冬のボーナス、手取りと会社の負担はいくら?

賞与の社会保険料と源泉所得税の計算を経営者向けにやさしく解説

「冬のボーナスを60万円出したい。でも、会社の負担は実際いくらになるの?」「社員の手取りはいくら残るの?」

12月の賞与(ボーナス)を前に、こうした疑問を持つ経営者の方はとても多いです。毎月の給与計算は慣れていても、賞与は年に1〜2回しかないため、計算のルールや届出の期限があいまいになりがちです。しかも賞与には、毎月の給与とは別の計算方法が使われます。

この記事では、賞与にかかる社会保険料と所得税(源泉所得税)の仕組みを、はじめての方でも一読で分かるように解説します。後半では「賞与60万円」のケースで、社員の手取りと会社の本当の負担額を具体的な数字で計算します。

【この記事の結論】 ① 賞与60万円を出すと、会社の実際の負担は約70万円になります。社会保険料の会社負担分(約1割強)が上乗せされるからです。 ② 賞与の社会保険料は「標準賞与額×保険料率」、所得税は「前月の給与」をもとにした専用の表で計算します。毎月の給与とは計算方法がまったく違います。 ③ 支給日から5日以内に「賞与支払届」の提出が必要です。提出漏れは、後から保険料をまとめて請求される原因になります。

賞与(ボーナス)にかかるお金の全体像

結論から言うと、賞与からは「社会保険料」と「所得税」の2種類が差し引かれ、会社にも社会保険料の負担が発生します。住民税は賞与からは差し引きません。

賞与とは、毎月の給与とは別に、年3回以下の回数で支給されるお金のことです。「ボーナス」「期末手当」「寸志」など名前は何であっても、労働の対価として支給されれば賞与として扱われます。

お小遣いで例えるなら、毎月の給与は「毎月のお小遣い」、賞与は「お年玉」のようなものです。お年玉にも、家計のルール(税金や保険料)がきちんと適用される、と考えると分かりやすいでしょう。

差し引かれるもの計算のもと負担する人
健康保険料(40歳以上は介護保険料、2026年4月分からは子ども・子育て支援金を含む)標準賞与額×保険料率会社と本人で半分ずつ
厚生年金保険料標準賞与額×18.3%会社と本人で半分ずつ
雇用保険料賞与の支給額×雇用保険料率会社と本人(会社の方が多い)
子ども・子育て拠出金標準賞与額×拠出金率会社のみ
労災保険料賞与の支給額×業種ごとの料率会社のみ
所得税(源泉所得税)(賞与−社会保険料)×算出率本人(会社が天引きして納付)
住民税賞与からは差し引かない―
[画像指示:賞与60万円の封筒から、社会保険料・所得税が差し引かれて手取りになり、会社側は社会保険料を上乗せして支払う様子を左右に並べた図解イラスト / キャプション:賞与は「本人の手取り」と「会社の総負担」の両方で考えることが大切です]

賞与の社会保険料の仕組み

結論として、賞与の社会保険料は「標準賞与額」に保険料率を掛けて計算し、健康保険と厚生年金にはそれぞれ上限があります。

標準賞与額とは

標準賞与額とは、実際の賞与の支給額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。たとえば賞与が603,500円なら、標準賞与額は603,000円になります。この金額に保険料率を掛けて保険料を計算します。

健康保険と厚生年金には上限がある

保険の種類標準賞与額の上限数え方
健康保険(介護保険を含む)年度の累計で573万円毎年4月1日〜翌年3月31日の合計
厚生年金保険1か月あたり150万円同じ月に2回以上支給したときは合計で判定
雇用保険・労災保険上限なし実際の支給額で計算

上限は高い金額なので、一般の社員の賞与で上限に届くことはほとんどありません。役員や幹部の賞与を検討するときに意識するポイントです。

「年4回以上」の支給は賞与ではなく「報酬」になる

社会保険では、年4回以上支給される手当は賞与ではなく、毎月の給与と同じ「報酬」として扱われます。この場合、年間の支給額を12で割った金額が毎月の保険料の計算(標準報酬月額)に含まれます。「ボーナスを細かく分けて出せば保険料が変わる」と考える方もいますが、回数によって扱いそのものが変わる点に注意が必要です。

税理士の実務視点 賞与の保険料は「毎月の給与からの保険料」とは別に計算されますが、会社が納めるときは、支給した月の分を毎月の保険料と合わせて翌月末までに納めます。12月に支給した賞与の保険料は、1月末の口座振替で引き落とされます。年末年始の資金繰り表には、この分を忘れずに入れておきましょう。

