【2028年4月施行】遺族年金が大改正!経営者・個人事業主が「今」知っておくべきすべて

「もし自分に万が一のことがあったら、家族の生活は、会社はどうなるのか」——経営者や個人事業主であれば、一度は頭をよぎる不安ではないでしょうか。実は2025年、遺族年金の制度が65年ぶりともいわれる大きな見直しを受け、2028年4月から新しいルールがスタートします。これまで「配偶者が亡くなったら一生涯もらえる」と思われていた遺族厚生年金が、条件によっては「5年間だけ」に変わるのです。

この記事では、中学生でも理解できるレベルまでかみ砕いて、①遺族年金の基本のしくみ、②2028年4月から何がどう変わるのか、③経営者・個人事業主がなぜ特に注意すべきなのか、④具体的な金額シミュレーション、⑤今からできる備えまで、一つひとつ丁寧に解説します。読み終える頃には、「自分の場合はどうなるのか」がはっきりとイメージできるようになります。

このページの目次

1. そもそも「遺族年金」とは?家計を支える「1階部分」と「2階部分」

遺族年金とは、一家の大黒柱(年金の加入者)が亡くなったときに、残された家族の生活を支えるために支給される公的年金です。マンションで例えると、年金制度は2階建ての建物のようになっています。

📌 1階部分=遺族基礎年金 国民年金に加入していた人が亡くなったときに、原則「18歳になった年度末までの子」がいる配偶者・子に支給されます。自営業者もサラリーマンも、みんなが入っている国民年金がベースです。

📌 2階部分=遺族厚生年金 会社員や公務員、法人の役員など、厚生年金に加入していた人が亡くなったときに、1階部分に上乗せして支給されます。個人事業主自身は原則この2階部分には入っていません。

[画像:2階建て年金制度のイメージ図。1階に「遺族基礎年金(国民年金)」、2階に「遺族厚生年金(厚生年金)」と書かれた家のイラストで、誰が対象になるかを図解する。]

1-1. 遺族基礎年金と遺族厚生年金のちがい(比較表)

項目遺族基礎年金遺族厚生年金
加入していた年金国民年金厚生年金
対象になりやすい人自営業者・フリーランス・会社員・公務員(全員)会社員・公務員・法人役員など厚生年金加入者
主な受給対象子のある配偶者、または子子の有無を問わない配偶者・子・父母など
受給できる期間(現行)子が18歳になる年度末まで条件を満たせば原則終身
今回の改正の影響期間は変更なし(子の加算額などは見直しあり)原則終身 → 一定の場合は「原則5年」に変更

2. 何がどう変わる?「年金制度改正法」の全体像

2025年5月30日、衆議院で「年金制度改正法案」が可決・成立しました。今回の改正の柱の一つが、遺族厚生年金の見直しです。背景にあるのは、共働き世帯の増加や女性の就業率上昇といった社会構造の変化です。これまでの制度は「夫が働き、妻は専業主婦」という昭和の家庭モデルを前提に作られていたため、現代の実情に合わせて「配偶者が亡くなった後の生活の立て直しを支援する制度」へと考え方が転換されます。あわせて、これまで「子のいない55歳未満の夫」がほぼ対象外だったような男女間の不公平も是正されます。

2-1. 改正までのスケジュール

STEP 1 

2025年5月30日:法案成立

衆議院で「年金制度改正法案」が可決され、遺族厚生年金の見直しを含む制度改正が正式に決まりました。

STEP 2 

2025年〜2028年:周知・準備期間

国や日本年金機構による制度周知が行われます。この間に、経営者や個人事業主は自分自身の保障内容を確認し、必要な対策を検討する時間があります。

STEP 3 

2028年4月:新制度スタート

改正後のルールが施行されます。この日以降に発生する遺族厚生年金の受給権から、新しいルールが適用されます。

📌 重要 2028年4月より前にすでに遺族厚生年金を受け取っている人や、施行前に受給権が発生している人は、今回の見直しの対象にはなりません(経過措置)。

3.【最重要】遺族厚生年金が「終身」から「原則5年」へ

今回の改正の中でもっとも影響が大きいのが、遺族厚生年金の支給期間の見直しです。「配偶者が亡くなったら一生涯もらえる」というイメージは、一部の方については当てはまらなくなります。ここでは7つの変更点を、一つずつ具体的に見ていきましょう。

