税務調査の種類と注意点

調査担当部署と調査目的

国税当局が行う税務調査については、調査を担当する部署により、調査対象と税目が分類され、調査の目的もそれぞれ異なります。

税務調査を受けることとなった場合には、まずは国税当局のどこの部署の職員が担当しているのか確認することによって調査の目的と対応方法を概ね判断することができます。

突然税務調査を受けることとなった場合でも、まずは焦らずに税務当局の担当者の所属部署を確認することが大切です。

国税当局の調査担当部署と調査目的  ※国税局によって異なる場合があります。

組織 部課・部門

調査対象

主な
取扱税目

調査の目的

任意強制

国税局

課税第一部 資料調査課 個人

所得税
相続税
贈与税

大口・悪質な課税漏れが
想定される事案

任意

課税第二部 資料調査課 中小法人

法人税
消費税
源泉所得税

大口・悪質な課税漏れが
想定される事案

任意

調査査察部 調査部門

大法人
※資本金1億円以上

法人税
消費税
源泉所得税

経済活動の広域化、高度情報化を踏まえた深度ある調査を行うべき事案 任意
査察部門 個人・法人 全ての税目 大口・悪質な脱税が見込まれ
刑事責任を追及すべき事案
強制
税務署 個人課税部門 個人

所得税
消費

課税漏れが想定される事案
(大口・悪質事案を扱う場合あり)

任意
資産課税部門 個人

所得税(譲渡)
相続税
贈与税

課税漏れが想定される事案
(大口・悪質事案を扱う場合あり)

任意
法人課税部門 中小法人

法人税
消費税
源泉所得税

課税漏れが想定される事案
(大口・悪質事案を扱う場合あり)

任意

任意調査と強制調査

国税当局が行う税務調査には、

  1. 税務署及び国税局課税部が行う「任意調査」と
  2. 国税局 査察部(通称:マルサ)が行う「強制調査」

とに大別されます。

国税当局が1年間(新型コロナ流行前)に行う税務調査件数は、

任意調査 約160,000件
強制調査 約200件

と、圧倒的に任意調査が多い状況となっています。

いわゆる税務調査として広く一般的に行われているのは、税務署や国税局課税部が行う「任意調査」となります。

任意調査は拒否できるか

任意調査は拒否できるか

「任意調査なんだから、税務署が調査に来ても拒否すればいいんじゃないの?」

そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら単純にそのような結論とはなりません。

税法の規程により、税務職員には、必要があるときには納税者本人や関係者に対して質問し、帳簿書類その他の物件を検査することができる「質問検査権」が与えられています。

そして、私達納税者に対しては、税務職員からの質問検査に答弁せず若しくは偽りの答弁をしたり、帳簿書類等の検査を拒んだ場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金といった罰則が設けられているのです。

つまり、「任意調査」と呼びながらも、税務職員に与えられた質問検査権には間接的に強制力があり、納税者には税務調査を受忍する義務があると解釈されています。

したがって、「任意調査だから税務調査を拒否します。」と主張したところで、税務署が納得して税務調査を取り止めることはありません。

税務調査を拒否し続けた場合には、税務署は、納税者の真正な課税所得を把握するために、金融機関、得意先、仕入先等に対して裏付け調査(通称反面調査)を行って、調査対象者の所得金額を把握していくこととなります。そうなると、業務上の信用も著しく損なう可能性が極めて高くなります。

税務調査の連絡を受けた場合には、素直に応じる姿勢を示すべきでしょう。

事前通知の有無

税務署等による調査が行われる場合には、通常は、電話にて予め調査を行う旨の事前通知があります。

概ね、調査予定日の1ヶ月から2ヶ月前には連絡がありますので、事前通知を受けたら、お互いの都合がつく日程を調整し、必要な帳簿書類等を準備の上、調査に臨むこととなります。

