご相談が一気に増えます。ボーナス(賞与)は社員にとって一年で最も楽しみなお金のひとつですが、実は支給額のおよそ2割が社会保険料と税金で差し引かれます。しかも会社側にも、支給額とは別に約16%の社会保険料の負担がかかります。

さらに今年(2026年度)からは、健康保険料と一緒に「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。今年の冬のボーナスは、この支援金が差し引かれるはじめての冬の賞与です。

この記事では、ボーナスから何がいくら引かれるのか、その計算方法、会社が支給前に必ず確認すべき落とし穴を、はじめての方でも一読で分かるように解説します。後半では「賞与60万円」を例に、社員の手取りと会社の総負担を1円単位でシミュレーションします。

【この記事の結論】 ① ボーナスの手取りは支給額のおよそ8割。社会保険料(約15〜16%)と源泉所得税(数%)が差し引かれます。 ② 会社の負担は「支給額+約16%」。60万円の賞与なら、会社が実際に負担するのは約70万円です。予算は支給総額ではなく「総人件費」で組みましょう。 ③ 支給前に確認すべきは「退職予定者」「育休中の社員」「役員」の3者。ここを誤ると、払わなくてよい保険料を払ったり、役員賞与が全額経費にならなかったりします。

ボーナスから引かれるお金の全体像

結論から言うと、ボーナスから引かれるのは「社会保険料」と「所得税」の2種類だけです。住民税は原則としてボーナスからは引かれません。

賞与(ボーナス)とは、社会保険の世界では、名前を問わず、労働の対価として年3回以下の回数で支給されるお金のことです。「夏季手当」「寸志」「決算賞与」と呼び方が違っても、すべて賞与として扱われます。

家庭のやりくりに例えると、ボーナスは「臨時収入」です。ただし臨時収入であっても、毎月のお給料と同じように「保険の掛け金」と「税金」を先に差し引いてから手元に渡す、というルールになっています。

項目社員の負担会社の負担ポイント
健康保険料あり(折半)あり(折半)料率は都道府県ごとに異なる
介護保険料あり(40〜64歳のみ)あり(折半)40歳になった月から対象
厚生年金保険料あり(折半)あり(折半)料率は全国一律18.3%
子ども・子育て支援金あり(折半)あり(折半)2026年4月分から徴収開始
雇用保険料ありあり(社員より多い)支給額そのものに料率を掛ける
子ども・子育て拠出金なしあり(全額会社)厚生年金と同じ基準で計算
源泉所得税ありなし前月の給与額と扶養人数で税率が決まる
住民税原則なしなし毎月の給与から天引きされている

月々の給与とボーナスでは「計算の物差し」が違う

毎月の給与の社会保険料は、4〜6月の給与をもとに決めた「標準報酬月額」という等級表の金額で計算します。一方、ボーナスは実際に支給した金額(1,000円未満切り捨て)をそのまま使います。つまり、ボーナスを多く払えば、その分だけ保険料も正直に増える仕組みです。

比較項目毎月の給与ボーナス(賞与)
保険料の計算の基準標準報酬月額(等級表)標準賞与額(実際の支給額の1,000円未満切り捨て)
上限等級表の最高等級まで健康保険:年度合計573万円/厚生年金:1回150万円
所得税の計算月額表(給与額と扶養人数)算出率の表(前月の給与額と扶養人数で税率を決定)
住民税毎月天引き原則天引きしない
年金事務所への届出原則不要(年1回の算定基礎届など)支給のたびに「賞与支払届」が必要

賞与の社会保険料の計算方法

結論として、賞与の社会保険料は「標準賞与額 × 保険料率」というシンプルな掛け算で計算できます。難しいのは計算式ではなく、料率が保険ごとに違う点です。

標準賞与額とは

標準賞与額とは、実際に支給したボーナスの金額から1,000円未満を切り捨てた、社会保険料を計算するための基準額のことです。たとえば60万5,800円を支給した場合、標準賞与額は60万5,000円になります。

2026年度の保険料率の目安

中小企業の多くが加入している協会けんぽ(全国健康保険協会)を例にすると、料率の目安は次のとおりです。健康保険料率は都道府県ごとに異なるため、ここでは分かりやすく約10%として示します。

保険の種類料率(労使合計)社員の負担分会社の負担分
健康保険約10%(都道府県で異なる)約5%約5%
介護保険(40〜64歳)約1.6%約0.8%約0.8%
厚生年金18.3%9.15%9.15%
子ども・子育て支援金0.23%0.115%0.115%
雇用保険(一般の事業)1.35%0.5%0.85%
子ども・子育て拠出金0.36%なし0.36%
合計(40〜64歳の場合)約31.8%約15.6%約16.3%

※労災保険料は全額会社負担で、業種によって料率が大きく異なるため、上の表とシミュレーションには含めていません。

今年から加わった「子ども・子育て支援金」とは

子ども・子育て支援金とは、児童手当の拡充など国の子育て支援策の財源にあてるため、2026年4月分から医療保険(健康保険など)の保険料と一緒に集められている負担金のことです。

会社員の場合は、健康保険料に上乗せする形で、会社と社員が半分ずつ負担します。毎月の給与だけでなく、ボーナスにも同じ料率がかかります。金額としては賞与60万円で社員・会社それぞれ690円と大きくはありませんが、給与計算ソフトの料率設定が更新されていないと、計算誤りや賞与支払届との不一致の原因になります。

[画像指示:賞与の支給額から、健康保険・介護保険・厚生年金・子ども・子育て支援金・雇用保険・源泉所得税が順に差し引かれて手取りが残る様子を、積み木を一段ずつ取り除くイメージで示した図解イラスト / キャプション:ボーナスの約2割は、社会保険料と税金として差し引かれます]

賞与の源泉所得税の計算方法

結論から言うと、ボーナスの所得税は「ボーナスの額」ではなく「前月の給与の額」で税率が決まります。ここが毎月の給与と最も違う点です。

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の使い方

算出率の表とは、前月の給与(社会保険料を差し引いた後の金額)と扶養する家族の人数を当てはめると、ボーナスにかける所得税の税率が分かる、国税庁の早見表のことです。

計算の手順は次の3ステップです。

  • 手順1:前月の給与から社会保険料を差し引いた金額を出す
  • 手順2:その金額と扶養親族の人数を算出率の表に当てはめ、税率を確認する
  • 手順3:(ボーナスの額 - ボーナスの社会保険料)× 税率 = 源泉所得税(1円未満切り捨て)

