兄弟間で「実家をどうするか」もめたら?相続放棄・換価分割・代償分割の違いを徹底整理

【相続・遺産分割】

公開日:2025年6月 監修:相続専門 税理士チーム

このページの目次

はじめに:「実家問題」は、相続トラブルの最大の地雷

親が亡くなったとき、子どもたちの間で最もモメやすいのが「実家(不動産)をどうするか」という問題です。

現金なら3人で割れば済みますが、家はそうはいきません。「長男が住み続けたい」「次男は売ってお金に換えたい」「長女は共有で持つのは嫌だ」——こんな意見が衝突し、話し合いが何年も平行線をたどるケースは珍しくありません。

この記事では、相続した実家を巡る選択肢として代表的な3つの方法、

  • 相続放棄
  • 換価分割(かんかぶんかつ)
  • 代償分割(だいしょうぶんかつ)

について、中学生でも理解できるくらい分かりやすく解説します。それぞれのメリット・デメリット、税金の扱い、具体的な数字シミュレーションまでしっかり解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

【画像挿入位置】 画像:「実家をめぐって話し合う兄弟姉妹」のイラスト(キャプション:相続の話し合いが長引く前に、選択肢を正しく理解しましょう)

まず基本から:相続とは「プラスもマイナスも受け継ぐ」こと

相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産を受け継ぐことです。財産には、

  • プラスの財産:現金・預貯金・不動産・株式など
  • マイナスの財産:借金・未払い税金・保証債務など

の両方があります。実家のような不動産は典型的なプラス財産ですが、「誰がどのように取得するか」について相続人全員の合意(遺産分割協議)が必要です。

法定相続人と法定相続分(基本ルール)

遺言書がない場合、まず「誰が相続人になるか(法定相続人)」と「その取り分(法定相続分)」は民法で決まっています。

ケース法定相続人法定相続分
配偶者+子どもがいる場合配偶者・子ども全員配偶者1/2、子ども全員で1/2(均等)
子どものみの場合子ども全員均等割り(例:3人なら各1/3)
配偶者のみの場合配偶者全部
子どもも配偶者もいない場合親→兄弟姉妹の順民法の規定による

※ただし、法定相続分はあくまでも目安です。相続人全員が合意すれば、どんな分け方もできます。

3つの選択肢を、まずざっくり比較!

比較項目相続放棄換価分割代償分割
一言でいうと相続そのものをやめる売ってお金で分ける1人が取得し、他の人にお金を払う
実家はどうなる?相続しない(他の相続人・次順位へ)売却して現金化する特定の人が取得・所有し続ける
現金は必要か?不要不要(売却代金を分配)取得する人に資金力が必要
住み続けられるか?×(放棄するため)×(原則売却)◎(取得者が住める)
税金の扱い相続税なし(放棄した人)譲渡所得税が発生する取得者に相続税が発生する
手続きの難易度比較的シンプルやや複雑複雑(資金調達も必要)
向いているケース借金が多い・財産不要誰も住まない実家を売りたい長男が住み続けたい等

【画像挿入位置】 画像:「3つの選択肢の分岐点を示すフローチャート」(キャプション:あなたの状況はどれに当てはまる?選択肢の分岐図)

① 相続放棄:「そもそも相続しない」という選択

相続放棄とは何か?

相続放棄とは、「亡くなった人の財産を一切受け取らない」と決める手続きです。プラスの財産もマイナスの財産も、すべて引き継がないことになります。

【身近な例え話】

🎁 たとえば、親から「このボロボロの家と多額の借金を全部あげる」と言われたとき、「いりません」と言うのが相続放棄です。家も借金も、何も受け取りません。

相続放棄の手続きと期限

相続放棄は、「自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内」に、家庭裁判所に申述(申し込み)しなければなりません。この期限を「熟慮期間」といいます。

ステップ内容期限・費用
STEP 1必要書類を集める(戸籍謄本等)
STEP 2家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出相続開始を知った日から3ヶ月以内
STEP 3家庭裁判所からの照会書に回答
STEP 4「相続放棄申述受理通知書」を受け取れば完了収入印紙800円+郵便切手代

相続放棄の3大注意点

  • 【注意①】相続財産を「使ってしまう」と放棄できなくなる!