3-1. 20〜50代・子なし配偶者は「原則5年間の有期給付」に

改正後は、20代から50代で、18歳になる年度末までの子がいない配偶者が亡くなった場合、遺族厚生年金は原則として「5年間」の有期給付になります。たとえるなら、これまでは「一度契約したら一生続く保険」だったものが、「まずは5年間、生活再建までの間をしっかり support する保険」に設計が変わるイメージです。子どもがいる家庭や、すでに受給している人はこの変更の対象外です。

3-2. 「有期給付加算」というクッションが新設される

支給期間が5年に短縮される代わりに、その5年間の受給額を手厚くする「有期給付加算」が新設されます。現行制度の遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の4分の3相当額です。改正後は、5年間に限りここへ4分の1相当額が上乗せされ、合計で老齢厚生年金の100%相当額を受け取れる計算になります。つまり「期間は短くなるが、その分、金額は手厚くする」という設計です。

3-3. 「死亡時分割制度」の新設——将来の年金を増やすしくみ

婚姻期間中に、亡くなった配偶者が納めていた厚生年金の記録の一部(およそ半分)を、残された配偶者自身の年金記録として分割できる「死亡時分割制度」が新設されます。これは離婚のときに使われる「離婚時分割」と似たしくみです。これにより、残された配偶者が65歳から受け取る自分自身の老齢厚生年金の額が増え、5年間の有期給付が終わったあとの「老後の生活の土台」が手厚くなります。

3-4. 「収入要件」が撤廃され、受給しやすくなる

現行制度では、遺族厚生年金を受け取るには「同一生計要件」(亡くなった人と生計をともにしていたこと)に加えて、「収入要件」(前年の年収が850万円未満であることなど)の両方を満たす必要がありました。改正後は収入要件が撤廃され、同一生計要件のみで受給できるようになります。配偶者を亡くしたことによる生活への影響は、収入の多い少ないにかかわらず生じるものだという考え方に基づく変更です。

3-5. 「中高齢寡婦加算」は25年かけて段階的に廃止

40歳から65歳になるまでの間、子のいない妻の遺族厚生年金には「中高齢寡婦加算」(令和8年度の目安で年額約62万円)が上乗せされてきました。この加算は、2028年4月以降、法改正から25年という長い期間をかけて段階的に減額され、最終的に廃止されます。急に打ち切られるわけではなく、非常に緩やかな移行期間が設けられている点は覚えておきましょう。

3-6. 子のいない60歳未満の男性も新たに対象に

これまで、子のいない男性は妻の死亡時に55歳以上でなければ遺族厚生年金を受け取れませんでした。改正後は、18歳になる年度末までの子がいない60歳未満の男性も、新たに(5年間の)有期給付の対象に加わります。男女差を解消し、公平な制度にすることが目的です。

3-7. 遺族基礎年金:期間は据え置き、子の加算額は引き上げへ

1階部分にあたる遺族基礎年金は、受け取れる期間そのものに変更はありません。ただし、子の加算額は引き上げられる予定です。令和8年度時点の子の加算額は、第1子・第2子が1人あたり243,800円、第3子以降が1人あたり81,300円ですが、改正後は子1人につき281,700円へ引き上げられ、支給される子の範囲も広がる方向で見直されます(親が再婚して受給資格を失った場合でも、生計を同じくする子への支給が続くようになるなど)。金額は毎年度の物価・賃金動向で改定されるため、最新の金額は日本年金機構の発表をご確認ください。

[画像:改正前と改正後の遺族厚生年金の受給イメージを比較したタイムライン図。改正前は矢印が一生涯続くのに対し、改正後は「5年間+有期給付加算」で終わり、その後は「死亡時分割による増額後の老齢厚生年金」に接続していく様子を図解する。]

3-8. 改正前・改正後 早見比較表

項目改正前(現行)改正後(2028年4月〜)
支給期間(子なし・20〜50代)条件を満たせば原則終身原則5年間の有期給付
受給額(5年間)老齢厚生年金の4分の3相当有期給付加算により100%相当に増額
年金記録分割制度なし死亡時分割制度で将来の老齢厚生年金を増額可能
収入要件年収850万円未満などの制限あり撤廃(同一生計要件のみ)
中高齢寡婦加算年額約62万円(令和8年度目安)25年かけて段階的に廃止
対象となる男性子なしは55歳以上のみ子なし60歳未満も対象に拡大
子のいる家庭・既受給者原則、今回の見直しの対象外(経過措置)

