【完全版】会社員が起業前にやるべき準備退職前チェックリストと社会保険・税金の注意点を税理士が徹底解説



退職前チェックリストと社会保険・税金の注意点を税理士が徹底解説

監修:税理士 / 更新日:2026年5月

📌 この記事でわかること ✔ 会社員のうちに起業準備を進めるべき3つの理由 ✔ 退職前に確認すべき10項目チェックリスト(図解付き) ✔ 退職後の社会保険・健康保険・税金の手続きスケジュール ✔ 任意継続と国民健康保険どちらがお得かの比較表 ✔ 開業届・青色申告の期限と節税効果 ✔ 中学生でも理解できるやさしい解説

「起業したい!」と思ったとき、いきなり会社を辞めるのは実はとても危険です。退職した瞬間に健康保険・年金・住民税など、お金に関係する制度が一気に変わります。準備不足だと「申請期限を過ぎた」「お金が足りない」といったトラブルが起きやすくなります。

この記事では、現役の会社員が「辞める前にやるべきこと」を図解とチェックリストで徹底解説します。税理士の視点からポイントを整理しているので、起業を検討中の方はぜひ最後まで読んでください。

このページの目次

1|なぜ「在職中」から起業準備を始めるべきなのか

まず大前提として、起業の準備は「会社を辞めてから」ではなく「辞める前から」始めるのが正解です。その理由を3つにまとめます。

◆ 理由① 収入があるうちのほうが資金計画が立てやすい

会社員には毎月決まった給与があります。その収入がある状態で「起業のための資金を積み立てる」「設備費・広告費などの初期投資を準備する」ことができます。

退職後は売上が安定するまでの間、収入がゼロになる可能性があります。生活費は最低でも6ヶ月分、不安な方や子どもがいる方は12ヶ月分を目安に確保しておくと安心です。

◆ 理由② 退職後は手続きが一気に押し寄せる

退職した途端に、以下の手続きがほぼ同時に必要になります。

  • 健康保険の切り替え(任意継続または国民健康保険)
  • 厚生年金から国民年金への切り替え
  • 住民税の普通徴収への切り替え
  • 開業届・青色申告承認申請書の提出
  • (場合によって)インボイス登録、営業許可の取得

それぞれに申請期限があり、「知らなかった」では済まされないものばかりです。在職中にこれらの仕組みを理解しておくだけで、退職後の混乱を大きく防げます。

◆ 理由③ 「辞めてから考える」は時間もお金も損をする

退職後に「さて何から始めようか」と考え始めると、事業の立ち上げが遅れ、その間も生活費は減り続けます。在職中に副業として小さく試してみることで、「需要があるか」「どんな客が来るか」「価格設定は正しいか」を実際のお金を動かして確認できます。

退職はゴールではなく、「準備が整ったことの証明」であるべきです。

2|退職前に確認すべき起業準備チェックリスト10項目

以下の10項目を退職前に一つずつ確認していきましょう。図(表)で一覧にまとめましたので、印刷してチェック用にお使いください。

No.チェック項目ポイント・注意点
事業アイデアとターゲットを整理するWHO・WHAT・HOW・WHYの4要素で整理
副業・兼業ルールを就業規則で確認する違反すると懲戒処分のリスクあり
売上見込みと生活費を分けて資金計画を立てる生活費は最低6ヶ月分を確保
開業タイミングを決める繁忙期・税務処理を考慮して設定
失業保険と再就職手当の扱いを確認するハローワークへ退職前に相談
健康保険の切り替えを比較する任意継続か国民健康保険かを試算
年金・配偶者の扶養の変化を確認する厚生年金→国民年金への手続き必須
住民税・税金の支払い時期を把握する前年所得基準のため退職後も高額になる場合あり
開業届・青色申告の準備をする開業日から1ヶ月以内に税務署へ提出
退職後すぐの固定費を見直す通信費・保険料・サブスクから削減検討

