「配当を確定申告したら医療保険料が上がった」を防ぐ!後期高齢者医療の窓口負担割合と保険料の新ルール完全ガイド

「株の配当について確定申告をしたら、後期高齢者医療の保険料の通知書を見て驚いた」「病院の窓口で、去年までと違って急に自己負担割合が上がっていた」——このようなご相談は、年金生活を送っていらっしゃる方から本当によく寄せられます。実はこれには、はっきりとした理由があります。

令和6年度の税制改正により、配当や株の売却益について「確定申告をするかどうか」が、そのまま後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合に直結するようになったのです。この記事を読めば、なぜそのようなことが起こるのか、その仕組みを中学生の方でも一読で理解できるレベルまで、やさしい言葉と身近なたとえ話でしっかりと解説していきます。そして、ご自身にとって確定申告をすべきかどうかを、自信を持って判断できるようになります。

結論:配当や株の売却益について、あえて確定申告をせず、証券会社での源泉徴収(天引き)だけで完結させることを選べば、後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合への影響を避けられるケースが多くあります。ただし、確定申告をしたほうが結果的に得になる場合もあり、どちらが良いかはご自身の年金額や資産状況によって異なりますので、慎重な見極めが必要です。

このページの目次

そもそも後期高齢者医療の保険料と窓口負担割合はどう決まるのか

結論:後期高齢者医療の保険料も、病院の窓口で支払う自己負担割合も、どちらも「住民税を計算するときの元になる所得」の金額によって決まります。つまり、住民税の元になる所得が増えれば、保険料も窓口負担割合も上がる可能性があるということです。

後期高齢者医療制度とは

後期高齢者医療制度とは、原則として75歳以上の方(一定の障害がある65歳以上の方を含みます)が加入する、医療費の一部をご本人の保険料と、公費(税金)や現役世代からの支援金などで支え合う医療保険制度のことです。75歳の誕生日を迎えると、それまで加入していた国民健康保険や健康保険から自動的に切り替わります。

保険料の決まり方——家計簿にたとえると

後期高齢者医療の保険料は、「均等割(加入者全員が等しく負担する部分)」と「所得割(所得に応じて負担する部分)」の合計で計算されます。このうち所得割の金額は、住民税を計算する際に使われる所得(正確には「賦課のもととなる所得金額」といいます)に、都道府県ごとに定められた率を掛けて算出します。

たとえるなら、家計簿の「収入の欄」に記入する金額が多ければ多いほど、そこから計算される「負担すべき金額」も大きくなる、というシンプルな関係です。配当を確定申告して住民税上の所得として計上すれば、家計簿の収入欄にその分がプラスされ、結果として保険料の計算のもとになる金額も膨らんでしまうのです。

窓口負担割合(1割・2割・3割)の決まり方

病院の窓口で支払う医療費の自己負担割合も、同じく住民税上の所得金額と年金収入などの合計額を基準に、毎年8月に見直されます。目安は次の表のとおりです。

区分住民税課税所得の目安収入等の目安(単身世帯)窓口負担割合
一般145万円未満1割
一定以上所得のある方28万円以上「年金収入+その他の合計所得金額」200万円以上2割
現役並み所得者145万円以上収入383万円以上(等)3割

※上記は単身世帯の目安であり、世帯構成や収入の内訳によって基準は異なります。正確な判定はお住まいの自治体または当事務所へご確認ください。

[画像指示:住民税課税所得と後期高齢者医療の窓口負担割合(1割・2割・3割)の関係を示すピラミッド型の図解イラスト/キャプション:住民税上の所得が増えるほど、窓口負担割合も上がっていく仕組みをイメージした図]

配当を受け取ったときの3つの申告方法

結論:配当を受け取ったときの税金の扱いには、「確定申告不要制度」「総合課税」「申告分離課税」という3つの選び方があります。この選び方の違いこそが、後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合に影響するかどうかの分かれ道になります。

◆ ① 確定申告不要制度

確定申告不要制度とは、証券会社があらかじめ税金(所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%)を差し引いて(源泉徴収して)納めてくれるため、受け取った側が改めて確定申告をしなくてもよい制度のことです。特定口座(源泉徴収あり)で株式や投資信託を保有している場合、通常はこの方法で自動的に手続きが完了しています。

◆ ② 総合課税

総合課税とは、配当を年金や給与など他の所得と合算して税金を計算する申告方法のことです。この方法を選ぶと「配当控除」という税額控除を受けられる場合があり、所得税だけを見れば税金が安くなることがあります。

◆ ③ 申告分離課税

申告分離課税とは、配当を他の所得とは分けて、株式の売却損などと相殺(損益通算)できる申告方法のことです。その年に株の売却で損失が出ている方が、配当の税金を取り戻す目的でよく利用します。