4. 経営者・個人事業主だからこそ「他人事」ではない理由

会社員であれば、勤務先の総務や労務担当者が制度の変更を教えてくれることもありますが、経営者や個人事業主は、自分自身で情報を取りに行かない限り、誰も教えてくれません。しかも、立場によって影響の大きさがまったく異なります。

4-1. 個人事業主は「1階建て」——遺族厚生年金がそもそもない

個人事業主自身は原則として国民年金にしか加入していません。つまり、自分に万が一のことがあっても、家族が受け取れるのは1階部分の遺族基礎年金だけです。しかも遺族基礎年金は「18歳になる年度末までの子」がいなければ支給されません。子のいない個人事業主の配偶者は、現行制度でも改正後も、公的年金からの遺族保障は基本的にゼロという厳しい現実があります。これは今回の改正うんぬん以前の、個人事業主の方が押さえておくべき大前提です。

4-2. 法人の代表者・役員は「2階建て」——今回の改正の直撃を受ける

一方、法人を設立し、自分自身に役員報酬を支払っている経営者は、厚生年金に加入しています。つまり2階部分(遺族厚生年金)の対象であり、今回の改正の影響を正面から受けます。特に、子どもが独立した後の40〜50代の経営者夫婦や、子どもを持たない選択をしている経営者夫婦にとっては、「配偶者に何かあっても一生涯の保障がある」という前提が崩れることを意味します。

4-3. 個人事業主と法人経営者の比較

項目個人事業主法人代表者・役員
加入する年金国民年金(1階のみ)国民年金+厚生年金(2階建て)
子なし配偶者の遺族年金原則なし改正後は原則5年間の有期給付+加算
今回の改正の影響度限定的(もともと保障が薄い)大きい(保障の前提が変わる)
主な備えの方向性生命保険・小規模企業共済等での上乗せ保障内容の再設計、死亡退職金規程の整備等

5. 数字でわかる!具体的シミュレーション

実際にどれくらい金額が変わるのか、2つのケースで見てみましょう。数字はいずれも説明のための概算であり、実際の受給額は加入期間や標準報酬額等により異なります。

事例1:法人代表(43歳・男性)が死亡、妻(38歳・子なし)が遺族となるケース

亡くなった代表者の老齢厚生年金の見込み額を年150万円と仮定します。

 改正前(現行制度)改正後(2028年4月〜)
受給できる年金額の目安年額 約112.5万円(150万円×4分の3)年額 約150万円(有期給付加算により100%相当)
受給できる期間条件を満たせば一生涯5年間(その後は打ち切り)
5年間の受給総額の目安約562.5万円約750万円
5年経過後そのまま継続受給死亡時分割で増えた自分自身の老齢厚生年金へ移行(65歳から)

📌 読み解き方 5年間だけを見ると受給額はむしろ増えますが、6年目以降の収入がゼロになる点が最大の変化です。5年間で得られる約750万円を「その後の生活の立て直し原資」として計画的に使う視点が欠かせません。

事例2:個人事業主(45歳)が死亡、子2人(10歳・7歳)がいる配偶者のケース

子がいる家庭は、遺族厚生年金の有期化の対象外です。個人事業主なので厚生年金はもともとなく、遺族基礎年金のみが支給対象になります。

 受給できる年金の目安(令和8年度水準)
基礎額年額 847,300円
子の加算(2人分)年額 487,600円(243,800円×2人)
合計の目安年額 約133万円(末子が18歳になる年度末まで)

📌 読み解き方 子がいる間は基礎年金がベースとして支給されますが、末子が18歳になる年度末を迎えると打ち切られます。個人事業主の場合はここに厚生年金の上乗せがないため、生命保険や共済制度での上乗せ準備がより重要になります。

[画像:2つの事例を並べたシミュレーション比較グラフ(棒グラフ)。横軸に「改正前」「改正後(5年間)」「6年目以降」を置き、縦軸に受給額の目安を示す。]

6. あなたは対象?影響を受ける人・受けない人 早見表

区分詳細
影響を受ける可能性が高い人2028年度末時点で40歳未満・子なしの女性(主に30代)/18歳年度末までの子がいない60歳未満の男性
影響を受けない人①すでに遺族厚生年金を受給している人(経過措置により継続)
影響を受けない人②60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人
影響を受けない人③18歳になる年度末までの子がいる人
影響を受けない人④2028年度末時点で40歳以上の女性