 亡くなった人の預貯金を勝手に引き出して使ったり、遺品を処分したりすると、「単純承認(相続を承認したとみなす)」として扱われ、放棄できなくなります。

  • 【注意②】次順位の相続人に権利が移る

 子ども全員が放棄すると、相続権は亡くなった人の親(祖父母)へ移ります。親も亡くなっていれば兄弟姉妹へ移ります。放棄する前に、次順位の方への連絡・相談が必要です。

  • 【注意③】一部だけの放棄はできない

 「現金だけ受け取って、借金は放棄したい」はできません。相続放棄は全か無か(All or Nothing)です。

相続放棄が向いているケース

  • 借金(負債)が財産より多い場合
  • 相続に関わりたくない事情がある場合
  • 他の相続人に全財産を集中させたい場合(例:配偶者に全部渡したい)

② 換価分割:「売ってから分ける」シンプルな方法

換価分割とは何か?

換価分割(かんかぶんかつ)とは、相続財産(実家などの不動産)を売却してお金(現金)にしてから、相続人で分ける方法です。

【身近な例え話】

🍰 大きなホールケーキ(実家)を、包丁で3等分するのが難しいなら、いったんケーキをすべてピューレ状(現金)にして、それをカップ3つに均等に分ける——それが換価分割のイメージです。

換価分割の流れ

  1. 相続人全員で「換価分割を行う」旨の遺産分割協議書を作成する
  2. 不動産を相続登記(所有権移転)する(売却のため必要)
  3. 不動産業者を通じて実家を売却する
  4. 売却代金(諸費用を差し引いた後)を法定相続分または協議で決めた割合で分配する

換価分割で発生する税金:「譲渡所得税」に注意!

売却すると、利益(売値-取得費)に対して「譲渡所得税」(所得税・住民税)が発生します。ただし、「相続した不動産」には特別なルールがあります。

💡 重要ポイント: 相続した不動産の「取得費」は、亡くなった方(被相続人)が当初購入した金額を引き継ぎます(取得費の引き継ぎ)。購入した当時の書類(売買契約書)が重要です!

【節税の切り札】「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(相続税取得費加算)」

相続した財産を相続税の申告期限(10ヶ月)から3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。これにより、譲渡所得を圧縮できます。

項目内容
特例の名称相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(措法39条)
適用条件相続税を支払っていること/相続開始日から3年10ヶ月以内に売却すること
効果支払った相続税のうち、売却した不動産に対応する部分を取得費に加算できる
結果譲渡所得が減り、譲渡所得税の負担が軽くなる

【特例その2】「空き家の3,000万円特別控除」も活用できる可能性あり

一定の要件(昭和56年以前に建築・区分所有建物でない等)を満たす空き家(実家)を売却した場合、譲渡益から3,000万円を控除できる特例(措法35条3項)があります。

主な要件内容
建物の要件昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有でないこと)
売却前の状態相続開始直前まで被相続人が1人で居住していた(老人ホーム入居の場合も一定条件下で適用可)
売却時の要件売却時に建物を取り壊すか、耐震基準適合リフォームをしてから売ること
売却価格1億円以下
申告期限売却した年の翌年2月16日〜3月15日の確定申告で申請
⚠️ 注意: この特例の要件は複雑です。特に老人ホーム入居中に亡くなった方の実家については、要件の確認が必要です。必ず専門家に相談することをおすすめします。

③ 代償分割:「1人が取得して、他の人にお金を払う」方法

代償分割とは何か?

代償分割(だいしょうぶんかつ)とは、相続人の1人が実家(不動産)を単独で取得する代わりに、他の相続人に対して「代償金(だいしょうきん)」として現金を支払う方法です。

【身近な例え話】

🏠 「実家」という大きなケーキをまるごと長男が受け取る代わりに、次男と長女に対して「ケーキ代の代わり」として現金を渡す——それが代償分割です。実家は長男のもとに残ります。

代償分割の流れ

  • 相続人全員で遺産分割協議を行い、「誰が実家を取得するか」「代償金をいくら、誰が誰に払うか」を決める
  • 遺産分割協議書に「代償分割」の旨と代償金の金額を明記する
  • 実家を取得する人が相続登記(名義変更)をする
  • 代償金を支払い、遺産分割が完了する

代償金の基準:「不動産の評価額」が重要

代償金の金額は、相続人間の合意で決めることができます。ただし、一般的には実家の「時価(市場価格)」や「固定資産税評価額」「路線価」などを参考に決定します。

評価方法概要特徴
時価(市場価格)不動産業者の査定額や実際の取引価格最も実態に近いが、業者によって差がある
路線価国税庁が毎年発表する評価額(時価の約80%程度)相続税申告でよく使われる基準
固定資産税評価額市区町村が定める評価額(時価の約70%程度)毎年4〜6月に届く「固定資産税課税通知書」に記載
💡 実務のポイント: 代償金の算定は「どの評価を使うか」で金額が大きく変わります。相続人間でもめないよう、不動産鑑定士の鑑定書を取得するケースも増えています。費用は数十万円かかりますが、紛争回避には有効です。

