【令和7年分・8年分】年末調整はここが変わった!

103万円の壁改正と新しい控除を経営者が失敗せずに乗り切る方法

毎年9月から10月にかけて、多くの経営者や総務担当者の頭を悩ませるのが年末調整です。しかも令和7年度の税制改正により、基礎控除や給与所得控除の金額が大きく見直され、いわゆる「103万円の壁」の姿も変わりました。「今年の年末調整、去年までと同じ書式で本当に大丈夫だろうか」「従業員から質問されても答えられない」——そんな不安を抱えていませんか。

この記事を最後まで読めば、令和7年分・8年分の年末調整で具体的に何が変わったのか、経営者として従業員にどう説明すればよいか、そして自社と従業員の税負担にどう影響するのかが、数字の根拠とともにはっきりと分かります。

結論から申し上げます。令和7年度税制改正により、基礎控除は48万円から58万円へ、給与所得控除の最低保証額は55万円から65万円へと、それぞれ引き上げられました。この結果、いわゆる「103万円の壁」は、令和7年分・8年分については所得水準に応じて最大160万円まで広がっています。さらに、19歳から22歳までの子(大学生年代)を扶養する家庭のために「特定親族特別控除」という新しい控除も創設されました。年末調整で従業員に配布する「扶養控除等申告書」の記載内容にも影響が出るため、経営者・総務担当者は早めに制度を理解し、社内周知を進める必要があります。

  そもそも年末調整とは何か

年末調整とは、会社が従業員の給与から毎月天引きしていた所得税(源泉徴収税額)と、その年に本来納めるべき所得税額との差額を、年末に一括で精算する手続きのことです。

たとえるなら、毎月のお小遣いから少し多めに天引きして積み立てておき、年末に実際にかかった金額を計算して、余った分を返し、足りない分を追加でもらう、というイメージです。多くの会社員は確定申告をしなくても、この年末調整だけで1年間の所得税の手続きが完了します。

なぜ経営者・総務担当者が押さえておくべきなのか

年末調整は、従業員一人ひとりの税額を正しく計算するだけでなく、会社が源泉徴収義務者として法律上の義務を負う手続きです。書類の配布・回収・計算・納付のいずれかに不備があれば、後日税務署から指摘を受け、追加徴収や延滞税が発生する可能性があります。制度改正があった年は特に、書式や控除額の変更を見落としたまま昨年と同じ運用を続けてしまうミスが起こりやすくなります。

  令和7年度税制改正で何が変わったのか

基礎控除の引き上げ(48万円→58万円、さらに時限的な上乗せ)

基礎控除とは、所得の多い少ないにかかわらず、すべての納税者に一律で認められる控除のことです。令和7年度改正で、この基礎控除が48万円から58万円に引き上げられました。さらに、合計所得金額655万円以下の人については、令和7年分・8年分の2年間に限り上乗せの特例が設けられ、所得水準に応じて基礎控除が最大95万円まで拡大します。

給与所得控除の最低保証額引き上げ(55万円→65万円)

給与所得控除とは、給与収入を得るために実際にかかった経費を、いちいち領収書を集めなくても一定額差し引ける、いわば「みなし経費」のような制度です。この最低保証額が55万円から65万円に引き上げられました。

結果として「103万円の壁」は何万円になったのか

基礎控除と給与所得控除の合計額が、所得税が発生しない給与収入の上限、いわゆる「壁」の正体です。改正前は48万円+55万円=103万円でしたが、改正後は次のとおりです。

区分基礎控除給与所得控除壁の金額
改正前(〜令和6年分)48万円55万円103万円
令和7年分・8年分(上乗せ特例あり)最大95万円65万円最大160万円
令和9年分以降(恒久ルール)58万円65万円123万円

🖼 103万円の壁が123万円・160万円に広がる様子を示すビフォーアフター図解イラスト/キャプション:基礎控除と給与所得控除の引き上げで壁はここまで動きました

新設「特定親族特別控除」——大学生年代の子がいる家庭へ

19歳から22歳までの子(大学生年代)がいる家庭は、これまで子のアルバイト収入が103万円を1円でも超えると、特定扶養控除(63万円)が一気にゼロになる「崖」がありました。令和7年度改正では、この崖をなだらかにするため「特定親族特別控除」が新設され、子の給与収入が123万円を超えても188万円に達するまでは、収入額に応じて段階的に控除を受けられるようになりました。段階ごとの正確な控除額は国税庁が公表する年末調整の早見表に基づいて算出されるため、対象となる従業員がいる場合は最新の早見表で確認することが実務上のポイントです。

