忘年会・社員旅行・お歳暮はどこまで経費にできる?

福利厚生費と交際費の線引きを税理士が具体例でスッキリ解説|税務調査で否認されない記録のコツ

「今年の忘年会、会社のお金で払っても大丈夫?」「二次会の分も経費にしていいの?」「社員旅行は全額経費になると聞いたけれど本当?」

年末が近づくと、忘年会や社員旅行、取引先へのお歳暮など、会社としてお金を使う場面が一気に増えます。せっかく社員をねぎらうために使ったお金が、あとから税務調査で「これは経費になりません」「社員への給与です」と指摘されてしまっては、元も子もありません。

この記事では、年末に増える支出を「福利厚生費」「交際費」「給与」のどれとして扱うべきかを、身近な例を使って一読で分かるように解説します。さらに、忘年会への参加が「仕事」になるのかという労務の視点や、社員旅行で思わぬ課税が生じるケースのシミュレーションまで紹介します。

【この記事の結論】 ① 社員全員が対象の忘年会は「福利厚生費」として経費にできます。ただし、一部の人だけの二次会や、社長と役員だけの飲み会は「交際費」になります。 ② 取引先との飲食やお歳暮は「交際費」です。中小企業は年800万円まで経費にでき、1人1万円以下の飲食は記録を残せば交際費から外せます。 ③ 最大の落とし穴は「社員への給与扱い」です。社員旅行の要件を満たさない場合や、商品券を配った場合は、社員の給与として源泉所得税がかかります。

まず押さえたい3つの区分:福利厚生費・交際費・給与

結論から言うと、年末の支出は「誰のために」「誰が対象で」「何のために」使ったかで、福利厚生費・交際費・給与の3つに分かれます。

福利厚生費とは、社員全員が平等に利用できるように、会社が社員の働きやすさや健康、親睦のために支出する費用のことです。

交際費とは、取引先など事業に関係のある人に対して、接待や贈り物、お祝いなどのために支出する費用のことです。一部の社員や役員だけを対象にした飲食も、交際費に含まれます。

給与(現物給与)とは、お金そのものではなくても、会社から社員個人に経済的な利益が与えられた場合に、給与として扱われるもののことです。

クラスの打ち上げにたとえると、クラス全員を誘って先生が出すジュース代は「福利厚生費」、他のクラスの先生をもてなすお茶代は「交際費」、仲の良い数人にだけ配るお小遣いは「給与」のようなイメージです。

区分主な例会社の経費(損金)になるか社員への課税
福利厚生費全員参加の忘年会、要件を満たす社員旅行なるなし
交際費取引先の接待、お歳暮、役員だけの飲み会、一部の社員だけの二次会中小企業は年800万円までなる(または接待飲食費の50%)なし
給与社員に配る商品券、要件を満たさない社員旅行、特定の人だけへの贈り物なる(役員の場合は原則ならない)あり(源泉所得税)
[画像指示:支出を「誰のため・誰が対象・何のため」の3つの質問で福利厚生費・交際費・給与に振り分けるフローチャート風イラスト / キャプション:同じ飲食代でも、対象者と目的で勘定科目が変わります]

忘年会の費用はどこまで経費になる?

結論として、社員全員を対象とし、常識的な金額で行う一次会は福利厚生費になります。一方で、参加者が限られる二次会や、高級すぎる会場での開催は交際費や給与と判断されやすくなります。

福利厚生費になるための3つの条件

  1. 全員が対象であること:全社員(または全部署の社員)に参加の機会があること。結果的に欠席者がいても問題ありません。
  2. 常識的な金額であること:法律で決まった金額はありませんが、一般的な忘年会の水準を大きく超えないこと。実務上は1人あたり数千円〜1万円程度が一つの目安です。
  3. 会社の行事として行うこと:会社の行事として案内し、会社が費用を負担すること。

二次会・役員だけの会・家族の参加はどうなる?

ケース扱い理由
全社員を対象にした一次会福利厚生費全員に参加の機会があるため
希望者だけで行く二次会交際費参加者が限られるため
社長と役員だけの忘年会交際費役員だけを対象にしているため
取引先を招いた忘年会交際費取引先をもてなす目的が含まれるため
社長が家族だけで行った食事経費にならない(役員賞与と判断されるおそれ)事業との関係がないため
1人あたり数万円の高級店での開催交際費または給与と判断されやすい常識的な金額を超えるため

■ 個人事業主の場合

個人事業主には、法人のような交際費の上限はありません。事業に必要な支出であれば必要経費になります。ただし、従業員がいない個人事業主が一人で行う「忘年会」や、家族だけの食事は、事業との関係が説明できないため必要経費にはなりません。

税理士の実務視点 税務調査で確認されるのは、金額よりも「誰が参加したか」です。忘年会の案内文(全社員宛のメールや掲示)と参加者名簿、領収書をセットで保管しておけば、福利厚生費であることを明確に説明できます。逆に、領収書しか残っていないと、役員だけの飲み会ではないかと疑われる原因になります。

