給与とは?
基本給・残業代・手当の仕組みと控除の内訳
〜 中学生でもわかる!給与の完全ガイド 〜
監修:税理士・社会保険労務士 | 2026年5月最新版
はじめに
毎月もらう「お給料」。でも、なんで銀行に振り込まれる金額は、会社が言った金額より少ないんだろう? そんな疑問、持ったことはありませんか?
給与の仕組みを正しく理解することは、社会人としての第一歩です。この記事では、給与・給料・手取り・所得のちがい、総支給額の内訳、控除の種類と計算方法、そして法律のルールまで、
「中学生でもわかる」をコンセプトに、わかりやすく、正確に、完全解説します。
このページの目次
1. 給与とは何か?基本の言葉を整理しよう
(1)給与・給料・賃金・手取り・所得のちがい
似たような言葉がたくさんありますが、それぞれ意味がちがいます。下の表で整理しましょう。
| 用語 | 意味 | 使われる場面 |
| 給与 | 基本給・手当・ボーナスを含む労働の対価の総称 | 日常・雇用契約・給与計算 |
| 給料 | 基本給のみを指す(広義では給与と同じ意味でも使う) | 日常会話 |
| 賃金 | 労働基準法上の概念。名称を問わず労働の対価すべて | 労働基準法・労務手続き |
| 手取り | 給与から税金・社会保険料を引いた実際の受取額 | 給与明細・家計管理 |
| 給与収入 | 1年間に受け取った給与の合計(額面) | 税務・確定申告・年末調整 |
| 給与所得 | 給与収入から給与所得控除を引いた金額 | 所得税・住民税の計算 |
📌 ポイント:手取りは一般的に「給与収入の7〜8割程度」が目安です。給与収入と手取りは別物!
(2)給与と報酬のちがい(従業員 vs 業務委託)
「給与」は雇用契約に基づく対価、「報酬」は業務委託などの契約に基づく対価です。
| 項目 | 給与(雇用契約) | 報酬(業務委託) |
| 所得税の処理 | 会社が源泉徴収・年末調整 | 個人が確定申告 |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金・雇用保険の対象 | 対象外(国民健康保険・国民年金) |
| 所得区分 | 給与所得 | 事業所得または雑所得 |
(3)労働基準法の「賃金」の定義
労働基準法第11条では、賃金を次のように定義しています。
「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」
つまり、名前がなんであれ「労働の対価として支払うもの」はすべて賃金に該当します。判断の基準は「会社に支払い義務があるかどうか」です。
| 区分 | 具体例 |
| 賃金に該当するもの | 基本給、残業代、通勤手当、家族手当、住宅手当、役職手当、ボーナス(就業規則で定められているもの) |
| 賃金に該当しないもの | 結婚祝い金・見舞金などの恩恵的給付、出張旅費・交通費(実費弁償)、社員食堂など福利厚生施設の利用 |
2. 給与の仕組み〜計算の3ステップ〜
給与の計算は、次の3ステップで行います。
💡 計算式:手取り(差引支給額)= 総支給額 - 控除額
| STEP 1 ✔ 出勤日数・残業時間の集計 ✔ 基本給の確定 ✔ 各種手当の確定 ✔ 総支給額の算出 | → | STEP 2 ✔ 社会保険料の算定 ✔ 所得税(源泉徴収)の算定 ✔ 住民税の確認 ✔ 控除額の合計 | → | STEP 3 ✔ 総支給額 − 控除額 ✔ = 手取り(差引支給額) ✔ 銀行口座への振込 |
3. 総支給額の内訳〜何が含まれる?〜
総支給額は、以下の式で構成されます。
総支給額 = 基本給 + 残業代 + 各種手当 + インセンティブ等
(1)基本給
基本給とは、企業が独自に定める給与の土台となる金額です。毎月一定額が支給されます。
| 支給形式 | 説明 |
| 月給制 | 毎月決まった金額を支給(最も一般的) |
| 日給制 | 出勤した日数に応じて支給 |
| 時給制 | 働いた時間数に応じて支給 |
📌 基本給は残業代・ボーナスの計算にも使われる「給与の核心部分」です。
(2)残業代(時間外・休日・深夜手当)
労働基準法では、決められた時間を超えて働いた場合、割増賃金(残業代)の支払いが義務付けられています。
■ 残業の2種類
| 種類 | 定義 | 割増賃金 |
| 法定内残業 | 所定労働時間超・法定労働時間(1日8時間・週40時間)内 | 支払い義務なし(通常賃金) |
| 法定外残業(時間外労働) | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)超 | 割増賃金の支払い義務あり |
■ 割増率の一覧表
| 労働の区分 | 割増率(最低基準) | 具体例 |
| 時間外労働(月60時間以内) | 25%以上 | 時給1,000円 → 1,250円以上 |
| 時間外労働(月60時間超) | 50%以上 | 時給1,000円 → 1,500円以上 |
| 休日労働(法定休日) | 35%以上 | 時給1,000円 → 1,350円以上 |
| 深夜労働(22時〜翌5時) | 25%以上 | 時給1,000円 → 1,250円以上 |
| 深夜の時間外労働 | 50%以上(合算) | 時給1,000円 → 1,500円以上 |
| 深夜の法定休日労働 | 60%以上(合算) | 時給1,000円 → 1,600円以上 |
💡 計算式:残業代 = 1時間あたりの賃金 × 時間外労働時間数 × 割増率
⚠️ 労働時間は原則1分単位で計算します。端数の切り捨ては法律違反です!
