親が亡くなった後の「銀行口座から200万円引き出し」は違法?口座凍結の本当のタイミングと正しい引き出し方を専門家が徹底解説

「母から『私が死んだら、葬式代としてすぐに銀行口座からお金を引き出してね』と頼まれて
いた」
「亡くなった直後に200万円を引き出したら、夫から『それは違法行為(犯罪)だ!』と怒られ
た。でも、銀行にバレたら口座が凍結されて引き出せなくなるから、仕方がなかったのに
……。」
家族が亡くなったとき、葬儀費用や当面の生活費として、故人の銀行口座からお金を下ろすケ
ースは少なくありません。しかし、良かれと思ってやった「死後すぐの引き出し」が、実は法
律上の大きなトラブルや、親族間での激しい争い(争続)に発展するリスクを秘めていること
をご存じでしょうか。
本記事では、税務と相続のプロフェッショナルの視点から、親の死後に口座からお金を引き出
すことの違法性、銀行が口座を凍結する本当のタイミング、そして「法律を守りながら安全に
お金を引き出す正しい方法」について、中学生でもはっきりと理解できるように分かりやすく
解説します。

  1. 親の死後すぐにお金を引き出すのは「違法」なのか?
    結論からお伝えすると、親が亡くなった直後にその口座から無断でお金を引き出す行為は、法
    律上「非常にグレー」であり、状況によっては「完全に違法(犯罪)」とみなされるリスクが
    あります。
    「親から直接頼まれていたから大丈夫」と思うかもしれませんが、法律の世界ではその言い分
    が通用しない厳格なルールが存在します。なぜダメなのか、3つの大きな理由に分けて解説しま
    す。
    ■ 理由①:亡くなった瞬間に、お金は「相続人全員の共有財産」になる
    人が亡くなると、その人が持っていた現金や銀行預金、不動産などのすべての財産は、亡くな
    った瞬間に「相続人全員のもの(共有財産)」になります。相続人があなた一人だけ(一人っ

子で配偶者もいないなど)であれば大きな問題にはなりにくいですが、兄弟姉妹や配偶者など
、他に相続人がいる場合は大変です。
他人の権利が含まれているお金を、誰か一人の判断で勝手に引き出して使ってしまうことは、
形式的には「他の相続人の財産を勝手に盗んだ」のと同じ状態(窃盗罪や横領罪など)になっ
てしまうのです。
■ 理由②:親の「頼んだ」という約束(委任契約)は、死亡によって無効になる
「でも、生前に母から『死んだらすぐ引き出して』と言われていたから、約束を守っただけ」
という反論もあるでしょう。しかし、日本の民法という法律では、「お金の管理を頼む」「代
わりに引き出しをしてもらう」という約束(委任契約)は、頼んだ本人が死亡した瞬間に自動
的に終了すると定められています(民法第111条)。
つまり、親が亡くなった後は、生前の約束の効力が消滅しているため、「親の代わりに引き出
す権利」は誰にもなくなっているのです。
■ 理由③:刑法上の「親族相盗例」があるが、民事上の賠償責任は残る
「親のお金を子どもが引き出しても、警察に逮捕されることはない」という話を聞いたことが
あるかもしれません。確かに刑法という法律には「親族相盗例(しんぞくそうとうれい)」と
いう決まりがあり、親や兄弟の間で起きた窃盗や横領については、警察は原則として介入せず
、処罰もしないことになっています。
しかし、これは「警察が逮捕しない」というだけであって、「やっていい(合法)」という意
味ではありません。他の相続人から「勝手にお金を引き出した!返せ!」と民事裁判を起こさ
れたら、引き出したお金を返還しなければならなくなります。

<図解:死後すぐの引き出しがトラブルになる仕組み>

親が逝去(亡くなった瞬間)

