今年の冬のボーナスから手取りが変わる?

賞与の社会保険料・源泉所得税の計算方法と、社長の賞与で損しないための注意点

「冬のボーナス、明細を見たら思ったより少なかった……」

毎年この時期になると、社員の方からこんな声を聞く経営者の方は多いはずです。そして会社の側でも、「ボーナスにかかる社会保険料はいくら用意すればいいのか」「税金はどうやって計算するのか」「社長自身の賞与は経費になるのか」と、意外と分からないことだらけではないでしょうか。

しかも今年の冬は、例年とは少し事情が違います。2026年度から、医療保険料に上乗せして「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。つまり、この制度が始まってから初めての冬のボーナスになるのです。

この記事では、ボーナスから何が・いくら引かれるのかという仕組みを、はじめての方でも一読で分かるように整理します。さらに、会社が見落としやすい手続きの罠と、社長・役員の賞与で法人税を数十万円単位で損しないためのルールを、実際の数字でシミュレーションします。

【この記事の結論】 ① 冬のボーナスからは「社会保険料」と「源泉所得税」が引かれます。今年からは子ども・子育て支援金も加わり、50万円の賞与なら約9万円が差し引かれる計算になります。 ② 会社側は「賞与支払届」を支給日から5日以内に提出する必要があります。提出漏れは、年金事務所の調査で必ず指摘されるポイントです。 ③ 社長・役員の賞与は、事前に税務署へ届け出ていなければ会社の経費になりません。届出がないと、200万円の賞与で法人税等が約66万円も多くなることがあります。

冬のボーナスで何が変わる?まず押さえたい基本

結論から言うと、ボーナスの手取りは「額面 − 社会保険料 − 源泉所得税」で決まります。毎月の給与と考え方は同じですが、計算の方法と上限が少しずつ違います。

賞与とは、毎月の給与とは別に、夏・冬・決算期などに支払われる一時的なお金のことです。社会保険の世界では、名前が「ボーナス」「寸志」「期末手当」のどれであっても、年3回以下の回数で支払われるものを賞与として扱います。

家庭のやりくりにたとえると、毎月の給与は「毎月決まったお小遣い」、賞与は「お年玉」のようなものです。お年玉にも、家に入れる分(社会保険料)と貯金に回す分(税金)が先に決まっている、とイメージすると分かりやすいでしょう。

2026年度から始まった「子ども・子育て支援金」とは

子ども・子育て支援金とは、児童手当の拡充など少子化対策の財源として、健康保険などの医療保険料と一緒に集められるお金のことです。2026年4月分の保険料から徴収が始まり、会社員の場合は会社と本人が半分ずつ負担します。

ポイントは、毎月の給与だけでなく、賞与にもかかることです。つまり、今年の冬のボーナスは、支援金が引かれる初めての冬のボーナスになります。金額は大きくありませんが、明細に新しい項目が増えるため、社員から質問を受けたときに説明できるようにしておきましょう。

ボーナスから差し引かれるもの一覧

ボーナスから引かれるものを一覧にすると、次のとおりです(率は2026年度の目安で、健康保険と介護保険は加入している保険や都道府県によって異なります)。

項目計算のもとになる金額本人負担の目安上限
健康保険料標準賞与額約5%(協会けんぽの目安)年度の累計で573万円
介護保険料標準賞与額約0.8%(40〜64歳の人のみ)健康保険と同じ
厚生年金保険料標準賞与額9.15%1回あたり150万円
子ども・子育て支援金標準賞与額約0.115%(支援金率0.23%の半分)健康保険と同じ
雇用保険料賞与の実際の金額0.5%(一般の事業の目安)なし
源泉所得税賞与 − 上記の保険料前月の給与と扶養の人数で決まる率なし

標準賞与額とは、実際に支払った賞与の金額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。社会保険料は、この標準賞与額に保険料率をかけて計算します。