(3)各種手当
手当は会社が任意で設定するものです。法律上の支給義務はありませんが、就業規則で定められれば賃金になります。
| 手当の種類 | 内容 | 社会保険の対象 |
| 通勤手当 | 通勤にかかる交通費の補助 | 対象(所得税は一定額まで非課税) |
| 役職手当 | 管理職などの役職に応じた手当 | 対象 |
| 資格手当 | 業務に関連する資格保有者への手当 | 対象 |
| 住宅手当 | 家賃・住居費用の補助 | 対象(残業代計算は除外可) |
| 家族・扶養手当 | 扶養家族がいる従業員への手当 | 対象(残業代計算は除外可) |
(4)現物給与
お金以外の形で支給されるものも「現物給与」として給与の一部になります。
- 社宅の提供(家賃相当額の一部)
- 食事の支給(食事補助)
- 自社製品の支給
現物給与は厚生労働大臣が定める価額に換算し、社会保険料の計算に反映します。
4. 控除の内訳〜給与から引かれるもの〜
給与から差し引かれる「控除」には、大きく分けて「社会保険料」と「税金」の2種類があります。
| 社会保険料(約20〜25%) ✔ 健康保険料 ✔ 介護保険料(40歳以上) ✔ 厚生年金保険料 ✔ 雇用保険料 ✔ 子ども・子育て支援金(2026年4月〜) | 税金(約5〜10%) ✔ 所得税(源泉徴収) ✔ 住民税(特別徴収) |
(1)社会保険料
社会保険料は、健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険の保険料です。会社と従業員が折半(一部は会社が多く負担)で支払います。
| 保険の種類 | 目的 | 負担方法 | 計算基準 |
| 健康保険 | 病気・ケガのときの医療費 | 労使折半 | 標準報酬月額×料率 |
| 介護保険 | 介護が必要になったときの支援(40歳以上) | 労使折半 | 標準報酬月額×料率 |
| 厚生年金保険 | 老後・障害・遺族への年金 | 労使折半 | 標準報酬月額×18.3% |
| 雇用保険 | 失業・育児・介護の給付 | 労使按分(会社多め) | 賃金総額×料率 |
| 子ども・子育て支援金 | 少子化対策の財源(2026年4月〜) | 労使折半(合計0.23%) | 標準報酬月額×支援金率 |
📌 2026年4月から「子ども・子育て支援金」の控除が始まりました。2026年度は労使合計0.23%(本人負担0.115%相当)。
(2)所得税(源泉徴収)
所得税は、個人の1年間の所得に対して課される「国税」です。給与所得者は「源泉徴収」という仕組みで毎月概算で納めます。
| 毎月の給与支払い 源泉徴収税額表をもとに概算で所得税を天引き | → | 年末調整(12月) 1年間の正確な税額を計算し、過不足を清算 | → | 還付 or 追徴 差額を返金または追加納付 |
(3)住民税
住民税は都道府県・市区町村に納める「地方税」です。前年の所得をもとに計算され、毎年6月から翌年5月まで12回に分けて納めます。
| 納付方法 | 説明 | 対象者 |
| 特別徴収(給与天引き) | 会社が毎月給与から引いて市区町村に納付 | 給与所得者(原則) |
| 普通徴収(自分で納付) | 市区町村から届く納付書で自分で支払う | 個人事業主など |
会社は従業員の住民税を毎月の給与から天引きし、翌月10日までに各市区町村へ納付する義務があります。
5. 給与明細の見方〜3つの欄を確認しよう〜
給与明細は、給与の内訳を知るための大切な書類です。会社は給与支払い時に給与明細を交付する義務があります(所得税法第231条)。
| 欄 | 記載内容 | 確認ポイント |