預金口座の中身が「相続人全員の共有財産」に変化する

生前の「引き出して」という約束(委任)が法律上で無効になる

一人の相続人が勝手に200万円を引き出す

他の相続人(兄弟など)から「財産の使い込みだ!」と疑われ、大トラブルへ

  1. 銀行の口座凍結はいつ、どのタイミングで行われる?
    質問の中に「銀行にバレたら口座凍結されるので仕方ない」とありましたが、そもそも銀行は
    いつ、どのようにして契約者が亡くなったことを知り、口座を凍結するのでしょうか。多くの
    人が誤解している「口座凍結のタイミング」の真実を解説します。
    ■ 誤解:役所に死亡届を出しても、銀行に自動で連絡はいかない
    「役所に死亡届を出したら、その情報が銀行にマイナンバーなどを通じて自動的に伝わり、即
    座に口座が凍結される」と思っている人が非常に多いですが、これは間違いです。
    現在(2026年時点)の日本のシステムでは、役所と民間の銀行はネットワークで直接繋がって
    いません。そのため、死亡届を出しただけで銀行口座が勝手に凍結されることはありません。
    ■ 真実:銀行が口座を凍結する具体的な4つのきっかけ
    銀行が口座を凍結するのは、基本的には「人が亡くなったことを銀行が確認したとき」です。
    具体的には、以下のようなきっかけで口座が凍結されます。
     1. 遺族からの連絡:遺族が「名義人が亡くなったので相続の手続きをしたい」と直接銀行の
    窓口に連絡したとき(これが最も多いケースです)。
     2. 新聞のお悔やみ欄:地域の新聞にある「お悔やみ欄(死亡記事)」を銀行の担当者が確認
    したとき(地方銀行や信用金庫などでは、毎朝お悔やみ欄をチェックしています)。
     3. 地域の情報:葬儀会社の看板や、近所の噂話などから銀行員が察知したとき。
     4. 行政からの照会:税務署や役所からの照会手続きが入ったとき。
    【超重要】ATMで引き出せる=合法ではない!
    銀行が人の死亡を把握していない状態であれば、キャッシュカードと暗証番号を使ってATM
    でお金を引き出すこと自体は物理的に可能です。
    しかし、それを銀行が関知していないからといって「やっていい(合法)」ということには
    絶対に繋がりません。後述する税務署の調査や親族間のトラブルの引き金になります。
  2. 勝手にお金を引き出した後に待ち受ける「4つの重大なリスク」
    親の死後に口座から200万円を勝手に引き出すと、たとえそれが「葬式代のため」という正当な
    理由であっても、その後に恐ろしい4つのペナルティやトラブルが発生する危険があります。
    ■ リスク①:他の親族(相続人)から「使い込み」を疑われ、泥沼の遺産争いにな

相続トラブルの多くは、「不信感」から始まります。あなたが「葬儀費用に200万円全額使った
」と主張しても、他の兄弟から見れば「本当に葬儀代だけに全額使ったのか?」「自分のため
に一部お小遣いとして隠したのではないか?」と疑いの目を向けられます。
特に、引き出しの履歴(通帳の記録)には「亡くなった直後の日付」とはっきりと残るため、
言い逃れはできません。領収書を1円単位で完璧に保管していない限り、疑いを晴らすことは難
しくなり、一生の絶縁状態になることも珍しくありません。
■ リスク②:親の「借金」もすべて引き継ぐことになる(相続放棄ができなくなる

これが法律上、最も恐ろしいリスクの一つです。亡くなった親に、実は多額の借金や未払いの
税金があることが後から発覚した場合、子どもは「相続放棄(そうぞくほうき)」という手続
きをすることで、借金を背負わずに済む権利があります。
しかし、法律では「亡くなった人の財産(遺産)を処分したり、消費したりした人は、すべて
の財産と借金を引き継ぐことを認めたとみなす(単純承認)」という厳しいルールがあります
(民法第921条)。
死後に口座からお金を引き出して使ってしまう行為は、この「遺産の処分・消費」にバッチリ
当てはまります。そのため、後から「実は親に1000万円の借金があった!」と分かっても、も
う相続放棄は絶対に認められず、あなたがその借金を一生背負って返済していかなければなら
なくなります。
■ リスク③:税務署の「税務調査」でバレて、重いペナルティ(追徴課税)を課さ
れる
「銀行をだませても、税務署は絶対にだませない」と考えてください。税務署は、人が亡くな
ったときに相続税がかかりそうな口座だけでなく、過去数年分(一般的には5年〜10年分)のす
べての銀行口座の入出金履歴を調べる強力な権限を持っています。
亡くなった日(命日)の直前や直後に、ATMから大きなお金(200万円など)が引き出されてい
る形跡があれば、税務署の調査官は一発で見抜きます。もし、その200万円を「手元にある現金
だから遺産に含めなくていいや」と隠して相続税の申告をしなかった場合、それは「財産隠し
」とみなされます。
本来納めるべき税金に加え、非常に重い罰金である「重加算税(じゅうかさんぜい)」や、遅
延利息にあたる「延滞税」が上乗せされ、大損することになります。
■ リスク④:銀行から「不当な引き出し」として損害賠償を請求される可能性
銀行は、名義人が死亡した後に無断で口座からお金が引き出されたことを知った場合、トラブ
ルに巻き込まれるのを防ぐため、引き出した本人に対して厳重な注意を行ったり、最悪の場合