ボーナスの手取りが決まる仕組み

結論として、ボーナスの手取りは「社会保険料を先に引き、残った金額に税率をかける」という順番で決まります。順番を間違えると、税金の額も手取りもずれてしまいます。

STEP1 賞与の額面を確定する 支給する賞与の総額を決めます。現金だけでなく、商品券など金銭に換えられるものも原則として含みます。
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STEP2 社会保険料を計算する 額面から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、健康保険・介護保険・厚生年金・子ども・子育て支援金の率をかけます。雇用保険は実際の金額にかけます。
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STEP3 源泉所得税の税率を調べる 「前月の給与から社会保険料を引いた金額」と「扶養親族の人数」を、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて税率を求めます。
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STEP4 源泉所得税を計算する 「賞与 − 社会保険料」にSTEP3の税率をかけます(1円未満は切り捨て)。
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STEP5 手取りを確定し、手続きをする 額面から社会保険料と源泉所得税を引いた金額が手取りです。会社は支給日から5日以内に「賞与支払届」を提出し、源泉所得税は原則として翌月10日までに納めます。
[画像指示:賞与の額面から、社会保険料(健康保険・厚生年金・子ども・子育て支援金・雇用保険)と源泉所得税が順番に差し引かれ、手取りが残る流れを示した図解イラスト / キャプション:社会保険料を先に引き、残りに税率をかけるのがボーナス計算の基本です]

社会保険料の計算ルール

社会保険料には上限があります。健康保険(介護保険・子ども・子育て支援金を含む)は4月から翌年3月までの累計で573万円、厚生年金は1回の支給につき150万円が上限です。上限を超えた部分には保険料がかかりません。高額な賞与を受け取る役員の場合、この上限が手取りに大きく影響します。

源泉所得税の計算ルール

ボーナスの源泉所得税は、毎月の給与とは違い、前月の給与の金額をもとに税率を決めるのが特徴です。前月の給与が高い人ほど、ボーナスにかかる税率も高くなります。

例外:前月の給与がない場合・ボーナスが極端に多い場合

前月に給与の支払いがない場合や、ボーナスの金額(社会保険料を引いた後)が前月の給与(社会保険料を引いた後)の10倍を超える場合は、算出率の表は使いません。賞与を6か月分(賞与の計算期間が6か月を超える場合は12か月分)に分けて毎月の税額表で計算する、特別な方法を使います。役員の賞与や、新しく入社した社員の賞与で起こりやすいため注意してください。

扶養控除等申告書を出していない人は税率が高くなる

年末調整の書類である「扶養控除等申告書」を会社に出していない人(副業先で働く人など)は、高い税率が適用される区分(乙欄)で計算します。

会社が見落としやすい実務上の注意点と罠

結論として、ボーナスの実務で問題になりやすいのは「手続きの漏れ」「支給回数」「退職・育休の扱い」「役員賞与」の4つです。特に役員賞与は、税金への影響が最も大きいポイントです。

罠① 賞与支払届の提出漏れ

賞与支払届とは、賞与を支払ったときに、誰にいくら支払ったかを年金事務所(健康保険組合に加入している場合は組合にも)に届け出る書類のことです。提出期限は支給日から5日以内です。

また、賞与を支払う予定の月を年金事務所に登録している会社が、その月に賞与を支給しなかった場合は「賞与不支給報告書」の提出が必要です。届出が漏れていると、年金事務所の調査でさかのぼって保険料を請求されるだけでなく、社員が将来受け取る年金額にも賞与分が反映されません。

罠② 年4回以上支払うと「賞与」ではなく「報酬」になる

社会保険では、年4回以上支払われるものは賞与ではなく、毎月の報酬(標準報酬月額)の一部として扱われます。たとえば「毎季ごとに業績手当を出す」といった制度にすると、賞与としての上限や計算方法が使えず、毎月の保険料に組み込まれます。賞与の制度を設計するときは、支給回数を年3回以下に収めることを意識してください。

罠③ 退職者・育児休業中の社員の扱い

退職の日や育児休業の期間によって、賞与に社会保険料がかかるかどうかが変わります。ただし、雇用保険料と源泉所得税は、どのケースでも通常どおりかかります。

ケース賞与の社会保険料理由
賞与を支払った月の月末より前に退職かからない資格を失った月に支払われた賞与には、保険料がかからないため
賞与を支払った月の月末に退職かかる資格を失う日が翌月1日となり、その月は加入期間に含まれるため
賞与月の末日を含み、連続して1か月を超える育児休業免除される2022年10月からの改正で、1か月を超える育休の場合のみ免除
賞与月の末日を含むが、育児休業が1か月以下免除されない短期間の育休を賞与月に合わせて取る方法が封じられたため