算出率の表の税率には、復興特別所得税(所得税の2.1%)もあらかじめ含まれています。

例外:前月の給与がない場合や、ボーナスが前月給与の10倍を超える場合

前月に給与の支払いがない場合や、ボーナス(社会保険料控除後)が前月の給与(社会保険料控除後)の10倍を超える場合は、算出率の表は使いません。代わりに、毎月の給与で使う「月額表」を使って、ボーナスを6分の1(ボーナスの計算期間が6か月を超える場合は12分の1)にして計算する特別な方法になります。

税理士・社労士の実務視点 役員報酬を低く抑えて年1回まとめて賞与を払うケースや、入社直後・休職明けの社員にボーナスを払うケースは、この「10倍超」や「前月給与なし」に当たりやすく、給与計算ソフトに任せきりだと計算を誤る典型的な場面です。 源泉所得税の不足は、税務調査で必ず確認される項目です。不足があると、本来の税額に加えて不納付加算税(原則10%)がかかります。例外に当たる社員がいないか、支給前に名簿で確認することを実務上の結論としてお勧めします。

ボーナス支給の実務の流れ

結論として、ボーナスの支給は「金額を決める」だけでは終わりません。支給後の届出と納付まで含めて7つのステップがあります。

STEP1 支給額の決定 就業規則(賃金規程)の定めと人事評価にもとづき、一人ひとりの支給額を決めます。予算は支給総額ではなく、会社負担の社会保険料を含めた「総人件費」で考えます。
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STEP2 役員賞与の届出内容の確認 役員に賞与を払う場合は、税務署に届け出た金額・支給日と一致しているかを確認します(後述の落とし穴⑤)。
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STEP3 対象者の確認 退職予定者、産休・育休中の社員、40歳・65歳になった社員など、保険料の扱いが変わる人を洗い出します。
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STEP4 社会保険料・源泉所得税の計算 標準賞与額に料率を掛け、前月給与をもとに源泉所得税を計算します。料率の更新漏れがないかも確認します。
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STEP5 支給と明細の交付 支給額・控除額・差引支給額を記載した明細を社員に渡します。
▼
STEP6 賞与支払届の提出(支給日から5日以内) 日本年金機構へ「被保険者賞与支払届」を提出します。電子申請も可能です。
▼
STEP7 保険料と源泉所得税の納付 賞与分の社会保険料は翌月分の保険料と合わせて翌月末に納付。源泉所得税は原則翌月10日まで(納期の特例を受けている場合は、7〜12月分を翌年1月20日まで)に納付します。

支給前に確認すべき5つの落とし穴

結論として、ボーナスの実務で損をしやすいのは計算そのものよりも、「誰に」「いつ」払うかの確認漏れです。次の5つを支給前に必ずチェックしてください。

落とし穴① 退職予定者は「退職日」で保険料が変わる

社会保険は、退職日の翌日に資格を失います。そして、資格を失った月(資格喪失月)に支給されたボーナスには、社会保険料がかかりません。このため、12月10日にボーナスを払った社員が12月中に退職する場合、退職日が「月末」か「月末より前」かで結果が大きく変わります。

退職日資格を失う日12月のボーナスの社会保険料注意点
12月31日(月末)翌年1月1日かかる(12月はまだ加入中)12月分の厚生年金も加入期間に含まれる
12月30日(月末より前)12月31日かからない(12月が資格喪失月)12月分は本人が国民年金・国民健康保険に加入する必要がある

ただし、月末より前に退職すると、本人は12月分の国民年金・国民健康保険の保険料を自分で払うことになり、将来の厚生年金の加入期間も1か月短くなります。保険料の節約だけを目的に会社が退職日を誘導するのは避け、本人の希望と将来の年金を踏まえて決めることが実務上の結論です。なお、雇用保険料と源泉所得税は退職日にかかわらず差し引きます。

落とし穴② 育休中の社員のボーナスは「1か月超」が条件

産休・育休中の社員の社会保険料は免除されます。ただし2022年10月以降、ボーナスの保険料が免除されるのは、連続して1か月を超える育児休業を取得している場合に限られるようになりました。賞与支給月の月末をはさんで数日だけ育休を取っても、ボーナスの保険料は免除されません。男性の育休が増えた今、見落としが多いポイントです。

落とし穴③ 年4回以上の支給や「現物」の支給

同じ性質のボーナスを年4回以上支給すると、社会保険では賞与ではなく「報酬」として扱われ、毎月の標準報酬月額に組み込まれます。また、ボーナスを商品券や自社製品などの「現物」で渡した場合も、金銭に換算して賞与として保険料と所得税の対象になります。

落とし穴④ 「賞与支払届」と「賞与不支給報告書」

ボーナスを支給したら、支給日から5日以内に賞与支払届を提出します。反対に、年金事務所に登録している「賞与支払予定月」にボーナスを支給しなかった場合は、賞与不支給報告書の提出が必要です。業績の関係で今年は見送る、という場合も届出を忘れないようにしましょう。

落とし穴⑤ 役員のボーナスは事前の届出がないと経費にならない

事前確定届出給与とは、役員に支給する賞与の金額と支給日を、あらかじめ税務署に届け出ておくことで、会社の経費(損金)として認められる仕組みのことです。

【要注意】役員賞与の「届出なし」「金額違い」は二重の負担に ① 会社の経費にならない:届出をしていない役員賞与や、届け出た金額・支給日と異なる支給は、原則として全額が損金になりません。届け出た額より1円でも違えば、原則として届出どおりの扱いは受けられません。 ② それでも社員と同じく保険料と所得税はかかる:経費にならない一方で、役員個人には源泉所得税と社会保険料がかかります。つまり会社の法人税と役員個人の所得税の「二重」の負担になります。 ③ 届出の期限:原則として、株主総会などで役員報酬を決めた日から1か月を経過する日と、その事業年度が始まってから4か月を経過する日のいずれか早い日までです。期中に思い立って払うことはできません。
税理士・社労士の実務視点 ボーナスは、税金と社会保険の両方にまたがる典型的なテーマです。たとえば、ボーナスを含めた給与総額を増やした会社は「賃上げ促進税制」で法人税の控除を受けられる場合があり、逆に、決算期末に支給を決めた賞与を未払いのまま経費に入れるには、支給額の通知や期末から1か月以内の支払いといった条件があります。 税金だけ、社会保険だけを見ていると、どちらか一方で損をすることがあります。支給額を決める段階で、税金と保険料を合わせた「総額」で設計することが鉄則です。

シミュレーション:賞与60万円で、社員の手取りと会社の負担はいくら?

