国民年金から天引きされるお金とは?差し引かれる仕組みと金額をやさしく解説

「国民年金は満額でも月6万円台なのに、実際に振り込まれる金額はもっと少ない気がする…」そんな疑問をお持ちではありませんか。

結論からお伝えすると、年金は振り込まれる前に、税金や社会保険料が「天引き」されることがあります。これは会社員時代に給料から税金や保険料が引かれていたのと同じ仕組みが、年金にもあるためです。

この記事を読めば、次の3つが完全にわかります。

  • 国民年金(老齢基礎年金)から実際に何が引かれるのか
  • いくら引かれるのか、具体的な金額のイメージ
  • 天引きされる金額を少しでも減らす方法

中学生の方でも読めば必ず理解できるよう、専門用語はすべて身近な例え話に置き換えて説明します。最後まで読んでいただければ、年金の「手取り額」がなぜ額面より少なくなるのか、その仕組みがすっきり整理できます。

このページの目次

【結論】国民年金から引かれる可能性があるのは、この5つ

まず結論です。老齢基礎年金(いわゆる国民年金)を受け取るとき、条件を満たすと次の5つのお金が天引きされることがあります。

項目何のためのお金?引かれ始める目安全員が引かれる?
①所得税・復興特別所得税国の税金年金額が一定額を超えるといいえ(少なければ0円)
②住民税住んでいる自治体の税金65歳以上で一定の所得がある人いいえ(少なければ0円)
③介護保険料介護サービスの財源原則65歳以上の全員はい(所得に応じ金額が変動)
④国民健康保険料医療費の財源(75歳未満)国保加入かつ年額18万円以上国保加入者のみ
⑤後期高齢者医療保険料医療費の財源(75歳以上)75歳以上で年額18万円以上75歳以上の対象者のみ

実際に何が・いくら引かれるかは、年齢・所得・お住まいの自治体によって異なります。詳しくは記事の後半で具体例を使って解説します。

[画像:財布から「税金」「住民税」「介護保険料」「保険料」の5つの手が伸びて年金袋からお金を抜き取っている様子を描いたシンプルな図解イラスト(キャプション:国民年金から差し引かれる5つのお金)]

そもそも「天引き」とは?――特別徴収の仕組みをお小遣いで例えると

年金からお金が引かれる仕組みは、専門的には「特別徴収(とくべつちょうしゅう)」と呼ばれます。難しく聞こえますが、仕組みはとてもシンプルです。

たとえば、お子さんに月1万円のお小遣いを渡す約束をしたとします。しかし「お小遣いから、必ず携帯電話の通信費2,000円を差し引いて渡す」と決めたら、実際に手渡すのは8,000円になりますよね。

国の年金も同じ考え方です。日本年金機構が年金を支払う際に、あらかじめ税金や保険料を差し引いてから、残った金額を口座に振り込んでいます。こうすることで、受給者が自分で毎回納付手続きをする手間が省ける、というメリットがあります。

年金は「偶数月」に年6回支払われる

国民年金・厚生年金は、2月・4月・6月・8月・10月・12月の年6回、偶数月の15日(土日祝の場合は前営業日)に、前2ヶ月分がまとめて支払われます。天引きも、この支払いのタイミングごとに行われます。

[画像:2月・4月・6月・8月・10月・12月の6つの月が並んだカレンダーに、それぞれ「年金支給日(天引き後)」と書かれたシンプルな図解(キャプション:年金は偶数月・年6回に分けて支給される)]

国民年金(老齢基礎年金)から差し引かれる5つのお金を1つずつ解説

①所得税・復興特別所得税

年金も「収入」の一種なので、金額が一定を超えると所得税がかかります。ただし年金には「公的年金等控除」という、給与でいう給与所得控除にあたる大きな控除が用意されているため、年金額がそれほど多くない方は所得税が0円になるケースが少なくありません。

目安として、65歳以上の方が国民年金・厚生年金を合わせた年金収入のみの場合、年間の年金収入がおおむね214万円以下であれば、所得税はかからない仕組みになっています(令和8年分以降の基準額。基礎控除の見直しにより、これまでより非課税となる範囲が広がっています)。

この基準額は税制改正のたびに見直されるため、「去年は引かれていなかったのに今年は引かれた(またはその逆)」ということも起こり得ます。

②住民税

住民税は、お住まいの市区町村と都道府県に納める税金です。65歳以上の方の年金にかかる住民税は、年金から天引き(特別徴収)されるのが原則です。所得税と同様、年金収入が一定額以下であれば住民税もかかりません。

