Archive for the ‘未分類’ Category

【2026年最新版】税制改正で「手取り」が本当に増える?所得税・住民税の変更点を中学生でもわかるように解説

2026-07-07

「最近、税金のニュースをよく見るけれど、結局わたしの手取りはどうなるの?」——そんな疑問を抱えている経営者の方、個人事業主の方、そしてこれから独立を考えている方に向けて、この記事を書きました。

2026年(令和8年)から適用される所得税・地方税(住民税)の改正では、多くの給与所得者・個人事業主にとって「手取りが増える」方向の見直しが行われます。あわせて、ひとり親世帯への支援拡充、NISA(少額投資非課税制度)の拡充、通勤手当の非課税枠見直しなど、暮らしに直結する変更も予定されています。

この記事を最後まで読めば、次の3つが「自分の言葉で人に説明できる」レベルで理解できます。

  • ① なぜ「103万円の壁」が「178万円」まで広がったのか、その仕組み
  • ② 自分の年収だと、実際にいくら税負担が軽くなるのか
  • ③ ひとり親控除・NISA・通勤手当など、暮らしに関わる変更点の中身

先に結論だけ知りたい方へ(3行まとめ)

① 所得税がかからない年収のライン(いわゆる「年収の壁」)が103万円→160万円→178万円へと段階的に引き上げられ、多くの人の手取りが増えます。

② ひとり親控除が拡充され、対象範囲も広がります。NISAは子どもの年齢層まで対象が広がり、資産形成の選択肢が増えます。

③ 一方で、通勤手当の非課税枠見直しや防衛特別所得税の導入など、実務上「確認しておくべき」変更点もあります。

1. そもそも「所得税」はどうやって決まるのか(りんご屋さんのたとえ話)

難しい話に入る前に、まず「所得税の仕組み」を身近な例でイメージしてみましょう。

あなたが商店街でりんごを売っているとします。1年間の売上(=収入)が300万円あったとしても、りんごの仕入れ代や箱代などの「経費」を差し引かなければ、本当の儲け(=所得)はわかりませんよね。

会社員の場合、この「経費」にあたるものが自動的に一定額差し引かれます。これが「給与所得控除」です。スーツ代や交通費など、働くために必要な費用をいちいち領収書で計算しなくても、収入に応じて自動的に一定額を経費として認めてくれる、という仕組みです。

さらに、そこから「基礎控除」という、誰にでも一律で認められる控除(生活に最低限必要なお金として税金をかけない部分)が差し引かれます。

つまり、「収入」から「給与所得控除」と「基礎控除」を引いた残りの金額に対してはじめて税金がかかる、という仕組みです。逆にいえば、収入がこの2つの控除の合計額以下であれば、所得税は一切かかりません。この合計額のラインが、いわゆる「年収の壁」と呼ばれているものです。

[画像:収入から『給与所得控除』と『基礎控除』を順番に差し引いて課税所得が決まる様子を、りんご箱と天秤を使ってやさしく図解したイラスト(キャプション:収入 − 給与所得控除 − 基礎控除 課税所得)]

2. 令和8年度税制改正の全体像(ひとことで言うと)

今回の改正は「増税」ではなく、大きく分けて「物価上昇に負けないように控除額を底上げする改正」だと理解してください。物価が上がって生活費が増えているのに、税金を計算するときの控除額が何十年も据え置かれていると、実質的に税負担が重くなってしまいます(これを「ブラケット・クリープ」と呼びます)。これを是正するのが今回の改正の柱です。

改正項目改正前(〜2025年)改正後(2026年〜)
基礎控除(本則)58万円62万円
給与所得控除の最低保障額65万円69万円
いわゆる「年収の壁」(所得税)160万円178万円(給与収入655万円程度以下の方)
ひとり親控除(所得税)35万円38万円
ひとり親控除(住民税)30万円33万円
ひとり親控除の対象となる子の所得要件58万円以下62万円以下
扶養控除・配偶者控除の所得要件58万円以下62万円以下
勤労学生控除の所得要件85万円以下89万円以下
NISAつみたて投資枠の口座開設年齢18歳以上0〜17歳の子も対象に拡充
食事手当の非課税限度額(月額)3,500円7,500円

それぞれの項目について、次の章から詳しく見ていきましょう。

3. 最大の注目ポイント「103万円の壁」が「178万円」へ

今回の改正で一番話題になっているのが、いわゆる「年収の壁(所得税)」の引き上げです。まず、この数字がどのように変わってきたのか、時系列で整理します。

▼ ステップ1:〜2024年(令和6年)まで
所得税がかかり始める年収のライン 103万円(基礎控除48万円+給与所得控除の最低保障額55万円)
▼ ステップ2:2025年(令和7年度改正)
物価上昇への対応として、103万円 → 160万円 に引き上げ(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)
▼ ステップ3:2026年(令和8年度改正・今回)
160万円 → 178万円 にさらに引き上げ(給与収入655万円程度以下の方が対象)

3-1. なぜ「178万円」なのか? 内訳を分解してみる

178万円という数字は、単純に基礎控除だけ、あるいは給与所得控除だけが大きくなったわけではありません。次の2つの控除を合計した金額です(給与収入がおおむね655万円以下の方が対象。合計所得金額でいうと489万円以下が目安です)。

控除の種類本則(恒久的な部分)特例加算(令和8・9年分限定)合計
基礎控除62万円42万円104万円
給与所得控除の最低保障額69万円5万円74万円
合計(=いわゆる「年収の壁」)131万円47万円178万円

注意していただきたいのは、この178万円のうち「特例加算」にあたる部分は、令和8年分・令和9年分の2年間に限った措置だという点です。将来的には、物価上昇に応じて本則部分(基礎控除・給与所得控除)が段階的に引き上げられ、特例加算から本則へと置き換わっていく設計になっています。方針としては「178万円という水準は当面維持する」とされていますが、内訳の割合は今後変わる可能性がある、という点は覚えておいてください。

3-2. 178万円まで完全に無税」ではない点に要注意

ここはとても大切なポイントなので、しっかり押さえておきましょう。178万円というのは、あくまで「所得税」だけの話です。次の2点は別枠で存在します。

  • 住民税:所得税とは異なる基準で課税されます。年収100万円を超えると住民税が発生するケースが一般的で、178万円まで無税になるわけではありません。
  • 社会保険料:年収が106万円または130万円を超えると、勤務先の規模や条件によって社会保険への加入義務が発生し、保険料の負担が生じます。これは所得税の壁とは全く別の制度です。

つまり、「所得税はゼロでも、社会保険料の負担で手取りが減ってしまう」というケースは今後も起こり得ます。パート・アルバイトで働き方を調整している方は、所得税の壁だけでなく、社会保険の壁もあわせて確認する必要があります。

[画像:『所得税の壁(178万円)』『住民税の壁(100万円)』『社会保険の壁(106万円・130万円)』の3つが、それぞれ別のハードルとして並んでいる様子を示す比較イラスト(キャプション:壁は1つじゃない!3種類の壁を混同しないで)]

4. 【具体例】年収別シミュレーション 実際どのくらい手取りが増える?

言葉だけではイメージしづらいと思いますので、独身・単身世帯の給与所得者(配偶者控除の適用がないケース)を例に、控除額の引き上げによる負担軽減のイメージを表にしました。実際の税額は家族構成や社会保険料控除などによって変わりますので、あくまで目安としてご覧ください。

年収の目安主な変化のポイント手取りへの影響(目安)
150万円前後(パート・アルバイト)所得税がかかるラインが178万円まで拡大所得税がゼロ、またはこれまでよりかなり少なくなる
300万円前後基礎控除・給与所得控除の特例加算をフル活用できる層軽減効果が大きい層の一つ
500〜600万円前後基礎控除の上乗せ対象が「年収665万円以下」まで拡大され、恩恵が大きい軽減効果が最も大きい層とされている
700万円前後基礎控除特例の対象ラインに近く、軽減効果はやや縮小一定の軽減効果はあるが、500〜600万円層より小さめ
850万円超基礎控除の特例加算の対象外(本則部分の引き上げのみ適用)軽減効果は限定的

全体としては、給与収入がおおむね665万円以下の方(納税者の約8割が該当するとされています)に、より手厚い軽減効果が及ぶ設計になっています。ご自身やご家族の具体的な年収でどれくらいの差が出るかは、家族構成・社会保険料・他の控除の有無によって変わってきますので、正確な金額を知りたい方は個別にシミュレーションすることをおすすめします。

5. ひとり親世帯・子育て世帯への支援拡充

5-1. ひとり親控除の控除額が増える

シングルマザー・シングルファザーなど、ひとり親家庭の方が受けられる「ひとり親控除」も拡充されます。控除額が増えるということは、その分課税対象となる所得が減り、税負担が軽くなるということです。

 改正前改正後適用時期
所得税の控除額35万円38万円令和9年分の所得税から
住民税の控除額30万円33万円令和10年度分の住民税から

あわせて、ひとり親控除を受けるための「生計を一にする子の所得要件」も、58万円以下から62万円以下へと緩和されます。これにより、お子さんがアルバイトなどで多少収入を得ていても、これまでより控除の対象になりやすくなります。

5-2. 住宅ローン控除の子育て世帯向け上乗せ措置も延長

住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)については、適用期限が5年間延長されるとともに、子育て世帯(19歳未満の扶養親族がいる世帯)・若者夫婦世帯(夫婦のどちらかが40歳未満の世帯)に対する借入限度額の上乗せ措置も延長されます。マイホームの取得を検討しているご家庭にとっては、有利な条件で制度を使い続けられることになります。

6. 資産形成の後押し:NISA(つみたて投資枠)の拡充

次世代の資産形成を後押しする観点から、NISAの「つみたて投資枠」について、口座を開設できる年齢が0〜17歳まで拡充されます。これまでは原則18歳以上でなければ利用できませんでしたが、今後は生まれたばかりのお子さんの名義でも、非課税で投資信託などの積立を始められるようになります。

  • 対象:口座保有者であるお子さんが0〜17歳の間
  • 年間投資枠:60万円
  • 非課税保有限度額:600万円

教育資金や将来の独立資金などを、長い時間をかけて非課税で準備できる選択肢が広がったといえます。ただし、投資である以上、元本が保証されているわけではない点には注意が必要です。

[画像:親子で貯金箱代わりのグラフが右肩上がりに育っていく様子を描いた、NISAつみたて投資枠の年齢拡充をイメージしたイラスト(キャプション:0歳から始められる、家族のための資産形成)]

7. 見落としがちな変更点:通勤手当・食事手当の非課税枠見直し

会社員の方にとって身近だけれど見落とされがちなのが、通勤手当や食事手当の非課税限度額の見直しです。

7-1. マイカー通勤の非課税限度額

自動車などで通勤する方に支給される通勤手当は、通勤距離に応じて一定額まで非課税とされています。現行では片道55km以上であれば一律で月額3万8,700円が非課税限度額ですが、今回の改正で通勤距離が65km以上の場合には、非課税限度額がさらに引き上げられます。あわせて、駐車場代を会社が負担している場合には、月額5,000円を上限に非課税限度額へ加算できるようになる見込みです(実施時期は今後の政令改正により確定します)。

7-2. 食事手当の非課税限度額

会社が従業員に食事を支給する場合の非課税限度額(月額)についても、1984年(昭和59年)以来、約40年ぶりに見直され、月額3,500円から7,500円へと引き上げられます。物価上昇に長らく据え置かれていた金額が、実態に合わせて改定される形です。

実務上のポイント:給与計算システムの設定変更や、従業員の方への周知(特にマイカー通勤者・食事補助を受けている方)を、適用時期にあわせて準備しておくことをおすすめします。

8. 一方で押さえておきたい「負担が増える」部分

減税の話題が中心になりがちですが、フェアな情報提供のために、負担が増える部分もお伝えします。

8-1. 防衛特別所得税の創設

防衛力強化のための安定財源として、所得税額の1%にあたる「防衛特別所得税」が2027年(令和9年)1月から課されることになりました。

8-2. 復興特別所得税の引き下げとのセット

ただし同時に、東日本大震災の復興財源にあてられている「復興特別所得税」(現行2.1%)が1.1%に引き下げられ、防衛特別所得税の負担分と相殺される設計になっています。政府としては「新たな家計の負担を増やさない」方針を掲げていますが、復興特別所得税の期限自体は延長されることになっています。

8-3. 超富裕層向けの課税強化

いわゆる「1億円の壁」と呼ばれる、超富裕層に対する追加課税(合計所得金額が一定額を超える場合の申告分離課税)についても、控除額の引き下げと税率の引き上げが行われ、高額所得者への課税は強化される方向です。一般的な給与所得者や中小企業の経営者の大半には直接関係しない改正ですが、参考情報としてお伝えします。

9. いつから適用される? 時期の一覧表

改正項目適用開始時期
基礎控除・給与所得控除の引き上げ(所得税)令和8年分の所得税から(令和8年12月の年末調整で反映)
源泉徴収税額表の改正令和9年1月支払分の給与から
ひとり親控除の控除額拡充(所得税)令和9年分の所得税から
ひとり親控除の控除額拡充(住民税)令和10年度分の住民税から
防衛特別所得税の課税開始令和9年(2027年)1月から
住宅ローン控除の延長・拡充令和8年〜令和12年の入居分に適用

「所得税」と「住民税」で適用のタイミングがずれる項目が多いのが、今回の改正の少しややこしいところです。特に経営者の方は、従業員の年末調整・源泉徴収事務のスケジュールに直結しますので、顧問の税理士と一緒にスケジュールを確認しておくと安心です。

10. 経営者・個人事業主が今のうちにやっておくべきこと

  • ① 給与計算ソフト・年末調整の設定が、最新の控除額に対応しているか確認する
  • ② マイカー通勤・食事手当を支給している場合は、非課税限度額の見直しにあわせて社内規定を確認する
  • ③ ひとり親従業員がいる場合は、控除額拡充の適用時期(所得税と住民税でズレがある点)を把握しておく
  • ④ 従業員から「手取りが増えた/減った」という問い合わせが来た際に説明できるよう、変更点を簡単にまとめておく
  • ⑤ ご自身やご家族のNISA・住宅ローン控除など、資産形成・住宅取得の計画を改正内容にあわせて見直す

よくある質問(FAQ

Q. 結局、私の手取りはいつから増えるのですか?

A. 所得税に関する控除額の引き上げは令和8年分(2026年分)の所得から適用されます。会社員の方は、令和8年12月に行われる年末調整で精算され、実際に手取りが増えたと実感できるのはそのタイミングが目安です。給与から天引きされる源泉徴収税額の表自体は、令和9年1月支払分から新しい基準に切り替わります。

Q. パート収入は178万円まで働いても本当に税金はゼロですか?

A. 所得税に限れば、給与収入がおおむね178万円までであれば所得税はかかりません(給与収入がおおむね655万円程度以下の方が対象の特例を含めた場合)。ただし住民税は別の基準で課税され、年収100万円を超えると発生するのが一般的です。また、年収106万円・130万円を超えると社会保険料の負担が生じる場合があります。「所得税・住民税・社会保険」はそれぞれ別の壁として管理する必要があります。

Q. 配偶者控除・配偶者特別控除の金額も一緒に引き上げられたのですか?

A. 同一生計配偶者や扶養親族の「合計所得金額の要件」は58万円以下から62万円以下に緩和されました。一方で、配偶者特別控除の対象となる合計所得金額の上限(133万円、給与収入換算で201.6万円)自体は、今回の改正で変更されていません。この点を混同した解説も見られるため、注意が必要です。

Q. ひとり親控除の拡充は、いつの申告から使えますか?

A. 所得税については令和9年分(2027年分)の確定申告・年末調整から適用されます。住民税については令和10年度分からの適用となり、所得税より1年遅れて反映される点にご注意ください。

Q. NISAのつみたて投資枠を子ども名義で始めるには、何か特別な手続きが必要ですか?

A. 制度の詳細な運用(口座開設の手続き方法や金融機関ごとの対応時期)については、今後金融庁・各金融機関から順次案内される見込みです。現時点では「0〜17歳の子どもが口座保有者になれる」「年間投資枠60万円・非課税保有限度額600万円」という大枠が示されている段階ですので、実際に始める際は取扱金融機関に最新の手続きをご確認ください。

まとめ:制度は「複雑に、でも有利に」変わっている

今回の令和8年度税制改正は、一言でいえば「物価上昇に負けないよう、控除額を底上げする」改正です。ポイントを振り返りましょう。

  • 所得税がかかり始める年収のラインが178万円まで引き上げられ、多くの方の手取りが増える見込み
  • ひとり親控除の拡充、NISAの対象年齢拡大など、子育て・資産形成を後押しする措置も充実
  • 一方で、通勤手当・食事手当の非課税枠の見直しや、防衛特別所得税の創設など、実務担当者が確認すべき変更点もある
  • 所得税・住民税・社会保険料は、それぞれ別の基準・別のタイミングで動く点に注意が必要

ここまで解説してきた内容は、あくまで一般的な制度の枠組みです。実際には、ご家族の人数や働き方、事業の形態(法人か個人事業主か)、他の所得控除の有無などによって、有利になる選択肢や、注意すべきポイントは一人ひとり異なります。

個別具体的なケースについては判断が難しい部分も多いため、「自分の場合はどうなるのか」を正確に知りたい方は、ぜひ一度、当事務所へお気軽にご相談ください。

年末調整・確定申告の準備から、事業承継・住宅取得・資産形成のご相談まで、それぞれの状況に合わせた具体的なアドバイスをいたします。オンライン相談にも対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

【オーナー経営者は要注意】非上場株の相続税評価見直しで事業承継はどう変わる?中学生でもわかる新ルール解説と対策

2026-07-06

「自分が一生懸命育ててきた会社を、そろそろ息子や娘に引き継ぎたいな」

そう考えているオーナー経営者の皆さん、今、国が進めている『非上場株式の相続税評価見直し』というニュースをご存知でしょうか?