結論から言うと、60万円のボーナスで社員の手取りは約47.6万円、会社の総負担は約69.8万円です。会社が払うお金と社員が受け取るお金の差は、約22万円になります。

前提条件

  • 協会けんぽに加入する会社の社員(45歳・介護保険の対象)
  • 毎月の給与は32万円(標準報酬月額32万円)、扶養する家族はいない
  • 12月10日に冬のボーナス60万円を支給
  • 健康保険料率は分かりやすく10%、介護保険料率1.6%で仮定(実際は都道府県・年度で異なる)
  • 数値は分かりやすさを優先した概算です(労災保険料は含めていません)

手順1 社員が負担する社会保険料

項目計算式金額
健康保険料60万円 × 5%30,000円
介護保険料60万円 × 0.8%4,800円
厚生年金保険料60万円 × 9.15%54,900円
子ども・子育て支援金60万円 × 0.115%690円
雇用保険料60万円 × 0.5%3,000円
社会保険料の合計 93,390円

手順2 源泉所得税

まず前月(11月)の給与32万円から、毎月の社会保険料(健康保険16,000円+介護保険2,560円+厚生年金29,280円+支援金368円+雇用保険1,600円=49,808円)を差し引くと、27万192円です。これを算出率の表(扶養親族0人)に当てはめると、税率は6.126%になります。

(60万円 - 93,390円)× 6.126% = 506,610円 × 6.126% = 31,034円(1円未満切り捨て)

手順3 社員の手取りと会社の総負担

社員側金額会社側金額
ボーナス支給額600,000円ボーナス支給額600,000円
社会保険料(本人分)-93,390円健康・介護・厚生年金・支援金(会社分)+90,390円
源泉所得税-31,034円雇用保険料(会社分0.85%)+5,100円
  子ども・子育て拠出金(0.36%)+2,160円
手取り額475,576円(約79%)会社の総負担697,650円(約116%)

参考:12月中に退職する社員の場合

同じ社員が12月中に退職する場合、前述の落とし穴①のとおり、退職日によってボーナスの社会保険料が変わります。

項目12月31日退職12月30日退職
ボーナスの社会保険料(本人分)93,390円3,000円(雇用保険料のみ)
ボーナスの社会保険料(会社分)97,650円5,100円(雇用保険料のみ)
12月分の年金・医療保険厚生年金・健康保険に加入本人が国民年金・国民健康保険に加入
将来の厚生年金12月分も加入期間に算入(賞与分も年金額に反映)12月分は加入期間に入らない
【シミュレーションから分かること】 ボーナスは「支給額」と「社員の手取り」と「会社の総負担」の3つの数字がまったく違います。60万円の支給なら、会社は約70万円を用意し、社員の手元に残るのは約48万円です。 ボーナスの予算は、必ず会社負担の保険料を含めた総額で組み、社員には手取りの目安も伝えておくと、「思ったより少ない」という不満を防げます。退職予定者や育休中の社員がいる場合は、支給日と退職日・休業期間の関係を、支給前に専門家と確認するのが確実です。

よくある質問(FAQ)

Q. 「寸志」程度の少額のボーナスでも、社会保険料はかかりますか?

A. はい、かかります。社会保険では、名前や金額にかかわらず、年3回以下で支給される労働の対価はすべて賞与として扱われます。1,000円未満は切り捨てになりますが、数千円の寸志でも賞与支払届の提出と保険料の計算が必要です。

Q. 今年はボーナスを出さない予定です。何か手続きは必要ですか?

A. 年金事務所に登録している賞与支払予定月にボーナスを支給しない場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。支給しなかった月の翌月上旬を目安に、忘れずに提出しましょう。

Q. ボーナスから引かれた厚生年金保険料は、将来の年金に反映されますか?

A. はい、反映されます。2003年4月からは、ボーナスにかかった保険料(標準賞与額)も厚生年金の年金額の計算に含まれています。差し引かれる金額は大きく感じますが、将来の年金を増やす積み立ての役割もあります。

Q. 年金を受け取りながら働いている社員や役員にボーナスを払うと、年金は減りますか?

A. 減る場合があります。在職老齢年金の仕組みでは、直近1年間のボーナスの12分の1が月々の給与に上乗せされて判定されます。2026年4月から、年金が減り始める基準額は月62万円に引き上げられましたが、高額のボーナスを払う場合は事前に試算しておくことをお勧めします。

Q. 社会保険に加入していないパートの方にボーナスを払う場合は?

A. 健康保険・厚生年金に加入していない方には、ボーナスの社会保険料はかかりません。ただし、雇用保険に加入していれば雇用保険料を差し引き、源泉所得税は加入の有無にかかわらず計算して差し引きます。

まとめ:ボーナスは「総額」で設計し、「人」で確認する

【3行まとめ】 1.ボーナスの手取りは支給額の約8割。今年から「子ども・子育て支援金」も差し引かれます。 2.会社の負担は支給額の約1.16倍。予算は保険料を含めた総人件費で組みましょう。 3.退職予定者・育休中の社員・役員の3者は、支給前に必ず個別に確認を。

ボーナスは、社員の一年の頑張りに報いる大切なお金です。だからこそ、計算の誤りや手続きの漏れで、社員の信頼や会社のお金を損なうことは避けたいものです。そして賞与の実務は、法人税・所得税といった「税金」と、健康保険・厚生年金といった「社会保険」が同時に関わる、まさに税金と労務の境目にあるテーマです。

当事務所では、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携し、賞与の支給額の設計から、源泉所得税・社会保険料の計算、賞与支払届の提出、役員賞与の事前確定届出まで、税金と社会保険の両面から一体でサポートしています。国税OBの税理士が在籍しているため、税務調査で確認されやすい源泉所得税の論点も、調査官の目線で事前に点検できます。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年の冬のボーナス、いくら出せばいいか一緒に考えてほしい」「役員にも賞与を払いたいが手続きが分からない」——そんな支給前の段階こそ、最も効果が出るタイミングです。初回のご相談はオンラインでも承っています。

〒399-0745
長野県塩尻市大門桔梗町6-17
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今年の冬のボーナスから手取りが変わる?