代償分割に伴う税務上の注意点

代償分割では、代償金を「もらった側」「払った側」それぞれに税務上の扱いがあります。

立場税務上の扱い注意点
実家を取得した人(代償金を支払う側)支払った代償金は相続税の計算では「取得財産から控除」できる相続税の課税価格の計算に影響する
代償金を受け取った側代償金は「相続により取得した財産」として相続税の対象相続税の課税価格に代償金を加算する
代償金の代わりに不動産を渡した場合渡した不動産に「みなし譲渡」として譲渡所得税が発生する現金ではなく不動産で払う場合は特に注意!

【具体的シミュレーション】実際の数字で比べてみよう

前提条件

項目内容
被相続人父(母はすでに死亡)
相続人子ども3人:長男Aさん・次男Bさん・長女Cさん(各1/3ずつ)
相続財産実家(時価:3,000万円)+現金500万円
実家の取得費(父が購入した金額)購入当時の価格:1,500万円
相続税今回のケースでは相続税なし(基礎控除3,000万円+600万円×3人=4,800万円以内)

パターン①:換価分割(実家を売却して3等分)

実家を3,000万円で売却した場合のシミュレーション:

計算項目金額備考
売却価格3,000万円 
取得費△1,500万円父の購入価格を引き継ぐ
譲渡費用(仲介手数料等)△100万円概算
譲渡所得1,400万円 
譲渡所得税(長期:20.315%)△約284万円相続開始から3年10ヶ月以内に売却の場合
手取り額(税引き後)約2,616万円 
現金500万円と合計3,116万円 
3人での1人あたり受取額約1,039万円 
✅ ポイント: 「空き家の3,000万円特別控除」が使える場合、譲渡所得1,400万円が全額控除されるため、譲渡所得税ゼロになります。手取りが約284万円増えることになります。

パターン②:代償分割(長男Aさんが取得、他2人に代償金を支払う)

計算項目金額・内容
実家の評価額(代償金の基準)時価3,000万円
長男Aさんの法定相続分1/3 → 1,000万円相当
次男Bさんへの代償金1,000万円
長女Cさんへの代償金1,000万円
長男Aさんが用意すべき現金合計2,000万円(+現金遺産からの受取500万円×1/3=約167万円を充当)
現金遺産の分配3人で167万円ずつ受取(別途)
長男Aさんの実質負担代償金2,000万円△現金受取167万円=約1,833万円
⚠️ 課題: 長男Aさんは2,000万円近い現金を用意する必要があります。自己資金がない場合は、不動産担保ローンや生命保険の活用が選択肢になります。代償金の工面方法についても専門家への相談が重要です。

3パターンの最終比較表

 相続放棄(全員)換価分割代償分割(長男取得)
長男Aさんなし約1,039万円の現金実家(3,000万円)を取得(現金負担あり)
次男Bさんなし約1,039万円の現金代償金1,000万円+現金167万円
長女Cさんなし約1,039万円の現金代償金1,000万円+現金167万円
実家の行方次順位相続人へ(または国庫)第三者へ売却長男の所有に
税負担なし(相続税対象外)譲渡所得税約284万円(全体)相続税(今回はゼロ)
向いている人借金が多い場合など誰も住まない/現金が必要長男が住み続けたい

こんな失敗が多い!実家相続の「やってはいけない」3選

❌ 失敗① 遺産分割協議書なしで名義変更してしまう

「とりあえず長男名義にしておこう」と、他の相続人の同意なく名義変更するのはNGです。のちに「同意していない」「遺産分割協議が無効」などのトラブルになります。必ず全員の署名・実印による遺産分割協議書を作成してから動きましょう。

❌ 失敗② 相続放棄の3ヶ月期限を過ぎてしまう

「考えている間に3ヶ月が過ぎた」というケースは非常に多いです。借金が多そうな場合は、すぐに弁護士・司法書士・税理士に相談し、期限内に手続きを進めましょう。「相続放棄の期限延長申請」も家庭裁判所に申立てれば認められる場合があります。

❌ 失敗③ 売却のタイミングを誤り、特例が使えなくなる

空き家の3,000万円特別控除や相続税取得費加算の特例には、売却の期限があります。「いつかそのうち売ろう」と先延ばしにしていると、特例の期限が過ぎてしまい、数百万円単位の税負担が増えることがあります。

