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賞与にかかる社会保険料と税金の計算方法、会社の本当の負担額を経営者向けにやさしく解説
「ボーナスを50万円出すつもりだけど、社員の手取りはいくらになるのだろう」「会社として実際にはいくら用意すればいいのか」——冬のボーナスを前に、こうした疑問を持つ経営者の方は少なくありません。
社員の側から「額面のわりに手取りが少ない」と言われて、うまく説明できなかった経験がある方もいるのではないでしょうか。ボーナス(賞与)には、毎月の給料と同じように社会保険料と所得税がかかります。さらに2026年4月からは「子ども・子育て支援金」の負担も始まり、計算の中身が一つ増えました。
この記事では、賞与にかかるお金の仕組みを、はじめての方でも一読で分かるように整理します。社員の手取り額と会社の負担額を実際の数字で計算し、さらに社長自身の賞与(役員賞与)で失敗しないためのルールまで解説します。
| 【この記事の結論】 ① 賞与50万円の手取りは、目安で約39〜40万円です。社会保険料(約15〜16%)と所得税が差し引かれます。住民税は賞与からは引かれません。 ② 会社の負担は「支給額+約16〜17%」です。50万円の賞与なら、社会保険料の会社負担分などを含めて約58万円を準備する必要があります。 ③ 社長の賞与は「事前に届け出た金額どおり」でなければ経費になりません。社員の賞与とはルールがまったく違うため、支給前の確認が欠かせません。 |
賞与(ボーナス)とは?税金と社会保険での扱いの基本
結論から言うと、賞与は「毎月の給料とは別枠で計算されるお給料」です。別枠だからこそ、計算の方法も独自のルールになっています。
賞与とは、毎月の決まった給料とは別に、会社の業績や本人の働きぶりに応じて臨時に支払うお給料のことです。
名前が「ボーナス」「期末手当」「寸志」「決算賞与」のどれであっても、社会保険では年3回以下の支給であれば賞与として扱われます。家庭にたとえると、毎月のお小遣いとは別に、夏休みや年末に渡す「特別なお小遣い」のようなものです。特別なお小遣いにも、毎月のお小遣いと同じように「家に入れるお金(=社会保険料や税金)」がかかる、とイメージしてください。
賞与から差し引かれるもの・差し引かれないもの
| 項目 | 賞与から引かれるか | 計算のもとになる金額 |
| 健康保険料 | 引かれる | 標準賞与額(賞与の1,000円未満を切り捨てた額) |
| 介護保険料(40〜64歳) | 引かれる | 標準賞与額 |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月分〜) | 引かれる | 標準賞与額 |
| 厚生年金保険料 | 引かれる | 標準賞与額(1回150万円が上限) |
| 雇用保険料 | 引かれる | 賞与の支給額 |
| 所得税(源泉徴収) | 引かれる | 社会保険料を差し引いた後の賞与額 |
| 住民税 | 引かれない | 毎月の給料から1年分を12回に分けて天引き |
※健康保険の標準賞与額は、4月1日〜翌年3月31日の年度合計で573万円が上限です。
標準賞与額とは、実際に支払った賞与から1,000円未満を切り捨てた金額で、社会保険料を計算するときの「ものさし」になる金額のことです。
2026年4月から始まった「子ども・子育て支援金」
子ども・子育て支援金とは、児童手当の拡充などの少子化対策の財源として、健康保険料と一緒に集められる新しい負担金のことです。
2026年4月分の保険料から徴収が始まり、毎月の給料だけでなく賞与にもかかります。健康保険料と同様に会社と社員で半分ずつ負担します。金額は大きくありませんが、今年の冬のボーナスは「この支援金が加わって初めての冬の賞与」になります。給与計算ソフトの設定が更新されているか、念のため確認しておきましょう。
賞与の手取りが決まるまでの流れ
結論として、手取り額は「①社会保険料を引く→②残りに税率を掛けて所得税を引く」という2段階で決まります。順番が大切です。
