税理士監修|相続・住民税 完全解説
〜「死後も払う」仕組みをわかりやすく完全解説〜
対象読者:相続手続き中の方・初めて親の税金手続きをする方
「4月に父が亡くなり、4月分までの住民税を払いに市役所へ行ったら、
『12月分まで残り8万円払ってください』と言われた」——
このような体験をして戸惑う遺族は少なくありません。
なぜ亡くなったのに税金を払い続けなければいけないのでしょうか?
誰が払うの?払わないとどうなるの?
この記事では、住民税の仕組みから相続・準確定申告まで、
中学生でもわかるようにやさしく、かつ詳しく解説します。
📋 この記事でわかること(目次)
| ① | 住民税って何? ——「前年の所得」に課税される仕組み |
| ② | なぜ死後も払うの? ——1月1日ルールを徹底解説 |
| ③ | 誰が払うの? ——相続と住民税の関係 |
| ④ | 相続放棄したら住民税も払わなくていい? |
| ⑤ | 住民税以外にも死後の税金・申告がある! |
| ⑥ | 準確定申告とは?——「戻るお金」もある |
| ⑦ | まとめ・チェックリスト・専門家への相談 |
このページの目次
▌ ① 住民税って何?
住民税は、私たちが住んでいる市区町村や都道府県に納める税金です。正式には「個人住民税」といい、「市区町村民税」と「都道府県民税」の2つを合わせたものです。
例えば、お父さんが東京都世田谷区に住んでいる場合、「世田谷区に納める税金(市区町村民税)」と「東京都に納める税金(都道府県民税)」がまとめて請求されます。
◆ 住民税の2つの「柱」
| 種類 | 誰に払う? | おもな使いみち |
| 市区町村民税 | 住んでいる市区町村 | ゴミ収集・道路整備・小中学校など |
| 都道府県民税 | 住んでいる都道府県 | 警察・消防・高校など広域サービス |
◆ 住民税は「前の年の稼ぎ」に課税される
住民税の一番大切なルールがこれです。
【住民税の課税ルール】
2026年度(2026年6月〜2027年5月)に払う住民税
↓
2025年1月〜12月の「前年の所得」をもとに計算される
つまり、今年の収入ではなく、「去年いくら稼いだか」をもとに請求が来ます。これが「死後も住民税が発生する」謎を解く鍵になります。
▌ ② なぜ亡くなった後も住民税を払うの?
住民税には重要なルールがあります。それが「1月1日ルール」です。
◆ 「1月1日ルール」とは?
住民税の納税義務があるのは、
「その年の1月1日時点で、その市区町村に住民票があった人」です。
→ 1月1日に生きていれば、その年度分の住民税が発生する!
たとえばお父さんが4月に亡くなったとします。1月1日にはご健在でしたよね?ということは、その年度(例:2026年度)の住民税は「すでに課税が確定している」状態になっています。
4月に亡くなったからといって、4月分以降の住民税が「チャラ」になるわけではありません。残りの税額(未払い分)は、まとめて払うよう請求されます。
◆ 図解:住民税の課税タイムライン(4月死亡の場合)
| 1月1日 | 2〜3月 | 4月(死亡) | 6月 | 8月 | 10月 | 翌年1月 |
| 課税確定日 | 確定申告 | 住民税確定・死亡 | 第1期 | 第2期 | 第3期 | 第4期(一括請求) |
| ★ 死亡後に未払い分(第2〜4期など)が残っていれば、相続人にまとめて請求が来ます。 | ||||||
▶ 実際の請求例
年間の住民税が12万円だった場合(毎月1万円相当)、4月に亡くなったとすると…
| 期 数 | 支払予定月 | 金 額 |
| 第1期(支払済み) | 6月(生前に支払い済み) | 3万円 |
| 第2〜4期(未払い) | 8月・10月・翌1月 | 計9万円 → 相続人に請求 |
市役所で「12月分まで8万円払ってください」と言われるのは、このような仕組みがあるためです。決して間違いではなく、法律上正しい請求です。
▌ ③ 亡くなった人の住民税は誰が払うの?
住民税を含む未払いの税金は、「相続財産の一部」として相続人(家族)が引き継ぎます。
◆ 相続とは「プラスもマイナスも引き継ぐ」こと
「相続」と聞くと、土地や預金などプラスの財産をもらうイメージがありますが、実際はマイナスの財産(借金・未払い税金など)もすべて引き継ぎます。
| プラスの財産(受け取るもの) | マイナスの財産(引き継ぐ義務) |
| ● 不動産(土地・建物) ● 預貯金・現金 ● 株式・投資信託 ● 生命保険(受取人指定分を除く) | ● 住民税の未払い分 ● 固定資産税の未払い分 ● 借金・ローン残高 ● クレジットカードの未払い |
◆ 法定相続人とは?
相続人になれる人は法律で決まっています。
| 順位 | 相続人 | 相続割合(例) |
| 配偶者 | 常に相続人(配偶者がいる場合) | 1/2 |
| 第1順位 | 子ども(子どもがいない場合は孫) | 残りを均等に分割 |
| 第2順位 | 父母(父母がいない場合は祖父母) | 子どもがいない場合に発生 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合は甥・姪) | 上位がいない場合に発生 |
未払いの住民税は、この相続人が「法定相続割合」に応じて負担します(ただし実務では一括で一人が払うケースも多い)。
▌ ④ 相続放棄したら住民税も払わなくていい?