賞与の源泉所得税の仕組み

結論として、賞与の所得税は「前月の給与」と「扶養している家族の数」で決まる率(算出率)を、社会保険料を差し引いた後の賞与に掛けて計算します。

源泉所得税とは、会社が社員の給与や賞与を支払うときに所得税をあらかじめ差し引き、本人の代わりに税務署へ納める仕組みのことです。

計算の3ステップ

STEP1 前月の給与から社会保険料を差し引く 賞与を支給する月の前月に支払った給与から、社会保険料を差し引いた金額を出します。

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STEP2 「算出率の表」で率を探す 国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で、STEP1の金額と扶養親族の数が交わる欄の率を確認します。

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STEP3 賞与(社会保険料控除後)×算出率 賞与から社会保険料を差し引いた金額に、STEP2の率を掛けた金額が源泉所得税です。

くわしい計算方法は、国税庁のタックスアンサー「No.2523 賞与に対する源泉徴収」でも確認できます。

特別な計算になる2つのケース

  • 前月に給与の支払いがない場合(入社直後など)
  • 賞与の金額(社会保険料控除後)が、前月の給与(社会保険料控除後)の10倍を超える場合

この2つのケースでは「算出率の表」は使わず、毎月の給与に使う「月額表」を使った特別な方法で計算します。決算賞与で役員や社員に多めの賞与を出すときは、10倍を超えていないか確認しましょう。なお、令和8年分からは基礎控除などの改正に合わせて源泉徴収税額表が改正されています。必ず最新年分の表を使ってください。

賞与支給の実務の流れと注意点

結論として、賞与は「支給額の決定→計算→支給→届出・納付」の順に進み、特に「賞与支払届」と「納付期限」を守ることが重要です。

STEP1 支給額と支給日を決める 就業規則や賃金規程の支給基準(支給対象期間、在籍要件など)に沿って決めます。

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STEP2 社会保険料を計算する 標準賞与額(1,000円未満切捨て)に保険料率を掛けます。

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STEP3 源泉所得税を計算する 前月の給与と扶養親族の数から算出率を確認して計算します。

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STEP4 支給・明細書の交付 総支給額、差し引いた保険料・税額、手取り額を明細書で示します。

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STEP5 届出と納付 支給日から5日以内に「賞与支払届」を提出。源泉所得税は原則翌月10日まで(納期の特例を受けている会社は1月20日まで)、保険料は翌月末に納付。
[画像指示:12月の賞与支給日から、5日以内の賞与支払届、1月10日(または1月20日)の源泉所得税納付、1月末の保険料引き落としまでをカレンダー上に示した図解イラスト / キャプション:支給後の「届出」と「納付」までが賞与の実務です]

実務上の罠① 賞与支払届の出し忘れ

賞与支払届とは、賞与を支給したことと標準賞与額を、年金事務所や健康保険組合に知らせる書類のことです。提出期限は支給日から5日以内です。提出を忘れると、保険料が正しく計算されず、後で年金事務所の調査などで指摘されて、まとめて請求されることになります。また、届け出た標準賞与額は社員の将来の年金額にも反映されるため、出し忘れは社員にとっても不利益です。様式や提出方法は日本年金機構のホームページで確認できます。

実務上の罠② 退職する社員の賞与

月の途中で退職する社員には、注意が必要です。社会保険の資格は「退職日の翌日」に失われ、資格を失った月に支給した賞与には社会保険料がかかりません。たとえば12月10日に賞与を支給し、12月20日に退職した場合は、12月21日に資格を失うので、12月の賞与に保険料はかかりません。一方、12月31日に退職した場合は資格を失うのが1月1日なので、12月の賞与に保険料がかかります。

実務上の罠③ 「支給日在籍要件」は就業規則に書いておく

「賞与の支給日に在籍していない人には支給しない」というルールは、就業規則や賃金規程に定めておけば、一般的に有効とされています。逆に、規程があいまいなまま退職者への支給・不支給を決めると、トラブルの原因になります。賞与の支給基準は、税金や保険料の計算より前に整えておくべき「労務の土台」です。

【要注意】育児休業中の社員の賞与 育児休業中の社員の賞与保険料は、その賞与を支給した月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除されます(2022年10月以降)。 短期間の育児休業では賞与の保険料が免除されないため、「育休中だから保険料はかからない」と思い込まないよう注意しましょう。
税理士の実務視点 賞与は「出す金額」より「会社の総負担」で考えるのが経営の鉄則です。支給額の約16%前後が社会保険料などの会社負担として上乗せされるため、賞与原資を決めるときは「支給総額×1.16前後」で資金を確保しておくと安心です。 また、決算前に出す賞与は、法人税の計算で経費(損金)にするための要件もあります。税金と労務の両方から、支給の時期と方法を設計しましょう。

