【相続税の落とし穴】

親の「5,000万円の投資信託」で

相続税が激増!?

まさか「非課税枠」がないとは知りませんでした…

早めに知っておきたい相続のルールを徹底解説!

更新日:2025年6月 執筆:税理士事務所スタッフ

「親が投資信託を5,000万円持っているけど、相続になったらどうなるの?生命保険みたいに非課税枠があるのかな?」  そう思っていた方に、残念なお知らせがあります。投資信託には、生命保険のような非課税枠はありません。しかも評価方法が複雑なため、知らずに損をしているケースが非常に多いのです。

この記事を読むと、次の3つのことがわかります。

  • 投資信託の相続税評価額の正確な計算方法
  • 非課税枠がない投資信託で「節税」する合法的な方法
  • 今すぐ動いておくべき具体的な対策

「うちには関係ない話」と思っているあなたほど危ない! 最後まで読んで、大切な財産をしっかり守りましょう。

[画像:親から子へ財産が渡るイメージ図。左に「親の財産(投資信託・預金・不動産)」、右に「相続」の矢印、さらに右に「相続税の申告」という流れをわかりやすく示したカラーフローチャート。キャプション:相続は「知識がある人」と「ない人」で、税金が何百万円も違う!]

このページの目次

1. そもそも「相続税」ってどういう仕組み?中学生でもわかる基本

■ 相続税とは「もらった財産に対してかかる税金」

相続税とは、亡くなった人(被相続人)の財産を受け取った人(相続人)が、受け取った財産の金額に応じて国に納める税金です。

たとえば、お父さんが「リンゴ農園」を残してくれたとします。その農園の価値が1億円なら、それに対して税金がかかるイメージです。リンゴ農園が「現金」でも「土地」でも「投資信託」でも、原則として同じ考え方です。

■ 相続税が「0円」になる「基礎控除」を知ろう

ただし、財産のすべてに税金がかかるわけではありません。「基礎控除額」という一定の金額までは、税金がかかりません。

基礎控除額の計算式 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

【具体例】

法定相続人の人数基礎控除額
1人(配偶者のみ)3,600万円
2人(配偶者+子1人)4,200万円
3人(配偶者+子2人)4,800万円
4人(配偶者+子3人)5,400万円

つまり、財産の合計額が基礎控除額以下であれば、相続税はゼロです。逆に、それを超えた部分に税率をかけて相続税が計算されます。

■ 相続税の税率(速算表)

課税遺産総額(各人の取得分)税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

💡 税率は「すべての財産に一律でかかる」わけではなく、金額が大きくなるほど高い税率になる「累進課税」です。

2. 投資信託の「相続税評価額」はこうして計算する

■ まず「投資信託」とは何か、確認しましょう

投資信託とは、多くの人からお金を集めてプロが株や債券などに投資し、その利益を分配する金融商品です。「1口100円から買える株のバスケット」のようなイメージです。

親御さんが持っている投資信託は、相続が発生した瞬間(亡くなった日)の「時価(時価評価額)」で相続税の対象になります。

[画像:投資信託の仕組みを説明する図解イラスト。「多くの投資家のお金」が「投資信託(ファンド)」に集まり、「株式・債券・REIT」等に分散投資されるフロー図。キャプション:投資信託は「1口から買えるプロ任せの分散投資」]

■ 投資信託の評価方法は「種類」によって異なる

投資信託には大きく分けて2種類あり、評価方法が異なります。

種類具体例評価方法
上場している投資信託(ETF・上場REITなど)日経225連動ETF、J-REITなど上場株式と同様に「相続開始日の最終価格」等で評価
上場していない投資信託(公募投資信託)eMAXIS Slim 全世界株式など「基準価額(相続開始日)」×「口数」で評価(一部調整あり)

【上場していない公募投資信託の計算式】

相続税評価額 = 相続開始日の基準価額(1口あたり)              × 保有口数              - 解約時の源泉徴収税額(含み益がある場合)              - 解約手数料等(信託財産留保額等)