罠④ 社長・役員の賞与は「事前確定届出給与」がなければ経費にならない

ここが、経営者の方に最も知っておいていただきたいポイントです。

社員のボーナスは、原則としてそのまま会社の経費(損金)になります。しかし、社長や役員に支払う賞与は、原則として会社の経費になりません。役員は自分で自分の報酬を決められるため、利益が出た年だけ賞与を出して税金を減らす、といった調整を防ぐためのルールです。

例外として経費にできるのが「事前確定届出給与」です。事前確定届出給与とは、役員に支払う賞与の支給日と金額を、あらかじめ税務署に届け出て、そのとおりに支払う給与のことです。

確認項目内容
届出の期限株主総会などで決議した日から1か月を経過する日と、事業年度の開始日から4か月を経過する日の、いずれか早い日まで
3月決算・6月25日に株主総会の場合7月25日が期限(今期の冬の賞与の届出は、すでに期限を過ぎています)
支給のしかた届け出た日に、届け出た金額を、1円も違えずに支払う
届出と違う金額を支払った場合多く払っても少なく払っても、原則としてその賞与の全額が経費にならない
【要注意】「業績が良かったから、社長にも冬のボーナスを」は危険 届出をしていない役員賞与は、会社の経費にならないうえ、社長個人には所得税・住民税がかかり、さらに社会保険料も会社と社長の双方にかかります。 つまり、会社の段階でも個人の段階でも税金がかかる「二重の負担」になってしまいます。利益が出たときに役員へ還元したい場合は、来期の役員報酬の見直しや、事前確定届出給与の届出を計画的に行うのが正しい順番です。
税理士・社労士の実務視点 「役員報酬の月額を低くして、その分を年1回の賞与で受け取れば、社会保険料が安くなる」という方法を勧められることがあります。厚生年金の賞与の上限(1回150万円)を利用した考え方ですが、私たちはお勧めしていません。 理由は3つあります。第一に、事前確定届出給与の届出と一円単位の支給管理が毎年必要で、少しのミスで全額が経費にならなくなります。第二に、年金事務所の調査では支給の実態が確認され、実質的に毎月の報酬と判断されると、さかのぼって保険料を請求されるおそれがあります。第三に、保険料が減る分、社長自身が将来受け取る年金も減ります。 役員の報酬は、法人税・所得税・社会保険料・将来の年金を一体で計算して決めるものです。税金だけ、社会保険だけで判断すると、どこかで必ずゆがみが出ます。

シミュレーション:冬のボーナスでいくら差し引かれるのか

結論から言うと、社員に50万円のボーナスを出すと手取りは約40.9万円、会社の負担は約58万円です。また、社長の賞与200万円は、届出の有無だけで法人税等が約66万円変わります。具体的な数字で確認しましょう。

ケース1:社員に冬のボーナス50万円を支給する場合

前提条件

  • 社員は35歳(介護保険料の対象外)、協会けんぽに加入
  • 前月の給与は30万円(社会保険料を引いた後は約25.6万円)、扶養親族は1人
  • 健康保険料率は約10%(本人5%)、子ども・子育て支援金率0.23%、雇用保険の本人負担0.5%と仮定
  • 源泉所得税の算出率は4.084%と仮定(実際の率は算出率の表で確認してください)
項目計算金額
賞与の額面 500,000円
健康保険料500,000円 × 5%25,000円
厚生年金保険料500,000円 × 9.15%45,750円
子ども・子育て支援金500,000円 × 0.115%575円
雇用保険料500,000円 × 0.5%2,500円
社会保険料の合計 73,825円
源泉所得税(500,000円 − 73,825円) × 4.084%17,404円
手取り額500,000円 − 73,825円 − 17,404円約408,771円

一方、会社の側でも、健康保険・厚生年金・子ども・子育て支援金を本人と同額負担するほか、雇用保険料や子ども・子育て拠出金、労災保険料なども負担します。会社負担は合計で約8万円となり、50万円のボーナスを出すために、会社は約58万円を用意する必要があります。冬の資金繰りを考えるときは、額面だけでなく、この会社負担分まで含めて計画しておきましょう。

ケース2:社長に冬の賞与200万円を支給する場合

前提条件

  • 社長は45歳、同じ年度にほかの賞与はなし
  • 法人税・住民税・事業税を合わせた実効税率は約33%と仮定
  • 社会保険料は、健康保険約5%(介護保険を含めない簡易計算)、厚生年金9.15%(上限150万円で計算)、子ども・子育て支援金0.115%の本人負担分で概算
項目事前確定届出あり(届出どおり支給)届出なし
会社の経費(損金)になるかなるならない
法人税等への影響200万円 × 約33% = 約66万円減る減らない
社長個人の所得税・住民税かかるかかる(同じ)
社会保険料(社長本人分)約24万円約24万円(同じ)
社会保険料(会社負担分)約24万円(経費になる)約24万円(経費になる)
届出ありと比べた会社の負担増―法人税等が約66万円多い