| ① 勤怠欄 | 出勤日数・所定労働時間・時間外労働時間・欠勤日数など | 残業時間や休日出勤の記録に誤りがないか |
| ② 支給欄 | 基本給・各種手当・残業代など、総支給額の内訳 | 求人票の「額面」はここの合計額 |
| ③ 控除欄 | 健康保険料・厚生年金・雇用保険・所得税・住民税の内訳 | 控除項目と金額に誤りがないか |
差引支給額(手取り) = 支給合計 ー 控除合計
6. 賃金支払いの5原則〜法律で守られた権利〜
労働基準法第24条は「賃金支払いの5原則」を定めています。これに違反すると労働基準法違反になります。
| 原則 | 内容 | 注意点 |
| ① 通貨払いの原則 | 現金(通貨)で支払う | 銀行振込・デジタル払いは従業員の同意が必要 |
| ② 直接払いの原則 | 労働者本人に直接支払う | 家族への代理払いは原則NG |
| ③ 全額払いの原則 | 全額を支払う(法令・労使協定の控除を除く) | 損害賠償の天引きは労使協定なしでは違法 |
| ④ 毎月1回以上払い | 毎月1回以上支払う | 2か月に1回まとめて払うのは違法 |
| ⑤ 一定期日払い | 一定の期日に支払う | 「今月末頃」のような不定期払いはNG |
7. 減給のルール〜懲戒処分でも上限がある〜
労働基準法第91条では、懲戒処分として減給をする場合の上限が定められています。
| ルール | 内容 | 例(月給30万円の場合) |
| 1回の減給上限 | 平均賃金の1日分の半額以下 | 約5,000円が上限の目安 |
| 1か月の減給総額上限 | その月の賃金総額の10分の1以下 | 最大3万円まで |
⚠️ 業績悪化などで会社が一方的に給与を下げるのは「不利益変更」。原則として従業員の同意が必要です(労働契約法第10条)。
8. 年末調整のしくみ
年末調整とは、1年間の源泉徴収(概算)と実際の税額の差額を精算する手続きです。12月の給与と一緒に行います。
年末調整で使う主な書類
| 書類名 | 目的 | 提出者 |
| 扶養控除等(異動)申告書 | 扶養家族の状況を申告・源泉徴収額を甲欄適用 | 全従業員(毎年) |
| 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書等 | 基礎控除・配偶者控除などを申告 | 全従業員(原則) |
| 保険料控除申告書 | 生命保険・地震保険などの控除を申告 | 該当する従業員 |
| 給与支払報告書 | 前年給与を市区町村に報告(住民税算定の基礎) | 会社(翌年1月末まで) |
9. まとめ〜給与の仕組みを図で総整理〜
最後に、給与全体の流れを一枚の図でまとめます。
| 【給与の全体図】 総支給額(額面) ├ 基本給(毎月一定) ├ 残業代(時間外・休日・深夜割増) ├ 各種手当(通勤・役職・住宅・家族等) └ インセンティブ・現物給与等 -(マイナス) 控除額 ├ 社会保険料(健康・介護・厚生年金・雇用・子育て支援金) ├ 所得税(源泉徴収→年末調整で精算) └ 住民税(特別徴収:翌月10日に市区町村へ納付) =(イコール) 差引支給額(手取り)= 実際に口座に振り込まれる金額 目安:総支給額の約70〜80% |
おわりに
給与とは、雇用契約に基づいて労働の対価として支払われる報酬の総称です。基本給・残業代・各種手当から構成される総支給額から、社会保険料・所得税・住民税が控除された金額が「手取り」として手元に届きます。
2026年4月からは「子ども・子育て支援金」の控除も始まりました。給与明細を正しく読めることは、自分の権利と義務を守るための第一歩です。
この記事が、給与の仕組みを理解するお役に立てば幸いです。個別の計算や税務相談は、税理士・社会保険労務士にご相談ください。