▌ チェック①:事業アイデアとターゲットを整理する

「何を売るか」だけでなく「誰に売るか」「なぜあなたが売るか」まで考えるのがポイントです。ビジネスモデルの4要素(WHO・WHAT・HOW・WHY)を使って整理しましょう。

要素意味具体的なポイント
WHO(誰に)誰を顧客にするか年齢・性別・職業・趣味などを具体的に設定。「30代共働き主婦」など細かく絞る
WHAT(何を)何を提供するか商品・サービスの価値。「時短」「安心」「専門知識」など顧客の悩みを解決するもの
HOW(どうやって)どう届けるか実店舗・オンライン・訪問など販売方法。SNS集客か紹介か広告かも含めて検討
WHY(なぜ)なぜあなたがやるか事業のストーリー・理念。共感を生むブランド力につながり、価格競争を避けられる

この4つが整理できると、ターゲット設定、価格設定、販売方法のすべてが決めやすくなります。競合他社と市場規模も確認し、「自分が参入する余地があるか」を冷静に判断しましょう。

▌ チェック②:副業・兼業ルールを就業規則で確認する

在職中に起業準備(副業)を進める場合、必ず就業規則を確認してください。副業が禁止されている会社でこっそり開業してしまうと、懲戒処分のリスクがあります。

確認のポイントは次の3つです。

  • 「副業・兼業」に関する条文がないか確認する
  • 「競業禁止」「情報管理」の条文にも注意する
  • 許可制・届出制の場合は所定の申請書を提出する

わからない場合は人事・労務部門に問い合わせるのが確実です。「副業禁止でも起業準備中」という状態は意外に多く、トラブルの原因になります。

▌ チェック③:売上見込みと生活費を分けて資金計画を立てる

資金計画は「事業用の資金」と「生活用の資金」を必ず分けて考えます。

資金の種類目安金額内容
事業資金(初期費用)業種によって異なる設備費・広告費・ホームページ制作費・仕入れ代など
事業資金(運転資金)月間費用×3〜6ヶ月分家賃・通信費・仕入れ・人件費など毎月かかる費用
生活費(本人分)月額生活費×6〜12ヶ月分食費・家賃・光熱費・交通費など日常生活にかかる費用
生活費(扶養家族分)家族構成に応じて追加配偶者・子どもがいる場合はその分を上乗せして確保
税金・社会保険料前年所得の20〜30%程度住民税・所得税・国民健康保険料・国民年金保険料の合計

▌ チェック④:開業タイミングを決める

「いつか辞める」ではなく、具体的な開業日を決めることが大切です。開業日を決めると「そのために何をいつまでに終わらせるか」が明確になります。

また、業種によっては繁忙期に合わせて開業すると最初から売上が取りやすくなります。例えば、会計・税務系なら3〜5月、飲食業なら春や秋のスタートが有利です。

▌ チェック⑤:失業保険と再就職手当の扱いを確認する

💡 知らないと損する!再就職手当とは? 失業保険(雇用保険の基本手当)は「求職活動をしている人」が受け取れる給付金ですが、起業する人は「求職活動」ではないため、基本的には受給対象外です。  ただし「再就職手当」は、所定の条件を満たせば起業・独立でも受給できる可能性があります。受給日数を残したまま就業(起業を含む)した場合に支給される一時金で、残日数が多いほど受給額が増えます。ハローワークへ退職前から相談しておくことが重要です。

▌ チェック⑥〜⑦:健康保険・年金の切り替えを確認する

会社員が退職すると、翌日から健康保険と厚生年金の資格を失います。それぞれ自分で切り替えの手続きが必要です。

制度退職前退職後
健康保険勤務先の健康保険(会社が保険料の約半分を負担)任意継続(最長2年)または国民健康保険に切り替え
年金厚生年金(会社が保険料の半分を負担)国民年金に切り替え(月額16,980円・2024年度)

▌ チェック⑧:住民税・税金の支払い時期を把握する

住民税は「前年の所得」をもとに計算されます。退職直後は収入がゼロでも、前年の高い給与に基づいた住民税の請求が来ます。これを知らないと「こんなに高いの!?」と慌てることになります。