は口座の権利関係を乱したとして民事上の責任を問う姿勢を示すことがあります。銀行にとっ
ても、死亡後の無断引き出しを見逃すことはコンプライアンス上の大きなリスクだからです。

<図解:無断引き出しの後に発生するペナルティ一覧>

死亡後にATMで200万円を引き出す

【親族】通帳の履歴を見られ、兄弟から「使い込み」として裁判を起こされる

【借金】親の隠れた借金が発覚!しかし引き出したため「相続放棄」が不可能に

【税金】税務署の調査で発覚。「重加算税」などの重いペナルティを食らう

  1. 【合法】口座凍結中でも安全・確実にお金を引き出す2つの正し
    い方法
    「じゃあ、口座が凍結されてしまったら、本当に葬式代やお通夜の費用を払えないの?」と不
    安になりますよね。安心してください。法律を破ってコソコソATMから引き出さなくても、国
    が認めた「正当で合法的な引き出し方法」がちゃんと用意されています。
    特に2019年からスタートした新しい制度を使えば、口座が凍結された後でも、他の相続人の同
    意なしで一定の金額を銀行から引き出すことができます。その2つの具体的な方法を分かりやす
    く教えます。
    ■ 方法①:最もおすすめ!「遺産分割前の仮払い制度(預大払戻し制度)」を使う
    法律が改正され、2019年7月から「遺産分割前(いさんぶんかつまえ)の仮払い制度」という大
    変便利な仕組みが始まりました。
    この制度を使えば、銀行口座が完全に凍結されてしまった後であっても、葬儀費用や当面の生
    活費が必要な場合に限り、他の相続人(兄弟など)のハンコや同意書がなくても、あなた単独
    で銀行の窓口に行ってお金を引き出すことができます。
    ただし、引き出せる金額には、以下の計算式による「上限(ルール)」があります。
    単独で引き出せる金額 = 【亡くなった時の預金残高】 × 1/3 × 【あなたの法定相続分】
    さらに、この制度を使って「1つの銀行から引き出せる上限額は150万円まで」という別のルー
    ルも定められています。

【具体例】残高600万円の口座から、子ども2人のうち1人が引き出す場合
・状況:母親のA銀行の口座に「600万円」の残高があった。相続人は、長男(あなた)と妹
の2人だけ(法定相続分は各2分の1)。
・計算式:600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円
・結果:あなたは、妹の同意がなくても、A銀行の窓口に必要書類を持っていけば、最大
「100万円」を葬儀費用などのために合法的に引き出すことができます。

今回の質問のように「200万円」を引き出したい場合は、もし一つの銀行の口座残高から計算し
て150万円を超えてしまう場合でも、複数の異なる銀行(例えばB銀行とC銀行)にそれぞれ口
座があれば、各銀行ごとに最大150万円(計算式の範囲内)まで引き出すことが可能です。
■ 方法②:家庭裁判所に申し立てをして、より大きなお金を引き出す
もし、どうしても150万円以上のまとまった大金が必要で、上記の仮払い制度の上限では足りな
い場合は、家庭裁判所に「保全処分の申し立て」という手続きを行う方法があります。
裁判所が「確かにそのお金の引き出しには正当な理由(切実な必要性)がある」と認めてくれ
れば、上限額に関係なく、必要な金額の引き出しを銀行に命じてくれます。ただし、裁判所を
通すため、弁護士への相談が必要になったり、書類の準備や審査に数週間〜数ヶ月以上の時間
がかかったりするデメリットがあります。急を要する葬儀費用の支払いには間に合わないこと
が多いので注意しましょう。

<図解:仮払い制度を利用して引き出すまでのステップ>
親が逝去、銀行に連絡して口座を「凍結」させる(これで安全な状態に)