【画像挿入位置】 画像:「失敗パターンを警告するアイコン付きのチェックリスト」(キャプション:3つの失敗を避けるだけで、数百万円の損失を防げます)

どれを選ぶべき?判断フローチャート

【STEP 1】借金(負債)は財産を上回っていますか?
YES → 【相続放棄】を検討(3ヶ月以内に家庭裁判所へ) NO  → STEP 2へ進む
【STEP 2】相続人の誰かが実家に住み続けたいですか?
YES → STEP 3へ進む NO  → 【換価分割】を検討(売却して現金で分配)
【STEP 3】取得したい人に代償金を支払う資金力がありますか?
YES → 【代償分割】を検討(代償金の算定・協議書の作成が重要) NO  → ローン活用・保険活用・一部売却など複合的な対策を専門家と相談

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続放棄をすると、実家の管理責任はなくなりますか?

A. 原則として相続放棄をすれば所有者ではなくなりますが、民法940条により「次の管理者が現れるまでの間は、自己の財産と同一の注意をもって財産を管理する義務」が残る場合があります。ただし、令和5年4月の民法改正により、相続放棄をした者の管理義務は「相続人が管理できる状態になるまで保存行為をすれば足りる」と緩和されています。具体的な対応は弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。

Q2. 換価分割した場合、確定申告は必要ですか?

A. はい、必要です。不動産を売却して譲渡所得が生じた場合、翌年の2月16日〜3月15日に確定申告を行う必要があります(相続開始の翌年から)。空き家特例や相続税取得費加算の特例を適用する場合も、必ず確定申告が必要です。申告を忘れると特例が適用されず、多額の税金が発生することがあります。

Q3. 代償分割の代償金を支払えない場合、どうすればよいですか?

A. いくつかの方法が考えられます。①不動産担保ローン(実家を担保にお金を借りる)、②生命保険の活用(事前に被相続人が生命保険に加入しておき、死亡保険金を代償金の財源にする)、③実家の一部を売却して資金を作る、④代償金の支払いを分割払い(年払い等)にする——などの方法があります。いずれも法的・税務的な注意点があるため、専門家へのご相談をお勧めします。

Q4. 相続人全員が合意しなければ、遺産分割は進められないですか?

A. 原則として、遺産分割協議は相続人全員の同意が必要です。ただし、全員の合意が得られない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申立てることができます。調停でも解決しない場合は「遺産分割審判」へ移行し、裁判所が分割方法を決定します。一般的に、調停・審判は長期化するため、早期の専門家活用が重要です。

Q5. 遺言書がある場合、遺産分割の方法に制限はありますか?

A. 遺言書がある場合、原則として遺言書の内容に従って相続が行われます。ただし、相続人全員が合意すれば、遺言書と異なる内容の遺産分割協議書を作成することもできます。また、遺言書があっても、各相続人には「遺留分」(最低限度の相続分)があり、遺留分を侵害している遺言は「遺留分侵害額請求」の対象になります。遺言書がある場合は、その内容と遺留分を確認した上で行動することが重要です。

まとめ:実家の相続は「3つの選択肢」の正しい理解から始まる

今回の記事のポイントを整理すると、

方法一言まとめこんなとき選ぶ
相続放棄相続そのものをやめる借金が多い・財産不要な場合
換価分割売ってから現金で分ける誰も住まない・公平に分けたい場合
代償分割1人が取得し、他に代償金を払う住み続けたい人がいる場合

実家の相続は、単純に「分ける」「売る」「放棄する」という問題ではありません。背後には相続税、譲渡所得税、各種特例の適用可否、さらには相続人間の関係性・感情まで絡み合う複雑な問題です。

「うちのケースはどれが正解なの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。実は、最適な方法は家族の状況によって異なります。「法律上できること」と「税務上お得なこと」と「家族が納得できること」を同時に満たす方法を見つけるには、専門家のサポートが不可欠です。

🏦 相続のご相談は、専門家へお気軽に 「うちの場合はどうすればいいの?」という個別具体的なお悩みは、ケースバイケースで判断が大きく変わります。 当事務所には、税務署OB税理士が複数在籍しており、相続税・譲渡所得税・各種特例の適用から遺産分割協議のサポートまで、ワンストップで対応可能です。 「税務調査が心配」「誰に相談すればいいか分からない」という方も、まずはお気軽にお問い合わせください。初回のご相談に対応しております。 遠方の方にはZOOMでのオンライン相談も承っております。 【 お問い合わせはこちら 】 https://www.oonumata.or.jp/

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