税金の種類退職後の納付方法注意点
住民税普通徴収(自分で納付)6月・8月・10月・翌1月の4回払い。前年所得が基準のため高額になることも
所得税確定申告(翌年2〜3月)個人事業の場合は1月〜12月分を翌年3月15日までに申告・納付
国民健康保険料自分で納付(毎月or一括)前年所得と家族人数で決まる。市区町村で事前に試算可能
国民年金保険料自分で納付(毎月or一括)月額16,980円(2024年度)。前払いで割引あり

▌ チェック⑨:開業届・青色申告の準備をする

📋 青色申告特別控除(最大65万円)とは? 青色申告承認申請書を提出して複式簿記で帳簿をつけ、e-Taxで申告すると、所得から最大65万円が控除されます。仮に所得税率20%の方なら、それだけで13万円の節税効果があります。  提出期限:開業日から2ヶ月以内(1月1日〜1月15日開業の場合は3月15日まで) 白色申告との違い:控除なし(10万円控除のみ)。会計ソフトを使えば複式簿記も難しくありません。

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は開業日から1ヶ月以内に税務署へ提出します。e-Taxを使えばオンラインで提出可能です。青色申告承認申請書と同時に提出するのが効率的です。

▌ チェック⑩:退職後すぐの固定費を見直す

起業直後は収入が不安定です。毎月必ず出ていく「固定費」を減らすことで、資金が尽きるまでの時間を延ばせます。

固定費の種類見直しの方法・目安
通信費(スマホ・インターネット)格安SIMへの乗り換え、プラン変更で月5,000〜10,000円の削減も可能
保険料(生命保険など)掛け捨て型に変更、不要な特約の見直し
サブスクリプション使っていないサービスの解約。動画・音楽・雑誌など月1,000〜5,000円程度
家賃在宅ワーク中心ならより安い物件への引越しも検討。コワーキングスペースの活用も
光熱費電力・ガスの契約見直し、節電による削減

3|健康保険は「任意継続」か「国民健康保険」どちらを選ぶ?

退職後の健康保険選びは、金額が大きく変わる重要な判断です。特に起業直後は収入が不安定なため、慎重に比較してください。

比較項目任意継続国民健康保険
保険料退職時の給与が基準(2年固定)前年所得が基準(毎年変動)
自己負担全額自己負担(会社負担なし)全額自己負担(同左)
家族の扶養扶養人数が増えても保険料変わらず加入人数が増えると保険料増加
加入期間最長2年間廃業・転職まで継続
申請期限退職翌日から20日以内退職後14日以内
向いている人収入が高い・扶養家族が多い人退職後の収入が会社員時代より大幅減の人
福利厚生組合健保の場合は継続利用可なし

▌ どちらを選ぶべきか:判断のポイント

  • 退職前の年収が高かった(目安:600万円以上)→ 国民健康保険の保険料が高くなりやすい
  • 退職後の収入が激減する見込み → 国民健康保険のほうが安くなることが多い
  • 扶養家族が多い → 任意継続のほうが有利(家族が増えても保険料が変わらない)
  • 組合健保の福利厚生を活かしたい → 任意継続を選ぶメリットあり
⚠️ 注意:かならず退職前に試算してください 任意継続と国民健康保険のどちらが得かは、個人の収入・家族構成・地域によって大きく変わります。任意継続の申請期限は退職翌日から20日以内と非常に短いため、退職前にそれぞれの保険料を試算して比較しておくことが必須です。  試算方法:加入先の健保組合(任意継続)、お住まいの市区町村窓口(国民健康保険)に問い合わせるか、各自治体のウェブサイトの試算ツールを使ってください。