必要書類(故人の出生から死亡までの戸籍謄本、引き出す人の戸籍謄本、印鑑証明書など)を集

める

銀行の窓口に行き、「遺産分割前の仮払い制度を使いたい」と伝える

銀行が書類を確認し、上限金額の範囲内で安全・合法的にお金が支払われる

  1. もしすでに200万円を引き出してしまったら?今すぐやるべき3
    つの対処法

「もう読んだ時には、すでにATMから200万円を引き出した後だった……。どうしよう、私は犯
罪者になってしまうの?」とパニックになっている方もいるかもしれません。
安心してください。すでに引き出してしまった場合でも、今から紹介する「3つのステップ」を
正確に行えば、親族間のトラブルや税務署からのペナルティを極限まで防ぐことができます。
今すぐ行動に移しましょう。
■ ステップ1:1円単位で「使った目的の領収書・レシート」をすべて集めて保管す

最も大切なのは、「私はこの200万円を、自分の私利私欲のために使ったのではなく、親のため
に使った」という証拠(客観的な事実)を残すことです。
 ・集めるべき書類の例:葬儀会社に支払った葬儀費用・お通夜の代金の領収書
 お寺の住職にお支払いした「お布施(ふせ)」の控え(領収書が出ない場合は、支払った日
付、金額、お寺の名前をノートにメモしておく)
 親が病院に入院していた場合の、最後の入院費や治療費の領収書
 親がいた介護施設の退去費用や、未払いの月額料金の領収書
これらの領収書の合計が「200万円」に近づけば近づくほど、他の相続人や税務署から「使い込
み」や「財産隠し」を疑われる可能性はゼロに近くなります。
■ ステップ2:引き出したお金の残りを「相続財産(遺産)」として正直に報告する
もし、200万円を引き出して、葬儀費用などで120万円を使い、手元に「80万円」が余ったとし
ます。この余った80万円を、自分の財布にこっそり入れてはいけません。
他の兄弟に対して、「お母さんの口座から200万円下ろして、葬儀に120万円使ったから、残り
の80万円はみんなで分ける遺産(財産目録)に組み入れるね」と、通帳と領収書を見せながら
正直にすべて開示してください。透明性を高くすることが、争いを防ぐ最高の防御策です。
■ ステップ3:相続が専門の税理士や弁護士などの専門家に相談する
「他の相続人との関係がすでにギクシャクしていて、自分から話すと揉めそう」「親に借金が
あるかどうかわからなくて相続放棄をすべきか迷う」「引き出した金額が大きくて相続税の税
務調査が怖い」という場合は、個人の判断で動くのは危険です。
早急に相続の取り扱い実績が豊富な税理士や弁護士といった専門家に相談しましょう。あなた
の代わりに法律に基づいた正しい書類(遺産分割協議書や財産目録)を作成し、間に入って説
明してくれるため、トラブルを未然に防ぐことができます。

  1. まとめ:親の預金は「死後すぐの無断引き出し」を避け、制度
    を賢く使おう
    最後に、今回の重要な内容をもう一度おさらいしましょう。
     親の死後すぐの口座引き出しは、生前に頼まれていても、法律上は他の相続人の権利を侵害
    する「違法行為」になるリスクがある。
     死亡届を出しただけでは銀行口座は凍結されないが、銀行が死亡を把握した時点で口座は完
    全にロックされる。
     無断で引き出すと、「親族間の大トラブル」「相続放棄ができなくなる(借金の引き継ぎ
    )」「税務署からの重い罰税(重加算税)」という強烈なリスクがある。
     口座が凍結されても、「遺産分割前の仮払い制度」を使えば、他の相続人の同意なしで、法
    律を守りながら150万円までのまとまったお金を窓口で引き出せる。
     すでに引き出してしまった場合は、今すぐ「領収書を完璧に集める」「残金を遺産として開
    示する」という行動をとる。
    親が亡くなった後は、精神的にも非常に辛く、お葬式の準備などでパニックになりがちです。
    だからこそ、「良かれと思ってやった引き出し」で将来のあなたや家族が苦しむことのないよ
    う、正しい法律知識と制度を知っておくことが最大の身守りになります。
    もし、「すでに引き出してしまって不安」「これから相続の手続きをどう進めたらいいか分か
    らない」とお悩みであれば、一人で抱え込まずに、ぜひ一度当事務所(相続の専門税理士)ま
    でお気軽にご相談ください。あなたの状況に合わせた、最も安全で円満な解決策を全力でサポ
    ートいたします。

keyboard_arrow_up

0263520972 お問い合わせバナー 無料法律相談について