「なんだか難しそうな漢字ばかりで、自分には関係なさそう…」とスルーしてしまったら、後で大損をしてしまうかもしれません。結論から言うと、この見直しによって、これまで使えていた『裏ワザ的な節税テクニック』が使えなくなり、何もしないままだと将来、子供たちが多額の相続税に苦しむ可能性が非常に高くなっています。

でも、安心してください!この記事では、日本の最新税法をどこよりも分かりやすく、それこそ「中学生でも一読で完璧に理解できる」ように、身近なお小遣いやリンゴの例え話を使って解説します。

この記事を最後まで読めば、法改正のポイント、あなたの会社に訪れるピンチ、そして今すぐ大至急やるべき具体的な対策がすべて分かります。会社の未来と、大切なご家族を守るために、一緒に学んでいきましょう!

1. そもそも「非上場株の評価」ってなに?リンゴでわかる基本のき

まず、今回のテーマの基本となる「非上場株(ひじょうじょうかぶ)」と、その「評価」について、超カンタンに整理しましょう。

世の中には、ニュースの株価ボードに毎日値段が出る「上場企業の株」(トヨタやソニーなど)と、私たち中小企業のように値段がどこにも載っていない「非上場企業の株」があります。

値段が書いていないからといって、あなたの会社の株が「タダ(0円)」というわけではありません。実は、会社が毎年利益を出して、社内にお金を蓄えれば蓄えるほど、あなたの会社の株の価値はどんどん高くなっているのです。

【リンゴ箱の例え話】
あなたが「1100円のリンゴ」を仕入れて売るお店をやっているとします。最初は空っぽだったお店の金庫(会社)に、毎年儲かったお金を貯めていき、今や金庫の中に「1,000万円の現金」と「立派な冷蔵庫(自社ビルなど)」が入っている状態をイメージしてください。
あなたがこのお店を引退して子供に譲るとき、この金庫(会社の株)はいくらで評価されるでしょうか?当然、中身が詰まっていますから、国からは「この金庫には3,000万円の価値がありますね!だから税金を払ってください!」と言われるわけです。これが『株の相続税評価』です。

==================================================
[
画像:利益を積み上げることで自社株の価値(評価額)がどんどん上がっていく仕組みを、リンゴの貯蓄箱と金庫で表現した図解イラスト]
==================================================

(キャプション:会社の利益や資産が増えると、目に見えない「自社株の価値」も雪だるま式に膨らんでいきます)

2. 今回の税法改正・見直しの「正体」とは?何が変わるの?

これまでの「行き過ぎた節税」に国がストップをかけた

これまでは、この「株の価値」をわざと低く見せるための様々なテクニックが存在していました。例えば、不動産をたくさん買って一時的に会社の帳簿上の価値を下げたり、持ち株会社(ホールディングス)を作って、わざと複雑な構造にすることで、株の評価額を5割も6割も引き下げるような方法です。

しかし、国はこう言いました。「実態はものすごく価値がある会社なのに、形式的な計算ルールを悪用して税金をゼロに近づけるのは不公平だ!」と。

今回の見直しの本質は、【実態に合わせた正しい評価をしよう】という方針転換です。これにより、これまで合法とされていた『資産管理会社を使った節税』や『不動産を活用した評価引き下げ』のハードルがめちゃくちゃ高くなります。

【一目でわかる】法改正前と改正後の違い比較表

比較項目これまでのルール(改正前)これからの新ルール(改正後)
自社株の評価方法帳簿上の数字や、特定の計算式をフル活用して大幅に引き下げが可能だった。会社の「実質的な財産価値(時価)」がより厳格に反映され、抜け穴が塞がれる。
資産管理会社(持ち株会社)会社を2層、3層に分けることで、株の価値を大きく目減りさせることができた。実態のないペーパーカンパニーのような構造は、見破られて高い税金がかかる。
オーナー社長のリスク「うちはまだ大丈夫」と先延ばしにしていても、従来の対策で間に合っていた。対策を先延ばしにすると、ある日突然、莫大な相続税の請求が来て会社が倒産する危機に。

3. 【恐怖のシミュレーション】対策をしないと、これだけ税金が変わる!

では、具体的にどれくらい税金が変わってしまうのか、数字を使ってシミュレーションしてみましょう。

事例:創業30年、コツコツ利益を上げてきたA社長の場合

・社長:Aさん(65歳)
・会社:自動車部品の製造業(非上場)
・会社の純資産(貯まった利益や土地など):5億円
・後継者:息子のBさん(32歳)

【これまでのルールで対策(持ち株会社などを活用)した場合】
これまでは、上手に持ち株会社を挟むなどの実務対策を行うことで、5億円の株の評価を「2億円」程度まで引き下げることが可能でした。
・株の評価額:2億円
・かかる相続税(概算):約3,000万円
⇒ これなら、会社のキャッシュや、少しの借入で息子のBさんも十分に払える金額です。

【新ルールが適用され、対策を怠った場合】
抜け穴が塞がれ、会社の本当の実力(時価ベース)でキッチリ5億円と評価されてしまいます。
・株の評価額:5億円
・かかる相続税(概算):約1億4,000万円!
⇒ その差額はなんと【1億1,000万円】の増税です!

息子のBさんは、お父さんから会社の株(紙切れ)をもらうだけで、手元に現金があるわけではありません。それなのに「14,000万円の現金を今すぐ国に払いなさい」と言われるのです。払えなければ、せっかく引き継いだ会社を売却するか、倒産させるしかなくなってしまいます。

==================================================
[
画像:対策をした場合(3000万円)と新ルールで対策なしの場合(14000万円)の税負担の圧倒的な差を視覚的に表した棒グラフのイラスト]
==================================================

(キャプション:同じ会社を引き継ぐだけでも、対策の有無と時期によって税金が1億円以上変わる実例です)

4. オーナー経営者が今すぐ大至急やるべき「3つのステップ」

「そんなの恐ろしすぎる!一体どうすればいいんだ!」と頭を抱えてしまった社長、ご安心ください。ルールが変わるのであれば、その新ルールに完全に適合した正しい方法で、今すぐ先手を打てば良いのです。具体的には、以下の3つのステップを大至急進めてください。

ステップ1:現在の「本当の株価」を正確に健康診断する

まずは、現時点であなたの会社の株が「いくらと評価されるのか」を知ることからスタートです。人間の体と同じで、自社株の健康診断(株価算定)をしなければ、どんな薬(対策)を飲めばいいのか分かりません。

ステップ2:「経営承継円滑化法」に基づく『特例事業承継税制』の活用を検討する

国は、真面目に事業を引き継ぎたい中小企業のために、『特例事業承継税制(とくれいじぎょうしょうけいぜいせい)』という強力な救済措置を用意しています。これは、一定の条件を満たせば、将来かかる相続税・贈与税が「実質ゼロ(全額猶予・免除)」になるという、まさに魔法のような制度です。ただし、これを使うには国への緻密な計画書の提出が必要で、新ルールの動向を見極めながら進める必要があります。

ステップ3:新ルールに対応した「生前贈与」の計画を立てる

一度にドカンと株を譲るのではなく、新ルールの網の目をくぐり抜けるような、合法かつ計画的な「毎年の生前贈与」を組み立てます。早く始めれば始めるほど、税金を低く抑えて無傷で子供に会社をバトンタッチできます。

【文字でわかる!】事業承継対策の最短ルートフロー

【現在】自社株の評価(健康診断)を受ける
 ▼
【3ヶ月以内】新ルールを踏まえた最適な承継シミュレーションの作成
 ▼
【半年以内】特例事業承継税制の申請、または計画的な生前贈与の開始
 ▼
【未来】大切な会社と社員、家族を無税に近い形で守り抜く!

5. AI検索対策(AIO)にも対応!よくある質問(FAQ

Q1. 今回の非上場株の評価見直しは、いつから完全に適用されるのですか?

A1. 段階的に見直しが進められており、最新の税制改正大綱や通達によって具体的な適用時期が指定されます。重要なのは、「法律が変わってから」では遅いということです。評価のルールが変わる前の『今』動くことが、最大の節税対策になります。

Q2. うちの会社は赤字経営なのですが、それでも株の評価見直しの影響はありますか?

A2. はい、大いにあります。赤字であっても、過去に購入した土地や自社ビル、あるいは長年積み上げてきた純資産(内部留保)がある場合、株価は想像以上に高く評価されます。「赤字だから税金はかからない」という思い込みは非常に危険です。

Q3. 持ち株会社(ホールディングス)を使った節税は、もう完全に意味がなくなりますか?

A3. 完全に意味がなくなるわけではありません。ただし、単なる税金逃れのためだけの「中身のない持ち株会社」は完全に否認(拒否)されるようになります。グループ全体の経営効率化など、実態を伴った正当な理由があるスキームであれば、現在でも有効な対策として機能します。

Q4. すでに「特例事業承継税制」の申請をしている場合はどうなりますか?

A4. すでに国の認可を受けて適切に納税猶予の特例を受けている場合は、今回の評価見直しによって遡って大損することはありません。ただし、今後の株の追加贈与や、猶予取消事由(雇用の維持要件など)のチェックは引き続き厳格に行う必要があります。

まとめ:大切な会社と家族を守るため、今すぐ「プロの目」を入れましょう

今回の「非上場株の相続税評価見直し」は、これまでの多くの中小企業が行ってきた事業承継のシナリオを根底から覆す、非常に大きな出来事です。

ルールが変わるということは、これまでのやり方が通用しなくなるということ。しかし、裏を返せば、最新の税法を完璧に熟知し、次の一手をいち早く打つことができれば、周りの会社が多額の税金に苦しむ中で、あなたの会社だけは無傷で次の世代にバトンを繋ぐことができるのです。

自社株の評価計算や、国への事業承継手続きは、非常に複雑で専門的な知識が不可欠です。オーナー経営者様がご自身だけで判断をされるのは、大きなリスクを伴います。

「うちの会社の株は、今いくらなんだろう?」
「新ルールが適用されたら、どれくらい税金が増えるの?」
「自分の代で築いた財産を、きれいに子供に譲るにはどうすればいい?」

そんな疑問や不安を抱えている方は、ぜひ一度、当事務所へお気軽にご相談ください。私たちは、日本一親切で実務に精通した事業承継のプロフェッショナルとして、あなたの会社に最適な「完全オーダーメイドの承継プラン」をご提案いたします。

初回のご相談は無料です。会社の未来を守るための第一歩を、一緒に踏み出しましょう!お客様からのご連絡を、心よりお待ちしております。

兄弟間で「実家をどうするか」もめたら?相続放棄・換価分割・代償分割の違いを徹底整理

2026-07-05

【相続・遺産分割】

公開日:2025年6月 監修:相続専門 税理士チーム

はじめに:「実家問題」は、相続トラブルの最大の地雷

親が亡くなったとき、子どもたちの間で最もモメやすいのが「実家(不動産)をどうするか」という問題です。

現金なら3人で割れば済みますが、家はそうはいきません。「長男が住み続けたい」「次男は売ってお金に換えたい」「長女は共有で持つのは嫌だ」——こんな意見が衝突し、話し合いが何年も平行線をたどるケースは珍しくありません。

この記事では、相続した実家を巡る選択肢として代表的な3つの方法、

  • 相続放棄
  • 換価分割(かんかぶんかつ)
  • 代償分割(だいしょうぶんかつ)

について、中学生でも理解できるくらい分かりやすく解説します。それぞれのメリット・デメリット、税金の扱い、具体的な数字シミュレーションまでしっかり解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

【画像挿入位置】 画像:「実家をめぐって話し合う兄弟姉妹」のイラスト(キャプション:相続の話し合いが長引く前に、選択肢を正しく理解しましょう)

まず基本から:相続とは「プラスもマイナスも受け継ぐ」こと

相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産を受け継ぐことです。財産には、

  • プラスの財産:現金・預貯金・不動産・株式など
  • マイナスの財産:借金・未払い税金・保証債務など

の両方があります。実家のような不動産は典型的なプラス財産ですが、「誰がどのように取得するか」について相続人全員の合意(遺産分割協議)が必要です。

法定相続人と法定相続分(基本ルール)

遺言書がない場合、まず「誰が相続人になるか(法定相続人)」と「その取り分(法定相続分)」は民法で決まっています。

ケース法定相続人法定相続分
配偶者+子どもがいる場合配偶者・子ども全員配偶者1/2、子ども全員で1/2(均等)
子どものみの場合子ども全員均等割り(例:3人なら各1/3)
配偶者のみの場合配偶者全部
子どもも配偶者もいない場合親→兄弟姉妹の順民法の規定による

※ただし、法定相続分はあくまでも目安です。相続人全員が合意すれば、どんな分け方もできます。

3つの選択肢を、まずざっくり比較!

比較項目相続放棄換価分割代償分割
一言でいうと相続そのものをやめる売ってお金で分ける1人が取得し、他の人にお金を払う
実家はどうなる?相続しない(他の相続人・次順位へ)売却して現金化する特定の人が取得・所有し続ける
現金は必要か?不要不要(売却代金を分配)取得する人に資金力が必要
住み続けられるか?×(放棄するため)×(原則売却)◎(取得者が住める)
税金の扱い相続税なし(放棄した人)譲渡所得税が発生する取得者に相続税が発生する
手続きの難易度比較的シンプルやや複雑複雑(資金調達も必要)
向いているケース借金が多い・財産不要誰も住まない実家を売りたい長男が住み続けたい等

【画像挿入位置】 画像:「3つの選択肢の分岐点を示すフローチャート」(キャプション:あなたの状況はどれに当てはまる?選択肢の分岐図)

① 相続放棄:「そもそも相続しない」という選択

相続放棄とは何か?

相続放棄とは、「亡くなった人の財産を一切受け取らない」と決める手続きです。プラスの財産もマイナスの財産も、すべて引き継がないことになります。

【身近な例え話】

🎁 たとえば、親から「このボロボロの家と多額の借金を全部あげる」と言われたとき、「いりません」と言うのが相続放棄です。家も借金も、何も受け取りません。

相続放棄の手続きと期限

相続放棄は、「自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内」に、家庭裁判所に申述(申し込み)しなければなりません。この期限を「熟慮期間」といいます。

ステップ内容期限・費用
STEP 1必要書類を集める(戸籍謄本等)
STEP 2家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出相続開始を知った日から3ヶ月以内
STEP 3家庭裁判所からの照会書に回答
STEP 4「相続放棄申述受理通知書」を受け取れば完了収入印紙800円+郵便切手代

相続放棄の3大注意点

  • 【注意①】相続財産を「使ってしまう」と放棄できなくなる!

 亡くなった人の預貯金を勝手に引き出して使ったり、遺品を処分したりすると、「単純承認(相続を承認したとみなす)」として扱われ、放棄できなくなります。

  • 【注意②】次順位の相続人に権利が移る

 子ども全員が放棄すると、相続権は亡くなった人の親(祖父母)へ移ります。親も亡くなっていれば兄弟姉妹へ移ります。放棄する前に、次順位の方への連絡・相談が必要です。

  • 【注意③】一部だけの放棄はできない

 「現金だけ受け取って、借金は放棄したい」はできません。相続放棄は全か無か(All or Nothing)です。

相続放棄が向いているケース

  • 借金(負債)が財産より多い場合
  • 相続に関わりたくない事情がある場合
  • 他の相続人に全財産を集中させたい場合(例:配偶者に全部渡したい)

② 換価分割:「売ってから分ける」シンプルな方法

換価分割とは何か?

換価分割(かんかぶんかつ)とは、相続財産(実家などの不動産)を売却してお金(現金)にしてから、相続人で分ける方法です。

【身近な例え話】

🍰 大きなホールケーキ(実家)を、包丁で3等分するのが難しいなら、いったんケーキをすべてピューレ状(現金)にして、それをカップ3つに均等に分ける——それが換価分割のイメージです。

換価分割の流れ

  1. 相続人全員で「換価分割を行う」旨の遺産分割協議書を作成する
  2. 不動産を相続登記(所有権移転)する(売却のため必要)
  3. 不動産業者を通じて実家を売却する
  4. 売却代金(諸費用を差し引いた後)を法定相続分または協議で決めた割合で分配する

換価分割で発生する税金:「譲渡所得税」に注意!

売却すると、利益(売値-取得費)に対して「譲渡所得税」(所得税・住民税)が発生します。ただし、「相続した不動産」には特別なルールがあります。

💡 重要ポイント: 相続した不動産の「取得費」は、亡くなった方(被相続人)が当初購入した金額を引き継ぎます(取得費の引き継ぎ)。購入した当時の書類(売買契約書)が重要です!

【節税の切り札】「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(相続税取得費加算)」

相続した財産を相続税の申告期限(10ヶ月)から3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。これにより、譲渡所得を圧縮できます。

項目内容
特例の名称相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(措法39条)
適用条件相続税を支払っていること/相続開始日から3年10ヶ月以内に売却すること
効果支払った相続税のうち、売却した不動産に対応する部分を取得費に加算できる
結果譲渡所得が減り、譲渡所得税の負担が軽くなる

【特例その2】「空き家の3,000万円特別控除」も活用できる可能性あり

一定の要件(昭和56年以前に建築・区分所有建物でない等)を満たす空き家(実家)を売却した場合、譲渡益から3,000万円を控除できる特例(措法35条3項)があります。

主な要件内容
建物の要件昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有でないこと)
売却前の状態相続開始直前まで被相続人が1人で居住していた(老人ホーム入居の場合も一定条件下で適用可)
売却時の要件売却時に建物を取り壊すか、耐震基準適合リフォームをしてから売ること
売却価格1億円以下
申告期限売却した年の翌年2月16日〜3月15日の確定申告で申請
⚠️ 注意: この特例の要件は複雑です。特に老人ホーム入居中に亡くなった方の実家については、要件の確認が必要です。必ず専門家に相談することをおすすめします。

③ 代償分割:「1人が取得して、他の人にお金を払う」方法

代償分割とは何か?