社員旅行は「4泊5日」と「参加率50%」が分かれ目

結論として、社員旅行は旅行期間が4泊5日以内(海外旅行は現地での滞在日数)で、参加者が全社員の50%以上であれば、原則として社員への給与にはならず、福利厚生費として経費にできます。

このほか、会社が負担する金額が常識的な範囲であることも必要です。国税庁は、会社負担が1人あたり10万円程度の旅行を、給与として課税しなくてよい例として示しています。

社員旅行の判定ステップ

STEP1 旅行期間は4泊5日以内か 海外旅行の場合は、機内泊を除いた現地での滞在日数で判定します。超える場合は給与として課税されます。
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STEP2 参加者は全社員の50%以上か 工場や支店ごとに行う場合は、その職場の人数の50%以上で判定します。満たさない場合は、参加者への給与として課税されます。
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STEP3 会社の負担額は常識的な範囲か 1人あたり10万円程度が目安とされています。豪華すぎる旅行は給与と判断されることがあります。
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STEP4 不参加者に現金を渡していないか 自分の都合で参加しなかった人に現金を支給すると、参加者を含めた全員に、その現金と同じ額の給与があったものとされます。
【要注意】役員だけの旅行や、取引先との旅行は福利厚生費になりません 役員だけが参加する旅行は、社員全員を対象としていないため福利厚生費にはなりません。役員への給与(役員賞与)と判断されると、会社の経費にならず、役員個人にも所得税がかかります。また、取引先を招待する旅行は交際費です。

お歳暮・取引先の接待・社員への商品券の扱い

結論として、取引先へのお歳暮や接待は交際費、社員に配る商品券は給与です。特に商品券は「現金と同じもの」として扱われるため、少額でも課税されます。

取引先へのお歳暮と接待飲食

取引先へのお歳暮やお中元、接待の飲食代は交際費です。中小企業(資本金1億円以下の法人など)は、年800万円までの交際費を全額経費にできるか、接待飲食費の50%を経費にできるか、有利な方を選べます。多くの中小企業では、800万円の範囲に収まるため、交際費だから税金が増えるということはほとんどありません。

また、取引先との飲食で1人あたり1万円以下(2024年4月以降の支出分)のものは、交際費から外して「会議費」などとして扱えます。そのためには、飲食の日付、参加者の氏名と関係、人数、金額、店名を記録しておく必要があります。

社員への年末の贈り物

渡すもの扱いポイント
全社員に同じ品物(お菓子・タオルなど)福利厚生費少額で、全員に同じものを渡すこと
商品券・ギフトカード・現金給与(源泉所得税の対象)金額にかかわらず現金と同じ扱い
特定の社員だけに高価な品物給与一部の人だけへの経済的利益になるため

消費税の扱いにも注意

福利厚生費や交際費として支払った飲食代やお歳暮の品物代は、消費税の計算で差し引ける(仕入税額控除)のが原則です。そのためには、お店や業者からインボイス(適格請求書)を受け取って保存しておく必要があります。一方、商品券やギフトカードの購入は消費税がかからない取引なので、差し引くことはできません。

見落としがちな労務の視点:忘年会は「仕事」になる?

結論として、参加が実質的に強制されている忘年会は、労働時間と判断されることがあります。税金の区分だけでなく、労務の面からも運営方法を見直しておくことが大切です。

労働時間とは、会社の指揮命令のもとで働いている時間のことです。忘年会でも、上司から参加を命じられている、欠席すると評価が下がる、幹事として準備や進行を任されているといった場合は、その時間が労働時間とみなされ、賃金の支払いが必要になる可能性があります。

  • 参加は任意であることを明確にする:案内文に「自由参加」と明記し、欠席による不利益がないようにします。
  • 幹事の負担に配慮する:業務時間内に準備をさせる、幹事の負担が大きい場合は業務として扱うなどの配慮が必要です。
  • 行き帰りの事故:業務として参加を命じた会であれば、行き帰りの事故が労災と認められる可能性があります。任意参加の会では、原則として労災の対象になりません。
  • お酒の強要やハラスメント:飲酒の強要や不適切な言動があった場合、会社が責任を問われることがあります。
税理士の実務視点 「全員参加だから福利厚生費になる」という税金の考え方と、「強制参加なら労働時間になる」という労務の考え方は、一見ぶつかるように見えます。実務上の正解は、「全員に参加の機会を設け、参加は自由とする」という運営です。こうしておけば、税金の面では福利厚生費の要件を満たし、労務の面でも労働時間の問題を避けられます。

シミュレーション:年末イベントの経費処理と、社員旅行で失敗した場合の負担

結論から言うと、正しく区分すれば年末の支出はほぼ全額が経費になります。一方で、社員旅行で不参加者に現金を渡してしまうと、参加者全員にまで課税が広がり、会社には源泉所得税の徴収漏れという負担が生じます。