| STEP1 賞与の支給額を決める 就業規則や賃金規程の定めに沿って、支給額と支給日を決めます。 |
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| STEP2 標準賞与額を計算する 支給額の1,000円未満を切り捨てます。厚生年金は1回150万円、健康保険は年度合計573万円が上限です。 |
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| STEP3 社会保険料・雇用保険料を差し引く 健康保険・介護保険・子ども子育て支援金・厚生年金は標準賞与額に保険料率を掛け、会社と社員で折半します。 |
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| STEP4 所得税を差し引く 社会保険料を引いた後の金額に、「前月の給料」と「扶養家族の人数」で決まる税率(賞与の算出率)を掛けます。 |
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| STEP5 支給と届出 支給日から5日以内に「賞与支払届」を年金事務所などへ提出し、源泉所得税は翌月10日までに納めます。 |
| [画像指示:賞与50万円が「社会保険料」「所得税」「手取り」に分かれていく様子を、積み木のように色分けして示した図解イラスト / キャプション:賞与からは社会保険料が先に引かれ、残りに所得税がかかります] |
所得税は「前月の給料」で税率が決まる
賞与の所得税は、賞与の金額そのものではなく、前月の給料(社会保険料を引いた後)と扶養家族の人数で税率が決まるのが特徴です。前月の給料が高い人ほど、賞与にかかる税率も高くなります。
ただし、前月に給料の支払いがない場合や、賞与の額が前月の給料の10倍を超える場合は、別の計算方法(月額表を使う方法)になります。決算賞与を急に大きく出すときなどは注意が必要です。
| 税理士の実務視点 賞与で引かれる所得税は、あくまで「仮の前払い」です。1年間の本当の税額は年末調整で精算されるため、賞与で多めに引かれても、少なめに引かれても、最終的な年間の所得税額は変わりません。社員から「ボーナスの税金が高すぎる」と質問されたときは、この点を説明すると納得してもらいやすくなります。 |
賞与支給で経営者が押さえるべき実務上の注意点と罠
結論として、賞与のトラブルは「回数」「タイミング」「規程」の3点で起こります。いずれも支給前に確認すれば防げるものです。
罠① 年4回以上支払うと「賞与」ではなく「給料」扱いになる
社会保険では、賞与が年4回以上支払われると、その賞与は毎月の給料(報酬)の一部として扱われます。その結果、毎月の保険料のもとになる「標準報酬月額」が上がり、保険料の計算が変わります。「寸志」や「臨時手当」を何度も出している会社は、回数を数え直してみてください。
罠② 退職月や育児休業中の賞与は扱いが変わる
社会保険の資格がなくなった月(退職日の翌日が属する月)に支払う賞与には、社会保険料はかかりません。一方、月末に退職した人は翌月1日に資格がなくなるため、退職月に支払う賞与には保険料がかかります。また、育児休業中の社員の賞与は、その月の末日を含めて連続1か月を超える育児休業を取っている場合に限り、保険料が免除されます。
罠③ 就業規則・賃金規程との食い違い
「支給日に在籍している社員にだけ支給する」といったルール(支給日在籍要件)は、就業規則などに書いておかなければ、退職者から支払いを求められたときに争いになることがあります。業績が悪い年に支給を見送る可能性があるなら、「業績により支給しないことがある」と規程に明記しておくことも重要です。
| 【要注意】賞与支払届の出し忘れ 賞与を支払ったら、支給日から5日以内に「賞与支払届」を提出する必要があります。出し忘れると保険料が正しく計算されず、後からまとめて請求されるだけでなく、社員の将来の年金額にも賞与分が反映されません。給与計算を外部に任せている場合も、提出したかどうかを必ず確認しましょう。 |
社長(役員)の賞与は社員とルールがまったく違う