代償分割(だいしょうぶんかつ)とは、相続人の1人が実家(不動産)を単独で取得する代わりに、他の相続人に対して「代償金(だいしょうきん)」として現金を支払う方法です。

【身近な例え話】

🏠 「実家」という大きなケーキをまるごと長男が受け取る代わりに、次男と長女に対して「ケーキ代の代わり」として現金を渡す——それが代償分割です。実家は長男のもとに残ります。

代償分割の流れ

  • 相続人全員で遺産分割協議を行い、「誰が実家を取得するか」「代償金をいくら、誰が誰に払うか」を決める
  • 遺産分割協議書に「代償分割」の旨と代償金の金額を明記する
  • 実家を取得する人が相続登記(名義変更)をする
  • 代償金を支払い、遺産分割が完了する

代償金の基準:「不動産の評価額」が重要

代償金の金額は、相続人間の合意で決めることができます。ただし、一般的には実家の「時価(市場価格)」や「固定資産税評価額」「路線価」などを参考に決定します。

評価方法概要特徴
時価(市場価格)不動産業者の査定額や実際の取引価格最も実態に近いが、業者によって差がある
路線価国税庁が毎年発表する評価額(時価の約80%程度)相続税申告でよく使われる基準
固定資産税評価額市区町村が定める評価額(時価の約70%程度)毎年4〜6月に届く「固定資産税課税通知書」に記載
💡 実務のポイント: 代償金の算定は「どの評価を使うか」で金額が大きく変わります。相続人間でもめないよう、不動産鑑定士の鑑定書を取得するケースも増えています。費用は数十万円かかりますが、紛争回避には有効です。

代償分割に伴う税務上の注意点

代償分割では、代償金を「もらった側」「払った側」それぞれに税務上の扱いがあります。

立場税務上の扱い注意点
実家を取得した人(代償金を支払う側)支払った代償金は相続税の計算では「取得財産から控除」できる相続税の課税価格の計算に影響する
代償金を受け取った側代償金は「相続により取得した財産」として相続税の対象相続税の課税価格に代償金を加算する
代償金の代わりに不動産を渡した場合渡した不動産に「みなし譲渡」として譲渡所得税が発生する現金ではなく不動産で払う場合は特に注意!

【具体的シミュレーション】実際の数字で比べてみよう

前提条件

項目内容
被相続人父(母はすでに死亡)
相続人子ども3人:長男Aさん・次男Bさん・長女Cさん(各1/3ずつ)
相続財産実家(時価:3,000万円)+現金500万円
実家の取得費(父が購入した金額)購入当時の価格:1,500万円
相続税今回のケースでは相続税なし(基礎控除3,000万円+600万円×3人=4,800万円以内)

パターン①:換価分割(実家を売却して3等分)

実家を3,000万円で売却した場合のシミュレーション:

計算項目金額備考
売却価格3,000万円 
取得費△1,500万円父の購入価格を引き継ぐ
譲渡費用(仲介手数料等)△100万円概算
譲渡所得1,400万円 
譲渡所得税(長期:20.315%)△約284万円相続開始から3年10ヶ月以内に売却の場合
手取り額(税引き後)約2,616万円 
現金500万円と合計3,116万円 
3人での1人あたり受取額約1,039万円 
✅ ポイント: 「空き家の3,000万円特別控除」が使える場合、譲渡所得1,400万円が全額控除されるため、譲渡所得税ゼロになります。手取りが約284万円増えることになります。

パターン②:代償分割(長男Aさんが取得、他2人に代償金を支払う)

計算項目金額・内容
実家の評価額(代償金の基準)時価3,000万円
長男Aさんの法定相続分1/3 → 1,000万円相当
次男Bさんへの代償金1,000万円
長女Cさんへの代償金1,000万円
長男Aさんが用意すべき現金合計2,000万円(+現金遺産からの受取500万円×1/3=約167万円を充当)
現金遺産の分配3人で167万円ずつ受取(別途)
長男Aさんの実質負担代償金2,000万円△現金受取167万円=約1,833万円
⚠️ 課題: 長男Aさんは2,000万円近い現金を用意する必要があります。自己資金がない場合は、不動産担保ローンや生命保険の活用が選択肢になります。代償金の工面方法についても専門家への相談が重要です。

3パターンの最終比較表

 相続放棄(全員)換価分割代償分割(長男取得)
長男Aさんなし約1,039万円の現金実家(3,000万円)を取得(現金負担あり)
次男Bさんなし約1,039万円の現金代償金1,000万円+現金167万円
長女Cさんなし約1,039万円の現金代償金1,000万円+現金167万円
実家の行方次順位相続人へ(または国庫)第三者へ売却長男の所有に
税負担なし(相続税対象外)譲渡所得税約284万円(全体)相続税(今回はゼロ)
向いている人借金が多い場合など誰も住まない/現金が必要長男が住み続けたい

こんな失敗が多い!実家相続の「やってはいけない」3選

❌ 失敗① 遺産分割協議書なしで名義変更してしまう

「とりあえず長男名義にしておこう」と、他の相続人の同意なく名義変更するのはNGです。のちに「同意していない」「遺産分割協議が無効」などのトラブルになります。必ず全員の署名・実印による遺産分割協議書を作成してから動きましょう。

❌ 失敗② 相続放棄の3ヶ月期限を過ぎてしまう

「考えている間に3ヶ月が過ぎた」というケースは非常に多いです。借金が多そうな場合は、すぐに弁護士・司法書士・税理士に相談し、期限内に手続きを進めましょう。「相続放棄の期限延長申請」も家庭裁判所に申立てれば認められる場合があります。

❌ 失敗③ 売却のタイミングを誤り、特例が使えなくなる

空き家の3,000万円特別控除や相続税取得費加算の特例には、売却の期限があります。「いつかそのうち売ろう」と先延ばしにしていると、特例の期限が過ぎてしまい、数百万円単位の税負担が増えることがあります。

【画像挿入位置】 画像:「失敗パターンを警告するアイコン付きのチェックリスト」(キャプション:3つの失敗を避けるだけで、数百万円の損失を防げます)

どれを選ぶべき?判断フローチャート

【STEP 1】借金(負債)は財産を上回っていますか?
YES → 【相続放棄】を検討(3ヶ月以内に家庭裁判所へ) NO  → STEP 2へ進む
【STEP 2】相続人の誰かが実家に住み続けたいですか?
YES → STEP 3へ進む NO  → 【換価分割】を検討(売却して現金で分配)
【STEP 3】取得したい人に代償金を支払う資金力がありますか?
YES → 【代償分割】を検討(代償金の算定・協議書の作成が重要) NO  → ローン活用・保険活用・一部売却など複合的な対策を専門家と相談

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続放棄をすると、実家の管理責任はなくなりますか?

A. 原則として相続放棄をすれば所有者ではなくなりますが、民法940条により「次の管理者が現れるまでの間は、自己の財産と同一の注意をもって財産を管理する義務」が残る場合があります。ただし、令和5年4月の民法改正により、相続放棄をした者の管理義務は「相続人が管理できる状態になるまで保存行為をすれば足りる」と緩和されています。具体的な対応は弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。

Q2. 換価分割した場合、確定申告は必要ですか?

A. はい、必要です。不動産を売却して譲渡所得が生じた場合、翌年の2月16日〜3月15日に確定申告を行う必要があります(相続開始の翌年から)。空き家特例や相続税取得費加算の特例を適用する場合も、必ず確定申告が必要です。申告を忘れると特例が適用されず、多額の税金が発生することがあります。

Q3. 代償分割の代償金を支払えない場合、どうすればよいですか?

A. いくつかの方法が考えられます。①不動産担保ローン(実家を担保にお金を借りる)、②生命保険の活用(事前に被相続人が生命保険に加入しておき、死亡保険金を代償金の財源にする)、③実家の一部を売却して資金を作る、④代償金の支払いを分割払い(年払い等)にする——などの方法があります。いずれも法的・税務的な注意点があるため、専門家へのご相談をお勧めします。

Q4. 相続人全員が合意しなければ、遺産分割は進められないですか?

A. 原則として、遺産分割協議は相続人全員の同意が必要です。ただし、全員の合意が得られない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申立てることができます。調停でも解決しない場合は「遺産分割審判」へ移行し、裁判所が分割方法を決定します。一般的に、調停・審判は長期化するため、早期の専門家活用が重要です。

Q5. 遺言書がある場合、遺産分割の方法に制限はありますか?

A. 遺言書がある場合、原則として遺言書の内容に従って相続が行われます。ただし、相続人全員が合意すれば、遺言書と異なる内容の遺産分割協議書を作成することもできます。また、遺言書があっても、各相続人には「遺留分」(最低限度の相続分)があり、遺留分を侵害している遺言は「遺留分侵害額請求」の対象になります。遺言書がある場合は、その内容と遺留分を確認した上で行動することが重要です。

まとめ:実家の相続は「3つの選択肢」の正しい理解から始まる

今回の記事のポイントを整理すると、

方法一言まとめこんなとき選ぶ
相続放棄相続そのものをやめる借金が多い・財産不要な場合
換価分割売ってから現金で分ける誰も住まない・公平に分けたい場合
代償分割1人が取得し、他に代償金を払う住み続けたい人がいる場合

実家の相続は、単純に「分ける」「売る」「放棄する」という問題ではありません。背後には相続税、譲渡所得税、各種特例の適用可否、さらには相続人間の関係性・感情まで絡み合う複雑な問題です。

「うちのケースはどれが正解なの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。実は、最適な方法は家族の状況によって異なります。「法律上できること」と「税務上お得なこと」と「家族が納得できること」を同時に満たす方法を見つけるには、専門家のサポートが不可欠です。

🏦 相続のご相談は、専門家へお気軽に 「うちの場合はどうすればいいの?」という個別具体的なお悩みは、ケースバイケースで判断が大きく変わります。 当事務所には、税務署OB税理士が複数在籍しており、相続税・譲渡所得税・各種特例の適用から遺産分割協議のサポートまで、ワンストップで対応可能です。 「税務調査が心配」「誰に相談すればいいか分からない」という方も、まずはお気軽にお問い合わせください。初回のご相談に対応しております。 遠方の方にはZOOMでのオンライン相談も承っております。 【 お問い合わせはこちら 】 https://www.oonumata.or.jp/

【税務解説ブログ記事】

2026-07-04

「生前贈与」は今も毎年110万円まで非課税? 改正後の「7年持ち戻し」への正しい相続対策

最終更新日:2025年 / カテゴリ:相続・贈与対策

「毎年110万円まで贈与すれば相続税がかからない」——そう聞いたことはありませんか? 実は2024年から税法が大きく変わり、この「常識」はそのままでは通用しなくなっています。  この記事では、改正後の生前贈与のルールを「中学生でもわかる言葉」で徹底解説します。 読み終わる頃には、「何をすべきか」の具体的な答えが見つかるはずです。
📷 【画像挿入箇所】 祖父母から孫・子への贈与のイメージ図解。カレンダーに「毎年110万円」と書かれ、左に旧ルール(3年)右に新ルール(7年)の比較矢印が描かれたイラスト キャプション:生前贈与ルールの新旧比較:3年から7年への「持ち戻し」延長のイメージ

第1章|そもそも「生前贈与」って何? —— 超基本から確認

1-1. 贈与税の基本:110万円の「非課税枠」とは

生前贈与とは、「亡くなる前(生きている間)に財産を誰かに渡すこと」です。

日本では、1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税がかかりません。この110万円のことを「基礎控除」と呼びます。

【身近な例えで理解する】 お父さんが子どもに「お小遣い」として毎年100万円渡す、というイメージです。 110万円を超えなければ、子どもは税務署に申告する必要も、税金を払う必要もありません。 この仕組みを使って、少しずつ財産を子や孫に移すのが「暦年贈与」という節税策です。

1-2. なぜ生前贈与が節税になるの?

相続税は、亡くなった時の「財産の総額」に対してかかります。

つまり、生きている間に財産を少しずつ渡しておけば、亡くなった時の財産が減る→相続税が安くなる、という仕組みです。

項目生前贈与なし毎年100万円×10年間 贈与した場合
相続財産1億円1億円 − 1,000万円 = 9,000万円
相続税の目安(子1人)約1,220万円約985万円
節税効果約235万円の削減

※上記は概算であり、個人の状況により異なります。

第2章|2024年改正で何が変わった? —— 「7年持ち戻し」を徹底解説

📷 【画像挿入箇所】 タイムライン上に「死亡日」を右端に置き、左に向かって「7年前」まで矢印が伸びる図解。旧ルール(3年)と新ルール(7年)が色分けで示され、持ち戻しゾーンがハイライトされている キャプション:贈与の「持ち戻し期間」が3年から7年へ延長されたことを示すタイムライン図

2-1. 「持ち戻し」ってどういう意味?

「持ち戻し」とは、一度渡した贈与財産を「なかったことにして、相続財産に戻す」ルールです。

これが適用されると、せっかく渡した贈与財産が相続税の計算に含まれてしまい、節税効果が消えてしまいます。

【例え話で理解する「持ち戻し」】  友達に「これあげる」とリンゴを渡したのに、後から「やっぱりカウントし直すね」と言われるイメージです。 税務署は「亡くなる前の一定期間に渡した財産は、相続財産と同じように税金をかけます」というルールを持っています。

2-2. 旧ルール(〜2023年12月31日まで):「3年持ち戻し」

改正前は、亡くなる前「3年以内」の贈与だけが持ち戻しの対象でした。

期間取り扱い
亡くなる3年より前の贈与相続財産に含まれない(節税効果あり)
亡くなる3年以内の贈与相続財産に加算される(節税効果なし)

2-3. 新ルール(2024年1月1日以降):「7年持ち戻し」への延長

2024年1月1日以降に行われた贈与については、亡くなる前「7年以内」の贈与が持ち戻し対象に拡大されました。

期間新ルールでの取り扱い
亡くなる7年より前の贈与相続財産に含まれない(節税効果あり)
亡くなる4〜7年前の贈与相続財産に加算(ただし合計100万円まで控除あり)
亡くなる3年以内の贈与全額、相続財産に加算される

重要なポイント:「延長4年分」には100万円の緩和措置がある

新たに延長された「4〜7年前」の期間については、その期間の贈与合計額から100万円を差し引いた金額だけが加算されます。  例:亡くなる5年前に毎年50万円×4回(計200万円)贈与していた場合   → 200万円 − 100万円 = 100万円 が相続財産に加算

2-4. 段階的な移行期間に注意! ——「いつからの贈与が何年持ち戻し?」

新ルールは「2024年1月1日以降の贈与」から適用されます。経過措置として、しばらくの間は持ち戻し期間が段階的に延長されます。

相続発生時期持ち戻し対象期間注意点
〜2026年12月31日3年以内(旧ルールと同じ)2024年以降の贈与のみ対象
2027年1月1日〜4年以内経過期間中
2028年1月1日〜5年以内経過期間中
2029年1月1日〜6年以内経過期間中
2030年12月31日以降〜7年以内(完全移行)全額新ルール適用

※相続が実際に発生するタイミングと贈与を行った時期の両方で判断されます。専門家への確認を強くお勧めします。

第3章|「相続時精算課税制度」も大きく変わった!

3-1. 相続時精算課税とは?

「相続時精算課税」は、通常の暦年贈与とは別のルートで贈与を受ける制度です。

60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に使えます(選択制)。

項目暦年課税(通常)相続時精算課税
非課税枠(年間)110万円110万円(2024年から新設)+累計2,500万円
超えた場合の税率10〜55%(累進)一律20%
相続時の扱い7年以内分が加算全額が相続財産に加算(ただし毎年110万円は除外)
一度選択したら変更可能取り消し不可

3-2. 2024年改正で相続時精算課税に「年間110万円の非課税枠」が追加!

2024年から相続時精算課税を選択した人も、年間110万円まで非課税で贈与でき、しかもこの110万円分は相続財産への加算対象外になりました。

【改正ポイントのまとめ】  相続時精算課税を選択した場合: 毎年110万円まで → 贈与税ゼロ & 相続税への加算もゼロ(完全に節税効果あり) 110万円を超えた部分 → 累計2,500万円まで非課税(ただし相続時に加算される)

第4章|具体的なシミュレーション —— 「7年持ち戻し」でどれだけ影響が出る?

