【税理士監修】住宅取得資金の贈与税

父と祖父から合計2,000万円もらったら贈与税はどうなる?

カテゴリ:贈与税・相続税 | 最終更新:2026年5月 | 監修:税理士

家を建てるとき、お父さんやおじいちゃんから「家のためにお金を使ってほしい」とまとまったお金をもらうことがあります。ありがたい話ですが、「これって全部に税金がかかってしまうの?」と不安になる方が多いです。

結論からいうと、一定の条件を満たせば最大1,000万円まで贈与税がかかりません。ただし、「お金をくれた人が2人いれば非課税枠が2倍になる」というわけではないので注意が必要です。

この記事では、住宅取得のために家族から受け取ったお金と贈与税の関係を、中学生でもわかるやさしい言葉で、図表を使いながら徹底解説します。

📋 目次

1. そもそも「贈与税」ってなに? 2. 住宅取得資金の贈与には特別ルールがある 3. 非課税になる金額の上限はいくら? 4. 非課税になるための5つの条件 5. 父と祖父から2,000万円もらった場合のシミュレーション 6. 贈与税の計算方法(わかりやすく解説) 7. 暦年課税と相続時精算課税の違い 8. 非課税特例を使うときの注意点 9. 申告の流れと必要書類 10. まとめ:お金をもらう前に必ず確認を!

1. そもそも「贈与税」ってなに?

贈与税(ぞうよぜい)とは、生きている人から無償でお金や財産をもらったときにかかる税金です。

たとえば、友達から「100万円あげるよ」と言われてお金をもらったとします。このとき、もらった人(受贈者)は、国に対して「こんなお金をもらいました」と申告し、税金を払わなければなりません。

贈与税がかかる基本的なしくみ

項目内容
誰に課税される?お金をもらった人(受贈者)
いつかかる?毎年1月1日〜12月31日の1年間にもらった合計額が基準
基礎控除額1年間に110万円まで非課税(誰でも適用)
申告期限翌年の2月1日〜3月15日
税率超過分の金額に応じて10%〜55%(累進税率)

1年間にもらったお金の合計が110万円以下であれば、贈与税の申告は不要です。これを「基礎控除」といいます。

しかし、家を建てるために1,000万円や2,000万円をもらうと、この基礎控除をはるかに超えるため、そのままでは高い贈与税がかかってしまいます。

そこで活用できるのが「住宅取得等資金の贈与税非課税制度」です。

2. 住宅取得資金の贈与には特別ルールがある

国は「若い世代がマイホームを持ちやすいようにしよう」という目的で、住宅を購入・新築・増改築するためのお金を父母や祖父母からもらった場合に、一定額まで贈与税をゼロにする特別ルールを設けています。

これが「住宅取得等資金の贈与税非課税制度(特例)」です。

【重要】制度の適用期間 令和6年(2024年)1月1日 〜 令和8年(2026年)12月31日までに受け取ったお金が対象です。 この期間内に贈与を受け、翌年3月15日までに住宅に居住(または居住見込み)していることが条件です。

この制度のポイント3つ

父母・祖父母など「直系尊属」からもらったお金に限り適用できる
住宅の新築・購入・増改築のためのお金であることが条件
贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居(または見込み)していること

3. 非課税になる金額の上限はいくら?

非課税になる金額の上限は、住宅の種類によって異なります。ポイントは「省エネ等住宅かどうか」です。

住宅の種類非課税限度額(最大)
省エネ等住宅(下記の基準を満たすもの)1,000万円
上記以外の一般的な住宅500万円

「省エネ等住宅」に該当する3つの基準

以下のいずれか1つを満たす住宅が「省エネ等住宅」として最大1,000万円の非課税適用を受けられます。

省エネ性能:断熱等性能等級5以上 かつ 一次エネルギー消費量等級6以上
耐震性能:耐震等級2以上 または 免震建築物
高齢者等への配慮:バリアフリー等級3以上の住宅
💡 ポイント 住宅性能証明書や長期優良住宅の認定書などで上記性能を証明できます。 最新の省エネ基準を満たすほとんどの新築住宅は「省エネ等住宅」に該当することが多いです。 判断が難しい場合は、ハウスメーカーや税理士に確認しましょう。

4. 非課税になるための5つの条件

この特例は誰でも使えるわけではありません。贈与を受けた人(もらった人)が以下の条件をすべて満たす必要があります。

贈与を受けたとき、日本に住んでいること(居住者であること)
贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること(床面積が40〜50㎡の場合は1,000万円以下)
過去にこの特例(旧制度含む)を受けていないこと
贈与を受けた年の翌年3月15日までに、受け取った資金全額を住宅に充て、その住宅に居住(または居住見込み)であること