たとえるなら、特定口座(源泉徴収あり)は「あらかじめ代金から手数料を天引きして販売してくれる、代行してくれる八百屋さん」のようなものです。何もしなくても取引は完結します。一方、確定申告をするというのは、その八百屋さんの帳簿を、自分で改めて見直して「精算」する作業にあたります。精算すれば還付を受けられることもありますが、その代わり、その所得が住民税の計算にも顔を出すことになるのです。

なぜ「確定申告の有無」で保険料が変わるようになったのか——令和6年度改正のポイント

結論:令和6年度分の住民税から、「所得税の申告で選んだ方法が、そのまま住民税にも自動的に適用される」というルールに変わりました。以前は、所得税では確定申告をしつつ、住民税だけは別途「申告書」を出して申告不要を選ぶという方法が認められていましたが、この選択の使い分けができなくなりました。

改正前の仕組み

令和5年度分の住民税までは、所得税の確定申告で配当を総合課税や申告分離課税として申告した場合でも、別途「住民税・国民健康保険税に関する申告書」を提出することで、住民税の計算においてはその配当所得を含めない(申告不要制度を選ぶ)ことが認められていました。つまり、税金の還付は受けつつ、住民税上の所得は増やさず、保険料や窓口負担割合への影響を避けることができたのです。

改正後の仕組み

令和6年度分の住民税からは、この「所得税と住民税で異なる申告方法を選ぶ」ことができなくなりました。所得税の確定申告で総合課税や申告分離課税を選んだ場合、その配当所得は自動的に住民税の所得にも算入されます。結果として、確定申告をするかしないかという選択そのものが、保険料や窓口負担割合に直接影響する形になったのです。

〇 申告方法の判断フロー

配当を受け取る(特定口座で源泉徴収済み)

確定申告をするかどうかを選ぶ

選択住民税への影響保険料・窓口負担割合
確定申告をしない源泉徴収のみで完結。住民税の所得に含まれない保険料・窓口負担割合への影響なし
確定申告をする(総合課税/申告分離課税)所得税の申告内容が住民税にも自動反映される保険料が上がる・窓口負担割合が上がる可能性あり

〇 改正前・改正後の比較表

項目改正前(令和5年度分住民税まで)改正後(令和6年度分住民税から)
所得税の申告方法総合課税・申告分離課税・申告不要から選択同左(変更なし)
住民税の申告方法所得税と別に選択可能(住民税申告書の提出で申告不要を選択できた)所得税で選んだ方法が自動的に適用される
保険料・窓口負担割合住民税申告書の提出により影響を回避できた確定申告をすれば原則として回避できない

[画像指示:改正前と改正後で、所得税の確定申告と住民税の申告方法がどう連動するようになったかを示すビフォーアフター比較のフローチャート図解/キャプション:令和6年度改正により、所得税と住民税の「申告方法の抜け道」が閉じられたことを表す図]

実務上の注意点・落とし穴

結論:配当控除や損益通算だけを見て確定申告をすると、税金は安くなっても、保険料や窓口負担割合が上がり、トータルでは損をしてしまうことがあります。目先の還付額だけでなく、翌年度以降の保険料まで含めて判断することが重要です。

落とし穴① 配当控除・損益通算の「見えない代償」

総合課税で配当控除を使ったり、申告分離課税で株の売却損と損益通算したりすると、所得税・住民税そのものは還付・軽減されることがあります。しかし、その裏側で住民税上の所得が増えるため、翌年度の後期高齢者医療の保険料が上がったり、窓口負担割合が1割から2割、あるいは2割から3割に上がったりすることがあります。数万円の税金還付のために、数年間にわたって医療費の負担が増え続けては、本末転倒になりかねません。

落とし穴② 扶養控除・配偶者控除の判定にも影響

配当を確定申告して所得が増えると、後期高齢者医療の話だけでなく、ご家族の税務上の扶養控除や配偶者控除の判定にも影響することがあります。ご本人だけでなく、ご家族全体の手取りにも波及する可能性があるため、注意が必要です。

落とし穴③ 高額療養費の自己負担限度額にも波及

住民税上の所得区分は、窓口負担割合だけでなく、高額療養費制度(医療費が高額になったときに払い戻しを受けられる制度)の自己負担限度額の区分判定にも使われます。所得区分が上がると、この限度額も引き上げられ、いざというときの負担が重くなる可能性があります。

落とし穴④ 医療費控除だけが目的なら、配当は記載しなくてよい

医療費控除を受けるためだけに確定申告をする場合、特定口座(源泉徴収あり)で完結している配当まで、あえて申告書に記載する必要はありません。医療費控除の申告と、配当の申告は別物です。混同して不要な情報まで記載してしまうと、思わぬ形で住民税上の所得を押し上げてしまいます。