📷 【画像挿入箇所】 3つのケース(ケースA・B・C)を横並びで比較した図解。それぞれの贈与パターン、持ち戻し金額、相続税への影響を視覚的に示す キャプション:贈与パターン別・相続税への影響シミュレーション比較図

ケースA:毎年100万円を10年間贈与し、贈与終了の翌年に亡くなった場合

前提: 相続財産2億円、子ども1人、10年間で計1,000万円を贈与

項目旧ルール(3年持ち戻し)新ルール(7年持ち戻し)
持ち戻し対象贈与300万円(3年×100万円)700万円(7年×100万円)
相続財産(課税対象)2億円 − 1,000万円 + 300万円 = 1億9,300万円2億円 − 1,000万円 + 700万円 − 100万円 = 1億9,600万円
相続税の目安約4,460万円約4,520万円
差額(増加額)約60万円増

※実際の相続税額は法定相続人の数、その他の事情により変動します。

ケースB:贈与開始から7年以内に亡くなった場合(最も影響が大きいケース)

前提: 相続財産2億円、毎年110万円ずつ贈与を始めて5年後に死亡

期間贈与額持ち戻し(新ルール)
5年前〜4年前(延長分)110万円×2年=220万円220万円 − 100万円=120万円を加算
3年前〜死亡(旧来分)110万円×3年=330万円330万円を全額加算
合計550万円を贈与450万円が相続財産に加算
【このケースの教訓】  「早めに贈与を始めることが重要」です。 贈与を開始してから7年以上経過した部分だけが、完全に相続財産から切り離されます。 70代以降に慌てて始めると、節税効果が限定的になってしまいます。

ケースC:相続時精算課税(年間110万円枠)を活用した場合

前提: 相続時精算課税を選択して毎年110万円×10年贈与

項目内容
贈与総額110万円×10年=1,100万円
贈与税0円(非課税枠内)
相続財産への加算0円(年間110万円枠は加算対象外)
相続税節税効果1,100万円分の財産が課税対象から除外

このケースでは、暦年贈与の7年持ち戻しリスクを避けながら、確実に節税ができます。ただし、相続時精算課税は一度選ぶと取り消せないため、慎重な判断が必要です。

第5章|正しい相続対策の「ステップ別ロードマップ」

📷 【画像挿入箇所】 5つのステップを縦に並べたフローチャート。各ステップにアイコンと短い説明文が付き、矢印でつながっている。最後のステップに「専門家に相談」と書かれている キャプション:相続対策の5ステップロードマップ:現状把握から実行・見直しまで

STEP 1 :財産の「見える化」から始める

  • 現時点での財産総額(不動産・預貯金・株式・生命保険など)を一覧化
  • 法定相続人は何人か確認(配偶者・子ども・孫など)
  • 相続税がかかる水準かどうかを確認(基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人数)

STEP 2 :贈与の「戦略」を決める

状況おすすめの戦略
70歳未満で健康暦年贈与(110万円/年)を今すぐ開始。7年超の部分から節税効果大
すでに70代・80代相続時精算課税の年間110万円枠を活用。確実に節税
子や孫への大口贈与を検討教育資金一括贈与・結婚子育て資金の非課税制度も検討
不動産など大きな財産あり生命保険の活用や遺言書との組み合わせを専門家と相談

STEP 3 :「贈与契約書」を必ず作成する

贈与は口頭でも成立しますが、税務調査では「証拠」が重要です。以下の点を必ず守りましょう。

  • 毎年、贈与契約書を作成・署名する
  • 銀行振込で記録を残す(現金手渡しはリスクが高い)
  • 受け取った側(子・孫)が自分で管理できる口座に入れる
  • もらった側が自由に使えることが「本物の贈与」の条件
【要注意】「名義預金」の罠  子どもや孫の名義で口座を作り、お金を入れていても、 親や祖父母が通帳・印鑑を管理していると「名義預金」とみなされます。 この場合、税務署から「贈与とは認められない」と判断され、相続財産に含まれてしまいます。

STEP 4 :年1回「贈与記録」を整理・保管する

  • 贈与契約書(コピー可)を年ごとに整理
  • 振込明細書・通帳のコピーを保管
  • 贈与税の申告が必要な場合(年間110万円超)は期限内に申告

STEP 5 :定期的に「見直し」を行う

税法は毎年改正される可能性があります。少なくとも1〜2年に一度、専門家と一緒に現在の対策を見直すことをお勧めします。

第6章|その他の非課税制度も賢く活用しよう

6-1. 教育資金の一括贈与(〜2026年3月31日まで)

項目内容
非課税限度額1,500万円(学校等への直接支払い分)
対象30歳未満の子・孫への教育費
注意点金融機関への信託等が必要、使途証明書の提出が必要

6-2. 結婚・子育て資金の一括贈与(〜2025年3月31日まで)

項目内容
非課税限度額1,000万円(結婚費用は300万円まで)
対象18〜49歳の子・孫
注意点残額は相続財産に加算される可能性あり

6-3. 住宅取得等資金の贈与(〜2026年12月31日まで)

項目内容
非課税限度額省エネ等住宅:1,000万円 その他住宅:500万円
対象18歳以上の子・孫が住宅取得に使う資金
注意点所得制限あり(合計所得2,000万円以下)

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 110万円ちょうど贈与すれば、申告しなくてもいいですか?

A. はい、年間110万円以下の贈与は申告不要です。ただし、「110万円ちょうど」でも贈与契約書と振込記録は残しておきましょう。税務調査では「贈与の事実」を証明する必要があります。

Q2. 「7年持ち戻し」はいつから始まった贈与に適用されますか?

A. 2024年1月1日以降に行われた贈与が対象です。2023年12月31日以前の贈与は旧ルール(3年持ち戻し)が適用されます。ただし、実際の相続発生時期と贈与時期の両方を考慮する必要があるため、専門家への確認をお勧めします。

Q3. 相続時精算課税を選ぶと、後で暦年贈与に戻せますか?

A. いいえ、相続時精算課税は一度選択すると取り消しができません(同じ贈与者・受贈者の組み合わせで)。ただし、2024年からは年間110万円の非課税枠も使えるようになったため、デメリットは縮小されました。選択前に必ず専門家と相談してください。

Q4. 孫への贈与も持ち戻しの対象になりますか?

A. 原則として、孫が法定相続人でない場合(養子縁組をしていないなど)は、持ち戻しの対象になりません。ただし、遺言で遺贈を受ける孫は対象となります。また、相続時精算課税を選択している場合は加算対象となるため注意が必要です。

Q5. 贈与税を払った場合、相続税から差し引いてもらえますか?

A. はい。持ち戻し対象となった贈与について、すでに贈与税を支払っていた場合は、その贈与税額を相続税から控除できます(二重課税防止の仕組み)。ただし、計算が複雑なため専門家に依頼することをお勧めします。

まとめ:「7年持ち戻し」時代の正しい生前贈与対策

チェック項目ポイント
① 早めに贈与を開始する70歳を超える前に始めることで、7年超分の節税効果を確実に得られる
② 贈与契約書と振込記録を毎年残す名義預金と判定されないための「証拠」が重要
③ 相続時精算課税の活用を検討する2024年から年間110万円の非課税枠が新設され使いやすくなった
④ 他の非課税制度もフル活用する教育資金・住宅資金・結婚子育て資金の特例を組み合わせる
⑤ 定期的に専門家と見直しをする税法改正への対応と現状の最適化のため年1〜2回の相談が理想

「生前贈与は早く始めるほど有利」という原則は今も変わりません。ただし、7年持ち戻しのルールや各種制度の組み合わせは、ご自身の状況によって最適解が大きく異なります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「うちの場合はどうすればいい?」 個別の状況に応じた最適な相続・贈与対策は 専門家への相談が不可欠です。  税理士法人大沼田経営会計事務所では、 国税局査察部OBを含む税理士が、 あなたの財産状況・家族構成・税務リスクを 総合的に分析し、最適なプランをご提案します。  ZOOMオンライン相談も承っております。 まずはお気軽にご相談ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▶ https://www.oonumata.or.jp/

【税理士が解説】出口戦略で差がつく!

2026-07-03

1億円アパート売却時の「譲渡所得税」を最小化する税務テクニック

「そろそろ所有しているアパートを売却しようか」——そう考えたとき、多くのオーナー様が見落としがちなことがあります。それは、売却で得られるお金のうち、実に2〜4割近くが税金として差し引かれる可能性があるということです。

たとえば1億円でアパートを売却できたとしても、税金の計算方法を知らずに手続きを進めてしまうと、手元に残るお金が想定より数百万円〜1,000万円以上も少なくなってしまうことがあります。逆に言えば、正しい知識を持って準備するだけで、同じ1億円の売却でも「手元に残る金額」を大きく増やすことができるのです。

この記事では、次の3つを、税金の知識が全くない方でも一読で理解できるよう、身近な例え話を使いながら徹底的に解説します。

  • なぜアパート売却で高額な税金がかかるのか、その仕組み
  • 税金を最小化するために「今すぐ」できる具体的なテクニック
  • 1億円で売却した場合の、生々しい税額シミュレーション
結論(先に知りたい方はここだけ読んでください) ・アパート売却の税金を左右する最大のポイントは「①所有期間」「②取得費の正確な把握」「③特例制度の活用」の3つ。 ・この3つを押さえるかどうかで、税額は数百万円〜1,000万円単位で変わります。 ・特に「取得費」の計算を誤ると、本来払わなくてよい税金まで払うことになりかねません。

1. そもそも「譲渡所得税」とは?~お小遣いのやりくりで考える~

難しく聞こえる「譲渡所得税」ですが、仕組みはとてもシンプルです。次のようなお小遣いのやりくりをイメージしてください。

あなたが100円でリンゴを1個買い、それを150円で売ったとします。このとき税金の対象になるのは、売った金額の150円全部ではなく、「儲けた分」である50円だけです。アパートの売却も全く同じ考え方で、「売れた金額」そのものではなく、「買ったときの値段(+経費)」を差し引いた「儲けの部分」にだけ税金がかかります。

譲渡所得の計算式

基本の計算式 ・譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除 ・譲渡価額:売却代金そのもの ・取得費:購入時の値段(建物部分は「使った分=減価償却費」を差し引いた金額) ・譲渡費用:仲介手数料、印紙税、測量費用など、売るためにかかった費用

この計算式のうち、オーナー様の努力次第で最も差がつくのが「取得費」の部分です。詳しくは3章で解説します。

🖼 リンゴの仕入れ値と販売値の差額にのみ税金がかかることを示す図解イラスト(キャプション:「税金がかかるのは“儲けの部分”だけ」)

2. 最重要ポイント①:所有期間で税率が2倍以上変わる

アパートなどの不動産を売却して得た利益(譲渡所得)は、給与所得や事業所得とは切り離して税額を計算する「分離課税」という方式が採られています。そしてこの税率は、物件の「所有期間」によって、なんと2倍以上も変わります。

短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率比較

区分所有期間の目安所得税+復興特別所得税住民税合計税率
短期譲渡所得売却年の1月1日時点で5年以下30.63%9%39.63%
長期譲渡所得売却年の1月1日時点で5年超15.315%5%20.315%
誤解しやすい注意点 ・所有期間の判定は「売却した日」ではなく「売却した年の1月1日時点」で数えます。 ・そのため、実際の所有年数が5年をわずかに超えていても、1月1日基準では「5年以下」に区分されてしまうケースがあります。 ・売却時期をあと数ヶ月ずらすだけで、税率が39.63%→20.315%へと約半分になることもあるため、契約前に必ず所有期間を確認しましょう。

🖼 所有期間5年を境に税率が約2倍変わることを示すステップ図(キャプション:「あと数ヶ月待つだけで、税率が半分に変わることも」)

3. 最重要ポイント②:「取得費」を正確に計算する

譲渡所得の金額を小さくする=税金を減らすためには、「取得費」をいかに正確に、かつ漏れなく計算するかが極めて重要です。ここを曖昧にしたまま申告してしまい、本来払わなくてよい税金を払っているケースが実務上非常に多く見られます。

◆ 3-1. 建物は「減価償却費」を差し引かなければならない

土地は年数が経過しても価値が減らないと考えられていますが、建物は「使うほど古くなる=価値が減る」という考え方に基づき、購入価格から「減価償却費(これまで経費として使った分)」を差し引いた金額が、建物の取得費になります。「買ったときの値段をそのまま取得費にできる」と誤解している方が非常に多いため、特に注意が必要です。

◆ 3-2. 土地と建物の按分(振り分け)

アパートは「土地」と「建物」がセットになった資産です。売買契約書に土地・建物それぞれの金額が明記されていればそれに従いますが、記載がない場合は、固定資産税評価額の比率など、合理的な方法で按分する必要があります。この按分方法によって、消費税の課税対象額や減価償却の計算も変わってくるため、契約時点から金額を明記しておくことが望ましいです。

◆ 3-3. 取得費が分からない場合の「概算取得費5%」という落とし穴

先祖代々の土地など、購入当時の契約書や領収書が残っておらず、取得費が分からないケースがあります。この場合、税法上は「譲渡価額の5%」を取得費とみなす「概算取得費」という制度を使うことができます。しかしこれは、実際の取得費がいくらであったとしても強制的に5%とみなされてしまう、オーナー様にとって非常に不利な制度です。

ここが重要 ・概算取得費(5%)を使うと、譲渡価額のほぼ全額が「儲け」とみなされ、税額が跳ね上がります。 ・購入時の契約書、領収書、通帳の出金記録などは、売却まで必ず保管しておきましょう。 ・紛失している場合も、当時の売買契約書の写しを不動産会社や法務局(登記情報)から取得できないか確認することをおすすめします。

◆ 3-4. 取得費に「加算」できる項目を見逃さない

次のような費用も取得費に加算できる場合があります。加算を忘れると、その分だけ余計な税金を払うことになるため、漏れなく計上しましょう。

  • 購入時の仲介手数料
  • 登録免許税・登記手数料・不動産取得税(一定の場合)
  • 購入時に負担した印紙税
  • 建物の増改築など、資産価値を高めるための資本的支出(リフォーム費用のうち一定のもの)

🖼 取得費に加算できる費用の一覧を示すチェックリスト図解(キャプション:「この費用、取得費に加算し忘れていませんか?」)

4. シミュレーション:1億円でアパートを売却した場合

ここまでの内容を踏まえ、実際に1億円でアパートを売却した場合の税額を具体的な数字で見てみましょう。

前提条件

項目金額・条件
譲渡価額(売却額)1億円(内訳:土地7,000万円、建物3,000万円)
購入価格(10年前に取得)8,000万円(土地5,000万円、建物3,000万円)
建物の減価償却累計額1,200万円
譲渡費用(仲介手数料・印紙代等)300万円
所有期間10年(=長期譲渡所得に該当)

パターンA:取得費を正確に計算した場合(正しい申告)

計算項目金額
取得費(土地)5,000万円
取得費(建物:3,000万円-減価償却1,200万円)1,800万円
取得費 合計6,800万円
譲渡所得(1億円-6,800万円-300万円)2,900万円
税額(長期譲渡所得 20.315%)約589万円

パターンB:同じ条件で「短期譲渡所得」だった場合

仮に所有期間が5年以下(短期譲渡所得)だった場合、譲渡所得の金額(2,900万円)は同じでも、税率が39.63%になるため、税額は次のようになります。

短期譲渡所得の場合の税額 ・2,900万円 × 39.63% = 約1,149万円 ・長期譲渡所得(パターンA:約589万円)との差額は、約560万円。 ・同じ利益額でも、所有期間が5年を超えているかどうかだけで、約560万円もの差が生まれます。

パターンC:取得費の記録がなく「概算取得費5%」を使った場合

計算項目金額
取得費(譲渡価額の5%とみなす)500万円
譲渡所得(1億円-500万円-300万円)9,200万円
税額(長期譲渡所得 20.315%)約1,869万円
パターンAとの差は、なんと約1,280万円 ・取得費の記録を保管していたか否かだけで、税額に1,280万円もの差が生まれる計算になります。 ・「記録を残す」というごくシンプルな備えが、最大の節税テクニックであることが分かります。

🖼 パターンA・B・Cの税額をグラフで比較したイラスト(キャプション:「同じ1億円の売却でも、税額は最大1,280万円変わる」)

5. さらに踏み込んだ節税テクニック5選

基本を押さえた上で、状況によっては次のような制度の活用も検討できます。いずれも要件が細かく定められており、適用を誤ると否認されるリスクもあるため、実行前には必ず専門家への確認をおすすめします。

◆ 5-1. 特定事業用資産の買換え特例(措置法37条)

事業用に使っていた不動産を売却し、一定期間内に新たな事業用資産に買い換えた場合、譲渡益の一部(要件により最大80%程度)について、課税を将来に繰り延べることができる制度です。所有期間が10年を超えていることなど、細かな要件が定められています。

注意:あくまで「繰延」であり「非課税」ではない ・この特例は税金が消えるわけではなく、将来買い換えた資産を売却するときに、繰り延べた分もまとめて精算される仕組みです。 ・地域要件や資産の区分など、適用条件が複雑かつ改正されやすいため、必ず売却前に専門家へご相談ください。

◆ 5-2. 相続財産を譲渡した場合の「取得費加算の特例」

相続で取得したアパートを、相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合、支払った相続税額のうち一定部分を取得費に加算できる特例があります。相続税を多く払っている物件ほど効果が大きく、「相続したらすぐに売却する」方が有利になるケースも少なくありません。

◆ 5-3. 消費税の取り扱いにも要注意

土地の売却は消費税が非課税ですが、建物部分の売却は、売主が消費税の課税事業者に該当する場合、消費税の課税対象になります。売却前年までの売上規模によって課税事業者になるかどうかが決まるため、売却のタイミング次第で消費税の負担が変わることがあります。あわせて、買主側のインボイス制度への対応(適格請求書の発行可否)も、売却価格の交渉に影響する場合があります。

◆ 5-4. 法人化を検討する(損益通算・繰越欠損金の活用)

個人の場合、不動産の譲渡所得は「分離課税」のため、給与所得や事業所得など他の所得と相殺(損益通算)することができません。一方、法人の場合は譲渡益が通常の法人所得に合算されるため、その事業年度の他の赤字や、過去から繰り越している欠損金(最大10年間繰越可能)と相殺できます。将来的に不動産を売却する予定がある場合、どちらの名義で保有するかを早い段階から検討しておくことが、有効な節税につながります。

◆ 5-5. 複数物件を保有している場合は、譲渡損との通算を検討

同じ年に複数の不動産を売却する予定がある場合、含み損を抱えている物件を同じ年に売却することで、利益が出ている物件の譲渡所得と相殺(損益通算)できる場合があります。売却のタイミングを1年の中で調整するだけで、全体の税負担を抑えられる可能性があります。

🖼 5つの節税テクニックを一覧にしたチェックリスト・フローチャート(キャプション:「あなたのケースで使える節税テクニックはどれ?」)

6. 見落としがちな注意点

  • 概算取得費(5%)は非常に不利な選択のため、可能な限り実額(契約書等の記録)を使うこと
  • 特例の適用には、確定申告書への記載や添付書類の提出が必須。適用を忘れると使えないため要注意
  • 買換え特例はあくまで「繰延」であり、将来の売却時に改めて課税される点を理解しておく
  • 減価償却費の計算誤りは、税務調査で否認されるリスクがあるため、専門家によるチェックが望ましい
  • 税制は毎年のように改正されるため、実行前には必ず最新の要件を確認する

7. よくある質問(FAQ)

◆ Q1. アパートを売って赤字(譲渡損失)が出た場合も申告は必要ですか?