住宅の要件(建物側の条件)

条件項目内容
床面積40㎡以上240㎡以下(登記面積)
用途受贈者が主として居住する家(住居用)
建物の状態新築・中古(一定条件あり)・増改築
中古住宅の場合建築後25年以内(木造)または耐震基準適合証明書等が必要

5. 父と祖父から2,000万円もらった場合のシミュレーション

ここが最も重要なポイントです。「お金をくれた人が複数いれば、非課税枠が人数分になる」と思っている方が多いですが、それは誤りです。

よくある誤解 父から1,000万円 → 非課税枠1,000万円 祖父から1,000万円 → 非課税枠1,000万円 「合計2,000万円全部が非課税!」← これは間違いです
正しい理解 非課税枠はもらった人(受贈者)ひとりにつき最大1,000万円(省エネ等住宅の場合)です。 贈与してくれた人が何人いても、非課税になる金額の合計上限は変わりません。 父から1,000万円、祖父から1,000万円の計2,000万円を受け取った場合:  → 非課税になるのは合計1,000万円まで  → 残りの1,000万円は贈与税の課税対象

省エネ等住宅に該当する場合の計算例

項目金額
父からの贈与額1,000万円
祖父からの贈与額1,000万円
受け取り合計2,000万円
住宅取得等資金の非課税枠(省エネ等住宅)1,000万円
基礎控除(暦年課税の場合)110万円
課税される金額(課税価格)2,000万円 − 1,000万円 − 110万円 = 890万円
贈与税額の目安(特例税率)約151万円

※上記は暦年課税かつ特例税率(直系尊属からの贈与)を適用した概算です。実際の税額は各自の状況によって異なります。必ず税理士にご確認ください。

一般住宅(省エネ等に非該当)の場合

項目金額
受け取り合計2,000万円
非課税枠(一般住宅)500万円
基礎控除(暦年課税)110万円
課税価格2,000万円 − 500万円 − 110万円 = 1,390万円
贈与税額の目安(特例税率)約295万円

6. 贈与税の計算方法(わかりやすく解説)

贈与税の計算は、「課税価格」に「税率」をかけて「控除額」を引くという流れです。

STEP1:課税価格を計算する

STEP1課税価格を計算する もらった金額の合計 − 各種非課税枠 − 基礎控除110万円 = 課税価格
STEP2税率区分を確認する 「特例税率」(直系尊属から18歳以上への贈与)か「一般税率」かを確認する
STEP3贈与税額を計算する 課税価格 × 税率 − 控除額 = 贈与税額

特例税率表(直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与)

課税価格(基礎控除後)税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

【計算例】課税価格890万円の場合(省エネ等住宅、父+祖父から各1,000万円の場合)

 890万円 × 30% − 90万円 = 177万円 → 参考値(詳細な計算は税理士に確認)

7. 暦年課税と相続時精算課税の違い

贈与税の計算方式には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。住宅取得等資金の非課税制度はどちらと組み合わせることもできます。

比較項目暦年課税相続時精算課税
基礎控除毎年110万円毎年110万円(2024年以降)
特別控除なし累計2,500万円まで非課税
税率10%〜55%(超過部分)一律20%(2,500万円超部分)
相続との関係死亡前7年以内の贈与は相続財産に加算相続時に全額相続財産に加算(清算)
選択方式自動適用(届出不要)届出が必要(一度選択すると変更不可)
向いているケース少額を毎年コツコツ贈与まとまった額を早めに渡したい場合
💡 どちらを選ぶべき? 住宅取得等資金の非課税制度と組み合わせる場合、どちらの課税方式でも利用できます。 ただし、相続時精算課税を選ぶと将来の相続税計算に影響が出るため、長期的な視点での検討が必要です。 家族全体の財産や将来の相続計画を踏まえて、税理士と相談した上で選択することをおすすめします。