少し複雑ですが、ポイントは次の2点です。

  • 「含み益」がある場合は、解約したときの税金(源泉徴収税)分を差し引いた金額が評価額になる
  • 「解約手数料(信託財産留保額)」があれば、それも差し引ける

💡 「含み損」がある場合は、基準価額 × 口数 がそのまま評価額になります(損失を差し引くことはできません)。

■ 5,000万円の投資信託の相続税評価額シミュレーション

【前提条件】

  • 保有投資信託:eMAXIS Slim 全世界株式(上場していない公募投資信託)
  • 保有口数:5,000万口(1口1円で購入)
  • 相続開始日の基準価額:1口あたり2円(1口100円時代に購入した場合、現在2倍に値上がり)
  • 信託財産留保額:0.1%
計算項目金額
基準価額 × 口数(時価)1億円(2円 × 5,000万口)
含み益5,000万円(= 1億円 − 購入額5,000万円)
解約時の源泉徴収税(含み益 × 20.315%)▲ 1,015万7,500円
解約手数料(時価 × 0.1%)▲ 10万円
相続税評価額(概算)約8,974万円

購入時は「5,000万円」のつもりが、値上がりして1億円になり、相続税評価額は約8,974万円になります。この金額が「遺産総額」に加わり、相続税の計算対象となります。

[画像:投資信託の相続税評価額の計算フロー図解。「時価(基準価額×口数)」から「解約税・手数料」を差し引いて「評価額」が出るイメージ図。キャプション:買ったときより値上がりしていると、評価額もアップ!]

3. 生命保険との決定的な違い「非課税枠がない!」

■ 生命保険の「非課税枠」とは何か

生命保険の死亡保険金は、「みなし相続財産」として相続税の対象になりますが、特別に「非課税枠」が設けられています。

生命保険の非課税枠 500万円 × 法定相続人の数

たとえば法定相続人が3人なら、500万円 × 3人 = 1,500万円まで非課税です。残りの部分だけが相続税の課税対象になります。

■ 投資信託に非課税枠はない

比較項目生命保険の死亡保険金投資信託
相続税の非課税枠あり(500万円 × 法定相続人数)なし
相続税の課税タイミング相続開始日(受け取り時)相続開始日(時価評価)
評価方法受取保険金額がそのまま評価額基準価額 × 口数 − 調整額
受取人の指定できる(遺産分割不要)できない(遺産分割対象)
節税効果大(非課税枠を活用できる)なし(全額が課税対象)

この違いは非常に大きいです。同じ5,000万円でも、生命保険と投資信託では相続税額が大きく変わります。

■ 「5,000万円」で比較!生命保険 vs 投資信託

【前提】配偶者あり・子ども2人(法定相続人3人)、親の財産はこの5,000万円のみ

 生命保険5,000万円投資信託5,000万円(含み益なし)
非課税枠500万円 × 3人 = 1,500万円なし
課税対象額(みなし課税遺産)3,500万円5,000万円
基礎控除額4,800万円4,800万円
基礎控除後の課税遺産総額0円(控除内に収まる!)200万円
相続税(概算)0円約10万円〜20万円(分割割合次第)

💡 含み益がある場合(たとえば評価額8,974万円)は、差がさらに大きくなります。生命保険に置き換えていれば「相続税ゼロ」で済んだのに、投資信託のままだったせいで多額の相続税が発生するケースは珍しくありません。

4. 相続時に問題になりやすい「投資信託の4つの落とし穴」

落とし穴①:換金(解約)するまで税金がかかり続ける

投資信託を相続しても、すぐに現金化する必要はありません。ただし、相続後に解約・換金した時点で「所得税」が発生します(相続発生後の値上がり分に対して)。

つまり、相続税を払ったうえに所得税も払うことになるケースがあります。「二重課税」と感じる方が多いですが、これは税法上正しい扱いです。

落とし穴②:外国投資信託は評価が複雑

外貨建ての投資信託(海外ETFなど)は、相続開始日の為替レート(TTB=対顧客電信買相場)で円換算して評価します。為替の動きによって評価額が変動するため、申告直前まで最終的な評価額が確定しません。