2026-10-20

賞与の社会保険料・源泉所得税の計算方法と、社長の賞与で損しないための注意点

「冬のボーナス、明細を見たら思ったより少なかった……」

毎年この時期になると、社員の方からこんな声を聞く経営者の方は多いはずです。そして会社の側でも、「ボーナスにかかる社会保険料はいくら用意すればいいのか」「税金はどうやって計算するのか」「社長自身の賞与は経費になるのか」と、意外と分からないことだらけではないでしょうか。

しかも今年の冬は、例年とは少し事情が違います。2026年度から、医療保険料に上乗せして「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。つまり、この制度が始まってから初めての冬のボーナスになるのです。

この記事では、ボーナスから何が・いくら引かれるのかという仕組みを、はじめての方でも一読で分かるように整理します。さらに、会社が見落としやすい手続きの罠と、社長・役員の賞与で法人税を数十万円単位で損しないためのルールを、実際の数字でシミュレーションします。

【この記事の結論】 ① 冬のボーナスからは「社会保険料」と「源泉所得税」が引かれます。今年からは子ども・子育て支援金も加わり、50万円の賞与なら約9万円が差し引かれる計算になります。 ② 会社側は「賞与支払届」を支給日から5日以内に提出する必要があります。提出漏れは、年金事務所の調査で必ず指摘されるポイントです。 ③ 社長・役員の賞与は、事前に税務署へ届け出ていなければ会社の経費になりません。届出がないと、200万円の賞与で法人税等が約66万円も多くなることがあります。

冬のボーナスで何が変わる?まず押さえたい基本

結論から言うと、ボーナスの手取りは「額面 − 社会保険料 − 源泉所得税」で決まります。毎月の給与と考え方は同じですが、計算の方法と上限が少しずつ違います。

賞与とは、毎月の給与とは別に、夏・冬・決算期などに支払われる一時的なお金のことです。社会保険の世界では、名前が「ボーナス」「寸志」「期末手当」のどれであっても、年3回以下の回数で支払われるものを賞与として扱います。

家庭のやりくりにたとえると、毎月の給与は「毎月決まったお小遣い」、賞与は「お年玉」のようなものです。お年玉にも、家に入れる分(社会保険料)と貯金に回す分(税金)が先に決まっている、とイメージすると分かりやすいでしょう。

2026年度から始まった「子ども・子育て支援金」とは

子ども・子育て支援金とは、児童手当の拡充など少子化対策の財源として、健康保険などの医療保険料と一緒に集められるお金のことです。2026年4月分の保険料から徴収が始まり、会社員の場合は会社と本人が半分ずつ負担します。

ポイントは、毎月の給与だけでなく、賞与にもかかることです。つまり、今年の冬のボーナスは、支援金が引かれる初めての冬のボーナスになります。金額は大きくありませんが、明細に新しい項目が増えるため、社員から質問を受けたときに説明できるようにしておきましょう。

ボーナスから差し引かれるもの一覧

ボーナスから引かれるものを一覧にすると、次のとおりです(率は2026年度の目安で、健康保険と介護保険は加入している保険や都道府県によって異なります)。

項目計算のもとになる金額本人負担の目安上限
健康保険料標準賞与額約5%(協会けんぽの目安)年度の累計で573万円
介護保険料標準賞与額約0.8%(40〜64歳の人のみ)健康保険と同じ
厚生年金保険料標準賞与額9.15%1回あたり150万円
子ども・子育て支援金標準賞与額約0.115%(支援金率0.23%の半分)健康保険と同じ
雇用保険料賞与の実際の金額0.5%(一般の事業の目安)なし
源泉所得税賞与 − 上記の保険料前月の給与と扶養の人数で決まる率なし

標準賞与額とは、実際に支払った賞与の金額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。社会保険料は、この標準賞与額に保険料率をかけて計算します。

ボーナスの手取りが決まる仕組み

結論として、ボーナスの手取りは「社会保険料を先に引き、残った金額に税率をかける」という順番で決まります。順番を間違えると、税金の額も手取りもずれてしまいます。

STEP1 賞与の額面を確定する 支給する賞与の総額を決めます。現金だけでなく、商品券など金銭に換えられるものも原則として含みます。
▼
STEP2 社会保険料を計算する 額面から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、健康保険・介護保険・厚生年金・子ども・子育て支援金の率をかけます。雇用保険は実際の金額にかけます。
▼
STEP3 源泉所得税の税率を調べる 「前月の給与から社会保険料を引いた金額」と「扶養親族の人数」を、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて税率を求めます。
▼
STEP4 源泉所得税を計算する 「賞与 − 社会保険料」にSTEP3の税率をかけます(1円未満は切り捨て)。
▼
STEP5 手取りを確定し、手続きをする 額面から社会保険料と源泉所得税を引いた金額が手取りです。会社は支給日から5日以内に「賞与支払届」を提出し、源泉所得税は原則として翌月10日までに納めます。
[画像指示:賞与の額面から、社会保険料(健康保険・厚生年金・子ども・子育て支援金・雇用保険)と源泉所得税が順番に差し引かれ、手取りが残る流れを示した図解イラスト / キャプション:社会保険料を先に引き、残りに税率をかけるのがボーナス計算の基本です]

社会保険料の計算ルール

社会保険料には上限があります。健康保険(介護保険・子ども・子育て支援金を含む)は4月から翌年3月までの累計で573万円、厚生年金は1回の支給につき150万円が上限です。上限を超えた部分には保険料がかかりません。高額な賞与を受け取る役員の場合、この上限が手取りに大きく影響します。

源泉所得税の計算ルール

ボーナスの源泉所得税は、毎月の給与とは違い、前月の給与の金額をもとに税率を決めるのが特徴です。前月の給与が高い人ほど、ボーナスにかかる税率も高くなります。

例外:前月の給与がない場合・ボーナスが極端に多い場合

前月に給与の支払いがない場合や、ボーナスの金額(社会保険料を引いた後)が前月の給与(社会保険料を引いた後)の10倍を超える場合は、算出率の表は使いません。賞与を6か月分(賞与の計算期間が6か月を超える場合は12か月分)に分けて毎月の税額表で計算する、特別な方法を使います。役員の賞与や、新しく入社した社員の賞与で起こりやすいため注意してください。

扶養控除等申告書を出していない人は税率が高くなる

年末調整の書類である「扶養控除等申告書」を会社に出していない人(副業先で働く人など)は、高い税率が適用される区分(乙欄)で計算します。

会社が見落としやすい実務上の注意点と罠

結論として、ボーナスの実務で問題になりやすいのは「手続きの漏れ」「支給回数」「退職・育休の扱い」「役員賞与」の4つです。特に役員賞与は、税金への影響が最も大きいポイントです。

罠① 賞与支払届の提出漏れ

賞与支払届とは、賞与を支払ったときに、誰にいくら支払ったかを年金事務所(健康保険組合に加入している場合は組合にも)に届け出る書類のことです。提出期限は支給日から5日以内です。