「借金が多い」「マイナスの方が大きい」という場合、「相続放棄」という手続きを選ぶことができます。
◆ 相続放棄の3つのポイント
| ポイント | 説 明 | |
| 1 | プラス・マイナス両方を放棄 | 財産も借金も住民税も、すべて「もらわない・払わない」ことができます。 |
| 2 | 期限は「3ヶ月以内」 | 亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所で手続きが必要です。 |
| 3 | 要注意!手続き前に財産を使うとNG | 手続き前に預貯金を引き出したり、不動産を処分すると「相続を承認した」とみなされ、放棄できなくなります! |
▶ 相続放棄の手続きの流れ
| STEP 1 | 財産・借金の調査(プラスとマイナスを把握する) |
| STEP 2 | 家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出(3ヶ月以内) |
| STEP 3 | 裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届く |
| STEP 4 | 住民税・借金などの支払い義務が消滅 |
⚠️ 注意:相続放棄は「全部放棄」です。
「借金だけ放棄して、土地はもらう」ということはできません。
専門家(弁護士・司法書士)に相談してから判断しましょう。
▌ ⑤ 住民税以外にも!死後に必要な税金・手続き
親が亡くなった後に発生しうる税金や保険料は、住民税だけではありません。以下の表で確認しましょう。
| 種 類 | 概 要 | 期 限 | 注意点 |
| 固定資産税 | 土地・建物を所有していた場合に発生 | 各期の納付期限まで | 相続人が引き継ぎ |
| 国民健康保険料 | 国保加入者の未払い分 | 市区町村から通知あり | 相続人に請求 |
| 介護保険料 | 65歳以上が対象 | 市区町村から通知あり | 相続人に請求 |
| 所得税(準確定申告) | 亡くなった年の所得税の確定申告 | 死亡を知った翌日から4ヶ月以内 | 還付金が発生する場合もあり! |
| 相続税 | 遺産総額が基礎控除を超える場合に発生 | 死亡を知った翌日から10ヶ月以内 | 基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人数 |
▌ ⑥ 準確定申告とは?——「戻るお金」があることも!
「準確定申告」は、亡くなった方の代わりに、その年の所得税の申告を遺族が行う手続きです。
正式名称は「所得税及び復興特別所得税の準確定申告」といいます。
◆ 準確定申告が必要なケース
- 給与以外に所得があった(不動産収入・副業など)
- 2か所以上から給与を受け取っていた
- 給与収入が2,000万円を超えていた
- 医療費が多くかかっていた(医療費控除の申告)
◆ 「戻るお金」のパターン
💡 準確定申告で税金が「戻ってくる」ケースもあります!
例1:年の途中で亡くなった場合、源泉徴収が多すぎることがある
例2:多額の医療費がかかっていた場合(医療費控除)
例3:生命保険料控除や地震保険料控除が未申告だった場合
◆ 準確定申告の期限と申告先
| 項 目 | 内 容 |
| 期 限 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内 |
| 申告先 | 亡くなった方の住所地を管轄する税務署 |
| 申告者 | 相続人全員(共同申告または各自が別々に申告) |
| 必要書類 | 源泉徴収票、医療費領収書、保険料の証明書など |
準確定申告は期限を過ぎると加算税や延滞税が発生することがあります。余裕を持って、できるだけ早めに手続きを始めましょう。
▌ ⑦ まとめ:死後の住民税・相続手続きを整理しよう
◆ この記事のまとめ
| ✓ | 住民税は「前年の所得」に課税される税金。当年1月1日に生存していれば年度分が確定。 |
| ✓ | 年の途中で亡くなっても、未払いの住民税は相続人(家族)が払う必要がある。 |
| ✓ | 住民税は「相続財産のマイナス分」として引き継がれる。 |
| ✓ | 借金やマイナスが大きい場合は、3ヶ月以内に「相続放棄」の手続きができる。 |
| ✓ | 住民税以外にも、固定資産税・健康保険料・準確定申告などが必要になることがある。 |
| ✓ | 準確定申告では、還付金(税金の戻り)が発生することもある。 |
◆ 死後の手続き チェックリスト
| 完了 | 手続き内容 | 期 限 | 相談窓口 |
| □ | 住民税の未払い額を確認・納付 | 通知書の期限まで | 市区町村窓口 |
| □ | 固定資産税の確認 | 各期の期限まで | 市区町村窓口 |
| □ | 国民健康保険料・介護保険料の確認 | 通知書の期限まで | 市区町村窓口 |
| □ | 準確定申告(所得税) | 死亡翌日から4ヶ月以内 | 税務署・税理士 |
| □ | 相続税の申告(必要な場合) | 死亡翌日から10ヶ月以内 | 税務署・税理士 |
| □ | 相続放棄の検討(必要な場合) | 死亡を知った日から3ヶ月以内 | 家庭裁判所・弁護士 |
◆ 専門家への相談をおすすめするケース
- 未払いの税金や借金が多く、相続放棄を検討している
- 準確定申告の対象になるか不明・書き方がわからない
- 相続税の申告が必要かどうかわからない(基礎控除との比較)
- 相続人が複数おり、誰がどれだけ払うかでもめそう
- 不動産など複雑な財産がある
わからないことは一人で抱え込まず、税理士・市区町村・税務署に相談しましょう。
初回相談を無料で受け付けている税理士事務所も多くあります。
早めに動くほど、選択肢が増え、余裕をもって対応できます。
🏷 SEO向け推奨タグ【参考法令・出典】
・地方税法(e-Gov法令検索)
・国税庁 No.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
※本記事は一般的な制度の解説を目的としており、個別の税務アドバイスではありません。具体的なご事情については税理士等の専門家にご相談ください。
