■はじめに
「どうせ返ってこないお金なのに、なぜ税金がかかるのか?」
これは相続の現場で非常によくある疑問です。
実際に、長年返済されていない貸付金であっても、相続税の対象になるケースがあります。
本記事では、実際の裁決事例をもとに、「貸付金」と相続税の関係を中学生でも理解できるように、できるだけシンプルに解説します。
■結論(最初に重要ポイント)
・貸付金は原則として「相続財産」
・回収不能であれば例外的に0円評価
・ただし「回収不能」のハードルは非常に高い
・主観ではなく「客観的証拠」が必要
■そもそも貸付金とは?
貸付金とは「他人に貸しているお金」です。
図①
【お金の流れ】
Aさん →(貸す)→ X社
Aさん ←(返す)← X社
この「返してもらう権利」が財産として評価されます。
■なぜ返ってこないお金に税金がかかるのか?
相続税は「持っている財産」に対してかかります。
ここで重要なのは、「現金だけが財産ではない」という点です。
図②
【相続財産のイメージ】
・現金、預金
・不動産
・株式
・貸付金(←今回のポイント)
つまり、「将来お金を受け取れる権利」も財産とみなされます。
■今回の事例(わかりやすく)
・貸付額:1億1,000万円
・返済済:1,000万円
・未回収:1億円
・長期間返済なし
相続人の考え:
「もう返ってこない → 価値ゼロ」
税務署の考え:
「まだ回収可能性がある → 1億円で課税」
■争点①:時効が過ぎていればゼロになる?
答え:ならない
理由:
時効は「自動で消える」わけではありません。
図③
【時効の仕組み】
時効期間経過 → 債務者が「援用」→ 初めて消滅
つまり、相手が「もう払いません」と主張しない限り、権利は残ります。
■争点②:長年未回収=回収不能か?
答え:それだけでは不十分
税務上の判断基準は非常に厳しいです。
■回収不能と認められるケース
以下のような場合のみ認められます。
・破産している
・事業停止している
・完全に資産がない
・法的に回収手段がない
図④
【回収不能のイメージ】
会社が消滅している → 〇
赤字だけど営業中 → ×
■今回の会社の状況
・資産超過(資産>負債)
・営業利益あり
・事業継続中
→ 回収不能とは言えない
■審判所の判断
・時効は援用されていない
・会社はまだ存続している
・返済能力もゼロではない
→ 結論:1億円は相続財産
■重要な考え方
税務では「感覚」は通用しません。
図⑤
【判断基準】
主観(感覚) → NG
客観(証拠) → OK
■実務上の注意点
①貸付契約書を作る
②返済履歴を残す
③定期的に回収努力をする
④回収不能なら証拠を残す
■よくある誤解
誤解①:長年返ってこない=ゼロ
→ 誤り
誤解②:時効=自動消滅
→ 誤り
誤解③:家族間なら関係ない
→ 誤り
■まとめ
・貸付金は基本的に課税対象
・ゼロ評価は例外中の例外
・「客観的に回収不能」が必要
・証拠がすべて
■最後に
相続税の世界では、「実態」よりも「証拠」が重視されます。
特に貸付金はトラブルになりやすいため、事前の対策が非常に重要です。