また、賞与を支払う予定の月を年金事務所に登録している会社が、その月に賞与を支給しなかった場合は「賞与不支給報告書」の提出が必要です。届出が漏れていると、年金事務所の調査でさかのぼって保険料を請求されるだけでなく、社員が将来受け取る年金額にも賞与分が反映されません。

罠② 年4回以上支払うと「賞与」ではなく「報酬」になる

社会保険では、年4回以上支払われるものは賞与ではなく、毎月の報酬(標準報酬月額)の一部として扱われます。たとえば「毎季ごとに業績手当を出す」といった制度にすると、賞与としての上限や計算方法が使えず、毎月の保険料に組み込まれます。賞与の制度を設計するときは、支給回数を年3回以下に収めることを意識してください。

罠③ 退職者・育児休業中の社員の扱い

退職の日や育児休業の期間によって、賞与に社会保険料がかかるかどうかが変わります。ただし、雇用保険料と源泉所得税は、どのケースでも通常どおりかかります。

ケース賞与の社会保険料理由
賞与を支払った月の月末より前に退職かからない資格を失った月に支払われた賞与には、保険料がかからないため
賞与を支払った月の月末に退職かかる資格を失う日が翌月1日となり、その月は加入期間に含まれるため
賞与月の末日を含み、連続して1か月を超える育児休業免除される2022年10月からの改正で、1か月を超える育休の場合のみ免除
賞与月の末日を含むが、育児休業が1か月以下免除されない短期間の育休を賞与月に合わせて取る方法が封じられたため

罠④ 社長・役員の賞与は「事前確定届出給与」がなければ経費にならない

ここが、経営者の方に最も知っておいていただきたいポイントです。

社員のボーナスは、原則としてそのまま会社の経費(損金)になります。しかし、社長や役員に支払う賞与は、原則として会社の経費になりません。役員は自分で自分の報酬を決められるため、利益が出た年だけ賞与を出して税金を減らす、といった調整を防ぐためのルールです。

例外として経費にできるのが「事前確定届出給与」です。事前確定届出給与とは、役員に支払う賞与の支給日と金額を、あらかじめ税務署に届け出て、そのとおりに支払う給与のことです。

確認項目内容
届出の期限株主総会などで決議した日から1か月を経過する日と、事業年度の開始日から4か月を経過する日の、いずれか早い日まで
3月決算・6月25日に株主総会の場合7月25日が期限(今期の冬の賞与の届出は、すでに期限を過ぎています)
支給のしかた届け出た日に、届け出た金額を、1円も違えずに支払う
届出と違う金額を支払った場合多く払っても少なく払っても、原則としてその賞与の全額が経費にならない
【要注意】「業績が良かったから、社長にも冬のボーナスを」は危険 届出をしていない役員賞与は、会社の経費にならないうえ、社長個人には所得税・住民税がかかり、さらに社会保険料も会社と社長の双方にかかります。 つまり、会社の段階でも個人の段階でも税金がかかる「二重の負担」になってしまいます。利益が出たときに役員へ還元したい場合は、来期の役員報酬の見直しや、事前確定届出給与の届出を計画的に行うのが正しい順番です。
税理士・社労士の実務視点 「役員報酬の月額を低くして、その分を年1回の賞与で受け取れば、社会保険料が安くなる」という方法を勧められることがあります。厚生年金の賞与の上限(1回150万円)を利用した考え方ですが、私たちはお勧めしていません。 理由は3つあります。第一に、事前確定届出給与の届出と一円単位の支給管理が毎年必要で、少しのミスで全額が経費にならなくなります。第二に、年金事務所の調査では支給の実態が確認され、実質的に毎月の報酬と判断されると、さかのぼって保険料を請求されるおそれがあります。第三に、保険料が減る分、社長自身が将来受け取る年金も減ります。 役員の報酬は、法人税・所得税・社会保険料・将来の年金を一体で計算して決めるものです。税金だけ、社会保険だけで判断すると、どこかで必ずゆがみが出ます。

シミュレーション:冬のボーナスでいくら差し引かれるのか

結論から言うと、社員に50万円のボーナスを出すと手取りは約40.9万円、会社の負担は約58万円です。また、社長の賞与200万円は、届出の有無だけで法人税等が約66万円変わります。具体的な数字で確認しましょう。

ケース1:社員に冬のボーナス50万円を支給する場合

前提条件

  • 社員は35歳(介護保険料の対象外)、協会けんぽに加入
  • 前月の給与は30万円(社会保険料を引いた後は約25.6万円)、扶養親族は1人
  • 健康保険料率は約10%(本人5%)、子ども・子育て支援金率0.23%、雇用保険の本人負担0.5%と仮定
  • 源泉所得税の算出率は4.084%と仮定(実際の率は算出率の表で確認してください)
項目計算金額
賞与の額面 500,000円
健康保険料500,000円 × 5%25,000円
厚生年金保険料500,000円 × 9.15%45,750円
子ども・子育て支援金500,000円 × 0.115%575円
雇用保険料500,000円 × 0.5%2,500円
社会保険料の合計 73,825円
源泉所得税(500,000円 − 73,825円) × 4.084%17,404円
手取り額500,000円 − 73,825円 − 17,404円約408,771円

一方、会社の側でも、健康保険・厚生年金・子ども・子育て支援金を本人と同額負担するほか、雇用保険料や子ども・子育て拠出金、労災保険料なども負担します。会社負担は合計で約8万円となり、50万円のボーナスを出すために、会社は約58万円を用意する必要があります。冬の資金繰りを考えるときは、額面だけでなく、この会社負担分まで含めて計画しておきましょう。

ケース2:社長に冬の賞与200万円を支給する場合

前提条件

  • 社長は45歳、同じ年度にほかの賞与はなし
  • 法人税・住民税・事業税を合わせた実効税率は約33%と仮定
  • 社会保険料は、健康保険約5%(介護保険を含めない簡易計算)、厚生年金9.15%(上限150万円で計算)、子ども・子育て支援金0.115%の本人負担分で概算
項目事前確定届出あり(届出どおり支給)届出なし
会社の経費(損金)になるかなるならない
法人税等への影響200万円 × 約33% = 約66万円減る減らない
社長個人の所得税・住民税かかるかかる(同じ)
社会保険料(社長本人分)約24万円約24万円(同じ)
社会保険料(会社負担分)約24万円(経費になる)約24万円(経費になる)
届出ありと比べた会社の負担増―法人税等が約66万円多い