結論として、社長などの役員に支払う賞与は、税務署に事前に届け出た金額を、届け出た日に支払った場合に限り、会社の経費(損金)になります。
事前確定届出給与とは、役員に支払う賞与の金額と支給日をあらかじめ税務署に届け出ておき、そのとおりに支払うことで会社の経費として認められる仕組みのことです。
社員の賞与は業績を見てから金額を決めても経費になりますが、役員の賞与は「業績が良かったから上乗せしよう」とすると経費になりません。これは、役員が自分で自分の給料を決められる立場にあるため、利益の調整に使われないようにするための決まりです。
| 比較項目 | 社員の賞与 | 役員の賞与(事前確定届出給与) |
| 会社の経費になるか | 原則なる | 届出どおりに支払った場合だけなる |
| 金額を決める時期 | 支給の直前でもよい | 事前に決めて税務署へ届出 |
| 届出の期限 | 不要 | 原則、株主総会などで決めた日から1か月以内(会計期間開始から4か月以内) |
| 金額を変えたら | 問題なし | 原則として支給額の全額が経費にならない |
| 社会保険料 | かかる | かかる(社員と同じ計算) |
| 税理士の実務視点 届け出た金額より「少なく」払った場合でも、原則として全額が経費にならない点は意外と知られていません。業績が読みにくい会社は、無理に高い金額を届け出ず、資金繰りに余裕を持たせた金額にしておくのが実務上の鉄則です。また、届出書を出したかどうか、提出控えを社内で保管しているかも確認しておきましょう。 |
シミュレーション:賞与の手取り額と会社の負担額
結論から言うと、賞与50万円を支給すると、社員の手取りは約39.6万円、会社が実際に準備するお金は約58.3万円になります。具体的に計算してみましょう。
ケース① 社員1人に冬の賞与50万円を支給する場合
前提条件
- 社員は45歳(介護保険料の対象)、扶養家族なし、協会けんぽに加入
- 前月の給料(社会保険料を引いた後)は約31万円
- 保険料率は目安として、健康保険10.0%、介護保険1.6%、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%(いずれも労使合計)、雇用保険は本人0.5%・会社0.85%、労災保険0.3%と仮定
- 所得税の算出率は6.126%と仮定(実際の率は前月の給料と扶養人数で変わります)
| 項目 | 社員の負担 | 会社の負担 |
| 健康保険料 | 25,000円 | 25,000円 |
| 介護保険料 | 4,000円 | 4,000円 |
| 子ども・子育て支援金 | 575円 | 575円 |
| 厚生年金保険料 | 45,750円 | 45,750円 |
| 雇用保険料 | 2,500円 | 4,250円 |
| 子ども・子育て拠出金(会社のみ) | — | 1,800円 |
| 労災保険料(会社のみ) | — | 1,500円 |
| 所得税((50万円−77,825円)×6.126%) | 25,862円 | — |
| 合計 | 103,687円 | 82,875円 |
| 【ケース①の結果】 社員の手取り:500,000円−103,687円=約39.6万円(支給額の約79%) 会社の総負担:500,000円+82,875円=約58.3万円(支給額の約117%) 賞与の予算を立てるときは、「支給総額×1.17」を目安にすると、資金繰りの見込み違いを防げます。 |
ケース② 社長の年収1,200万円を「月給」と「賞与」でどう分けるか
次に、社長の年間報酬1,200万円の受け取り方を変えた場合の社会保険料(会社負担+本人負担の合計)を比べます。介護保険の対象年齢で、保険料率はケース①と同じ前提です。
| 項目 | A:月100万円×12か月 | B:月40万円×12か月+事前確定届出給与720万円(年1回) |
| 健康保険・介護・支援金 | 約139.1万円(標準報酬月額98万円) | 月給分 約58.2万円+賞与分 約67.8万円(年度上限573万円で計算) |
| 厚生年金 | 約142.7万円(上限の65万円で計算) | 月給分 約90.0万円+賞与分 約27.5万円(1回上限150万円で計算) |