シミュレーション:冬の賞与60万円の手取りと会社の負担

結論から言うと、賞与60万円の場合、社員の手取りは約48.6万円、会社の総負担は約69.8万円です。

前提条件

  • 社員:45歳(介護保険の対象)、扶養している家族なし
  • 毎月の給与:28万円(標準報酬月額28万円)
  • 冬の賞与:60万円(12月支給)
  • 保険料率(本人負担):健康保険・介護保険・子ども子育て支援金で合計約5.9%、厚生年金9.15%、雇用保険0.5%と仮定
  • 会社負担:上記の健康保険・厚生年金と同率、雇用保険0.85%、子ども・子育て拠出金0.36%と仮定(労災保険は除く)
  • 保険料率は都道府県や年度によって異なります。ここでは分かりやすさを優先した概算です

社員の手取り

項目計算の考え方金額
賞与の支給額―600,000円
健康保険・介護保険等600,000円×約5.9%▲35,400円
厚生年金保険600,000円×9.15%▲54,900円
雇用保険600,000円×0.5%▲3,000円
社会保険料控除後の賞与600,000円−93,300円506,700円
源泉所得税506,700円×算出率(前月給与の社会保険料控除後は約23.6万円・扶養なしの欄。ここでは4.084%で概算)▲約20,700円
手取り額 約486,000円

会社の総負担

項目計算の考え方金額
賞与の支給額―600,000円
健康保険・介護保険等(会社負担)600,000円×約5.9%35,400円
厚生年金保険(会社負担)600,000円×9.15%54,900円
雇用保険(会社負担)600,000円×0.85%5,100円
子ども・子育て拠出金600,000円×0.36%2,160円
会社の総負担(労災保険料は別途)約697,600円
【シミュレーションから分かること】 賞与60万円のうち、社員の手元に残るのは約48.6万円(約81%)です。一方、会社は約69.8万円(支給額の約1.16倍)を負担しています。 「社員が受け取る金額」と「会社が支払う金額」の間には、約21万円の差があります。この差を社員に説明できると、賞与の価値が正しく伝わり、社員の納得感も高まります。

よくある質問(FAQ)

Q. 賞与から住民税は差し引かれますか?

A. 差し引かれません。住民税は前年の所得をもとに年額が決まり、毎月の給与から12回に分けて差し引く仕組みのため、賞与からは差し引きません。

Q. 寸志や金一封も賞与になりますか?

A. なります。名前に関係なく、労働の対価として年3回以下支給されるものは賞与として扱われ、社会保険料と源泉所得税の対象になります。少額でも賞与支払届の提出が必要です。

Q. 賞与を支給しなかった場合も、届出は必要ですか?

A. 年金事務所から賞与支払予定月に合わせて届出用紙が送られている場合、支給しなかったときは「賞与不支給報告書」の提出が必要です。賞与の支払予定月を変更したい場合も手続きがあります。

Q. 賞与の源泉所得税は、年末調整で精算されますか?

A. 精算されます。年末調整では、1年間の給与と賞与をすべて合計して年税額を計算し直します。賞与で差し引いた税額が多すぎたり少なすぎたりしても、年末調整で調整されます。

Q. 会社が赤字でも、賞与の社会保険料はかかりますか?

A. かかります。社会保険料は会社の利益に関係なく、支給した賞与の額に応じて発生します。資金繰りが厳しい年は、支給額と保険料の両方を見込んで原資を決めることが大切です。

まとめ:賞与は「総負担」と「届出」までがセット

【3行まとめ】 1.賞与60万円の会社負担は約70万円。社会保険料の会社負担分を含めて原資を確保しましょう。 2.社会保険料は標準賞与額×保険料率、所得税は前月給与をもとにした算出率で計算します。 3.支給日から5日以内の賞与支払届、翌月の納付期限、そして支給基準を定めた就業規則までがセットです。

賞与は、社員の頑張りに報いる大切な機会です。だからこそ、計算ミスや届出漏れで、社員の信頼や会社の資金を損なうことは避けたいところです。

当事務所には税理士と社会保険労務士が在籍しており、賞与の源泉所得税と社会保険料の計算はもちろん、賞与規程・就業規則の整備、決算賞与の損金算入要件の確認まで、税金と労務の両面から一体で支援しています。巡回監査で日ごろの数字を把握しているからこそ、資金繰りに合わせた賞与原資のご提案も可能です。くわしくは当事務所ホームページをご覧ください。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年の賞与の会社負担を正確に知りたい」「賞与の支給基準を就業規則に整えたい」——そんな段階でのご相談こそ、最も効果が出るタイミングです。初回のご相談はオンラインでも承っています。 ▶ ご相談・お問い合わせは当事務所ホームページから

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