なお、中小企業は所得800万円以下の部分の税率が低く設定されているため、実際の差額は会社の利益の規模によって変わります。それでも、同じ200万円を支払うのに、届出の有無だけで数十万円単位の差が出ることに変わりはありません。

【シミュレーションから分かること】 社員のボーナスは、額面の約2割が社会保険料と税金で差し引かれ、会社はさらに額面の約15%を上乗せで負担します。今年からは子ども・子育て支援金も加わり、明細の見え方が変わります。 社長の賞与は、事前確定届出給与の届出がなければ会社の経費になりません。役員への還元は「利益が出てから」ではなく、「期首に計画して届け出る」ことが鉄則です。

よくある質問(FAQ)

Q. 子ども・子育て支援金は、独身の人や子どもがいない人も負担するのですか?

A. はい、負担します。子ども・子育て支援金は、子どもの有無や年齢に関係なく、健康保険などの医療保険に加入しているすべての人が対象です。会社員の場合は、毎月の給与と賞与の両方から、健康保険料と一緒に差し引かれます。

Q. ボーナスで引かれた源泉所得税は、後で精算されるのですか?

A. はい、精算されます。ボーナスの源泉所得税は概算で差し引かれているため、年末調整で1年間の給与と賞与を合計して正しい税額を計算し、差額が還付または追加徴収されます。

Q. 寸志や商品券で渡した場合も、社会保険料や税金はかかりますか?

A. 原則としてかかります。税金の面では、商品券など金銭に換えられるものは給与として課税されます。社会保険の面でも、年3回以下の支給であれば、名前にかかわらず賞与として扱われ、賞与支払届の対象になります。少額だからと手続きを省略しないようにしましょう。

Q. パートやアルバイトのボーナスにも、社会保険料はかかりますか?

A. 社会保険に加入している人であれば、正社員と同じようにかかります。社会保険に加入していない人の場合は、健康保険・厚生年金の保険料はかかりませんが、雇用保険に加入していれば雇用保険料が、また所得税の源泉徴収が必要です。

Q. 今から社長の冬の賞与を経費にする方法はありますか?

A. 多くの会社では、今期分の事前確定届出給与の届出期限はすでに過ぎているため、冬の役員賞与を経費にすることは難しいのが実情です。また、期の途中で役員報酬の月額を増やすことも、原則として経費になりません。来期に向けて、株主総会での決議と届出を計画的に準備することが最も確実な方法です。

まとめ:ボーナスは「出す前の設計」で差がつく

【3行まとめ】 1.ボーナスの手取りは「額面 − 社会保険料 − 源泉所得税」。今年の冬から子ども・子育て支援金も差し引かれます。 2.会社は支給日から5日以内に賞与支払届を提出。支給回数・退職日・育休の扱いにも注意が必要です。 3.社長・役員の賞与は事前確定届出給与の届出がなければ経費にならず、数十万円単位で税金が増えることがあります。

ボーナスは、社員のやる気を高める大切な仕組みです。だからこそ、支給したあとに「思ったより会社の負担が重かった」「社長の賞与が経費にならなかった」と後悔しないよう、支給する前の設計が重要になります。

賞与の問題は、税金(源泉所得税・法人税)と社会保険(保険料・賞与支払届・年金)の両方にまたがるため、どちらか一方の専門家だけでは見落としが生まれやすい分野です。当事務所では、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携し、賞与の支給額の試算から、賞与支払届の手続き、役員報酬と事前確定届出給与の設計までを、一体でお手伝いしています。さらに、国税の調査実務を知る国税OBの税理士が在籍しているため、税務調査で役員賞与や報酬がどのように確認されるかを踏まえたアドバイスが可能です。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「冬のボーナスの会社負担を正確に知りたい」「社長の賞与や役員報酬を来期から見直したい」——そんな段階でのご相談こそ、最も大きな効果が出るタイミングです。初回のご相談はオンラインでも承っています。

〒399-0745

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税理士法人 大沼田経営会計事務所

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冬のボーナス、手取りはいくら?

2026-10-19

賞与の社会保険料と源泉所得税の計算方法を税理士がやさしく解説|経営者が支給前に確認すべき手続きと落とし穴

「冬のボーナス、額面60万円で出したのに、社員から『思ったより少ない』と言われてしまった」

「賞与の社会保険料って、毎月の給与と同じ計算でいいの?」「支給したあとに何か届け出が必要だった気がする……」

12月の賞与支給を前に、こんな疑問や不安を抱えている経営者・総務担当者の方は多いのではないでしょうか。賞与の計算は、毎月の給与とはルールがまったく違う部分があり、なんとなく給与と同じ感覚で処理していると、天引き額の誤りや届出漏れにつながります。

この記事では、賞与から引かれる社会保険料と源泉所得税の計算方法を、はじめての方でも一読で分かるように解説します。さらに、2026年4月分から新しく始まった「子ども・子育て支援金」の扱い、支給後5日以内に必要な届出、退職予定者や育休中の社員の扱いといった実務の落とし穴まで、税金と社会保険の両面から整理します。

【この記事の結論】 ① 賞与の手取りは、額面のおよそ8割が目安です。社会保険料(約15%)と源泉所得税(数%)が差し引かれます。 ② 賞与の計算は「毎月の給与とは別ルール」です。社会保険料は賞与の額そのもの(1,000円未満切捨て)に保険料率をかけ、源泉所得税は「前月の給与」をもとに税率を決めます。住民税は賞与からは引きません。 ③ 支給したら5日以内に「賞与支払届」を年金事務所へ。届出を忘れると、社員の将来の年金額にも影響します。支給しなかった月にも届出が必要な場合があります。

賞与(ボーナス)とは?社会保険と税金での扱いの基本

結論から言うと、賞与は「年3回以下の臨時の支給」であれば、社会保険でも税金でも毎月の給与とは別の計算方法で処理します。

賞与とは、毎月の給与とは別に、夏や冬、決算期などに臨時で支給されるお金のことです。名前が「ボーナス」「期末手当」「寸志」「決算賞与」など何であっても、労働の対価として支給されるものは賞与として扱われます。

家庭のやりくりにたとえると、毎月の給与は「毎月決まって入るお小遣い」、賞与は「年に数回もらえる特別なお年玉」のようなものです。お年玉にもきちんと記録とルールがあるように、賞与にも専用の計算ルールがあります。

「年4回以上」払うと賞与ではなくなる

社会保険では、支給回数によって扱いが変わります。年3回以下の支給は「賞与」、年4回以上の支給は「報酬(毎月の給与の一部)」として扱われます。年4回以上になると、賞与の額を12で割って毎月の標準報酬月額に上乗せする計算になり、手続きが複雑になります。賞与規程の支給回数は、社会保険の扱いまで見据えて決めることが大切です。