③介護保険料

40歳以上の方は全員、介護保険料を負担する義務があります。65歳以上になると「第1号被保険者」という区分に変わり、原則として年金から天引きされる形で納めることになります。所得税や住民税と違い、介護保険料は年金から一定額もらっている方であれば、所得の多い少ないに関わらず原則として発生します(金額はお住まいの自治体・所得によって変わります)。

④国民健康保険料(75歳未満の方)

会社の健康保険に入っていない自営業者や年金生活者は、国民健康保険(国保)に加入します。65歳以上75歳未満で国保に加入している場合、条件を満たすと国保料も年金から天引きされます。

⑤後期高齢者医療保険料(75歳以上の方)

75歳になると、それまでの国民健康保険や会社の健康保険から自動的に「後期高齢者医療制度」に切り替わります。この制度の保険料も、条件を満たせば年金から天引きされます。

[画像:会社員時代の給与明細と、年金受給者の年金振込通知書を左右に並べて、それぞれの「天引き項目」を比較したシンプルな対比図解(キャプション:給与天引きと年金天引きは仕組みが似ている)]

天引き(特別徴収)の対象になる条件

すべての年金受給者から、必ずこれら5項目が引かれるわけではありません。天引きされるかどうかは、次の条件で判定されます。

  • 原則として65歳以上であること(介護保険料・住民税・国保料・後期高齢者医療保険料の天引きの前提条件)
  • 老齢・退職・障害・死亡を理由に受け取る年金の年額が18万円以上であること
  • 所得税は年齢に関係なく、年金額が一定の基準を超える場合に発生する

例外:国民健康保険料・後期高齢者医療保険料が天引きされないケース

「介護保険料」と「国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)」の合計額が、天引き対象となる年金額の2分の1を超えてしまう場合、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料は年金からは天引きされず、口座振替や納付書での支払いに切り替わります(介護保険料は天引きが優先されます)。

この判定の流れを図にすると、次のようになります。

【STEP1】65歳以上で、年金の年額が18万円以上か?   → いいえ:介護保険料等は天引きされず、自分で納付   → はい:STEP2へ  【STEP2】介護保険料は無条件で天引き対象   → STEP3へ  【STEP3】介護保険料+国保料(後期高齢者医療保険料)が、年金額の2分の1を超えるか?   → 超える:国保料(後期高齢者医療保険料)は天引きされず、納付書等で別途納付   → 超えない:国保料(後期高齢者医療保険料)も天引きされる

[画像:フローチャートの各STEPを矢印でつないだ、判定の流れをわかりやすく示した図解イラスト(キャプション:天引き対象になるかどうかの判定ステップ)]

【具体例で計算】実際にいくら天引きされるのか、シミュレーションしてみよう

ケース1:国民年金のみを受給(年額約78万円)の場合

40年間欠かさず保険料を納めた方が受け取れる、満額に近い国民年金(月約6.5万円、年額約78万円)だけを受給しているケースです。

項目金額の目安理由
所得税・住民税0円年金収入が少なく、公的年金等控除や基礎控除の範囲内に収まるため課税なし
介護保険料自治体の基準額に応じて発生65歳以上は原則負担。ただし年額18万円未満のため年金天引きではなく納付書等で納付するケースが中心
国民健康保険料自治体の基準額に応じて発生同上。年額18万円未満のため天引き対象外となることが多い

このケースでは、年金の年額が18万円(月1.5万円)を超えているため天引きの土台には乗りますが、所得税・住民税は課税最低限以下となり0円になるのが一般的です。介護保険料・国保料は所得に応じて別途発生しますが、他の年金や収入がなければ低めの金額になる自治体が多い、というのが実務上の傾向です。

ケース2:国民年金+厚生年金で月15万円(年額180万円)を受給する場合

会社員として厚生年金にも加入していた方が、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月15万円(年額180万円)を受給しているケースです。

項目月あたりの目安年額の目安
額面(天引き前)150,000円1,800,000円
所得税・復興特別所得税0円〜数百円0円〜数千円程度
住民税数千円程度3〜5万円程度
介護保険料5,000〜9,000円程度6〜11万円程度
国民健康保険料(75歳未満の場合)5,000〜10,000円程度6〜12万円程度
手取りの目安約13万円前後約155〜160万円前後

上記はあくまで目安です。住民税・介護保険料・国民健康保険料は、お住まいの市区町村の税率・保険料率、扶養家族の有無、他の所得の有無によって金額が大きく変わります。正確な金額は「年金振込通知書」「介護保険料決定通知書」等でご確認ください。

[画像:年金額180万円の円グラフが、税金・介護保険料・国保料・手取り額に色分けされて分割されている図解(キャプション:年金180万円のケースの内訳イメージ)]