A. 譲渡損失は、同じ年に他の不動産の譲渡益がある場合、その利益と相殺(損益通算)できることがあります。たとえ税額がゼロであっても、申告することで有利になるケースが多いため、赤字だからといって申告不要と自己判断せず、専門家に確認することをおすすめします。なお、給与所得など不動産以外の所得との通算は、原則としてできません。

◆ Q2. 相続したアパートは、すぐに売却しても問題ありませんか?

A. 問題ありません。むしろ、相続税を納めている場合は「取得費加算の特例」(相続開始から3年10ヶ月以内の売却)が使えるため、早期に売却したほうが税負担を抑えられるケースが多くあります。

◆ Q3. 個人名義と法人名義、どちらでアパートを保有する方が売却時に有利ですか?

A. ケースバイケースです。繰越欠損金を持つ法人であれば有利になりやすい一方、社会保険料の負担や設立・維持コストなども含めた総合的な試算が必要です。税率の比較だけで判断せず、必ず個別のシミュレーションを行いましょう。

◆ Q4. 買換え特例を使えば、税金はゼロになりますか?

A. ゼロにはなりません。あくまで課税のタイミングを将来に繰り延べる制度であり、所有期間・資産の種類・地域要件など、細かな条件を満たす必要があります。適用可否は必ず事前に専門家へご確認ください。

◆ Q5. 「概算取得費5%」は、どのような場合に使うのですか?

A. 購入当時の契約書や領収書が本当に見つからず、実際の取得費が証明できない場合の、最終手段として使う制度です。税額が非常に大きくなるため、まずは登記情報や当時の不動産会社への照会など、実額を証明できる資料がないか確認することを優先しましょう。

8. まとめ:出口戦略は「売る直前」ではなく「今」から始まっている

1億円のアパート売却であっても、次の3つのポイントを押さえるかどうかで、手元に残る金額は数百万円〜1,000万円以上変わってきます。

  • ① 所有期間:5年を境に税率が約2倍変わる(39.63% ⇔ 20.315%)
  • ② 取得費の正確な把握:記録の有無だけで税額が1,000万円以上変わることもある
  • ③ 特例制度の活用:買換え特例、取得費加算の特例、法人化などを状況に応じて検討する

これらは、売却の直前になって慌てて対策できるものではなく、日頃からの記録の保管や、保有形態(個人・法人)の検討など、「今」からの準備が将来の手取り額を大きく左右します。

ただし、実際にどの制度が使えるか、いくらの税額になるかは、物件の取得時期・用途・ご家族の状況・他の所得の有無などによって一件一件異なり、個別具体的な判断が必要です。

個別のご相談はお気軽に ・「自分の場合、実際にいくら税金がかかるのか知りたい」 ・「どの特例が使えるか、事前にシミュレーションしてほしい」 ・「相続や事業承継とあわせて、売却のタイミングを相談したい」 ・このようなお悩みをお持ちの方は、判断が難しい分野だからこそ、ぜひ一度、当事務所へお気軽にご相談ください。

オーナー社長の自社株、相続税評価が「15分の1」になることも? 持株比率を見直す“配当還元方式”活用の考え方をやさしく解説

2026-07-02

相続税・事業承継コラム

はじめに:あなたの会社の株、実は「高すぎる評価額」がついているかもしれません

「自分が創業した会社の株なんて、売るつもりもないし、値段なんて気にしたことがない」

そう考えているオーナー社長は少なくありません。しかし、相続税の世界では話が別です。上場していない会社(非上場会社)の株式であっても、社長が亡くなって相続が発生した瞬間、その株には「相続税評価額」という値段がつき、そこに相続税が課税されます。

しかも厄介なことに、利益を積み上げてきた優良企業ほど、株の評価額は跳ね上がる傾向にあります。「儲かっている会社を作った」というだけで、後継者が多額の相続税に苦しむケースは、実務の現場で驚くほど頻繁に起こっています。

一方で、株式の持ち方(誰が、何%持っているか)を工夫することで、同じ会社の同じ株式でも評価額を大きく引き下げられる制度が、実は税法上きちんと用意されています。それが本記事のテーマである「配当還元方式」です。

本来、会社を支配するオーナー社長にはこの有利な評価方式は使えないのが原則です。ところが、持株比率を計画的に「15%未満」までコントロールすることで、オーナー社長であってもこの評価方式が認められた実例が存在します。

この記事を読めば、以下のことが中学生でも分かるレベルで理解できます。

  • 非上場株式の相続税評価には、そもそもどんな仕組みがあるのか
  • なぜオーナー社長の株は高く評価されてしまうのか
  • 「持株比率15%未満」がなぜ節税の分かれ目になるのか
  • 実際にどのくらい評価額が変わるのか(具体的な数字のシミュレーション)
  • この方法を使うときに絶対に押さえておくべき注意点

それでは、順番に見ていきましょう。

1. 相続税における「株式の評価」の基本を理解しよう

1-1. 株式には「上場株式」と「非上場株式」がある

相続税を計算するとき、財産にはすべて「時価(そのときの値段)」をつける必要があります。株式も例外ではありません。

  • 上場株式:証券取引所で日々売買されており、値段(株価)が誰の目にも明らかな株式。相続税評価も、その公表された株価をそのまま(正確には一定期間の平均値と比較して一番低い値を)使います。
  • 非上場株式(取引相場のない株式):中小企業のオーナー企業の株など、証券取引所で売買されていない株式。市場の値段が存在しないため、国税庁が定めた独自の計算ルール(財産評価基本通達)に沿って評価額を「計算」する必要があります。

中小企業のオーナー社長が保有する自社株は、ほぼすべてこの「非上場株式」に該当します。そして、この非上場株式の評価こそが、相続税対策における最大の難所のひとつです。

📷 画像挿入位置:上場株式と非上場株式の違いを示すシンプルな対比イラスト キャプション:市場で値段が決まる上場株式と、計算式で値段を決める非上場株式

1-2. 非上場株式の評価方法は「立場」によって変わる

非上場株式の評価でもっとも重要なポイントは、「誰が株式を取得するか」によって評価方法がまったく変わるという点です。

イメージしやすいように、リンゴ農園にたとえてみましょう。

ある町に、代々続くリンゴ農園があります。この農園を丸ごと所有し、経営を仕切っている「農園主」と、収穫を手伝う対価として少しだけ農園の権利(株式のようなもの)をもらっている「アルバイトのAさん」がいるとします。
農園主が亡くなって農園の権利を相続する場合、相続人は「農園(土地、リンゴの木、収穫物、将来の利益まで含めた事業全体)」を丸ごと引き継ぐことになります。ですから評価額も「農園全体の価値」を基準に高く算定されるのが自然です。
一方、アルバイトのAさんが持っている権利は、経営には一切関与できず、実質的には「年に一度もらえる分け前(配当)」以上の価値を持ちません。農園そのものを売買できるわけでも、経営を左右できるわけでもないからです。だからAさんの権利は、「毎年もらえる分け前の大きさ」だけを基準に、低めに評価するのが合理的です。

税法上もこの考え方に基づき、非上場株式の評価方式は大きく2つに分かれます。

評価方式対象となる株主評価の考え方評価額の傾向
原則的評価方式 (類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式)会社を支配する株主 (同族株主等)会社の利益・資産・配当などから「会社そのものの値打ち」を算定高くなりやすい
特例的評価方式 (配当還元方式)会社の経営に関与しない少数株主「実際に受け取れる配当」から逆算して評価低くなりやすい

この2つの評価額には、しばしば10倍以上の差が生まれます。だからこそ、「どちらの方式を使えるか」は相続税額を大きく左右する重要な分岐点なのです。

2. なぜオーナー社長は「配当還元方式」を使えないのが原則なのか

2-1. カギを握る「同族株主」という考え方

税法では、会社の株主を「同族株主」と「それ以外の株主」に区分します。ざっくり言うと、会社を支配しているグループ(家族・親族単位)に属する株主かどうかという区分です。

判定のルールを、家庭のお小遣い会議にたとえて考えてみましょう。

ある家庭で「今月のお小遣いの使い道」を家族会議で決めるとします。もし、お父さん・お母さん・子どもたちの意見(議決権)を合わせて過半数(50%超)を占めるグループがいれば、そのグループが実質的に「決定権者」です。もし誰も過半数を持っていなければ、30%以上を持つグループが実質的な発言力を持つ「決定権者」とみなされます。

これを会社に当てはめたものが「同族株主」の判定です。

ケース「同族株主」となるグループ
50%超を保有する株主グループが存在するそのグループのみが同族株主
50%超を保有するグループが存在しない合計30%以上を保有するグループが同族株主
どのグループも30%未満しか保有していない「同族株主のいない会社」となる

※「同族関係者」の範囲は、配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族など、法令で細かく定められています。

2-2. オーナー社長は基本的に「同族株主」に該当する

創業社長やその親族が大半の株式を持っている会社では、当然ながら社長とその家族が「50%超」または「30%以上」を占める同族株主グループに該当します。同族株主に該当する株主が株式を取得する場合、原則として「原則的評価方式」(高くなりやすい方式)で評価しなければなりません。

つまり、オーナー社長の株は「会社を支配している人の株」だからこそ、高く評価されるのが原則なのです。

📷 画像挿入位置:家系図をベースにした「同族株主」の範囲を示す図解 キャプション:配偶者・血族・姻族――どこまでが「同族」としてカウントされるか

2-3. それでも配当還元方式が使える3つの例外パターン

ただし、同族株主に該当する会社であっても、以下のような「経営への関与度が薄い株主」については、例外的に配当還元方式が認められています。

パターン条件
① 同族株主のいる会社の少数株主会社に「中心的な同族株主」がいて、自分自身はそれに該当せず、取得後の議決権割合が5%未満で、かつ役員でもない
② 同族株主のいない会社の少数株主自分と同族関係者を合わせた議決権割合の合計が15%未満
③ 同族株主のいない会社で「中心的な株主」がいる場合15%以上のグループに属していても、自分が単独10%以上を持つ「中心的な株主」に該当せず、かつ役員でもない

(注)「中心的な同族株主」とは、株主本人とその配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族などの議決権を合計して25%以上になる場合のその株主を指す、やや専門的な概念です。実務上は「本当に経営の中枢にいる一族かどうか」を判定するためのルールと理解しておけば十分です。

ここで本記事のテーマである「15%未満」というキーワードが登場します。これはパターン②、つまり「そもそも同族株主が存在しない会社」における基準です。

3. 本題:なぜ「持株比率15%未満」が節税のカギになるのか

3-1. 発想の転換:「同族株主がいる会社」から「同族株主がいない会社」へ

先ほどの表を見ると、大きなヒントが隠れています。

「同族株主のいる会社」の少数株主が配当還元方式を使うには、議決権割合5%未満まで下げる必要があります。しかし「同族株主のいない会社」であれば、15%未満まで持っていても配当還元方式が使えるのです。

つまり、同じ「配当還元方式を使いたい」という目的でも、会社が「同族株主のいる会社」か「同族株主のいない会社」かによって、許容される持株比率のハードルが3倍(5%→15%)も変わってきます。

ここに、オーナー社長でも配当還元方式を活用できる可能性が生まれます。社長個人の持株比率を下げるだけでなく、会社全体の株主構成そのものを「特定の家族グループが30%以上を独占しない構造」に作り変えることで、会社自体を『同族株主のいない会社』に変えるという発想です。

3-2. スキームの流れをステップ図で確認

具体的な流れを、ステップごとに整理すると次のようになります。

【ステップ1】現状分析   社長とその家族で発行済株式の大半(50%超)を保有   → 会社は「同族株主のいる会社」、社長は同族株主に該当               ↓ 【ステップ2】将来の評価額を試算   会社の規模・業績から、原則的評価方式(類似業種比準方式や純資産   価額方式)による評価額が高額になると判明               ↓ 【ステップ3】株主構成の見直しに着手   ・従業員、取引先、6親等内の血族・3親等内の姻族に該当しない    親戚など、「同族関係者」の枠外にあたる人へ、計画的・段階的に    株式を譲渡または贈与   ・特定の家族グループの合計議決権割合を、50%超・30%以上の    ラインより下まで引き下げる               ↓ 【ステップ4】会社の性質が変化   どの株主グループも30%以上を保有しない状態になり、   「同族株主のいない会社」に移行               ↓ 【ステップ5】社長本人の持株比率を調整   社長本人および同族関係者の合計議決権割合を「15%未満」に維持               ↓ 【ステップ6】相続発生時   社長の相続財産に含まれる自社株は、   配当還元方式(低い評価額)で評価される
📷 画像挿入位置:株主構成が「同族株主のいる会社」から「同族株主のいない会社」へ段階的に変化していく様子を示すステップ図解 キャプション:持株比率の分散が、評価方式の分かれ道を変える

3-3. 「15%」という数字が持つ意味

なぜ15%なのか、家庭のお小遣いのたとえに戻って考えてみましょう。

ある地域の自治会で、特定の一家族が過半数の発言力を持っていなければ、その地域の「意思決定」は住民全体で分散されていると考えられます。そのなかで、ある家族の発言力(議決権)が全体のごく一部(15%未満)にとどまっているなら、その家族は「地域を実質的に動かしている中心人物」とは言いがたく、むしろ他の多くの住民と同じような「一員」に近い立場だといえます。

これと同じ考え方で、たとえオーナー社長であっても、会社全体の議決権のうち自分たち家族が持つ割合が15%未満にまで薄まっていれば、「その会社を実質的に支配している中心人物」とまでは言えない、という評価がなされる余地が生まれるのです。

ただし、これはあくまで会社全体としてどの家族グループも支配的な地位を持たない(=同族株主のいない会社である)ことが大前提です。オーナー一族以外にも、同族株主のいる会社と同じ考え方で「中心的な株主」(単独で10%以上を持つ株主)がいる場合には、また別の判定が必要になる点にも注意が必要です。

4. 具体的な数字で見るシミュレーション(モデルケース)

制度の理解を深めるために、架空の会社を使った試算例で確認してみましょう。(以下はあくまで理解のためのモデルケースであり、実在の会社・裁判事例の数値ではありません。)

4-1. 前提条件

  • 会社名:A社(製造業、従業員50名程度の非上場企業、税法上の区分は「中会社」)
  • 発行済株式総数:20万株
  • 類似業種比準方式による評価額:1株あたり8,000円
  • 純資産価額方式による評価額:1株あたり12,000円
  • 併用方式により算定した原則的評価額:1株あたり7,500円と仮定
  • 配当還元方式による評価額:年配当金額1株50円、1株あたりの資本金等の額50円と仮定

計算式:(年配当金額 ÷ 10%)×(資本金等の額 ÷ 50円) = (50円 ÷ 10%)×(50円 ÷ 50円)= 500円

4-2. 評価方式による差額比較

評価方式1株あたり評価額
原則的評価方式(併用方式)7,500円基準
配当還元方式500円約15分の1

同じ会社の同じ株式でも、評価方式が違うだけでここまで差が出ます。

4-3. 相続財産としての評価額シミュレーション

社長が持株比率を計画的に見直し、相続発生時点で保有していた株式数が2万9,000株(議決権割合14.5%=15%未満)だったケースで比較します。

項目原則的評価方式で評価した場合配当還元方式で評価した場合
保有株式数2万9,000株2万9,000株
1株あたり評価額7,500円500円
相続財産としての評価額2億1,750万円1,450万円

評価額の差は約2億300万円にのぼります。相続税は財産全体の総額や適用される税率によって最終的な税額が変わりますが、この評価額の差がそのまま相続税の課税ベースを圧縮することになるため、数千万円単位で納税額が変わってくることも十分にあり得ます。

📷 画像挿入位置:原則的評価方式と配当還元方式による評価額の差を棒グラフで示した比較イラスト キャプション:同じ株式でも評価方式次第で評価額は大きく変わる

5. このスキームを実行する際に絶対に押さえるべき注意点

ここまで読むと「持株比率さえ調整すれば節税できる」と考えたくなりますが、実務ではいくつもの落とし穴があります。専門家に相談せずに自己判断で進めるのは非常に危険です。

5-1. 「名義だけの分散」は認められない

株式を形式的に他人名義に変えるだけで、実質的な議決権行使や配当の受け取りが従来どおり社長本人に帰属している場合、これは税務調査で「名義株」と判断され、実質的な所有者(社長本人)の財産として扱われるリスクが非常に高いです。株式の分散は、実際に議決権行使や配当受領の実態が伴う、真正な譲渡・贈与でなければ意味がありません。

5-2. 「同族関係者」の範囲を正確に把握する必要がある

同族関係者の範囲(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族など)は法令で細かく定められています。「遠い親戚だから同族関係者ではないだろう」という思い込みで進めると、想定外に同族株主グループの議決権割合が高止まりし、スキームが成立しないことがあります。

5-3. 役員要件・中心的な株主の判定も忘れずに

配当還元方式を使うためには、対象となる株主が「役員」に該当しないことも条件のひとつです。社長本人はもちろん役員に該当しますが、株式を分散させる先の親族が非常勤役員などに就任している場合も、この要件との関係を慎重に確認する必要があります。また、単独で10%以上の議決権を持つ「中心的な株主」に該当しないかどうかもあわせて確認が必要です。

5-4. 事業承継全体の設計と矛盾しないようにする

株式を社外の第三者や遠い親族に分散させることは、相続税評価額を下げる効果がある一方で、将来的な経営権の集約や事業承継の計画と矛盾するリスクもはらんでいます。「節税はできたが、後継者が経営権を掌握しづらくなった」という本末転倒な結果にならないよう、事業承継計画全体の中に位置づけて設計することが不可欠です。

5-5. 実行には「時間」が必要

このようなスキームは、相続発生の直前に慌てて実行するものではありません。株式の分散、会社の性質の変化、議決権割合の調整には数年単位の計画的な取り組みが必要です。「経営者の“先読み”」こそがこのスキームの本質であり、早期からの資本政策の検討が成功のカギを握ります。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. 持株比率を15%未満にすれば、誰でも必ず配当還元方式が使えるのですか?