落とし穴③:証券会社ごとの手続きが必要

投資信託は銀行や証券会社に預けているため、相続発生後は各金融機関に「相続手続き」を申請する必要があります。これを怠ると、いつまでも名義が変わらないまま放置されてしまいます。

落とし穴④:分割協議でもめやすい

投資信託は「口数」で保有するため、不動産のように簡単に分割できません。複数の相続人で均等に分ける場合、換金して現金を分けるか、口数を分配するかの判断が必要です。

5. 今からできる!投資信託に関する相続税の合法的節税策

[画像:節税対策のロードマップ図。「現状把握」→「対策立案」→「実行」→「定期見直し」の4ステップを表すステップ図解。キャプション:節税は「知識」と「行動」の掛け算。早く始めるほど効果が高い!]

対策① 一部を「生命保険」に組み替える

投資信託の一部を解約し、その資金で生命保険(一時払い終身保険など)に加入することで、非課税枠(500万円 × 相続人数)を活用できます。

たとえば相続人が3人なら1,500万円分の生命保険に加入するだけで、1,500万円分が非課税になります。

ポイント:一時払い終身保険は「いつ亡くなっても死亡保険金が出る」ため、高齢の親でも加入できる商品が多い。ただし健康状態の告知が必要な場合もあります。

対策② 生前贈与で少しずつ移転する

毎年110万円(基礎控除)以内の贈与は贈与税がかかりません(暦年贈与)。投資信託を解約して現金化し、毎年110万円ずつ子どもに贈与することで、相続財産を減らすことができます。

注意:2024年(令和6年)1月以降の法改正

  • 相続開始前「7年以内」の贈与(暦年贈与)は、相続財産に加算されるルールに変更(旧:3年以内)。
  • 相続人への贈与は早期に開始することが重要。7年超前の贈与なら加算対象外。
  • 「相続時精算課税制度」を使った場合は、年110万円の基礎控除内であれば相続財産への加算なし(2024年改正)。

対策③ 「相続時精算課税制度」の活用(改正後)

60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に使える制度です。

比較項目暦年贈与相続時精算課税制度
年間基礎控除110万円(相続開始前7年以内は相続財産に加算)110万円(相続財産に加算なし・2024年改正)
特別控除(累計)なし2,500万円(超過分は20%課税)
主な利用場面毎年コツコツ贈与したい場合一度に大きな財産を贈与したい場合
選択後の変更不要(毎年判断できる)一度選択すると取消不可

対策④ 遺言書の作成で「分割争い」を防ぐ

投資信託は分割しにくい財産です。遺言書で「誰に何口を相続させるか」を明確にしておくことで、相続後のトラブルを防ぎます。

遺言書は「自筆証書遺言(手書き)」か「公正証書遺言(公証役場で作成)」が一般的で、後者の方が法的に確実です。

対策⑤ 「小規模宅地等の特例」との組み合わせ戦略

投資信託とは直接関係しませんが、相続財産の中に「自宅(土地)」がある場合は「小規模宅地等の特例」を使うことで、最大80%(330㎡まで)評価を下げることができます。この特例と他の節税策を組み合わせて全体の相続税を最小化する戦略が重要です。

6. 相続税申告の流れ:投資信託がある場合のステップ

[画像:相続税申告の6ステップを示すフローチャート。「相続開始(被相続人の死亡)」→「財産目録の作成」→「遺産分割協議」→「相続税の申告・納付」→「各金融機関の名義変更」→「完了」の縦型ステップ図。キャプション:相続税の申告期限は「相続開始から10カ月以内」!]