これに対して、事前通知がなく、ある朝突然税務署や国税局課税部の職員が大人数で税務調査にやってくるケースがしばしばあります。(無予告調査)

これは、大口な不正経理により税金を過少に申告している可能性がある場合にとられる調査の方法です。

不正経理の証拠の隠匿を阻止するため、本社、支店、営業所、代表者や関係者の自宅等に対して同時刻に一斉に税務職員がやってくることが特徴です。

税務署側も一定の疑いをもって強い姿勢で調査に臨んできますが、無予告調査であっても、税務署や国税局課税部の職員が行う税務調査は、あくまでも任意調査となりますので、納税者の立場も尊重していただいた上で調査を進めてもらうことが重要です。

無予告調査を受けた場合には、次の事項に留意してください。

  • 税務署側責任者の所属部署、役職、氏名を確認の上、ただちに代表者及び税理士に連絡し、代表者及び税理士が到着するまで調査は中断してもらう。
  • 代表者が出張等で不在の場合、重要な商談や会議、冠婚葬祭行事が予定されている場合、健康状態に不安がある場合などには調査を延期してもらう。
  • 社員、関係者に対しても税務当局に協力するよう周知する。
  • 無予告調査の場合、帳簿書類等のほかにも、金庫、机、キャビネット、タンス、カバン、財布、車、パソコン、電磁記憶媒体等も検査の対象となることがほとんどです。

調査をなるべくスムースに進めるためにすべての検査に応じることも一つの考えですが、明らかにプライベートで使用しているもの(例:寝室、一般従業員等の財布など)については検査を拒否することも可能です。

マルサが行う調査  

マルサとは、国税局査察部門の通称であり、「国税の最後の砦」として、特に大口・悪質な脱税者に対して刑事罰を科すべく、脱税の証拠となる事実を固め、検察官に告発することを任務としています。

マルサから検察に告発されると脱税の嫌疑者は最終的に裁判により裁かれることになりますが、有罪率は100%といわれ、罰金刑のほか、懲役刑に関しては初犯の場合などは執行猶予となることが多いものの悪質と認められた場合には実刑が科されることがあります。

また、有罪判決の内容ついてはネットニュース、新聞、テレビなどにより報道され、社会的信用も大きく失うこととなります。

マルサの調査は長いもので1年以上に及び、他の税務調査と比べると次のような違いがあります。

① 強制調査

マルサの代表的な調査方法の特徴としては、よく映画やテレビドラマで再現されているような強制調査(通称:ガサ入れ)があります。

ある日突然大勢の査察官がやってきて、税務署の調査とは比較にならないほどくまなく捜索し、脱税の証拠となるあらゆる物証・書証を差し押さえていきます。

税務署等が行う無予告調査と比べて決定的に違う点は、裁判所から発行される捜索差押許可状に基づいて、本人が承諾する、しないに関係なく強制的に捜索・差押を行うことが可能というところです。必要と認められる場合には、身体の検査、ドア錠や金庫を破壊する行為も許されています。

② 質問調査

査察官は、脱税の嫌疑者に対して質問調査を行い、質問応答の内容を「質問てん末書」という調書にまとめて証拠化していきます。

査察官による質問調査に対する応答義務については法律解釈的には任意とされていますが、質問調査を拒否したり、脱税の事実を否認し続けた場合には、最悪のケースとしてはマルサと検察庁の合同捜査に発展し、検察官に逮捕される可能性があります。(マルサには逮捕権はありません。)

また、後の裁判においても心証を悪くする要因となりますので、質問調査には正直に応答することが重要です。

脱税の完全犯罪は不可能といわれています。

なぜなら、脱税のために所得を隠匿するには、資金の移動、物の購入、書類の偽造、関係者との通謀等様々なリスクを介して行う必要があり、証拠が残りやすい犯罪といえるからです。

億単位の所得を隠匿している場合には、マルサが動き出す可能性も高いといわれていますので不安をお持ちの方はお早めにご相談ください。

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