A. いいえ、単純に15%という数字だけで判断することはできません。会社自体が「同族株主のいない会社」に該当していることが大前提であり、加えて対象株主が役員でないこと、単独で10%以上を持つ「中心的な株主」に該当しないことなど、複数の要件を満たす必要があります。会社の株主構成全体を精査したうえで判断する必要があります。

Q2. 株式を分散させる相手は誰でもよいのですか?

A. 分散先の相手が「同族関係者」に該当するかどうかで結果が大きく変わります。配偶者や近い血族・姻族に分散しても、税法上は依然として同じ同族グループの持株としてカウントされてしまうため、効果が得られません。従業員や取引先、あるいは同族関係者の範囲外にあたる遠縁の親族などへの分散が検討対象になります。

Q3. 名義だけ分散させて、実際の経営や配当の実態は変えなくても大丈夫ですか?

A. 大丈夫ではありません。実質的な支配関係や配当受領の実態が変わっていない「名義株」は、税務調査において本来の所有者(社長本人)の財産とみなされるリスクが極めて高く、加算税などのペナルティにもつながりかねません。実態を伴う真正な株式移転であることが必須条件です。

Q4. このスキームはどんな会社にも使えますか?

A. 会社の規模、業績、既存の株主構成、後継者の有無など、会社ごとの事情によって最適な方法はまったく異なります。特に、複数の相続人がいる場合や、事業承継税制の活用を検討している場合は、より複合的な視点での設計が必要です。画一的な「テンプレート」を当てはめるのではなく、個別の状況に応じたオーダーメイドの検討が欠かせません。

Q5. 相続が発生してから対策を始めても間に合いますか?

A. 相続が発生してしまった後では、評価方式そのものを事後的に変更することはできません。持株比率の調整や株主構成の見直しには一定の準備期間が必要なため、対策は経営者が元気なうちから、できるだけ早い段階で着手することが重要です。

まとめ:自社株の評価額は「知っているか、知らないか」で大きく変わる

最後に、本記事の要点を整理します。

  • 非上場株式の相続税評価には「原則的評価方式(高くなりやすい)」と「配当還元方式(低くなりやすい)」の2種類がある
  • オーナー社長は「同族株主」に該当するため、原則として配当還元方式は使えない
  • ただし、会社の株主構成そのものを「同族株主のいない会社」に変え、社長本人と同族関係者を合わせた議決権割合を「15%未満」に抑えることができれば、配当還元方式の適用が認められる余地がある
  • 評価方式の違いによって、1株あたりの評価額が10倍以上変わることも珍しくない
  • 一方で、名義株のリスク、同族関係者の範囲の正確な把握、役員要件の確認、事業承継全体との整合性など、押さえるべき注意点は非常に多い
  • このスキームは短期間で実行できるものではなく、計画的・長期的な資本政策の一環として取り組む必要がある

自社株の評価額は、経営者ご自身が思っている以上に高額になっているケースが少なくありません。そして、その評価額を適法な範囲でコントロールできるかどうかは、「早めに専門家へ相談し、計画的に手を打てるかどうか」にかかっています。

株主構成の見直しや自社株評価、事業承継対策は、会社ごとの事情によって最適解がまったく異なる、非常に専門性の高い分野です。 当事務所は創業65年、350社以上のお客様をご支援してきた総合会計事務所です。在籍する税理士のうち複数名が国税局査察部などの税務署OBであり、税務調査対策にも強みを持っています。定期的な巡回監査を通じてお客様と丁寧に対話しながら、複雑な事業承継・相続対策にもワンストップで対応。社会保険労務士も在籍しており、人事制度の見直しや経営計画の策定支援まで、多角的にサポートいたします。 個別具体的なケースについてのご判断は難しいことも多いため、まずは当事務所へお気軽にご相談ください。遠方の方にはオンライン相談も承っております。

生前贈与の「110万円非課税」は廃止された?

2026-07-01

2026年(令和8年)最新版でやさしく解説

はじめに:「廃止されたって本当?」その不安、3分で解消します

「親が元気なうちに、少しずつお金を渡しておきたい」「110万円までなら税金がかからないって聞いたけど、最近の法改正で使えなくなったらしい」——そんな噂を聞いて、不安になっていませんか。

結論から先にお伝えします。

「年間110万円までの贈与が非課税になる」という制度(暦年贈与の基礎控除)は、廃止されていません。2026年(令和8年)現在も、引き続き使えます。

ただし、「噂」が完全なデマというわけでもありません。実は2024年(令和6年)に、この制度のまわりで大きな変更がありました。これを知らずに今までと同じ感覚で贈与をすると、「思っていたより相続税が高くなった」「もっと早く始めればよかった」という後悔につながりかねません。

この記事では、なぜ「廃止された」という噂が広まったのか、実際に何が変わったのか、結局どう贈与を進めればいいのかを、難しい専門用語を使わず、家庭のお小遣いに例えながら、誰でも理解できるレベルで分かりやすく解説します。

[画像案] 困った表情の中高年男性が、スマートフォンで「生前贈与 廃止」と検索している様子のイラスト(キャプション:「110万円贈与は終わった」という噂、本当のところは?)

1. そもそも「生前贈与の110万円非課税枠」とは?

1-1. 「贈与税」をお小遣いで例えると

個人から個人へ無償で財産(現金・不動産・株式など)を渡す行為を「贈与」といい、もらった側には本来「贈与税」という税金がかかります。

ですが、もらったら毎回税金がかかるのでは、お年玉やお小遣いまで課税されてしまい、現実的ではありません。そこで国は、次のルールを設けています。

1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税はゼロでよい

これを「暦年課税(れきねんかぜい)の基礎控除」と呼びます。これが世間でいう「110万円贈与」の正体です。例えるなら、お小遣い帳に「年間110万円までは“非課税ポケット”に入れてOK」という枠が用意されているイメージです。

1-2. 「誰から」もらうかではなく「誰が」もらうかで数える

ここで多くの方が誤解するポイントがあります。

  • 誤解:父から110万円、母から110万円もらっても、それぞれ非課税
  • 正解:もらう人(子)を主語にして、1年間にもらった金額の「合計」で判定する

父と母からそれぞれ110万円ずつ(合計220万円)もらった場合、110万円を超えた110万円分には贈与税がかかります。「ポケットは渡す人ごとではなく、もらう人ごとに1つだけ」と覚えてください。

[画像案] 1人の子どもに対して、父・母・祖父からそれぞれ矢印が伸び、合算された金額が「110万円の非課税ポケット」に入りきらず一部があふれている図解(キャプション:非課税枠は「もらう人」1人につき年間110万円)

2. 「廃止された」と言われる本当の理由——正体は2つの法改正

「110万円が廃止された」という噂が広まった背景には、2023年度(令和5年度)の税制改正で行われた、性質の異なる2つの変更があります。

2-1. 変更点1:「生前贈与加算」の期間が3年→7年に延長された

110万円以下の贈与であっても、贈与した人(親)が亡くなる直前に行われたものは「なかったこと」にされて、相続財産に足し戻されるというルールが、もともと存在していました。これを「生前贈与加算」といいます。亡くなる直前に駆け込みで財産を子どもに移し、相続税を逃れることを防ぐための仕組みです。

この「足し戻しの対象期間」が、2024年1月1日以降の贈与から、「亡くなる前3年以内」から「亡くなる前7年以内」へ、段階的に延長されました。これが「実質的に使いにくくなった=廃止された」という噂につながったと考えられます。

重要なのは、110万円という非課税の「金額」自体は1円も変わっていないという点です。変わったのは、相続税の計算に巻き戻される「期間」だけです。

2-2. 変更点2:ライバル制度「相続時精算課税」にも110万円ができた

贈与税にはもう一つ、「相続時精算課税制度」という別の選択肢があります。2,500万円まで贈与税がかからない代わりに、相続発生時に贈与分も含めて相続税を計算し直す仕組みです。これまでは年間の非課税枠がありませんでしたが、2024年1月から、こちらの制度にも新たに「年間110万円」の非課税枠が作られました。

「相続時精算課税にも110万円ができた」というニュースが、「暦年贈与(もとからある110万円)が廃止されて、新しい110万円に置き換わった」と誤って伝わったケースが多いようです。実際には、従来の暦年贈与の110万円はそのまま残り、別の制度にも新しく110万円ができて、選択肢が2つになった、というのが正しい理解です。

[画像案] 「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの道が分かれている分岐点のイラスト。両方の道の入口に「年間110万円まで非課税」の看板が立っている(キャプション:110万円の非課税枠は、実は2種類に増えた)

3. 一覧で比較:暦年課税 vs 相続時精算課税

どちらの制度を使うかによって、メリット・デメリットが大きく異なります。

比較項目暦年課税(従来の110万円贈与)相続時精算課税制度
年間の非課税枠110万円110万円
累計の特別控除なし2,500万円(110万円とは別枠)
110万円超の税率贈与額が増えるほど税率アップ(最大55%)一律20%
亡くなる前の足し戻しあり(2031年以降は7年以内の贈与が対象)110万円の基礎控除部分はなし/2,500万円部分は相続財産に加算
申告の手間110万円以下なら申告不要110万円以下なら申告不要(初回は届出書が必要)
制度の撤回いつでも自由に選べる一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せない
向いている人早めにコツコツ・長期間贈与できる人値上がりが見込まれる財産を早めに移したい人

どちらが有利かは、財産の総額、贈与する人の年齢や健康状態、贈与したい財産の種類によって変わります。一度選択すると後戻りできない制度もあるため、個別の判断は専門家に相談することを強くおすすめします。

4. 「生前贈与加算」をもっと分かりやすく——ステップ図で理解する

「亡くなる前7年以内の贈与は足し戻される」と言われても、ピンとこない方も多いと思います。家庭のやりくりに例えて、ステップで見てみましょう。

【ステップ図】生前贈与加算のしくみ(暦年課税を選んだ場合)

STEP1 親が元気なうちに、子へ毎年110万円を贈与する

  ↓

STEP2 贈与税はその都度かからない(110万円以下のため)

  ↓

STEP3 残念ながら親が亡くなる(相続が発生)

  ↓

STEP4 亡くなった日から「さかのぼって7年以内」に行われた贈与がないか確認

  ↓

STEP5 該当する贈与があれば、相続財産に足し戻して相続税を計算し直す

  ↓

STEP6 7年より前(8年目以降)の贈与は、足し戻されず非課税のまま確定

つまり、贈与を始めるタイミングが早ければ早いほど、「7年より前」の部分が増えて、非課税の効果がしっかり残るということです。

延長された4年分(亡くなる前3年超〜7年以内)の贈与については、合計100万円までは足し戻しの対象から除外する緩和措置も用意されています。なお、この7年ルールは2024年1月の贈与からスタートし、完全な「7年」になるのは2031年(令和13年)以降に発生する相続からです。2026年7月時点では、まだ移行期間の途中です。

[画像案] カレンダー上に「贈与」のマークが7年分並び、相続発生日から矢印で7年さかのぼって囲み線が引かれているインフォグラフィック(キャプション:亡くなる日から7年さかのぼって贈与をチェック)

5. 数字で納得!具体的なシミュレーション

ケース1:贈与をまったくしなかった場合

  • 財産総額:6,000万円
  • 相続人:子2人
  • 相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
  • 課税対象額:6,000万円-4,200万円=1,800万円
  • 概算の相続税額:約180万円程度(各種条件により変動)

ケース2:10年前から毎年110万円ずつ、2人の子に贈与していた場合

  • 毎年の贈与額:子1人あたり110万円×2人=220万円
  • 10年間の贈与累計:220万円×10年=2,200万円
  • 相続発生時の財産:6,000万円-2,200万円=3,800万円
  • 亡くなる前7年以内の贈与(子2人×110万円×7年=1,540万円)は相続財産に足し戻される
  • 足し戻し後の課税対象財産:3,800万円+1,540万円-基礎控除4,200万円=1,140万円
  • 概算の相続税額:約114万円程度

このケースでは、8年目より前(3年分、子2人×110万円×3年=660万円)の贈与だけが「完全に非課税」として確定し、節税効果として残った計算になります。

ポイント:贈与を始めるのが早ければ早いほど、「7年より前」の非課税部分の割合が増えていきます。同じ110万円贈与でも、80歳から始めるのと60歳から始めるのとでは、最終的な節税効果に大きな差が生まれます。

上記はあくまで仕組みを理解していただくための簡易シミュレーションです。実際の税額は、財産の種類、特例の適用有無、家族構成等によって大きく変動します。

[画像案] 「贈与なし」「110万円贈与あり」の2本の棒グラフを並べて、相続税額の差を視覚的に比較したシンプルなグラフ(キャプション:早く始めるほど差が広がる、生前贈与の効果)

6. 2026年(令和8年度)税制改正で、あわせて押さえておきたいポイント

6-1. 教育資金の一括贈与の非課税措置が終了(令和8年3月31日まで)

祖父母などから孫へ、教育資金として1,500万円まで一括で非課税贈与できる特例がありましたが、この措置は令和8年3月31日をもって延長されず終了しました。すでに専用口座を作って拠出した分については、引き続き非課税の扱いが適用されます。教育費の援助は、今後は都度の必要な範囲での贈与や、暦年贈与の110万円枠の活用が中心になっていきます。

6-2. 貸付用不動産の評価方法の見直し(令和9年1月1日以降適用)

アパートなど人に貸している不動産を使った相続税対策について、市場価格との差が大きすぎるケースに対応するため、評価方法が見直されます。不動産を使った大型の相続税対策を検討している方は、この点にも注意が必要です。

これらは一般的なご家庭の110万円贈与への直接的な影響は限定的ですが、教育資金や不動産を絡めた対策をお考えの場合は、早めに専門家へ確認することをおすすめします。

7. 結局、生前贈与はやったほうがいい?向いている人・向いていない人

こんな方には生前贈与(110万円贈与)がおすすめです

  • 相続財産が、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えそうな方
  • 贈与する側がまだ比較的お元気で、長期間コツコツ続けられる見込みがある方
  • 子だけでなく、孫(法定相続人以外)にも財産を渡したい方

慎重な検討が必要な方

  • 財産総額が相続税の基礎控除内に収まりそうな方
  • 贈与する側の年齢が高く、健康状態に不安がある方
  • 贈与によって、ご自身の老後の生活資金が不足してしまうおそれがある方

生前贈与は「節税のテクニック」である以前に、「自分の生活を守りながら、大切な人に想いを託す」行為です。節税効果だけを追い求めて、ご自身の老後資金を削ってしまっては本末転倒です。

8. 生前贈与で失敗しないための3つの注意点

注意点1:「もらった」という証拠を必ず残す

口約束だけの贈与は、税務調査で「名義預金(めいぎよきん)」、つまり「形だけ子の名義になっているが、実質的には親の財産のまま」とみなされ、贈与そのものが否定されてしまうリスクがあります。毎年、贈与契約書を作成し、振込で記録を残し、もらった側が自分で通帳やカードを管理することが重要です。

注意点2:「孫」への贈与は加算対象外になりやすいが、例外もある

法定相続人ではない孫への贈与は、原則として生前贈与加算(7年ルール)の対象外です。ただし、孫が遺言で財産を受け取る場合や、代襲相続人となるケースでは、孫への贈与であっても足し戻しの対象になるため注意が必要です。

注意点3:教育費や生活費の「都度贈与」は、そもそも110万円の枠を使わなくてよい

入学金や仕送りなど、必要な都度、必要な金額だけを渡す教育費・生活費は、もともと贈与税がかからない「非課税財産」として扱われます。まとめて一括で渡すのではなく、必要なタイミングごとに渡すようにすると、110万円の枠を温存できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 結局、110万円の生前贈与は廃止されたのですか?

A. 廃止されていません。2026年現在も、1年間に110万円以下の贈与であれば贈与税はかかりません。変わったのは、亡くなる前の贈与が相続財産に足し戻される期間が、3年から7年に延長されたという点です。

Q2. 7年ルールは、もう完全に適用されているのですか?

A. いいえ。2024年1月の贈与から段階的に延長が始まっており、完全な「7年」になるのは2031年(令和13年)以降に発生する相続からです。2026年7月時点では、まだ移行期間の途中です。

Q3. 毎年同じ時期に同じ金額を贈与すると、贈与税がかかると聞きました。本当ですか?

A. はい、注意が必要です。「毎年100万円ずつ10年間渡す」とあらかじめ約束していた場合、まとめて贈与されたとみなされ課税される可能性があります。贈与のたびに金額や時期を変える、その都度贈与契約書を作成するといった工夫が重要です。

Q4. 暦年課税と相続時精算課税、どちらを選べばいいですか?

A. 一概には言えません。長期間コツコツ贈与できる場合は暦年課税が、値上がりしそうな財産を早めに移したい場合は相続時精算課税が向いている傾向があります。専門家とともに慎重に判断することをおすすめします。

Q5. 贈与税の申告はどんなときに必要ですか?