8. 非課税特例を使うときの注意点

⚠️ 注意点①:非課税枠は「もらった人」単位 贈与者(お金をくれた人)が何人いても、非課税になる限度額は受贈者(もらった人)ひとりにつき最大1,000万円(省エネ等住宅)または500万円(一般住宅)です。 父・祖父の2人からもらっても、非課税枠が2倍になることはありません。
⚠️ 注意点②:申告が必要(贈与税がゼロでも) 非課税特例を利用して贈与税額がゼロになる場合でも、翌年2月1日〜3月15日の間に贈与税の申告書を税務署に提出しなければなりません。 申告を忘れると特例が適用されず、多額の贈与税が発生する可能性があります。
⚠️ 注意点③:お金の使途が住宅に限定 受け取ったお金は、必ず住宅の取得・新築・増改築に充てなければなりません。 生活費や別の目的に使ってしまうと特例は適用されません。 贈与を受けた年の翌年3月15日までに建物が完成し、居住(または居住見込み)であることが条件です。
⚠️ 注意点④:過去に特例を使っていないこと この制度(旧制度含む)を過去に一度でも利用した人は、再度の適用を受けることができません。 過去に別の住宅で特例を使っていた場合は対象外になりますので、事前に税理士に確認を。

9. 申告の流れと必要書類

非課税特例を利用するために必要な手続きの流れを解説します。

STEP1贈与を受ける(令和6〜8年中) 父母・祖父母から住宅取得資金の贈与を受ける。金銭消費貸借契約ではなく「贈与契約書」を作成することを推奨。
STEP2住宅の取得・入居 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、居住(または居住見込み)の状態にする。
STEP3必要書類の準備 戸籍謄本・住民票・登記事項証明書・住宅性能証明書・売買契約書または工事請負契約書等を準備する。
STEP4贈与税の申告書提出 翌年2月1日〜3月15日の間に、居住地の税務署へ贈与税の申告書を提出する(税額がゼロでも必須)。

主な必要書類一覧

贈与税申告書(第一表・第一表の二)
戸籍謄本(贈与者と受贈者の関係を証明)
受贈者の住民票の写し
不動産の登記事項証明書(登記完了後)
売買契約書または建築工事請負契約書のコピー
住宅性能証明書(省エネ等住宅の場合)または長期優良住宅認定通知書
源泉徴収票または確定申告書(合計所得の確認用)

よくある質問(Q&A)

Q. 祖父からだけ2,000万円もらったら? A. 省エネ等住宅の場合、非課税となるのは1,000万円(+暦年課税の基礎控除110万円)までです。 残りの890万円が課税価格となり、特例税率で約151万円前後の贈与税がかかります(概算)。
Q. 夫婦それぞれの親からもらったら? A. 夫と妻はそれぞれ別々の受贈者です。夫が夫の父から1,000万円、妻が妻の父から1,000万円受け取った場合、夫・妻それぞれに1,000万円の非課税枠が適用されます。 ただし、それぞれの名義で住宅持分を取得する必要があります。
Q. 翌年3月15日までに家が完成しない場合は? A. 建築中でも「翌年3月15日までに居住見込み」であれば特例を適用して申告できます。 ただし、その年の12月31日までに居住できなかった場合、修正申告が必要になることがあります。
Q. 相続時精算課税との組み合わせは? A. 相続時精算課税を選択している場合でも、住宅取得等資金の非課税特例は別途利用できます。 ただし、一度相続時精算課税を選択すると、同一の贈与者からの贈与について暦年課税に戻すことはできません。

10. まとめ:お金をもらう前に必ず確認を!

住宅取得等資金の贈与税非課税制度は、家を建てる際にとても有効な制度ですが、勘違いすると大きな税負担が生じる落とし穴もあります。

📌 この記事のポイントまとめ ① 住宅取得のために父母・祖父母からもらったお金には、贈与税の非課税特例が使える ② 非課税の上限は省エネ等住宅1,000万円・一般住宅500万円(令和6〜8年) ③ 非課税枠はもらった人(受贈者)ひとりあたりの上限。贈与者が複数いても枠は増えない ④ 父と祖父から各1,000万円の計2,000万円もらった場合、1,000万円は課税対象になる ⑤ 贈与税がゼロでも必ず申告が必要 ⑥ 制度の適用期間は令和8年(2026年)12月31日まで

住宅取得を検討している方で、親・祖父母からの援助を受ける予定がある方は、事前に税理士に相談することを強くおすすめします。特例の適用要件の確認や、相続時精算課税との有利・不利の比較など、個々の状況に合わせた適切なアドバイスが受けられます。

【免責事項・注意事項】

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。税法・制度の詳細・適用可否については、必ず所轄の税務署または税理士にご相談ください。掲載情報は2026年5月時点の法令・国税庁の情報に基づきます。法改正により内容が変わる場合があります。

keyboard_arrow_up

0263520972 お問い合わせバナー 無料法律相談について