厚生労働省の推計では、新たに有期給付の対象となる女性は年間約250人、男性は年間約1万6,000人と見込まれており、特に「子のいない男性」への影響が大きいことがわかります。経営者・役員には男性も多いため、他人事とせず自分ごととして確認しておく必要があります。

7. 経営者が「今」からできる3つの備え

STEP 1 

自分の保障を「見える化」する

自分が国民年金だけなのか、厚生年金にも加入しているのか、配偶者に子がいるかどうかで、遺族年金の扱いはまったく異なります。まずはねんきん定期便や日本年金機構の「ねんきんネット」で、自分の加入状況と将来の見込み額を確認しましょう。

STEP 2 

生命保険・法人保険で「5年後・6年目以降」を埋める

遺族厚生年金が5年間で終わるなら、その後の生活費・教育費・住宅ローンなどを、生命保険や法人の死亡退職金規程、小規模企業共済などでカバーできるよう設計し直すことが重要です。特に子どもがいない経営者夫婦は、優先的に見直すべきポイントです。

STEP 3 

専門家に相談し、定期的に見直す

遺族年金の制度は複雑で、家族構成や年齢、法人か個人事業か等によって受け取れる内容が大きく変わります。一度の見直しで終わりにせず、事業や家族構成の変化に合わせて、税理士や社会保険労務士など専門家と定期的に確認する体制を作っておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 制度はいつから変わりますか?すでに受け取っている遺族年金が急に減らされることはありますか?

A. 新しいルールが適用されるのは2028年4月からで、それより前に遺族厚生年金の受給権が発生している人(すでに受給している人を含む)には、経過措置により従来どおりの内容が続きます。突然、今の受給額が引き下げられることはありません。

Q2. 個人事業主でも今回の改正に関係がありますか?

A. 個人事業主自身は原則として国民年金のみの加入のため、遺族厚生年金の有期化そのものの直接的な影響は限定的です。ただし、遺族基礎年金の子の加算額引き上げなど一部の変更は関わってきます。また、事業のために配偶者を役員として厚生年金に加入させている場合などは、配偶者側が改正の対象になる可能性があるため、家族の年金加入状況を個別に確認することが大切です。

Q3. 5年間の有期給付が終わったら、その後はどうなりますか?

A. 有期給付の期間が終了すると遺族厚生年金の支給自体は終了しますが、死亡時分割制度により増額された、ご自身の老齢厚生年金を65歳から受け取ることになります。あわせて、公的年金だけに頼らず、生命保険等で「空白期間」を補う準備をしておくことが推奨されます。

Q4. 中高齢寡婦加算は、いつから受け取れなくなりますか?

A. 2028年4月以降、法改正から25年という長期間をかけて段階的に減額・廃止される予定であり、ある年を境に一気になくなるわけではありません。対象になる方でも、当面は大きな影響を受けにくい設計になっています。

Q5. 制度が複雑でよくわかりません。誰に相談すればよいですか?

A. 遺族年金は、公的年金の知識に加えて、生命保険・退職金制度・事業承継といった経営全体の視点を組み合わせて考える必要がある分野です。税理士や社会保険労務士など、税務と社会保険の両方に詳しい専門家に相談することで、ご自身の状況に合った具体的な対策を整理できます。

まとめ:制度の変化を「知らなかった」では済まされない時代へ

  • 2028年4月から、遺族厚生年金は一定の条件下で「原則5年間の有期給付」に変わります。
  • 5年間の受給額は「有期給付加算」により手厚くなり、あわせて「死亡時分割制度」で将来の老齢厚生年金も増える設計です。
  • 子どもがいる家庭や、すでに受給している方は今回の見直しの対象外です。
  • 個人事業主はもともと遺族厚生年金の対象外のため、生命保険や共済での備えがより重要になります。
  • 法人経営者・役員、特に子どもがいない世帯は影響が大きいため、早めの現状把握と見直しが欠かせません。

遺族年金は、家族構成や年齢、事業形態によって受け取れる金額も期間も大きく変わる、非常に個別性の高い制度です。「自分の場合は結局どうなるのか」「今の生命保険や退職金の準備で十分なのか」は、実際の年金加入状況や事業の状況を踏まえて、一つひとつ確認していく必要があります。個別具体的なケースはご自身での判断が難しい部分も多いため、制度改正を踏まえた保障の見直しや事業承継対策も含め、当事務所へお気軽にご相談ください。経営者・個人事業主の皆さまが安心して事業に専念できるよう、専門的な立場からサポートいたします。

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