具体的なシミュレーションで見る「確定申告あり・なし」の差

結論:同じ収入状況でも、確定申告をするかしないかで、後期高齢者医療の窓口負担割合が変わり、年間の医療費負担に大きな差が生まれることがあります。以下は理解を深めるための一例(概算)です。実際の金額は個々の状況により異なります。

【設定】79歳・単身世帯の方。公的年金収入 180万円。上場株式の配当収入 120万円(特定口座・源泉徴収あり)。同年中に株式の売却損が30万円発生。

ケースA 確定申告をしない場合

  • 配当120万円は源泉徴収(20.315%)で完結し、約24万4千円が天引き済みの状態で手続きが終わる
  • 住民税上の所得に配当は含まれないため、窓口負担割合の判定は年金収入のみで行われ、1割のまま据え置き
  • 翌年度の保険料も、配当を反映せずに計算されるため上昇しない
  • 一方で、売却損30万円と配当を相殺(損益通算)できないため、天引きされた税金の還付は受けられない

ケースB 確定申告をする場合(申告分離課税で損益通算)

  • 配当120万円と売却損30万円を損益通算し、課税対象となる配当を90万円に圧縮
  • 天引きされていた税金の一部について還付を受けられる(源泉徴収額をもとにした概算で、数万円程度の還付となるケースが一般的)
  • しかし、相殺後の配当90万円分が住民税上の所得に加算されるため、窓口負担割合が1割から2割に引き上げられる可能性がある
  • 窓口負担割合が2割になると、同じ治療を受けても自己負担額は単純計算で2倍になり、通院頻度によっては還付を受けた金額を上回る負担増となることがある
比較項目ケースA(確定申告なし)ケースB(確定申告あり・損益通算)
配当への課税関係源泉徴収のみで完結申告分離課税で申告
損益通算による還付なしあり(概算で数万円程度)
住民税上の所得への算入算入されない算入される(相殺後90万円が加算)
翌年度の窓口負担割合1割のまま2割に上がる可能性
医療費の年間自己負担(目安)現状維持通院頻度によっては還付額を上回る増加も

※本シミュレーションは制度の仕組みをご理解いただくための一例であり、実際の保険料額・還付額・窓口負担割合は、お住まいの自治体の算定基準やその他の所得状況によって異なります。個別の試算は当事務所までご相談ください。

[画像指示:ケースAとケースBの1年間の医療費・保険料の負担の違いを、天秤やグラフでビジュアル化した図解イラスト/キャプション:確定申告の有無による窓口負担割合の差が、長期的な負担にどう影響するかを示すイメージ図]

よくある質問(FAQ)

〇 Q1. 特定口座(源泉徴収あり)なら、何もしなければ保険料は上がりませんか?

A. はい。原則として、確定申告をしなければ、特定口座(源泉徴収あり)内の配当や売却益は住民税上の所得に含まれません。そのため、後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合には影響しません。

〇 Q2. 医療費控除を受けたいのですが、配当も一緒に申告しないといけませんか?

A. いいえ、その必要はありません。医療費控除だけを目的とする確定申告であれば、特定口座(源泉徴収あり)で完結している配当をあえて記載する義務はありません。記載しなければ、その部分は住民税上の所得に反映されません。

〇 Q3. うっかり配当を確定申告してしまいました。取り消せますか?

A. 一定の期間内であれば「更正の請求」などの手続きにより見直せる場合がありますが、要件や期限が定められています。ご自身の申告内容と時期を確認したうえで、早めに専門家へご相談ください。

〇 Q4. 窓口負担割合が1割から2割になると、具体的にどれくらい負担が増えますか?

A. 医療機関にかかる回数や治療内容によって差はありますが、同じ治療を受けた場合、自己負担額は単純計算で2倍になります。持病があり通院が多い方ほど、影響は大きくなります。

〇 Q5. NISA口座の配当も、同じように保険料に影響しますか?

A. いいえ。NISA(少額投資非課税制度)口座内で得た配当や売却益は、そもそも税金がかからない非課税の扱いであり、確定申告の対象にもなりません。そのため、後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合には影響しません。

まとめ&ご相談のご案内

この記事の要点は次の3つです。

  • 後期高齢者医療の保険料も窓口負担割合も、住民税上の所得を基準に決まる
  • 令和6年度改正により、所得税の確定申告で選んだ方法が、住民税にもそのまま適用されるようになった
  • 配当を確定申告しない(源泉徴収のみで完結させる)を選べば、多くの場合、保険料や窓口負担割合への影響を避けられる

配当控除や損益通算による還付額と、翌年度以降の保険料・窓口負担割合の上昇分を比べたとき、どちらが本当に得なのかは、年金額や資産状況、ご家族の扶養関係などによって一人ひとり異なります。

税務の判断は個々の状況によって異なります。自己判断で損をする前に、お気軽に当事務所へご相談ください。

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