毎月の給与と賞与の違い(比較表)

項目毎月の給与賞与(年3回以下)
社会保険料の計算の基準標準報酬月額(4〜6月の平均などで決まる等級)標準賞与額(賞与の額の1,000円未満を切り捨てた額)
社会保険料の上限等級の上限まで(厚生年金は65万円の等級が上限)健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1か月150万円が上限
源泉所得税の計算方法「月額表」で、その月の給与額から税額を求める「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で、前月の給与額から税率を求める
住民税毎月の給与から天引き(特別徴収)天引きしない
雇用保険料給与額×料率賞与額×料率(上限なし)
年金事務所への届出原則なし(等級変更時を除く)支給日から5日以内に「賞与支払届」
税理士の実務視点 社員から「ボーナスは住民税が引かれないのに、なぜ所得税は引かれるのか」と質問されることがあります。住民税は前年の所得をもとに1年分の税額が決まっており、それを毎月の給与で12回に分けて納めているため、賞与からは引かないのです。一方、所得税は「その年の収入」にかかる税金なので、賞与のたびに概算で天引きし、年末調整で最終的に精算します。

賞与から引かれる社会保険料の計算方法

結論として、賞与の社会保険料は「標準賞与額 × 保険料率 ÷ 2(本人負担分)」というシンプルな式で計算します。毎月の給与のように等級表を見る必要はありません。

標準賞与額とは、実際に支給した賞与の額(税金や保険料を引く前の総額)から、1,000円未満を切り捨てた金額のことです。たとえば賞与が603,500円なら、標準賞与額は603,000円になります。

賞与にかかる社会保険料の種類と負担割合

保険の種類保険料率の目安(2026年度)本人負担会社負担
健康保険約10%(都道府県・加入する健保組合で異なる)半分半分
介護保険(40〜64歳のみ)約1.6%半分半分
厚生年金保険18.3%(全国一律)9.15%9.15%
子ども・子育て支援金(2026年4月分〜)0.23%(健康保険料とあわせて徴収)0.115%0.115%
雇用保険(一般の事業)1.35%0.5%0.85%
子ども・子育て拠出金0.36%なし全額
労災保険業種により異なるなし全額

※保険料率は、協会けんぽの全国平均水準などをもとにした目安です。実際の計算では、自社が加入する健康保険の料率を使ってください。

■ 2026年度から新しく加わった「子ども・子育て支援金」

子ども・子育て支援金とは、少子化対策の財源として、2026年4月分の保険料から医療保険(健康保険)の保険料に上乗せして集められるお金のことです。会社と本人が半分ずつ負担し、毎月の給与だけでなく賞与にもかかります。今年の冬のボーナスは、この支援金がかかる初めての冬の賞与になるため、給与計算ソフトの設定が更新されているか、事前に確認しておきましょう。

保険料には上限がある

賞与の額が大きい場合、保険料の計算に使う金額には上限があります。健康保険・介護保険は年度(4月〜翌3月)の累計で573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限です。たとえば役員に1回300万円の賞与を支給した場合、厚生年金保険料は150万円分にしかかかりません。

[画像指示:賞与の額面から社会保険料・源泉所得税が差し引かれ、手取りが残るまでを階段状に示した図解イラスト / キャプション:賞与から引かれるのは社会保険料と所得税。住民税は引かれません]

賞与から引かれる源泉所得税の計算方法

結論として、賞与の源泉所得税は「(賞与 − 社会保険料)× 税率」で計算し、その税率は前月の給与と扶養家族の人数で決まります。賞与の金額そのもので税率が決まるわけではない点が、最大のポイントです。

源泉所得税とは、会社が給与や賞与を支払うときに、本人に代わって所得税をあらかじめ差し引き、国に納める仕組みのことです。

計算は4ステップで進める

STEP1 前月の給与から社会保険料を引いた額を確認する 賞与を支給する月の「前月」に支払った給与の総額から、社会保険料と雇用保険料を差し引いた金額を出します。
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STEP2 「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で税率を探す 国税庁が毎年公表している表で、STEP1の金額と扶養親族等の数が交わる欄の税率を確認します。
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STEP3 賞与から社会保険料を差し引く 賞与の総額から、前の章で計算した賞与の社会保険料・雇用保険料を差し引きます。
▼
STEP4 STEP3の金額に税率をかける これが賞与から天引きする源泉所得税です。支給月の翌月10日までに税務署へ納めます(納期の特例を受けている場合は半年ごと)。

例外:前月の給与がない場合や、賞与が前月給与の10倍を超える場合

入社直後で前月に給与がない場合や、賞与の額(社会保険料控除後)が前月の給与(社会保険料控除後)の10倍を超える場合は、算出率の表は使いません。賞与を6か月(賞与の計算対象期間が6か月を超えるときは12か月)で割った金額を毎月の給与に足して「月額表」で計算する、別の方法になります。役員や決算賞与のように大きな額を支給するときは、この例外に当たらないかを必ず確認してください。

税理士の実務視点 2026年1月から、令和7年度の税制改正(基礎控除の引上げなど)を反映した新しい源泉徴収税額表が使われています。賞与の算出率の表も改正後のものを使う必要があります。給与計算ソフトをお使いの場合でも、税額表が最新版に更新されているかを、冬の賞与の前に一度確認しておくと安心です。

支給前後に必要な手続きと、見落としがちな落とし穴

結論として、賞与で最も多いミスは「計算」よりも「届出漏れ」と「例外的な社員の扱い」です。支給前に次の3点を必ず確認しましょう。

落とし穴① 賞与支払届の提出漏れ

賞与支払届とは、賞与を支給したことと、その金額を年金事務所(健康保険組合に加入している場合は組合にも)に知らせる届出のことです。支給日から5日以内に提出します。電子申請も可能です。

この届出をもとに保険料が請求され、同時に社員の将来の年金額の計算にも反映されます。提出を忘れると、あとから保険料をまとめて請求されるだけでなく、社員の年金記録に賞与が載らないという不利益が生じます。

また、年金事務所に登録している「賞与支払予定月」に賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。今年は業績の関係で冬の賞与を見送る、という場合も手続きを忘れないようにしましょう。