なお、中小企業は所得800万円以下の部分の税率が低く設定されているため、実際の差額は会社の利益の規模によって変わります。それでも、同じ200万円を支払うのに、届出の有無だけで数十万円単位の差が出ることに変わりはありません。

【シミュレーションから分かること】 社員のボーナスは、額面の約2割が社会保険料と税金で差し引かれ、会社はさらに額面の約15%を上乗せで負担します。今年からは子ども・子育て支援金も加わり、明細の見え方が変わります。 社長の賞与は、事前確定届出給与の届出がなければ会社の経費になりません。役員への還元は「利益が出てから」ではなく、「期首に計画して届け出る」ことが鉄則です。

よくある質問(FAQ)

Q. 子ども・子育て支援金は、独身の人や子どもがいない人も負担するのですか?

A. はい、負担します。子ども・子育て支援金は、子どもの有無や年齢に関係なく、健康保険などの医療保険に加入しているすべての人が対象です。会社員の場合は、毎月の給与と賞与の両方から、健康保険料と一緒に差し引かれます。

Q. ボーナスで引かれた源泉所得税は、後で精算されるのですか?

A. はい、精算されます。ボーナスの源泉所得税は概算で差し引かれているため、年末調整で1年間の給与と賞与を合計して正しい税額を計算し、差額が還付または追加徴収されます。

Q. 寸志や商品券で渡した場合も、社会保険料や税金はかかりますか?

A. 原則としてかかります。税金の面では、商品券など金銭に換えられるものは給与として課税されます。社会保険の面でも、年3回以下の支給であれば、名前にかかわらず賞与として扱われ、賞与支払届の対象になります。少額だからと手続きを省略しないようにしましょう。

Q. パートやアルバイトのボーナスにも、社会保険料はかかりますか?

A. 社会保険に加入している人であれば、正社員と同じようにかかります。社会保険に加入していない人の場合は、健康保険・厚生年金の保険料はかかりませんが、雇用保険に加入していれば雇用保険料が、また所得税の源泉徴収が必要です。

Q. 今から社長の冬の賞与を経費にする方法はありますか?

A. 多くの会社では、今期分の事前確定届出給与の届出期限はすでに過ぎているため、冬の役員賞与を経費にすることは難しいのが実情です。また、期の途中で役員報酬の月額を増やすことも、原則として経費になりません。来期に向けて、株主総会での決議と届出を計画的に準備することが最も確実な方法です。

まとめ:ボーナスは「出す前の設計」で差がつく

【3行まとめ】 1.ボーナスの手取りは「額面 − 社会保険料 − 源泉所得税」。今年の冬から子ども・子育て支援金も差し引かれます。 2.会社は支給日から5日以内に賞与支払届を提出。支給回数・退職日・育休の扱いにも注意が必要です。 3.社長・役員の賞与は事前確定届出給与の届出がなければ経費にならず、数十万円単位で税金が増えることがあります。

ボーナスは、社員のやる気を高める大切な仕組みです。だからこそ、支給したあとに「思ったより会社の負担が重かった」「社長の賞与が経費にならなかった」と後悔しないよう、支給する前の設計が重要になります。

賞与の問題は、税金(源泉所得税・法人税)と社会保険(保険料・賞与支払届・年金)の両方にまたがるため、どちらか一方の専門家だけでは見落としが生まれやすい分野です。当事務所では、税理士と社会保険労務士が同じ事務所で連携し、賞与の支給額の試算から、賞与支払届の手続き、役員報酬と事前確定届出給与の設計までを、一体でお手伝いしています。さらに、国税の調査実務を知る国税OBの税理士が在籍しているため、税務調査で役員賞与や報酬がどのように確認されるかを踏まえたアドバイスが可能です。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。 「冬のボーナスの会社負担を正確に知りたい」「社長の賞与や役員報酬を来期から見直したい」——そんな段階でのご相談こそ、最も大きな効果が出るタイミングです。初回のご相談はオンラインでも承っています。

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税理士法人 大沼田経営会計事務所

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