ステップ内容目安の期限
STEP 1死亡届の提出・戸籍謄本の収集死亡後7日以内
STEP 2財産の把握:投資信託の残高証明書を各証券会社に請求できるだけ早く
STEP 3投資信託の相続税評価額の計算申告書作成前
STEP 4遺産分割協議書の作成・署名押印申告期限前
STEP 5相続税申告書の作成・税務署への提出相続開始から10カ月以内
STEP 6証券会社・銀行での名義変更手続き申告と並行して実施
重要!:相続税の申告・納付期限は「被相続人が亡くなった翌日から10カ月以内」です。この期限を過ぎると「延滞税」「無申告加算税」等のペナルティが課されます。

7. よくある質問(FAQ)

Q. 投資信託を相続したくない場合はどうすればよいですか?
A. 「相続放棄」をすれば投資信託を含めた全財産の相続を放棄できます。ただし、相続放棄は「全財産について」行うものであり、投資信託だけを選んで放棄することはできません。また、相続放棄には「相続開始を知った日から3カ月以内」という期限があります。相続財産に多額の借金がある場合にも有効な手段です。
Q. NISAの投資信託は相続税がかかりますか?
A. はい、かかります。NISAは「運用中の利益・配当が非課税」になる制度ですが、「相続税が非課税になる」制度ではありません。NISAの口座で保有している投資信託も、相続発生時の評価額で相続財産に含まれます。なお、NISAの口座は相続人には引き継がれず、相続開始日に口座は終了します。相続人は相続した投資信託を通常の特定口座などに受け入れる手続きが必要です。
Q. 投資信託の相続では「残高証明書」の取り方がわからない
A. 残高証明書は、亡くなった方が口座を持つ証券会社・銀行に「相続手続きの申請書」と「戸籍謄本」「死亡診断書(写し)」を提出して請求します。相続開始日(亡くなった日)現在の残高証明書を発行してもらう必要があります。金融機関によって書類や手順が異なるため、各社のコールセンターや窓口へ早めに問い合わせることをお勧めします。
Q. 投資信託を相続した後、すぐに売却(解約)した方がよいですか?
A. 必ずしもそうではありません。相続後に売却(解約)した場合、「相続開始日の評価額」を取得価額として所得税の計算に使います(相続後の値上がり分にだけ所得税がかかります)。ただし、含み益がある状態で長期保有を続けると、将来の解約時に所得税が大きくなる可能性もあります。投資信託を売却すべきかどうかは、現在の税負担・今後の運用方針・資金ニーズを総合的に判断する必要があります。税理士にご相談いただくことをお勧めします。
Q. 親が認知症になった後でも、投資信託を売却して生命保険に組み替えることはできますか?
A. 原則としてできません。認知症等で判断能力が低下した方は、本人による金融取引(解約・購入)が認められません。証券会社・銀行は本人確認・意思確認が取れない場合、取引を拒否します。この場合は「成年後見制度」を利用することが必要ですが、後見人には「節税目的の生命保険加入」は認められないのが実務の原則です。そのため、親御さんが元気なうちに早めに対策を講じることが非常に重要です。

8. まとめ:投資信託と相続税の要点チェックリスト

この記事で解説した重要ポイントを、チェックリストにまとめました。

【重要ポイント チェックリスト】

  • 投資信託には生命保険のような「相続税の非課税枠」はない
  • 相続税評価額は「基準価額 × 口数 − 含み益への源泉税 − 手数料」で計算する
  • 生命保険に組み替えると「500万円 × 相続人数」の非課税枠が使える
  • 2024年改正で暦年贈与の相続財産加算期間が「3年→7年」に延長。早めの贈与が重要
  • 相続税の申告期限は「相続開始から10カ月以内」を厳守する
  • NISAの投資信託も相続税の対象(非課税ではない)
  • 親が元気なうちに対策を立てることが節税の鉄則

相続税の計算や節税対策は、ご家族の状況(財産の種類・金額・相続人の数・健康状態など)によって最適な方法が異なります。「うちの場合はどうなるのか?」という個別具体的なご相談は、ぜひ専門家にお任せください。

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