落とし穴② 月末退職者の賞与

社会保険料は、資格を失う日(退職日の翌日)の属する月の前月分までかかります。そのため、退職日によって賞与の保険料のかかり方が変わります。

ケース資格を失う日12月支給の賞与の社会保険料
12月31日(月末)に退職1月1日かかる(12月はまだ加入している月のため)
12月30日に退職12月31日かからない(12月は資格を失った月のため)

雇用保険料と源泉所得税は、退職日に関係なく賞与の支給額に対してかかります。退職予定の社員に賞与を支給する際は、退職日と支給日の関係を事前に確認しておきましょう。

落とし穴③ 産休・育休中の社員の賞与

産前産後休業中や育児休業中の社員は、届出をすれば社会保険料が免除されます。ただし、賞与の保険料が免除されるのは、育児休業の期間が1か月を超える場合に限られます(2022年10月以降に開始した育休)。「月末に数日だけ育休を取れば賞与の保険料がかからない」という扱いは、現在はできません。

落とし穴④ 役員への賞与は「事前の届出」がないと会社の経費にならない

社員への賞与は原則として会社の経費(損金)になりますが、役員への賞与は、支給額と支給日を事前に税務署へ届け出る「事前確定届出給与」の手続きをしていなければ、会社の経費になりません。届出の期限は原則として「株主総会の決議日から1か月以内」かつ「事業年度開始から4か月以内」のいずれか早い日です。冬に役員賞与を出す予定がある場合、多くの会社ではすでに期限を過ぎているため、来期の役員報酬の設計とあわせて検討しましょう。

【要注意】「寸志」「商品券」も賞与です 少額の寸志や、現金の代わりに渡す商品券・ギフトカードも、給与・賞与として源泉所得税の対象です。社会保険でも、年3回以下の支給であれば賞与として届出の対象になります。「少額だから」「現金ではないから」と給与計算から外していると、税務調査や年金事務所の調査で指摘される原因になります。

シミュレーション:額面60万円の冬のボーナス、手取りと会社の負担はいくら?

結論から言うと、額面60万円の賞与の場合、社員の手取りは約49万円、会社が実際に負担する総額は約69万円になります。具体的な数字で確認しましょう。

前提条件

  • 社員:35歳(介護保険料はかからない)、扶養親族1人
  • 毎月の給与:30万円(標準報酬月額30万円)。前月の給与から社会保険料・雇用保険料を引いた額は約25.6万円
  • 冬の賞与:60万円(12月支給)
  • 保険料率:健康保険10%、厚生年金18.3%、子ども・子育て支援金0.23%、雇用保険(本人0.5%・会社0.85%)、子ども・子育て拠出金0.36%(会社のみ)
  • 源泉所得税の税率:算出率の表で4.084%と仮定
  • 数値は分かりやすさを優先した概算です(労災保険料は含めていません)

社員の手取りの計算

項目計算の考え方金額
賞与(額面) 600,000円
健康保険料600,000円 × 10% ÷ 2▲30,000円
厚生年金保険料600,000円 × 9.15%▲54,900円
子ども・子育て支援金600,000円 × 0.115%▲690円
雇用保険料600,000円 × 0.5%▲3,000円
源泉所得税(600,000円 − 88,590円)× 4.084%▲20,886円
手取り額額面の約82%約490,500円

会社が負担する総額

項目計算の考え方金額
賞与(額面) 600,000円
健康保険料(会社負担)600,000円 × 10% ÷ 230,000円
厚生年金保険料(会社負担)600,000円 × 9.15%54,900円
子ども・子育て支援金(会社負担)600,000円 × 0.115%690円
雇用保険料(会社負担)600,000円 × 0.85%5,100円
子ども・子育て拠出金600,000円 × 0.36%2,160円
会社の負担総額額面の約115%約692,800円
【シミュレーションから分かること】 額面60万円の賞与でも、社員の手元に届くのは約49万円、会社が用意するお金は約69万円です。その差は約20万円にもなります。 賞与の予算を組むときは「額面×約1.15倍」を会社の負担として資金繰りに織り込むこと、そして社員には「額面と手取りの違い」を明細で丁寧に説明することが、社員の納得感と信頼につながります。

よくある質問(FAQ)

Q. 賞与から住民税が引かれないのはなぜですか?

A. 住民税は前年の所得をもとに1年分の税額が決まっていて、それを毎月の給与から12回に分けて天引きしているためです。賞与から追加で引くことはありません。

Q. 賞与の社会保険料は、毎月の給与と同じ等級表で計算しますか?

A. いいえ。賞与は等級表を使わず、賞与の額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率をかけて計算します。健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1か月150万円が上限です。

Q. 賞与の源泉所得税は、賞与の金額が大きいほど税率が高くなりますか?

A. 原則として、税率は賞与の金額ではなく「前月の給与(社会保険料控除後)」と扶養親族等の数で決まります。ただし、賞与が前月の給与の10倍を超える場合などは、月額表を使う別の計算方法になります。

Q. 冬の賞与を支給しないことにしました。何か手続きは必要ですか?

A. 年金事務所に登録している賞与支払予定月に賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。支払予定月自体を変更したい場合も、あわせて手続きをしておきましょう。

Q. 寸志や商品券を渡す場合も、社会保険料や所得税がかかりますか?

A. はい。労働の対価として渡すものは、金額の大小や現金かどうかにかかわらず給与・賞与として扱われます。源泉所得税の天引きと、社会保険の賞与支払届の対象になります。

まとめ:賞与は「計算」と「届出」をセットで準備する

【3行まとめ】 1.賞与の手取りは額面の約8割。会社の負担は額面の約1.15倍を見込んで資金繰りを組みましょう。 2.社会保険料は「標準賞与額×料率」、源泉所得税は「前月の給与」で税率を決める別ルール。住民税は引きません。 3.支給後5日以内の賞与支払届、不支給の報告、退職者・育休者・役員の扱いまで、支給前に確認を。

賞与は、社員にとって1年の頑張りが形になる大切なお金です。だからこそ、計算の誤りや手続きの漏れは、会社への信頼を損ないかねません。そして賞与の実務は、源泉所得税という「税金」と、社会保険料・届出という「労務」が同時に関わる分野です。

当事務所では、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携し、賞与の計算・届出から、役員賞与の事前確定届出、賞与規程や人事評価制度の設計まで一体でサポートしています。国税OBの税理士も在籍しており、税務調査で確認されやすい給与・賞与の処理についても、調査官の視点を踏まえて点検します。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年の冬の賞与、計算や手続きに不安がある」「役員賞与や決算賞与をどう設計すればよいか知りたい」——支給前のご相談が、最も効果の大きいタイミングです。オンラインでのご相談も承っています。

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