4|退職後の手続きスケジュール一覧

退職後にやるべき手続きをタイミング別にまとめました。期限があるものは特に注意してください。

タイミング手続き内容詳細・注意点
退職直後(〜2週間)健康保険の切り替え申請任意継続は退職翌日から20日以内。国保は14日以内に市区町村へ
退職直後(〜2週間)国民年金への切り替え住んでいる市区町村の窓口で手続き。未納期間が発生しないよう注意
退職翌月〜住民税の普通徴収切り替え会社からの天引きが終わり自分で納付。6月・8月・10月・翌1月の4回払い
開業日から1ヶ月以内開業届の提出最寄りの税務署へ。e-Taxでも可能。青色申告承認申請書も同時に提出
開業日から2ヶ月以内青色申告承認申請書の提出最大65万円の特別控除。期限を過ぎると白色申告になる
翌年2月16日〜3月15日所得税の確定申告開業初年度から必要。会計ソフトを使って帳簿管理を開始

5|在職中に進めたい「実践的な起業準備」

制度の確認だけでなく、ビジネスを実際に動かすための準備も在職中から始めましょう。

▌ ① 屋号・名刺・SNS・簡易サイトを先に準備する

起業後にすぐ営業活動を始めるために、以下を事前に用意しておきましょう。

準備するものポイント
屋号(事業名)検索しやすく、何の仕事かわかる名前にする。他社の商標との重複に注意
名刺屋号・氏名・電話番号・メールアドレス・URLを記載。SNSアカウントも入れると便利
SNSアカウントX(旧Twitter)・Instagram・LinkedInなど業種に合ったSNSで情報発信を開始
簡易ランディングページ(LP)WordPressやSTUDIO、Wixなどで作成。サービス内容・料金・連絡先を掲載

▌ ② 見込み客・専門家・外注先を事前に確保する

  • 見込み客:SNS・ブログでの情報発信、友人・知人への告知、モニター募集などで事前に関係構築
  • 税理士・社労士:起業後の経営判断・節税・社会保険手続きについて相談できる専門家を早めに確保
  • 外注先・協力パートナー:自分一人では対応しきれない業務を外注できる相手を探しておく

▌ ③ 開業後の営業・販促計画を作る

「開業日に何をするか」「最初の1ヶ月で何件の商談をするか」「SNSは週何回更新するか」など、具体的な行動計画を数字で作っておくことで、開業直後から動けます。「なんとなく宣伝する」より「月20件DM・毎週ブログ投稿・初月3件成約を目標」のほうが結果が出やすいです。

6|よくある質問(Q&A)

◆ Q. 在職中に開業届を出してもいいですか?

A. 問題ありません。在職中でも開業届を提出することは可能です。ただし、勤務先の副業規定を必ず確認してから行動してください。

◆ Q. 会社を辞める前に確定申告は必要ですか?

A. 退職した年の分は、退職後に「確定申告」が必要になります(年末調整は勤務先が行ってくれません)。また、個人事業を開始した年は、開業した年の1月〜12月分の所得を翌年3月15日までに確定申告します。

◆ Q. 青色申告と白色申告の違いは何ですか?

A. 白色申告は帳簿が簡単ですが、特別控除がありません。青色申告は帳簿が複式簿記になりますが、最大65万円の特別控除が受けられます。会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)を使えば手間はそれほど変わりません。起業するなら必ず青色申告を選びましょう。

◆ Q. インボイス登録は必要ですか?

A. 取引先が課税事業者(企業など)の場合、インボイス(適格請求書)の発行ができないと取引を断られるケースが増えています。個人消費者相手のビジネスなら登録は必須ではありませんが、BtoB(企業間取引)が中心の場合は登録を検討してください。

まとめ:「辞める準備」まで含めた起業計画を

✅ この記事のポイントまとめ ① 起業準備は在職中から始めることでリスクを大幅に下げられる ② 退職前に10項目のチェックリストを一つひとつ確認する ③ 健康保険は退職前に試算して、任意継続か国民健康保険かを選ぶ ④ 開業届・青色申告承認申請書は期限内に提出する(最大65万円の節税効果) ⑤ 住民税・年金・所得税など「税金の波」に備えた資金を確保しておく ⑥ SNS・名刺・見込み客の獲得を在職中から並行して進める

起業は「勢い」で飛び込むものではなく、「計画」と「準備」で成功確率を上げるものです。この記事が、あなたの起業準備の一助になれば幸いです。

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