前提条件

  • 社員20人、資本金1,000万円の製造業(3月決算)。年間の交際費は800万円以内
  • 忘年会:全社員対象、1人8,000円 × 20人
  • 二次会:役員2人と希望者の社員3人、合計6万円
  • 取引先へのお歳暮:30社 × 5,000円
  • 社員旅行:1泊2日、会社負担1人6万円。参加者16人(80%)、自己都合の不参加者4人に「代わりに」3万円ずつ支給
  • 数値は分かりやすさを優先した概算です

年末イベントの区分と経費処理

支出金額区分経費になるか
忘年会(一次会)16万円福利厚生費なる
二次会6万円交際費なる(800万円の範囲内)
お歳暮15万円交際費なる(800万円の範囲内)
社員旅行(16人分)96万円福利厚生費(要件を満たす場合)なる
不参加者4人への現金12万円給与なる(ただし源泉徴収が必要)
合計145万円 すべて経費になる

不参加者への現金支給で生じる問題

自己都合で不参加だった4人に3万円ずつ渡したことで、参加者16人を含む全員20人に、3万円ずつの給与があったとされます。

項目計算の考え方金額
給与とされる額3万円 × 20人60万円
本来天引きすべきだった源泉所得税賞与の算出率を平均約6%と仮定約3.6万円
不納付加算税源泉所得税の10%(調査で指摘された場合)約0.4万円
会社の追加負担(参加者から回収できない場合) 約4万円+延滞税

金額だけを見ると大きくないように見えますが、問題は給与計算と年末調整のやり直し、社員一人ひとりへの説明という手間です。社員旅行の金額が大きい会社や、毎年同じ運用を続けている会社では、税務調査で数年分まとめて指摘されることになります。

【シミュレーションから分かること】 忘年会・社員旅行・お歳暮は、区分さえ正しければ、ほとんどの中小企業で全額を経費にできます。 一方で、「不参加者がかわいそうだから」という善意の現金支給が、全員への課税という思わぬ結果を招きます。不参加者には現金を渡さない、どうしても配慮したい場合は、業務の都合で参加できなかった人に限るなど、ルールを事前に決めておくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q. 忘年会の費用は1人いくらまでなら福利厚生費になりますか?

A. 法律で決まった金額の上限はありません。全社員を対象とし、一般的な忘年会の水準を大きく超えない金額であれば福利厚生費になります。実務上は1人あたり数千円〜1万円程度が一つの目安です。

Q. 欠席した社員がいても、福利厚生費になりますか?

A. はい。全社員に参加の機会があれば、結果的に欠席者がいても福利厚生費になります。案内を全社員に出したことが分かる記録を残しておきましょう。

Q. 社員旅行は何泊までなら給与として課税されませんか?

A. 旅行期間が4泊5日以内(海外旅行は現地での滞在日数)で、参加者が全社員の50%以上であることが目安です。会社の負担額が常識的な範囲であることも必要です。

Q. 取引先との飲食はすべて交際費ですか?

A. 原則は交際費ですが、1人あたり1万円以下(2024年4月以降の支出分)の飲食費は、日付・参加者の氏名と関係・人数・金額・店名を記録すれば、交際費から外すことができます。

Q. 社員に商品券を配るのは問題ありますか?

A. 配ること自体は問題ありませんが、商品券は現金と同じ扱いになるため、金額にかかわらず給与として源泉所得税の対象になります。福利厚生費にしたい場合は、全員に同じ品物を渡す方法を検討しましょう。

まとめ:年末の支出は「対象者」と「記録」で決まる

【3行まとめ】 1.全社員対象の忘年会は福利厚生費。二次会・役員だけの会・取引先との会は交際費です。 2.社員旅行は「4泊5日以内・参加率50%以上・常識的な金額」が条件。不参加者への現金支給は全員課税の原因に。 3.商品券は給与扱い。強制参加の忘年会は労働時間になり得るため、「全員に機会、参加は自由」で運営を。

年末の行事は、社員の一年の頑張りをねぎらい、会社の一体感を高める大切な機会です。だからこそ、あとから税金や労務の問題で水を差されることがないよう、事前のルールづくりと記録の整備が欠かせません。

当事務所には、国税の調査実務を知る国税OBの税理士が在籍しており、税務調査で確認されやすい交際費・福利厚生費の区分や記録の残し方を、調査官の視点から点検しています。また、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携しているため、社内行事の運営ルールや就業規則の整備まで、税金と労務の両面から一体でサポートできます。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年の忘年会や社員旅行の処理がこれで大丈夫か確認したい」「交際費の記録の残し方を社内で統一したい」——年末を迎える前の今が、ご相談に最適なタイミングです。オンラインでのご相談も承っています。

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