天引きされる税金・保険料を減らす3つの方法

方法①:「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を必ず提出する

日本年金機構から毎年9〜10月頃に届く書類です。これを提出すると、配偶者控除や扶養控除などが年金の所得税計算に反映され、天引きされる所得税額が正しく(多くの場合は少なく)計算されます。提出しないと、控除が一切反映されない高い税額で天引きされてしまうため、届いたら必ず提出しましょう。

方法②:確定申告で使える控除を漏れなく申告する

年金にかかる所得税は年末調整のような精算が行われないため、医療費控除や社会保険料控除、生命保険料控除などを使える方は、確定申告(還付申告)をすることで払いすぎた所得税・住民税の還付を受けられる場合があります。

方法③:国民健康保険料・介護保険料の軽減制度を確認する

所得が一定以下の世帯には、国民健康保険料や介護保険料の「軽減措置」が用意されています。多くは自動的に適用されますが、世帯構成の変化があった場合などは、お住まいの市区町村の窓口で確認しておくと安心です。

経営者・個人事業主の方が特に押さえておきたいポイント

会社を経営されている方や個人事業主の方は、老齢年金の受給が始まったあとも、役員報酬や事業所得を受け取り続けるケースが多くあります。この場合、年金天引きの仕組みに加えて、次のような論点が絡んでくるため、判断が一段と複雑になります。

  • 役員報酬と年金を同時に受け取る場合の「在職老齢年金」による年金支給停止の判定
  • 退職金と年金を同じ年に受け取る場合の税務上の取り扱いの違い
  • 事業承継・相続対策を見据えた、法人・個人トータルでの資金計画

これらは一般的な会社員の年金受給とは異なる論点であり、法人の決算・申告と合わせて総合的に判断する必要があります。個別の状況によって最適な答えは大きく変わるため、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 国民年金だけを受給している人でも、天引きされますか?

A. 年金の年額が18万円以上であれば天引きの対象にはなりますが、所得税・住民税は年金額が少なければ0円になることが多く、実質的に天引きされるのは介護保険料・国民健康保険料が中心になります。

Q2. 天引きされている金額は、どこで確認できますか?

A. 日本年金機構から届く「年金振込通知書」(毎年6月頃と、税額変更時)で、天引き後の振込額と天引き項目の内訳を確認できます。介護保険料・国保料は、お住まいの市区町村から届く決定通知書でも確認可能です。

Q3. 年金からの天引きをやめて、自分で納付することはできますか?

A. 天引き(特別徴収)は法律で定められた仕組みであり、条件に該当すれば原則として天引きが優先されます。ご自身の希望だけで自由に選択できるものではありません。

Q4. 65歳未満で年金を受け取っている場合も、介護保険料は引かれますか?

A. 介護保険料の年金天引きは、原則として65歳以上(第1号被保険者)が対象です。65歳未満の方が老齢年金等を受け取っていても、年金からの介護保険料の天引きは行われません(40歳以上65歳未満の方の介護保険料は、加入している医療保険の保険料と合わせて徴収されます)。

Q5. 経営者は、年金と役員報酬をあわせて確定申告する必要がありますか?

A. 年金以外に給与(役員報酬)や事業所得がある場合、原則として確定申告が必要になります。年金天引きだけでは税額の精算が完結しないため、他の所得と合算した正しい申告を行うことが重要です。

まとめ:仕組みを知っていれば、年金の手取り額に驚くことはない

最後に、この記事のポイントを整理します。

  • 国民年金(老齢基礎年金)からは、条件を満たすと所得税・住民税・介護保険料・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)が天引きされる
  • 天引きの対象になるかどうかは、年齢(原則65歳以上)と年金額(年額18万円以上)で判定される
  • 所得税・住民税は年金額が少なければ0円になるケースも多いが、介護保険料は原則として発生する
  • 「扶養親族等申告書」の提出や確定申告での控除活用で、天引き額・納税額を適正化できる
  • 経営者・個人事業主の方は、役員報酬や退職金、事業承継とも絡むため、個別の判断が特に重要になる

ここまでご紹介した内容は、あくまで一般的なケースに基づく目安です。実際にいくら天引きされるか、また節税や社会保険料の適正化のためにどのような手を打てるかは、お一人おひとりの年金額・所得・家族構成・事業状況によって大きく異なります。

個別・具体的なケースについてのご判断は非常に難しく、思わぬ見落としが手取り額に大きく影響することもあります。「自分の場合はどうなるのか知りたい」「年金と事業・相続を含めてトータルで相談したい」という方は、どうぞお気軽に当事務所へご相談ください。長年の実績と専門知識をもとに、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なアドバイスをいたします。遠方の方にはオンライン(ZOOM)でのご相談も承っております。

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