| 社会保険料の合計(労使合計) | 約281.9万円 | 約243.5万円 |
| 差額 | — | 年約38万円少ない |
※子ども・子育て拠出金は除いています。年収の合計は同じため、年間の所得税・住民税はほぼ変わりません。
| 【シミュレーションから分かること】 賞与には上限があるため、受け取り方によって社会保険料が変わります。ただし、Bの方法にはデメリットもあります。 ① 将来の年金が減る:厚生年金のもとになる金額が小さくなるため、老後の年金額も少なくなります。 ② 病気のときの保障が減る:傷病手当金は毎月の標準報酬月額で計算されるため、休業時の給付が少なくなります。 ③ 届出どおりに払えないと全額が経費にならない:業績が悪化した年に支給額を減らすと、法人税の負担が一気に増えます。 ④ 月給の変更は時期が決まっている:役員の月給は原則として事業年度開始から3か月以内にしか変更できません。 保険料が安くなる面だけを見て決めるのではなく、年金・保障・資金繰りまで含めて判断することが、税理士と社会保険労務士の実務視点から見た結論です。 |
よくある質問(FAQ)
Q. 賞与から住民税は引かれますか?
A. 引かれません。住民税は前年の所得をもとに1年分の税額が決まり、毎月の給料から12回に分けて天引きされます。賞与の金額が多くても、その年の賞与から住民税が引かれることはありません(翌年の住民税額に反映されます)。
Q. ボーナスの所得税が高すぎる気がします。払いすぎではないですか?
A. 賞与の所得税は「前月の給料」で税率が決まる仮の前払いです。1年間の正しい税額は年末調整で精算されるため、払いすぎていれば年末調整で戻ってきます。
Q. 「寸志」程度の少額でも社会保険の届出は必要ですか?
A. 必要です。名前や金額に関係なく、賞与として支払ったものは賞与支払届の対象になり、社会保険料もかかります。支給日から5日以内に提出してください。
Q. パート社員に賞与を出す場合も同じ計算ですか?
A. 社会保険に加入しているパート社員であれば同じ計算です。社会保険に加入していない場合は、雇用保険料(加入者のみ)と所得税だけが差し引かれます。
Q. 社長に決算賞与を出して利益を減らすことはできますか?
A. できません。役員の賞与は、事前に税務署へ届け出た金額を届け出た日に支払った場合だけ経費になります。決算直前に業績を見て決めた役員賞与は経費にならず、社長個人には所得税がかかるため、二重の負担になります。
まとめ:賞与は「支給前の30分の確認」で損を防げる
| 【3行まとめ】 1.賞与50万円の手取りは約39〜40万円、会社の負担は約58万円。予算は「支給総額×1.17」が目安です。 2.年4回以上の支給、退職月・育休中の賞与、賞与支払届の期限(5日以内)に注意。2026年4月からは子ども・子育て支援金も加わりました。 3.社長の賞与は事前確定届出給与のルールどおりでなければ経費にならず、受け取り方次第で社会保険料も将来の年金も変わります。 |
賞与の計算は、税金と社会保険という2つの制度にまたがっています。特に社長の報酬設計は、法人税・所得税・社会保険料・将来の年金のすべてに影響するため、どれか1つの視点だけで決めると思わぬ損につながります。
当事務所では、税理士と社会保険労務士が同じ事務所内で連携し、賞与の支給計画から賞与支払届、役員報酬の設計までを一体でサポートしています。国税OBの税理士も在籍しているため、事前確定届出給与のように税務調査で確認されやすい論点も、調査官の視点を踏まえて点検できます。
| 税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「今年の冬の賞与、いくら出せば資金繰りは大丈夫か」「社長の報酬の受け取り方を見直したい」——そんなご相談を、毎月の巡回訪問やオンライン面談でお受けしています。来期の役員報酬を決める前のご相談が、最も効果の大きいタイミングです。 |
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