A. 1年間にもらった財産の合計が110万円以下であれば、申告は不要です。110万円を超えた場合や相続時精算課税を初めて利用する場合は、原則として翌年2月1日から3月15日までに申告が必要です。

まとめ:制度は「廃止」ではなく「変化」している。だからこそ早めの相談が大切

  • 年間110万円までの贈与が非課税になる「暦年課税」の仕組みは、廃止されていません。
  • 亡くなる前の贈与が相続財産に足し戻される期間が、2024年1月の贈与分から「3年」から「7年」へ段階的に延長されています。
  • 「相続時精算課税」にも新たに年間110万円の非課税枠ができ、選択肢が広がりました。
  • 教育資金の一括贈与の非課税措置は令和8年3月31日で終了するなど、関連制度も変化し続けています。
  • 制度を正しく理解し、早めに、計画的に贈与を始めることが、結果的に最も効果的な節税・資産承継につながります。

生前贈与は、財産の額、ご家族の構成、贈与する方の年齢や健康状態によって、「どの制度を、いつから、どのくらいのペースで使うべきか」がご家庭ごとに大きく異なります。インターネットの一般的な情報だけで判断してしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまうことも少なくありません。

「うちの場合はどうなんだろう」「暦年課税と相続時精算課税、どちらが向いているのか知りたい」——そんな個別具体的なご判断は、ぜひ専門家への相談をおすすめします。当事務所では、最新の税制に基づいた生前贈与・相続対策のご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください.

兄弟間で「実家をどうするか」もめたら?

2026-06-30

相続放棄・換価分割・代償分割の違いを徹底整理

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【対象:相続問題を抱えるご家族 / 読了時間:約15分】

「お父さんが亡くなって、実家の処分をどうするか兄弟間でもめてしまった……」

「長男が家を継ぎたいと言い張るけど、私は現金でもらいたい」

「そもそも相続放棄ってどういう意味? 売ったほうがいいの?」

こういった悩みは、相続の現場で非常によく聞かれます。特に、亡くなった親の実家は、お金に換算すると非常に大きな資産でありながら、兄弟でそのまま公平に分けることが難しいため、揉め事の火種になりやすいのです。

この記事では、実家の相続でよく使われる3つの方法——「相続放棄」「換価分割(かんかぶんかつ)」「代償分割(だいしょうぶんかつ)」——を、税理士の立場から一つひとつ丁寧に解説します。

読み終わる頃には、「自分のケースにはどの方法が向いているのか」がスッキリわかるようになります。ぜひ最後までお読みください。

■ そもそも不動産の相続はなぜ難しいの?

相続財産に「現金」しかないなら、人数で割るだけなので比較的シンプルです。しかし「実家(不動産)」が含まれると、一気に話が複雑になります。その理由を見てみましょう。

◆ 不動産は「分割」できない

現金なら1,000万円を2人で「500万円ずつ」と割れますが、家は物理的に半分に切ることができません。「名義を2人にする(共有)」こともできますが、後々の売却や管理で必ずトラブルになります。

◆ 評価額と「気持ち」が一致しないことが多い

長男は「思い出の家を守りたい」、次男は「現金で受け取りたい」と思うことは珍しくありません。不動産は単なる「金額」以上に感情が絡むため、交渉が難航しやすいのです。

◆ 相続税の支払いは「現金」が原則

相続税は、原則として現金で支払わなければなりません。不動産しか相続していない場合、「家はあるのに税金を払うお金がない」という深刻な事態が起こりうるのです。

【まとめ】不動産相続の難しさ:① 物理的に分けられない ② 感情・思い出が絡む ③ 相続税の現金不足問題

■ 「実家」の相続を解決する3つの方法 全体像

実家(不動産)を巡る相続問題を解決するための主な方法は次の3つです。まずは表で全体像を把握しましょう。

【比較表】実家の相続3パターン早わかり

方法内容のひと言まとめ家はどうなる?お金はもらえる?向いているケース
相続放棄「自分は相続しない」と裁判所に申告する自分は取得しないもらえない(プラスもマイナスも放棄)借金が多い場合など
換価分割家を売ってお金に換えてから全員で分ける売却される全員に現金で入る誰も住まない場合・公平に分けたい場合
代償分割誰か一人が家を取得し、他の人に現金を払う特定の一人が取得する家を取得しない人は現金をもらえる誰かが住み続けたい・家を守りたい場合

それぞれの方法を、これから順番に詳しく解説していきます。

■ 方法①:相続放棄(そうぞくほうき)

◆ 一言でいうと?

「自分はこの相続から完全に抜ける」と裁判所に届け出ることです。

◆ もう少し詳しく(中学生でもわかる例え)

たとえば、お父さんが3,000万円の家と1,000万円の借金を残して亡くなったとします。プラスの財産(家)もマイナスの財産(借金)も引き継ぐのが相続の基本ルールです。しかし借金の額が大きかったり、相続そのものに関わりたくない事情がある場合、「私は何もいらない。借金も引き受けない」と宣言できます。これが相続放棄です。

【相続放棄 ステップ図】

ステップやること期限・注意点
STEP 1相続の開始(被相続人の死亡)を知る
STEP 2財産・負債の内容を確認するなるべく早く動く
STEP 3相続放棄を決意する他の相続人と話し合う
STEP 4家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出【重要】相続開始を知った日から3か月以内
STEP 5裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届くこれで手続き完了

◆ 絶対に覚えておきたいポイント

  • 期限は「3か月以内」:相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述しないと、自動的に「相続する」ことになってしまいます。
  • 一度放棄したら取り消せない:気が変わっても、原則として撤回することはできません。
  • プラスもマイナスも全部放棄:実家(プラス)だけ放棄して借金(マイナス)だけ受け取るような「いいとこどり」はできません。
  • 次の順位の相続人に相続権が移る:放棄すると、次の相続順位の親族(兄弟・甥・姪など)に相続権が移ることがあります。連絡が必要です。

◆ こんな場合に向いています

  • 故人に多額の借金や債務(保証人など)があり、相続すると損になるとき
  • 財産はほとんどなく、手続きが面倒なだけのとき
  • 他の兄弟が家を相続することになり、自分は一切関わりたくないとき(ただし、現金は一切もらえません)

⚠ 注意:「実家だけ欲しくない」という理由での相続放棄はおすすめできません。

放棄すると他の財産(預貯金・有価証券など)も全て受け取れなくなります。

「実家は欲しくないが、預金は受け取りたい」という場合は、次の換価分割や代償分割を検討してください。

■ 方法②:換価分割(かんかぶんかつ)

◆ 一言でいうと?

実家を売却して、売れたお金を相続人で分け合う方法です。

◆ 中学生でもわかる例え

りんごの木(実家)を相続したとします。木ごと分けることはできないので、一度りんごを全部売って現金にしてから、その現金を兄弟で分ける。これが換価分割のイメージです。

◆ 換価分割の流れ

【換価分割 フローチャート】

順序内容
遺産分割協議「実家を売って現金で分ける」と相続人全員で合意する(書面に残す)
相続登記いったん相続人名義に不動産を登記する(全員の共有名義 or 代表者名義)
売却活動不動産会社に依頼して売却する
売却代金の受領売却代金が入金される
費用の控除仲介手数料・測量費・解体費などを差し引く
分配残った金額を遺産分割協議で決めた割合で分ける

◆ 税金はどうなる?(重要)

換価分割では「不動産を売った」ことになるため、譲渡所得税(じょうとしょとくぜい)がかかる場合があります。

項目内容
課税対象売却価格 − 取得費(購入費用など) − 譲渡費用(仲介手数料など)
税率(短期:所有5年以下)約39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)
税率(長期:所有5年超)約20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)
相続した不動産の所有期間「被相続人が取得した日」から引き継ぐ(亡くなってから新しくカウントしない)
3,000万円特別控除条件を満たせば、譲渡益から3,000万円控除できる場合がある(空き家特例など)

📌 ポイント:相続した不動産の「取得費」が不明な場合は、売却代金の5%しか取得費として認められない(概算取得費)ため、譲渡税が高くなることがあります。

できるだけ購入当時の書類(売買契約書・領収書)を探しましょう。

◆ こんな場合に向いています

  • 誰も実家に住む予定がない(または住んでいない)
  • 兄弟全員が公平にお金を受け取ることを望んでいる
  • 相続税の支払いのために現金が必要
  • 実家が遠方にあり、管理が難しい

⚠ 注意点:「売れるまで時間がかかる」「相場より安くしか売れない」「市場に出したくない」という場合は、換価分割が難しいこともあります。

また、相続人全員の同意が必要なため、一人でも反対すると実行できません。

■ 方法③:代償分割(だいしょうぶんかつ)

◆ 一言でいうと?

一人が実家を丸ごと取得するかわりに、他の相続人には自分のお金(または財産)で相応の額を支払う方法です。

◆ 中学生でもわかる例え

兄弟3人でゲームソフトを1本相続したとします。物理的に3分割はできません。そこで長男が「俺がそのゲームを全部もらう。代わりに弟二人に3,000円ずつ渡すよ」と約束する。これが代償分割です。

◆ 代償分割の流れ

順序内容
不動産の評価額の確定相続税評価額(路線価など)または時価で不動産の価値を算定する
遺産分割協議「長男が家を取得し、次男・三男に代償金を支払う」と全員で合意する
代償金の支払い代償を支払う相続人が、他の相続人に現金を支払う
相続登記不動産を家を取得した相続人一人の名義に登記する

◆ 代償金の計算例(シミュレーション)

【設定】父が亡くなり、相続人は長男・次男・三男の3人。遺産は「実家(時価3,000万円)」と「預金300万円」のみ。

 詳細
遺産総額3,000万円(実家)+300万円(預金)= 3,300万円
法定相続分(各1/3)3,300万円 ÷ 3 = 1,100万円
長男が取得するもの実家(3,000万円)+預金100万円 = 合計3,100万円
長男が支払う代償金3,100万円 − 1,100万円 = 2,000万円(次男・三男に各1,000万円)
次男・三男が受け取るもの代償金1,000万円+預金100万円 = 合計1,100万円(それぞれ)

✅ 結果:全員が法定相続分(1,100万円相当)を受け取れる形で分割できました!

  長男は実家を守り続けることができます。

◆ 代償分割の税務上のポイント

  • 受け取った代償金には税金はかからない(相続税の対象は遺産全体で計算済み)
  • 代償金を不動産で支払う場合は譲渡所得税がかかる可能性あり(現金で払う方が一般的)
  • 代償金の金額を明確に遺産分割協議書に記載することが重要

◆ こんな場合に向いています

  • 長男(または誰か)が「実家を守りたい」「住み続けたい」と強く希望している
  • 代償金を支払える資力(現金・貯蓄)がある相続人がいる
  • 実家を売却したくない(先祖代々の土地、事業用不動産など)

⚠ 注意点:代償金を支払う相続人に十分な現金がないと実行できません。

「家はもらいたいが代償金を払えない」という場合、代償分割は成立しません。

住宅ローンを組む「代償分割ローン」という方法もありますが、すべての金融機関で利用できるわけではありません。専門家への相談が必要です。

■ 3つの方法を徹底比較! あなたに合うのはどれ?

比較項目相続放棄換価分割代償分割
家はどうなる自分は取得しない売却される誰か一人が取得
お金の受け取り一切なし売却代金を分配家を取らない人は現金受取
手続きの複雑さ比較的シンプル(裁判所手続き)やや複雑(売却手続き)複雑(評価・協議・支払い)
必要な現金不要不要(売却後に分配)代償金を支払う現金が必要
全員の合意各自が個別に判断全員の合意が必要全員の合意が必要
不動産を残せるか×(関与しない)×(売却する)○(誰かが保有継続)
感情的な問題少ない(離脱するため)あることも揉めやすい(評価額で対立)
相続税への影響他の人の相続割合が増える売却益に譲渡税代償金自体は非課税
期限の制約3ヶ月以内に申述要なし(売却タイミングは自由)なし
主な向き不向き借金が多い・関与したくない誰も住まない・公平に分けたい誰かが家を守りたい

■ あなたのケース別! おすすめの方法早見表

こんな状況なら…おすすめの方法
親が多額の借金を残した→ ①相続放棄 を検討
兄弟全員が実家から遠くに住んでいて、誰も住むつもりがない→ ②換価分割 がシンプル
長男が実家に住んでいて、引き続き住み続けたい→ ③代償分割 を検討
兄弟間で公平感を重視したい→ ②換価分割 または ③代償分割
長男が代償金を払えるだけの資金がない→ ②換価分割 が現実的
実家が借地・農地など特殊な不動産→ 専門家(税理士・司法書士)への相談が必須
相続税の申告期限(10ヶ月)が迫っている→ 早急に専門家へ。期限を超えると加算税・延滞税が発生

■ 具体的なシミュレーション 〜田中家の場合〜

◆ 設定

父(田中太郎)が死去。相続人:長男(一郎・52歳)、次男(二郎・48歳)、三女(花子・45歳)

遺産:実家(土地・建物の時価評価額5,000万円)、預金500万円、合計5,500万円

負債:なし

法定相続分:各1/3 → 一人あたり約1,833万円

状況:長男は実家に同居。次男・三女は別居で現金を希望。

◆ パターンA:換価分割を選んだ場合

  • 実家を市場に売り出し、4,800万円で売却(仲介手数料等差し引き後)
  • 預金500万円と合わせて5,300万円を3等分
  • 全員が約1,767万円の現金を受け取る
  • ただし長男は住む場所を失い、引越し費用が発生
  • 売却益に対して譲渡所得税が発生する可能性あり(父の取得費・所有年数による)

✅ 公平な分割ができるが、長男が実家を失うというデメリットがある

◆ パターンB:代償分割を選んだ場合

  • 長男が実家(5,000万円)と預金200万円(合計5,200万円)を取得
  • 長男は次男・三女それぞれに代償金として (5,200万円−1,833万円)= 約1,683万円を支払う
  • 次男・三女はそれぞれ代償金約1,683万円+預金150万円 = 約1,833万円を受け取る
  • 長男は合計約3,366万円の現金を用意する必要がある

✅ 長男は実家を守れるが、3,366万円の現金を用意できるかがカギ

  住宅ローンの残債がある場合や現金が不足する場合は困難になる

◆ パターンC:次男・三女が相続放棄した場合

  • 次男と三女が相続放棄 → 長男が単独で全財産(5,500万円相当)を相続
  • 次男・三女は一切の財産を受け取れない
  • 長男は全額の相続税を一人で負担することになる

❌ 次男・三女にとっては経済的な損失が大きいため、この方法は一般的ではない

  「次男・三女が家に興味がない」だけなら、換価分割や代償分割の方が合理的

■ よくある質問(FAQ)

Q1. 相続放棄すると、自分の子ども(孫)も相続できなくなりますか?

A. はい、相続放棄した場合、放棄した人の子(孫)も代わりに相続することはできません。

代襲相続(だいしゅうそうぞく)は「相続人が死亡している場合」には適用されますが、相続放棄の場合は適用されません。

放棄した人の子が相続したいなら、その子が独自に相続権を持つ立場(孫養子など)でない限り、受け取る権利はありません。

Q2. 不動産の評価額は何を使えばいいですか?路線価と時価、どっちが正しい?

A. 目的によって使い分けます。

・相続税の計算:路線価(こうじちか)や固定資産税評価額を使った「相続税評価額」を使用します。

・代償金の計算:実際に売れる金額に近い「時価(市場価格)」を使うことが多いです。

路線価は時価の約80%程度と言われており、兄弟間で「どちらの評価額を使うか」でトラブルになることがあります。

→ 公平性を担保するために、不動産鑑定士による評価書を取得するケースもあります。

Q3. 遺産分割協議は必ず書面にしないといけませんか?

A. 法律上、口頭でも有効ですが、必ず「遺産分割協議書」を書面にして全員が署名・実印を押しましょう。

書面にしないと、後から「言った、言わない」のトラブルになります。

また、不動産の相続登記(名義変更)には遺産分割協議書が必要です。

なお、2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと過料(罰則)が科されます。

Q4. 相続税の申告はいつまでにしないといけませんか?

A. 相続税の申告期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。

例)2024年1月15日に父が死去 → 2024年11月15日が申告・納税の期限

遺産分割協議がまとまらなくても、この期限は待ってくれません。

期限を過ぎると、延滞税(最大年14.6%)や無申告加算税(15〜20%)が課されます。

分割協議が終わっていない場合は、法定相続分で仮申告する「未分割申告」を行い、後日修正申告します。

Q5. 換価分割で実家を売った場合、相続人それぞれに確定申告が必要ですか?

A. はい、原則として売却に参加した相続人それぞれが確定申告を行う必要があります。

売却益(譲渡所得)が発生した場合、各自の持分に応じた分が課税対象となります。

ただし、「被相続人の空き家に係る3,000万円特別控除(空き家特例)」を使えば、

一定条件下で売却益から3,000万円を控除できます(2027年12月31日まで延長中)。

この特例の条件・手続きは複雑なため、必ず税理士に確認してください。

■ まとめ:実家の相続でもめないために

【3つの方法 最終まとめ】

方法こんな時に使う最大のメリット最大のデメリット
相続放棄借金が多い・関わりたくないマイナス財産も引き受けなくてよいプラスの財産も全部放棄
換価分割誰も住まない・公平に分けたい現金化して全員が公平に受け取れる実家が手放される・売却に時間がかかる
代償分割誰かが家を守りたい実家を残しながら他者にも公平に代償金の現金が必要・評価額で揉めやすい
  • 相続放棄は「3ヶ月以内」の期限があるため、速やかに判断が必要です。
  • 換価分割・代償分割はいずれも遺産分割協議書の作成と、不動産の正確な評価が不可欠です。
  • 相続税の申告・納税は「10ヶ月以内」。分割が決まらなくても期限は延びません。
  • 2024年4月から相続登記が義務化。3年以内に登記しないと罰則があります。

「自分のケースではどの方法が最適か?」は、財産の種類・金額・家族関係・税負担など

複数の要素が絡み合うため、一概には言えません。

「なんとなく換価分割にしよう」と安易に決めると、後から多額の税金が発生したり、

兄弟間で新たなトラブルが生じることも少なくありません。

 

📞 実家の相続でお悩みの方へ 〜専門家への無料相談のすすめ〜

「うちのケースはどれが正解?」「代償金を払えるか計算してほしい」「相続税はいくらかかる?」——こうした個別のご相談は、状況によって答えが大きく異なります。

当事務所では、創業65年・350社以上の支援実績と、国税局査察部OBの税理士が在籍するという独自の強みを活かし、税務調査対策から相続・事業承継まで、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なアドバイスを提供しています。

遠方のお客様にはZOOMでのオンライン相談も承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。専門家が丁寧にご対応いたします。

税理士法人大沼田経営会計事務所へ 無料相談はこちら

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本記事は2025年6月時点の法令・通達に基づいています。税法改正により内容が変更されることがあります。

親から相続した実家を売るなら「3年以内」が絶対にお得?税金がガクッと安くなる「3000万円の魔法のルール」を中学生でもわかるように税理士が徹底解説!