  経営者・総務担当者が年末調整で注意すべき実務ポイント

「扶養控除等申告書」の記載内容を再確認する

基礎控除や配偶者控除、扶養控除の所得要件が軒並み引き上げられたため、従業員に「扶養に入れられるかどうか」を旧基準(103万円)で判断させてしまうと、本来受けられる控除を取りこぼす従業員が出てきます。書類配布時に、金額の基準が変わったことを一言添えるだけでも社内の混乱を大きく減らせます。

よくある間違い・落とし穴

  • 昨年の様式や社内案内文をそのまま使い回し、控除額の変更を反映し忘れる
  • 子のアルバイト収入を旧基準の103万円で判定し、特定親族特別控除の対象者を見落とす
  • 基礎控除の上乗せ特例は令和7年分・8年分限りの時限措置であることを従業員に伝えず、翌年以降の手取り変化への説明責任を果たせなくなる

  年末調整の流れ(実務フロー)

STEP1 従業員へ申告書類を配布(10月頃が目安)

STEP2 従業員が記入し、保険料控除証明書等の必要書類を添付して提出

STEP3 総務・経理担当者が内容を確認し、各人の年税額を計算

STEP4 過不足額を12月の給与・賞与で精算

STEP5 源泉徴収票を発行し、税務署・市区町村へ法定調書を提出

  具体的シミュレーション

パート・アルバイトとして働く従業員の給与収入が年130万円のケースで考えてみます。

 改正前ルール(〜令和6年分)改正後ルール(令和7・8年分)
壁の金額103万円最大160万円
年収130万円の場合の課税対象額約27万円が課税対象壁の範囲内のため課税対象なし
所得税への影響(目安・税率5%)年間約13,500円の所得税が発生所得税は0円

このように、同じ年収130万円で働く従業員でも、改正前は所得税が発生していたのに対し、改正後は所得税が発生しないケースが生まれます。従業員から「働き方を変えたほうがよいか」と相談を受けた際は、こうした具体的な金額を示しながら説明すると納得を得やすくなります。

  よくある質問(FAQ)

Q. 「103万円の壁」は完全になくなったのですか?

A. いいえ、なくなったわけではなく、金額が引き上げられ、新しい水準に移動しました。令和7年分・8年分は基礎控除の上乗せ特例により最大160万円、令和9年分以降は基礎控除58万円と給与所得控除65万円を合わせた123万円が壁になります。

Q. 基礎控除の上乗せ特例は誰でも受けられますか?

A. 合計所得金額655万円以下(給与収入の目安でおおむね850万円未満)の人が対象です。それを超える所得の人は、上乗せのない基礎控除58万円のみが適用されます。

Q. 大学生年代の子の年収が103万円を超えたら、もう扶養にできませんか?

A. 令和7年度改正により、子の年収が123万円を超えても188万円に達するまでは特定親族特別控除が段階的に適用されるため、扶養控除が一気にゼロになることはありません。

Q. 年末調整の書類はいつまでに従業員へ配布・回収すべきですか?

A. 一般的には10月中に配布し、11月末までに回収を完了させるのが実務上の目安です。生命保険料控除証明書等が届くのは10月以降になることが多いため、余裕を持ったスケジュールが欠かせません。

Q. 年末調整の内容に誤りがあった場合はどうなりますか?

A. 年内であれば会社側で再年末調整として訂正できます。年が明けてしまった場合は、従業員自身による確定申告での訂正が必要になります。

この記事の要点

  • 基礎控除・給与所得控除の引き上げにより「103万円の壁」は令和7年分・8年分は最大160万円まで拡大した。
  • 大学生年代の子がいる家庭には「特定親族特別控除」が新設され、扶養控除の崖がなだらかになった。
  • 上乗せ特例は令和7・8年分限りの時限措置であり、経営者・総務担当者は年ごとの変更点を正確に把握する必要がある。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。

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