2026-06-29

実家の相続売却ブログ記事テンプレート

「親が亡くなって、誰も住んでいない実家を相続したけれど、どうしよう…」
「風の噂で、3年以内に売らないと税金がすごく高くなるって聞いたけど、本当?」

そんな不安を抱えていませんか?実家を売るなんて、人生で何度も経験することではありません。専門用語ばかりで難しそうだし、損をしたくないと思うのは当然のことです。

結論からお伝えします。実家を売却する予定があるなら、絶対に「3年以内(正確には相続が始まってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで)」を目標に動くのが大正解です。

なぜなら、日本の税金ルールには、条件をクリアすれば「売った儲け(利益)から最大3000万円まで引き算してくれる」という、信じられないほど超強力なボーナス制度(特例)があるからです。このチャンスを逃すと、数百万円もの重い税金がズドンと容赦なくかかってしまう可能性があります。

この記事を読めば、専門知識がゼロの方でも「自分がいつまでに、何をすれば税金を一番安くできるのか」が1回で完全に分かります。損をしないためのステップや、具体的な税金の計算シミュレーション、よくある疑問まで、日本一親切に、噛み砕いてお話ししていきますね!


1. なぜ「3年以内」なの?税金が劇的に安くなる『魔法の引き算』の正体

家や土地を売って利益が出ると、国に税金を払わなければなりません。この税金のことを専門用語で「譲渡所得税(じょうとしょとくぜい)」と言います。

お小遣いで例えてみましょう。
あなたが100円で買ったレアなトレーディングカードを、友達に500円で売ったとします。このとき、あなたの手元に残った本当の儲け(利益)は、500円から100円を引いた「400円」ですよね。税金はこの「400円」に対してかかります。不動産もこれと全く同じ仕組みです。

しかし、昔から持っている実家の場合、親がいくらでその家を買ったのか証明する書類(売買契約書など)を無くしてしまっているケースがとても多いのです。そうなると、国からは「売った金額の5%だけで買ったことにしなさい」と言われてしまいます。つまり、5000万円で売れた実家なら「250万円で買った家」とみなされてしまい、なんと差額の4750万円がすべて「儲け」として扱われ、莫大な税金が計算されてしまうのです。

そこで登場するのが、今回の主役である「空き家の発生を抑制するための特例(通称:相続空き家の3000万円控除)」です!

[画像:実家の売却にかかる税金の仕組みと3000万円控除のメリットを対比した図解イラスト(キャプション:3000万円控除の特例を使うと、売却利益が大幅に削られ、税金がゼロになる仕組み)]

この特例の何が凄いの?

この特例を使うと、実家がどれだけ高く売れて儲けが出たとしても、その儲けから「最大3000万円」をタダで引き算してくれます。もし儲けが2500万円だった場合、3000万円を引き算するとマイナスになるので、かかる税金は「0円(完全にゼロ)」になります!

そして、この最高のボーナスをもらうための最も重要なタイムリミットが「親が亡くなった日から数えて3年が経った年の12月31日まで」と法律で決まっているのです。だからこそ、「3年以内に売ったほうがいい」と言われているわけですね。


2. 誰でも使えるわけじゃない!クリアすべき「5つの必須条件」

この「3000万円の魔法」は非常に強力なため、国もいくつかの厳しいハードル(条件)を設けています。中学生でもわかるように、1つずつシンプルに整理していきましょう。

① 親が亡くなる直前まで「1人で」住んでいたこと

この特例は、一人暮らしの親が残した「空き家」を解消するためのものです。そのため、親が亡くなる直前に、誰かと同居していなかったことが原則です。ただし、親が老人ホームなどに入所していた場合でも、一定の条件を満たせば「1人暮らしだった」と認めてもらえる救済処置があります。

② 昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた古い家であること

ここが最大の要注意ポイントです。昔の古い基準(旧耐震基準)で建てられた家が対象になります。今の日本の法律では「地震に強い安全な街を作りたい」という目的があるため、古い空き家を処分してくれる人を応援したいのです。

③ 相続してから、一度も「貸してない」「住んでない」こと

親が亡くなってから売却するまでの間、その実家を他人に貸して家賃をもらったり、自分たちが引っ越して住んだりしてはいけません。ずっと「空き家」のままキープしておく必要があります。

④ 売却代金が「1億円以下」であること

実家(土地と建物の合計)が超豪邸で、1億円を超えるような金額で売れた場合は、この特例は一切使えなくなります。一般的な家であれば問題なくクリアできる基準です。

⑤ 「新耐震基準」にリフォームするか、家を「取り壊して更地」にして売ること

先ほど「古い家が対象」と言いましたが、そのまま売る場合は、買い手の人に「地震がきても大丈夫なようにリフォーム(耐震改修)」をしてもらうか、あるいは売る前にこちらで家を完全に解体して「綺麗な土地(更地)」にしてから引き渡す必要があります。実務上は、②の古い家をそのまま直すのはお金がかかりすぎるため、「家を壊して更地にして売る」という方法をとる方が圧倒的に多いです。

【条件とクリア方法のまとめフロー】

【ステップ1】実家の建築年を確認 ➔ 昭和56年5月31日以前なら対象!
  ▼
【ステップ2】利用状況を確認 ➔ 貸していない・誰も住んでいない「空き家」であること
  ▼
【ステップ3】売却方法を決める ➔ 多くの場合は「家を解体して更地にして売る」を選択
  ▼
【ステップ4】期限内に売却 ➔ 相続から3年目の12月31日までに引渡しまで完了させる!


3. どのくらい変わる?驚きの税金シミュレーション

では、実際にどれくらい税金が変わるのか、具体的な数字を使ってシミュレーションしてみましょう。今回は「親が昔買った値段が分からない実家が、3500万円で売れた」という、よくあるケースで計算します。

※古い実家を解体する費用に200万円、不動産会社への手数料などに150万円(合計350万円の経費)がかかったとします。
※相続した不動産を売るときの税率は、親の所有期間を引き継げるため、通常は約20%(所得税・住民税・復興特別所得税の合計)となります。

パターンA:3年以内に売って「3000万円控除」を使った場合

項目金額・計算式
① 実家が売れた金額3,500万円
② 買ったとみなされる金額(5%)-175万円 (3500万円×5%)
③ 解体費や手数料(経費)-350万円
④ 差し引きの儲け(利益)2,975万円 (①-②-③)
⑤ 魔法の引き算(特例)-2,975万円 (最大3000万まで控除)
税金がかかる対象額0円
最終的に払う税金0円

パターンB:期限を過ぎてしまい、特例が使えなかった場合

項目金額・計算式
① 実家が売れた金額3,500万円
② 買ったとみなされる金額(5%)-175万円
③ 解体費や手数料(経費)-350万円
④ 税金がかかる対象額(儲け)2,975万円
最終的に払う税金(約20%)595万円 (2975万円×20%)

なんと、売却する時期が「3年以内」か「期限切れ」かだけで、手元に残るお金が「595万円」も変わってしまうのです!これだけの大金を、ただ期限に遅れたという理由だけで国に納めることになるのは、あまりにももったいないですよね。

[画像:期限内と期限後での手残り現金の差を視覚的に表した棒グラフ(キャプション:たった1日の遅れで数百万円の損?期限内売却の圧倒的な手残りメリット)]


4. 知らないと危険!実務で陥りがちな2つの罠

「よし、じゃあ3年ギリギリになったら不動産屋さんに駆け込もう」と思ったあなた、実はそれが一番危険な罠です。実務の現場では、以下のトラブルで期限に間に合わなくなる方が後を絶ちません。

罠①:家を壊すのにも、買い手を探すのにも「数ヶ月」かかる

不動産の売却は、メルカリのようにボタン一つで即日売れるわけではありません。買い手を探すために3ヶ月〜半年かかるのは普通ですし、家を解体する業者を探して実際に更地にするまでにも数週間の時間がかかります。さらに、税法のルールでは「3年以内の12月31日までに、実際に売却して、お金のやり取りと物件の引き渡しまで完全に終わらせておくこと」が必要です。最低でも期限の1年前、できれば相続が発生した直後から動き出さないと、本当に時間が足りなくなります。

罠②:兄弟で「実家をどうするか」揉めているうちに時間切れ

実家を売りたくても、相続人があなた一人ではない場合、兄弟姉妹全員の同意が必要です。「売りたい兄」と「思い出として残したい妹」で話し合いが平行線のまま2年が経過…なんていうケースは日常茶飯事です。話し合いが長引けば長引くほど、魔法のタイムリミットは刻一刻と迫ってきます。


5. AI検索や要約でも大注目!よくある質問(FAQ)

Q1. 親が老人ホームに入っていた場合は、もう特例は使えないの?

A1. いいえ、使えます!
原則は「亡くなる直前まで1人暮らし」ですが、病気や介護のために老人ホームに入所していた場合でも、一定の条件(入所後に対象の実家を他人に貸していないこと、家財道具がそのまま置いてあったことなど)を満たしていれば、特例の対象になりますのでご安心ください。

Q2. 3年以内に「売りに出した」けれど、期限までに売れなかったらどうなる?

A2. 残念ながら、特例は使えなくなります。
法律の基準は、あくまで「期限内に売却(引き渡し)が完了したこと」です。売りに出していた期間がどれだけ長くても、引き渡しが期限を1日でも過ぎてしまえばアウトです。売れない場合は、価格を下げるなどの決断も必要になります。

Q3. 確定申告は絶対にしなければいけないの?

A3. はい、絶対に必要です。
この「3000万円控除」の特例は、売却した翌年の2月16日〜3月15日の間に、税務署へ確定申告をして初めて適用されます。「税金がゼロになるから申告しなくていいや」と放置していると、後から税務署にバレたときに特例が認められず、本来の重い税金に加えてペナルティの税金まで請求されてしまいます。


6. まとめ:損をしないために、今すぐプロに相談を!

親から受け継いだ大切な実家。放置しておくと維持費や固定資産税がかかるだけでなく、今回ご紹介した「3000万円の税金控除」という最大のチャンスまで失ってしまいます。

もう一度、重要なポイントをおさらいしましょう。

  • 実家を売るなら「相続から3年目の12月31日」が絶対のタイムリミット!
  • 条件をクリアすれば、利益から3000万円が引かれて税金が0円になる可能性大!
  • 「家を壊して更地にする時間」や「買い手を探す時間」を考えると、今すぐ動くのが鉄則!

しかし、あなたの実家が「昭和56年以前の建物か?」「老人ホームの要件を満たしているか?」「本当に税金がゼロになるか?」といった判断は、それぞれの家庭の状況によって非常に複雑で、一般の方が1人で判断するのは極めて危険です。たった1つの書類の不備や勘違いで、500万円以上の損をしてしまうことだってあるのです。

当事務所では、相続不動産の売却に関わる複雑な税金計算から、特例を100%安全に使うための実務手続きまで、あなたに寄り添って徹底的にサポートいたします。「まずは自分の場合、期限がいつになるのか知りたい」「何から手を付ければいいか教えてほしい」というだけの段階でも全く構いません。

大切な資産を国の税金で消し去ってしまわないために、まずは一番親切な当事務所へ、お気軽にホームページからお問い合わせ・ご相談ください。一歩踏み出すことが、確実な安心への近道です。

2026-06-28

【知らないと大損】6月に届く「年金振込通知書」で必ず確認すべき5つのポイント

6月になると、日本年金機構から「年金振込通知書」が届きます。

しかし、

  • 「見ずに捨てている」
  • 「金額だけ見て終わり」
  • 「何を確認すればいいかわからない」

という方も少なくありません。

実はこの通知書には、

✅ 年金額の増減
✅ 税金の天引き額
✅ 介護保険料の天引き額
✅ 健康保険料の天引き額
✅ 振込先口座

など、老後の家計に直結する重要な情報が記載されています。

内容を確認しないまま放置すると、

  • 税金の控除漏れ
  • 扶養申告の未反映
  • 保険料の増額
  • 振込口座の誤り

などに気付かない可能性があります。

毎年6月に送られる年金振込通知書は、6月から翌年4月までの年金支払額などを知らせる重要書類です。


そもそも「年金振込通知書」とは?

年金を受給している人に対し、日本年金機構が毎年6月に発送する通知です。

通知される内容

項目内容
年金支払額支給される年金額
所得税天引きされる税金
介護保険料天引きされる介護保険料
国民健康保険料等天引きされる保険料
振込額実際の手取り額
振込口座入金される金融機関

年金振込通知書は毎年6月に送付され、6月から翌年4月までの支給予定額を知らせるものです。


必ず確認すべきポイント①

年金額が前年と比べて変わっていないか

まず確認するのは支給額です。

イメージ

昨年
月額15万円



今年
月額15万3,000円

年金額は毎年改定される場合があります。

物価や賃金の変動に応じて見直しが行われるため、

  • 増えている
  • 減っている

どちらもあり得ます。

前年の通知書と比較しましょう。


必ず確認すべきポイント②

所得税が急に増えていないか

意外と多いのがこちらです。

なぜ増える?

原因の代表例

  • 扶養親族等申告書の未提出
  • 扶養家族の変更
  • 障害者控除の未反映
  • 寡婦控除の未反映

例えば、

本来の税額
年間5,000円



控除が反映されない



年間30,000円

となることもあります。

通知書の

「所得税額及び復興特別所得税額」

を必ず確認しましょう。

年金から源泉徴収される所得税は、社会保険料や各種控除を反映したうえで計算されます。


必ず確認すべきポイント③

介護保険料が増えていないか

65歳以上の方は、

介護保険料が年金から天引きされます。

確認例

昨年今年
3,500円5,200円

市区町村の保険料改定により増額されることがあります。

「年金が減った」と思ったら、

実は介護保険料が増えていた

というケースはよくあります。


必ず確認すべきポイント④

健康保険料が増えていないか

対象となる人は、

  • 国民健康保険
  • 後期高齢者医療制度

です。

通知書には

後期高齢者医療保険料
または
国民健康保険料

として表示されます。

年金額が同じでも、

保険料が増えると手取りは減ります。

後期高齢者医療保険料や国民健康保険料が年金から特別徴収される場合、その金額が通知書に表示されます。


必ず確認すべきポイント⑤

振込口座に間違いがないか

意外と見落とされる部分です。

確認事項

✓ 銀行名

✓ 支店名

✓ 口座番号

✓ 名義

特に、

  • 口座変更手続き後
  • 金融機関の統廃合後

は要チェックです。


手取り額の見方

実際の振込額は

年金額
-所得税
-介護保険料
-健康保険料
=手取り額

です。

年金支給額
150,000円

所得税
2,000円

介護保険料
6,000円

健康保険料
8,000円



実際の振込額
134,000円

この金額が銀行に振り込まれます。


通知書が届いたらやること

フローチャート

通知書到着



年金額確認



税金確認



介護保険料確認



健康保険料確認



振込口座確認



前年と比較



保管

通知書は捨てない方がいい理由

以下の場面で必要になることがあります。

主な用途

  • 年金額確認
  • 家計管理
  • 確定申告
  • 相続手続き
  • 金融機関への提出
  • 各種給付申請

少なくとも1年間は保管しておくことをおすすめします。


よくある質問(FAQ)

Q1. 年金振込通知書は毎月届きますか?

いいえ。

原則として毎年6月に送付されます。

その後、金額や口座変更がなければ送付されません。


Q2. 通知書が届かない場合は?

住所変更が未届の場合や郵便事情などが考えられます。

年金事務所またはねんきんダイヤルへ確認しましょう。


Q3. 年金額が減っていました。なぜですか?

主な原因は、

  • 税金の増加
  • 介護保険料の増加
  • 健康保険料の増加

です。

まず通知書の控除欄を確認しましょう。


Q4. 税金が急に高くなった場合は?

扶養親族等申告書が未提出になっている可能性があります。

税務署や年金事務所へ確認しましょう。


Q5. 通知書をなくしたらどうなりますか?

再発行の手続きが可能です。

年金事務所へ相談しましょう。


まとめ

6月に届く「年金振込通知書」は、単なるお知らせではありません。

特に確認したいポイントは次の5つです。

✅ 年金額

✅ 所得税額

✅ 介護保険料

✅ 健康保険料

✅ 振込口座

年金生活では、月数千円の差でも年間では数万円になります。

「去年より手取りが減った」

「税金が増えている」

「保険料が高くなっている」

といった変化に早く気付くことが大切です。

また、年金・税金・相続・社会保険は制度改正も多く、ご自身だけで判断すると損をしてしまうケースもあります。

個別具体的なケースは判断が難しいため、年金の受給額確認、税金対策、相続対策、老後資金の相談については、専門家へ早めに相談することをおすすめします。

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0263520972 お問い合わせバナー 無料法律相談について